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コロナバブル崩壊寸前……次の金融危機は起こるのか?

 世界の主要国で低金利時代が続く中、追い打ちをかけるように新型コロナウイルス感染症の拡大により世界経済全体は低迷しています。実体経済が停滞する一方、ナスダック総合指数をはじめS&P500、NYダウなど、世界の主要な株価指数が史上最高値を更新しており、一部の専門家の間では「再びバブルがはじける兆候なのではないか」との懸念も広がっています。こうした「金利なき時代」と「バブルの懸念」という2つのマイナス要素を抱える現在、どのような投資を考えるべきなのでしょうか。モーニングスター代表の朝倉智也氏が解説してくれました。

本記事は、モーニングスター公式YouTubeチャンネルの動画『【MORNINGSTAR CONFERENCE2021】「金利なき世界」と「バブルの懸念」、難しい時代の資産運用の考え方 モーニングスター株式会社 代表取締役社長 朝倉智也』の内容を一部再構成したものです。

●世界の金利・株価のおさらい

 はじめに、先進国の金利水準を確認しておきましょう。米国の10年国債の金利は、2021年1月6日時点での数値が0.91。主要国の中で最も高い米国でこの数字です。日本の10年国債の金利は0.02と低い水準にあります。

 また、5年国債で比較すると、米国以外の主要先進国はすべてマイナスになっています。つまり、世界のほとんどの国において金利が水没した状態にあるのです。

 一方、株式市場の動向はどうでしょうか。直近の5~10年は、株式投資をされてきた方にとっては資産価格上昇の恩恵のある良好な環境だったと言えます。 

 直近の5~10年の右肩上がりの株価は、各国の金融緩和が大きく関係しています。2008年9月のリーマン・ショック以降、主要先進国は金融緩和を続けてきた影響もあり、この30年間金利は下落基調をたどり、その一方で債券価格と株価は常に上昇を続けました。

 各国の金融緩和の規模を示す指標として、たとえば、日本・米国・欧州の中央銀行の資産残高はリーマン・ショック直後の2009年1月の536兆円から、2020年12月には2,355兆円と約4.4倍まで膨らんでいます。金融緩和により市場に膨大なお金を供給した結果、そのお金の行き場が株式や債券、不動産、金などに向かったということです。

 しかし、次の10年間は、予測の難しい複雑な環境になることが予想されます。

 足元では、新型コロナウイルスの感染拡大により世界経済は停滞しましたが、株価は上昇し続けており、バブルを懸念する声など高値警戒感が出てきています。実際に、米国のナスダック総合指数は43.6%の上昇、S&P500も16.3%上昇しました。実態経済は弱っているように映るこの局面で、株価が上昇を続けるこのちぐはぐな状況の背景には、何があるのでしょうか。

●バフェット指数で分析、世界的な株価上昇は「バブル」?

 「世界的な株価上昇はバブルなのか、バブルではないのか」、いくつかの指標を見ながら、確認していきましょう。

 はじめに、「バフェット指数」と呼ばれる指標を見ていきます。このバフェット指数とは、当該国の株式時価総額を名目GDPで割った数字で、その国の株価が割安か割高かを確認するために使われる指標です。この数値が1を超えると割高であるとされています。

 過去の金融危機の際、米国株のバフェット指数はどのような推移をしてきたのでしょうか。2000年12月の「ITバブル崩壊」や、2007年8月の「パリバ・ショック」の際は、数値が1を超えた後、バブル崩壊が起こっています。なお、「リーマン・ショック」の際は、1には至っていませんが、0.9を超えた後に、金融危機が起こりました。

 それでは、現在の米国の株価水準はどうでしょうか。2020年12月の時点、バフェット指数は1.84あり、歴史的な高水準となっているのです。

●シラーPERで分析、世界的な株価上昇は「バブル」?

 参考になる指数をもう1つ挙げましょう。ノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者、ロバート・シラー教授が作った「シラーPER(CAPEレシオとも呼ばれる)」という指標があります。

 シラーPERとは、短期的な景気変動の影響を排除し、長期的な株価評価をするために使われる指標で、「株価÷インフレ調整済みの過去10年間の1株あたり純利益の平均値」で算出できる数値です。このシラーPERが30倍を超えると、割高と言われています。ITバブル崩壊直前のシラーPERは44.19倍、リーマン・ショックの直前は27.32倍でした。2020年12月の時点でのシラーPERは33.39倍で、割高な水準にあると言えます。

 バフェット指数とシラーPERから見ても現在の株価は割高な水準を示しおり、バブルの兆候が出てきているのではないかと考えられます。

 過去の金融危機の際の指標の動きなどを確認してきましたが、バブルの崩壊や金融危機は、時代の大きな変換期に起こってきた歴史があります。まさに、ブロックチェーンやビッグデータなど、新しいテクノロジーが登場し産業構造の転換が進む局面を迎えた現在、次の金融危機に注意をしなければならないのです。

 そうした時代で、私たちはどのような投資をすれば良いのでしょうか。

●どこが強い?円・ドル・人民元、認識しておくべき為替事情

 「金利なき時代」と「バブルの懸念」というマイナス要素のある時代に、どのようにして資産運用していくべきなのでしょうか。

 投資先を検討する際、確認すべきは各国の実質金利(10年国債利回り-消費者物価指数)の水準でしょう。注視すべき動きとしては、足元で(これまでは米国の方が高かったですが)米国の実質金利が日本を下回っている状況にある点です。そのため、ドルが売られ円高傾向に向かっていると考えられます。

 このように、米ドルが強い時代は終焉を迎えつつある一方、中国人民元が存在感を増している状況は認識しておく必要があるかもしれません。

 これらを踏まえ、投資先を検討する際に為替リスクは重要な判断材料となります。株式に関しては、世界株など、どのような投資先であっても、ある程度の利回りは期待できるため、今後、円高・円安のどちらに振れた場合も為替変動によるマイナスを利益で吸収できると考えられます。そのため、長期的に見て為替ヘッジはしなくても問題ないと考えています。一方、債券に関しては、これから円高傾向が進むのであれば、為替ヘッジをしていく必要があるでしょう。

 なお、為替ヘッジ後の各債券の利回りを比較(世界国債インデックス、平均残存年数は10.3年)すると、日本国債はマイナス0.11%、世界国債(為替ヘッジ)は0.14%と低水準となっています。一方、米ドル建てのトヨタ社債(為替ヘッジ)は、0.43%となっています(2020年12月末時点)。つまり、各国の国債だけでなく、投資適格の社債なども選択肢になるという点は知っておくべきでしょう。

●米国か?中国か?投資すべき国とは

 ここからは、世界経済の成長見通しを確認いきましょう。

 世界経済の見通しを見ると、やはり中国経済の強さが目立つ形になっています。IMFによれば、2030年までには中国が米国のGDPを抜くと予想されており、いよいよ中国経済は無視できない存在になるのです。

 また、別の角度から中国経済の底力を示す指標があります。たとえば、将来の経済成長を先導する次世代の企業(未公開の企業)が国内にどれだけあるのかを見る指標として、「世界のユニコーン企業のトップ20社」を見ると、中国企業ばかりがランクインしていることが分かります。

 また、中国は実体経済の実力に比べ、現在株価の水準が割安にあり、その点からも有望な投資先と考えられます。

 そのほか、中国に次ぐ成長見通しとなっているインド、インドネシアなどの新興国も注目すべきでしょう。つまり、投資先を検討する際、これまで以上に米国や欧州などの先進国だけでなく新興国にも目を向け、グローバルな視点からアセットアロケーション(資産配分)を検討する必要があるのです。

●投資戦略はどうあるべきか?

 ここまでを踏まえ、具体的にどのようなアセットアロケーションをとれば良いのでしょうか。

 従来であれば、ポートフォリオにおける債券の比率を高め、安定的な運用を目指すスタイルもありましたが、金利が低く各資産の期待収益率が低下している中、今後はバランスを重視するポートフォリオの場合も、株式を50%程度組み込む運用が良いでしょう。また、中長期的に高い収益を求める場合は、株式100%の運用を検討すると良いでしょう。ただし、あくまでも「長期」「積立」「分散」の投資スタイルが前提となります。