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為替相場の投機的なポジションでは、ドルの総合力を示すドル指数(米インターコンチネンタル取引所)がネット・ロングに転じてきた。
このまま定着できれば昨年6月以来となるが、過去はドル指数のロング転換後から慣性的なドル高モメンタムが形成され、ドル/円は最低でも+5円から+7円はドル高が進むパターンが見られている。今回は先行き不透明感が強いものの、足元では微妙に米FRBの利上げ時期前倒しなどを意識する形で、短期債金利がジワリと下限切り上がり基調に移行しつつある。

FRBによる利上げについては、パウエル議長を始めとして2023年末やそれ以降までの慎重姿勢が大勢だ。しかし、政策金利のFFに先行性を有する米2年物国債金利は、2月11日の0.097%前後を直近最低として僅かながらも下限を切り上げている。3月18日以降は10年債金利の上昇ペースが鈍化してきたが、2年債金利は29日以降に0.13%から0.14%前後での下げ渋りとなっている。

シカゴ商品取引所における米2年債の投機的なポジション(CBOT、非商業部門)は、最新3月23日週に−37万1353枚のネット・ショートになってきた(先行き金利上昇=債券価格下落を意識も)。2月23日の−3万9871枚を直近最低として売り持ちが急拡大し、3月9日週の−40万7364枚に続いて2019年2月以来の大幅ショートになっている。

その中で米2年債金利と、FF金利に近い財務省証券3カ月金利との金利差(2年−3カ月)は、週末ベースで3月19日週が0.152%、26日週が0.124%となった。昨年12月の+0.038%をボトムとして、微妙に2年債優位方向への金利差拡大となってきた。昨年3月のコロナ影響による混乱時を除くと、2019年1月以来の開き幅となっている。同金利差のトレンドを示す26週や50週移動平均線の方向角度は、金利差の拡大基調入りを示す上向き化へと転換してきた。

過去実績としてこうした短期金利内における直物と期先の金利差拡大は、打診的に先行きの利上げ織り込みが始まる前段階の先行シグナルになってきた。
連動する形で為替相場の投機ポジションでは、ドルの総合力を示すドル指数でネットのショート(売り持ち)状態からロング(買い持ち)転換が同時観測されている。ロング転換後は利上げ織り込みの本格化と実際の利上げ始動まで、持続的なドル指数ロングの積み上げとドル高トレンドが連動形成されてきた。

今回も米インターコンチネンタル取引所(ICE)統計では、ドル指数のポジションが3月16日週に+5837枚、23日週に+5383枚のネット・ロングへと転換している。1月5日週の−1万4952枚をネット・ショートの最大ピークとして全般的なドル買い戻しが優勢となり、このままロングが定着できると昨年6月以来となる。

過去にドル指数のショート状態がロングに転換したあとは、慣性的な勢いのままロング拡大とドル高のモメンタムが形成されてきた。ドル/円も連動してドルが底上げされている。前回は2018年5月15日週からロング転換となったが、ドル/円は同週のドル安値109.21円前後から、同年10月のドル高値114.58円まで+5.4円幅のドル高が観測された。

2014年6月のドル指数ロング転換後には、ドル/円は+24.2円幅のドル高、以下、2013年1月以降が+16.9円幅、2011年9月以降が+7.6円幅、2009年11月以降が+10.2円幅、2008年6月以降が+6.8円幅、2005年4月以降が+13.8円幅といった高確率でのドル高実績を有している。

今回の場合、3月16日週からドル指数がロングに転換してきたが、同週にドル/円のドル安値は118円前後となっていた。過去実績の最低値幅である+5円幅から+7円幅としても、先行き時間をかけながらの113−115円方向は非現実的ではない。

しかも今回の場合、シカゴIMMの投機的な円ポジションは、3月16日週から昨年3月以来のネット円ショートに転換してきたばかりだ(非商業部門、国際通貨市場) 最新3月23日週時点では−5万3525枚のネット・ショートになっている。最近の円ショート最高は昨年2月の−5万6389枚や2019年4月の−9万9599枚、2018年10月の−11万5201枚などとなっていた。あくまで過去円ショートのピーク比では、円ショート拡大と円売りの余地、裏表でのドルロング拡大とドル買いの余地が残されている。

ユーロも23日週時点では、+9万3322枚とネット・ロングが残存している。直近最高である1月26日週の+16万5344枚からは買い持ちの減少とユーロ売りが進展してきたが、引き続きロング解消やショート転換に至るまでのユーロ売り戻し余力(=ドル買い余力)は無視できない。

もちろん、現在の米国経済は未曽有のコロナ打撃や財政赤字拡大、構造的な長期失業者の高止まり、「日本化」低成長と低インフレ入りなどの問題があり、過去の経験則があてはまらない可能性も残る。しかし、バイデン米政権は来年11月の中間選挙での勝利と、米中新冷戦での優位性奪取といった危機感により、引き続き雇用対策やワクチン普及の加速に全力を注ぐ構えだ。

すでに懸案の長期失業者問題でいえば、3月20日終了週の週間・新規失業保険申請件数で「継続受給者数」が前週比−26.4万人減の387.0万人となった。昨年5月の2491万人をピークに緩やかながらも減少傾向が続き、コロナ危機後の昨年3月以降では最低の改善減少となっている。

継続受給者数については、1年スパンのトレンドを示す52週移動平均に先行する50週移動平均で、3月20日週から方向角度が下向き化の減少基調入りとなってきた。持続的な改善軌道のモメンタム入りが支援されやすい。過去には米2年物−3カ月物の金利差拡大や、段階的な「利上げ織り込み」の先行シグナルとなってきた。

ドル指数の持ち直しについては、米国での他の先進国比でのワクチン接種の拡大普及や、財政出動を含めた経済対策の連打、先行きの経済対策継続の可能性、他の先進国比での金利水準の高さなどが支援材料になっている。IMFによる世界経済見通しでも、今年1月時点で米国の実質GDP成長率予測は2021年が+5.1%となり、ユーロ圏の+4.2%(ドイツ+3.5%)や日本の+3.1%を凌駕している。

成長の伸びシロがある新興国を含めた世界全体については、今年が+5.5%予測となっている。成熟国である米国は+5.1%予測で、−0.4%の下振れだ。それでも世界全体と米国が揃ってプラス成長の見込みのなか、米国の下振れが−0.4%にとどまっているのは実に1999年以来の格差縮小となっている(同年は+1.2%の米国優位、米国の劣勢最大は2007年の−3.7%)。