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国内総生産(Gross Domestic Product)とは、国内で生産されたモノやサービスの総額で、経済の規模をあらわすモノサシとなっています。

GDPの伸び率が経済成長率に値します。

掲示板のコメントはすべて投稿者の個人的な判断を表すものであり、
当社が投資の勧誘を目的としているものではありません。

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    hardWorker 4月16日 11:41

    日銀の黒田総裁の在任期間が歴代2位とのNHKニュースの良い意味での違和感

     日銀の黒田総裁は、6日で在任期間が2940日となり、歴代2位に並びましたと6日にNHKニュースで報じられた。昭和30年代に日銀総裁を務めた山際正道に並んで歴代2位の長さとなったそうである。

     そうなのか程度のニュースではあったが、ところどころに気になる箇所があり、それを感じたのは私だけではなく、市場参加者も話題にしていた。

     日銀の黒田総裁は、2013年3月に就任。2%の物価上昇率の目標を2年程度で実現すると宣言して、就任直後に大規模な金融緩和策を打ち出し、「黒田バズーカ」とも評された。その後も、市場の意表を突く「サプライズ」の追加緩和を実施し、2016年1月には日銀史上初めてとなる「マイナス金利政策」の導入を決めるなど、積極的な金融緩和を続けてきましたが、この間、物価目標は一度も達成できていませんと、記事にはある。

     ここで物価目標の未達成を強調していた。その理由も日銀は点検などで示していたものの、特にNHKはそれについてはコメントはしていない。

     その点検について、「日銀は先月、金融緩和策の「点検」を行い、大規模緩和の長期化に備えて各種の施策の見直しを決めましたが、金融政策は一段と複雑化したという指摘も出ています」とコメントしていたのである。

     点検の内容はさておき、結果として金融緩和の深掘りを副作用を控えた上で行えるようにするため、「一段と複雑化」させたのは確かだが、「複雑化」を強調して報じたものはあまり見たことはない。

     そして、この記事では次のような表現もあった。

     「感染症の影響が長期化するなか、日本経済を下支えしながら物価目標を実現できるかに加え、金融政策の正常化に向けた道筋をどう示すのかが、引き続き課題になります。」  

     「金融政策の正常化に向けた道筋をどう示すのか」というところは実は大きなポイントとなる。しかし、現在の日銀は金融政策の正常化に向けた姿勢などは一切示しておらず、むしろ追加緩和が可能であることを強調しているかにみえる。

     何故、物価目標は達成できなかったのか。その理由は言うまでもなく、物価を自由にコントロールなどできないという現実が見えただけである。

     その時々の経済物価情勢に応じ、柔軟に金融政策を変更し、特に金融市場に対し大きな変動をできるだけ抑えることが本来、日銀の金融政策には求められる。

     つまり現在日銀が行うべきは「一段と複雑化」させることではない。必要とされるのは「金融政策の正常化に向けた道筋をどう示すのか」ということである。これを表立って日銀は表明できないものの、NHKがまったくの取材なしに記事を書いたとは思えないこともあり、それを手探りしているのではとも思わせるような記事であった。

  • FRBはテーパリングを準備か、時期尚早との見方も

    FRBはテーパリングを準備か、時期尚早との見方も」のパウエル議長は14日の講演で、少なくとも2023年末までゼロ金利を続けるとの方針をめぐり「我々は時間枠ではなく、経済が改善するかどうかを重視している」と強調した(15日付日経新聞)。

     これは2023年という時間枠に縛られることなく、経済の改善状況次第では動くときには動くという姿勢を示したものとみられる。フォワードルッキングを重視するあまり、タイミングが外れるリスクも意識したものともいえよう。

     記事では早期の政策変更を否定しつつ、経済情勢次第で変更時期が変わりうる可能性を示唆したと解説があったが、年内の利上げは「極めて可能性が低い」との発言を受けてのものであろう。たしかに年内の利上げは現状は予定はしていないかもしれないが、変更時期についてはフレキシブルに見ているといえる。

     FRBは3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で少なくとも2023年末まで現在のゼロ金利を維持する見通しをまとめた。市場では時期が前倒しされるとの観測が広がっている。パウエル氏はFOMC参加者の現時点での予測だとしたうえで「市場は経済見通しを集約した点図表をあまりに重視する傾向がある」と指摘した(15日付日経新聞)。

     2023年末まで現在のゼロ金利を維持するというのは確定事項でもなんでもない。現状のFOMCメンバーの見通しの中央値がそこにあるだけである。しかし、市場やメディアはそれを重視するあまり、2023年まで利上げはしないと読んでしまう傾向がある。

     むろん、緩和効果を意識している際には、FRBもそのような思い込みに対して特に反論はせず、これによる「暗黙のアナウンスメント効果」を意識している可能性もある。しかし、政策の修正を意識し始めると、そのような思い込みに対して今回のような注意を与えることで、今度は修正の可能性を市場に織り込みさせることもできる。

     新型コロナウイルスのワクチン普及に伴って雇用情勢が復調に向かい、3月の物価上昇率も2%を超えた。パウエル氏は「米経済は変曲点にある」との認識を改めて示した(15日付日経新聞)。

     市場も物価上昇を織り込みはじめ、米長期金利も上昇してきた。ここにきて米長期金利の上昇にブレーキが掛かったが、2%に向けて再度上昇するとの見方も強い。

     ただし、サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は15日、FRBが掲げる物価と雇用を巡る目標の達成に程遠いとの認識を示し、しかるべき時期が来たら政策正常化へのアプローチを討議するとしながらも、まだそうした時期には達していないと指摘した。ある意味、ハトとタカの比重の偏りに対するバランスを修正したような発言を行っていた。

     パウエル議長はワシントン経済クラブのインタビューで「昨年12月以降、目標に向けてさらなる著しい進展を遂げた時点で、資産買い入れを縮小する時期に到達する」と指摘。決議したわけではないとしつつも、債券購入の段階的縮小が「利上げを検討する時期よりもかなり前になる可能性が高い」と語った(14日付ロイター)。

     利上げについてはまだ時間を置く姿勢をみせた反面、テーパリング(資産購入の段階的縮小)については、準備段階に入りつつあることを示した。前回の正常化過程でも利上げの前にテーパリングを行っており、今回も正常化を意識した発言といえよう。さすがに保有資産の売却について影響が大きすぎることもあってか、バランスシートを縮小させる可能性は否定した。

  • 米国の3月の消費者物価指数の大幅な伸びを受けても米国債は売り手控え

     13日に発表された米国の3月の消費者物価指数(CPI)は前月比0.6%の上昇となり、上昇率は同じく0.6%だった2012年8月以来、8年7か月ぶりの大きさとなった。エネルギー価格が前月比で5.0%と大きく値上がりして全体を押し上げた。前年同月比では2.6%上昇となった。

     変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前月比0.3%の上昇とこちらは7か月ぶりの大幅な伸びとなり、前年同月比では1.6%の上昇となった。

     米消費者物価指数が予想も上回るのではとの観測もあり、12日の東京時間では米10年債利回りは1.69%あたりまで上昇していた。

     しかし、13日の米10年債利回りは結果として、1.61%に低下していた。すでに消費者物価指数の上昇は織り込んでいた面もあったのかもしれない。また、FRBの長期的な金融緩和姿勢を変えるほどの数字ではないとの見方もあったようである。

     この日に行われた米30年債入札が順調な結果となったこともフォローとなったようだが、あらたな材料も出ていた。

     米食品医薬品局(FDA)は13日、米国企業のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の新型コロナウイルスのワクチン接種を中断するよう勧告したのである。これを受けて、ワクチン普及による経済正常化の期待が後退し、相対的に安全資産とされる米国債は買われた側面もあった。

     米10年債利回りのチャートをみても、1.7%を超えたあたりでいったんブレーキが掛かった格好となっている。これによって売りは手控えられ、押し目買いが入りやすい地合となっていた可能性もある。

     ここ最近では、米長期金利に連動しやすいドル円についても、上値が重くなり、3月末に111円近くまで上昇後は、下値を探るような展開となり、109円を割り込んできた。

     消費者物価指数がきっかけとなり、再度、米長期金利は上昇するかなとみていたが、そうはならず、目先は下値を探る展開となる可能性も出てきた。

     当面は物価の上昇圧力は掛かり続け、米国景気そのものも回復基調となろう。しかし、新型コロナウイルスのワクチン接種の状況如何では、その回復度合いが変わってくる可能性もある。目先は、米長期金利はどのあたりまで低下し、ドル円もどのあたりが下値となるのかを見極める展開となりそうである。

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  • 好調な米雇用統計を受けての米債の動きは利上げを意識か

     2日に発表された3月の米雇用統計では、非農業雇用者数が前月比91.6万人増となり、市場予想の65万人増程度を大きく上回り、昨年8月以来の大幅な増加となった。2月の雇用者数は37.9万人増から46.8万人増に上方修正され、1月分も16.6万人増から23.3万人増へ上方修正された。

     3月は全ての業種で雇用者数が増加したほか、労働参加率も上昇した。失業率は6.0%と、2月の6.2%から低下。しかし、コロナ禍に伴う「雇用されているが休職中」の人の扱いが引き続きデータのゆがみとなっている。こうした影響を除くと失業率は6.4%だった(2日付ロイター)。

     米国のバイデン大統領は、好調な内容となった雇用統計を称賛すると同時に、新型コロナワクチンの普及など「これまでに遂げた進展が反転する恐れがある」と気を緩めないよう釘を刺した。また、米国はインフレリスクに直面していないとの見方も示した。

     たしかに現状、米国ではインフレリスクに直面しているわけではない。しかし、物価が今後上がるであろうとの兆しはあちらこちらで出てきている。

     2日の米国市場は、グッドフライデー(聖金曜日)の祝日のため、株式市場や商品の立ち会い取引は休場となった。債券市場は東部時間正午までの短縮取引、いわゆる半ドンとなった。

     その米国債券市場では、期間の短い国債主体に利回りが上昇した。長い期間の国債の利回りも上昇したのだが、上げ幅は短い方が大きい。短い金利のほうが中央銀行であるFRBの動きに影響を受けやすく、これはFRBが想定しているよりも早い時期に行動に出る可能性も意識した動きといえる。

     すぐに利上げがあると予想したわけではないが、年内に緩和縮小を巡る討議を始めガイダンスを修正する可能性があるとの見方が出るなど、利上げ時期が想定以上に前倒しされる可能性を意識した米長期金利の動きといえた。

     市場参加者の思惑、もしくはそれをリスクと捉えて先んじて動いたことではあるが、それだけ米長期金利には上方圧力が掛かりやすい地合であるということも言える。2日の米10年債利回りは1.73%に上昇したが、1.9%もいずれ視野に入ってこよう。

  • 日本の長期金利の調整が大幅に遅れ、その反動が大きくなる懸念も

    長期金利は本来、経済実態に応じて動くものとなる。もちろん、それだけでなく需給やテクニカルに応じて動く。

     教科書的には景気が回復し、物価が上昇するとなれば、長期金利は上昇する。これが普通の姿であり、金利が上昇することで、設備投資のオーバーヒートなどを抑えることになる。それによって景気の過熱を抑えるような仕組みとなっている。景気が悪化し、物価が下落基調となれば、長期金利は低下する。これによって設備投資などを後押しするような格好となる。

     たとえば、2日に発表された米国の3月の米雇用統計では、非農業雇用者数が前月比91.6万人増と市場予想の65万人増程度を大きく上回り、昨年8月以来の大幅な増加となった。これを受けて米国の景気の回復が意識され、米長期金利は上昇した。

     長期金利はこのようなファンダメンタルズと呼ばれるものによって市場参加者の思惑も加わり、先んじて動く習性を本来持っている。米雇用統計を受けてFRB予想よりも早期に利上げに動く可能性があるとの観測も背景にあった。

     短期金利は中央銀行が物価の安定のために操作して誘導するが、長期金利は市場参加者の思惑によって市場で形成され、揺れ動くことにより、より適正な水準を模索することになる。

     長期金利(10年国債の利回り)に影響を与えるものとしてのひとつに国債の需給がある。国債の需要側としては本来、国内の金融機関などがどれだけ国債へのニーズがあるのかに応じて計られる。これに対して供給側としては国がどの程度、国債を発行するのかによって左右される。

     本来、長期金利は株式や外為などと同様に市場で形成され、参加者の思惑で値が動く。その市場心理は債券先物のチャートなどで示されることで、テクニカル分析も可能となる。つまり先行き予測に応じて、市場参加者が動きやすくなる。

     以上がある意味、教科書的な見方であるが、現在はこれらがすべて日銀の大規模な金融緩和政策、「長短金利操作付き量的・質的緩和」と呼ばれるものによって抑えられてしまい、市場参加者は身動きができない状態にある。正確には日銀が身動きが取れなくなり、米国のような中央銀行の金融政策の先行きを読んだ動きが日本では起きにくくなってしまっている面もある。

     世界的なリスクが蔓延している最中であれば、リスク回避による国債買いという動きによって長期金利が抑えられる。この状況であれば、一見、長期金利が押さえ付けられているという債券市場の異常さは感じられないかもしれない。

     しかし、リスクが回避され、あらためて景気が回復し、物価が上昇する兆しが出て、そのなかにあって国債の巨額の発行が続くという状況は、本来であれば、長期金利の上昇によってそれらが調整されるべきものである。

     長期金利の上昇を無理矢理に押さえ込んでしまうと、その反動がいずれ大きく出てくる可能性を強めることにもなりかねない。ファンダメンタルズや需給に応じた長期金利の調整が遅れればおくれるほど、跳ね上がるエネルギーが蓄積されることもありうるのである。

  • 今はバブルなのか、2000年のITバブルとの比較

     現在の金融市場をみると欧米の株価指数が過去最高値を更新し、東京株式市場でも日経平均は3万円台を回復し、30年ぶりの高値をつけている。これは果たしてバブルなのであろうか。

     2002年に元FRB議長のグリーンスパン氏は「バブルは崩壊して、初めてバブルと分かる」という言葉を残している。これは2000年における米国のITバブルの崩壊をみてのものであった。

     グリーンスパン氏がFRB議長として在任中に、米国でのいわゆる「ITバブル」が発生した。グリーンスパン氏は1996年の講演で、米国株式の上昇に対し、「根拠なき熱狂が資産価格を不当につり上げている」とリスクを指摘したが、ITバブル発生を防ぐことはできなかった。 

     1995年に米マイクロソフトのウインドウズ95が発売され、ブラウザ・ソフトのネットスケープが新規公開を果たした。このあたりからインターネット株ブームが始まった。1998年から1999年にかけては、ベンチャーの創業資金や株式への投資資金の調達が容易であったことなどを受け、IT関連企業の株価は急速に上昇。その後も過度な投資が行われたことから、IT関連企業の株価は急騰し、バブルへと発展していったのである。

     2000年の春以降、IT関連企業の収益に改善の兆しがみられなかったことなどから、IT関連企業に対する期待は急速に縮小した。1999年6月から2000年5月にかけて、FRBは政策金利を4.75%から 6.5%へと引き上げていた。このFRBの利上げも重なったことから、株価は急速に下落し、ITバブルは崩壊した。

     現在もバブルを匂わす兆候が株価そのもの以外でも、あちらこちらでみられている。ビットコインの上昇などもそのひとつであろう。また、投資家は株式を購入するために巨額の資金を借り入れていることが指摘されていたが、ニューヨーク証券取引所証拠金債務、つまりポートフォリオに対する借入金は前年同期を49%も上回り、これほど増加したのはITバブル崩壊前の1999年以来となる。

     今回の米国を主体とする株式市場の上昇の根拠としては、政府の大規模な財政政策と中央銀行による大胆な金融政策がある。その資金が資産価格を不当につり上げている可能性は十分にあり、その結果、アルケゴスの巨大損失などを招いた。

     ここにきて長期金利の上昇はいったん落ち着いてはいるが、物価などの動向次第でいずれ2%を超えて上昇してくる可能性は十分にあり、この金利上昇が、バブル崩壊のきっかけになる可能性もある。

     ただし、FRBのパウエル議長は8日、景気回復は不均一で不完全なままだと述べ、金融緩和の縮小には米国経済の一段の改善が必要との見方を示したように、大胆な金融政策が今後も続き、今後もバブルがさらに膨らむ可能性もある。

     日本のバブル崩壊前(1989年)もすでに長期金利は上昇基調となっていた。そこからタイムラグがあってのバブル崩壊となった。

     グリーンスパン氏の言にもあったが、バブルは崩壊して、初めてバブルと分かるため、現在がバブルとの認定はできない。また、それがいずれ崩壊すると指摘しても、オオカミ少年としてみられる可能性も高い。それでも、そのリスクは意識しておくべきで、細かい兆候も見逃すべきではない。

  • 日銀の点検にはなかった債券市場参加者の経験知への影響

    日銀は3月19日の金融政策決定会合で、点検の結果を受けて金融政策の一部修正を行った。その点検の結果も同時に発表された。

     日銀のサイトにアップされた「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」において、特に債券の市場機能への影響の部分を確認してみたい。

     日銀は「長期金利は、経済・物価に対する見通しのほか、海外の長期金利などの影響を受けて形成される」としている。

     しかし、これは現実と異なろう。長期金利は、経済・物価に対する見通しのほか、海外の長期金利などの影響を受けて形成されるはずだが、日銀によって動きが抑制されている。

     「イールドカーブ・コントロールの持続的な運営の観点からは、市場機能の維持と金利コントロールの適切なバランスを取ることが重要である。この点、金利の大幅な変動は、経済・物価に悪影響を及ぼす可能性があるが、金利の変動が一定の範囲内であれば、金融緩和の効果を損なわず、市場の機能度にプラスに作用すると考えられる」

     国債のイールドカーブは日銀というか、お釈迦様の手のひらのなかだけで動いていればよろしいと読めなくもない。

     10年債の0.2%程度の変動では、景気動向や海外市場動向を受けて市場参加者が読みを働かせて、自由な相場勘を形成し、それによって価格変動が起きること自体を日銀は抑制しているといえる。

     自由に動けない市場で何が起きているのか。その点についての点検はどうやら行われてはいなかったように思われる。

     債券市場は金融市場において株式市場や外為市場と並ぶ重要な市場である。そこでの動きが人為的に抑制されてしまうと何が起きるのか。

     そこでは市場参加者に必要な経験が積めなくなってしまうのである。相場勘と呼ばれるものは経験の積み重ねによって鍛えられる。しかし、ここまで相場が抑え込まれてしまうと、相場が動くという経験の積み重ねができなくなってしまう。

     私のように債券のディーリング時代を経験した参加者はすでに市場の一線を退いていよう。長期金利の2%超を経験した参加者も次第に少なくなっているのではなかろうか。それ以前に、日銀が相場水準を決めることになり、経験ある市場参加者そのものが退出してしまっている可能性もある。

     このまま長期金利が低位に抑え続けられることも考えづらい。日銀の出口戦略が思わぬ形で必要になることもないとはいえない。そのようなとき、これほど巨大化してしまった日本の国債市場で、市場参加者がうまく立ち回ることができるのか。そのような点検は必要ないのであろうか。

  • 日銀短観にみるコロナ禍の日本経済の姿

     1日に日銀が発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の 景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス5と前回の2020年12月調査から15ポイント上昇した。 改善は3期連続となり、プラス5という水準は2019年9月のコロナ前のプラス5と同水準となる。

     今回の調査は、首都圏の1都3県に緊急事態宣言が出されていた2月下旬から3月31日にかけて行われた。

     大企業製造業の主要16業種のうち13業種で前回12月調査から改善を示した。 悪化と答えたのは、「繊維」、「食料品」、「造船・重機等」。

     反対に大きく改善をみせたのが、「石油・石炭製品」、「生産用機械」、「非鉄金属」、 「自動車」、「鉄鋼」など。

     大企業製造業の景況感からみると、コロナ禍にあって個人消費が抑えられていたものの、 米中を中心とした世界経済の持ち直しを背景に、海外向けの設備投資需要などが回復した。 円安進行も輸出企業には追い風となった。また、原油価格の上昇なども寄与か。

     これに対し、大企業非製造業は、マイナス1ポイントと、前回調査のマイナス5ポイントから 小幅な改善にとどまった。

     大企業非製造業の主要12業種のうち7業種が改善を示し、4業種が悪化と答えた。 悪化と答えたのは、「小売」、「電気ガス」、「対個人サービス」、「宿泊・飲食サービス」となり、 コロナ禍による人の往来の制限などの影響を引き続き受けている。

     これに対して、「対事業所サービス」、「不動産」、「物品賃貸」、「情報サービス」 などが改善を見せていた。引き続きコロナ禍による影響は受けつつも、経済そのものは 回復基調に転じていることをうかがわせるものとなった。

  • 長期金利の上昇は景気への楽観を反映か、いずれ中央銀行は正常化に向けての出口模索に

     英国の中央銀行であるイングランド銀行のベイリー総裁は15日、市場金利の上昇は景気への楽観を反映しているとの考えを示した(15日付ブルームバーグ)。

     ちなみに前任者と比べてやや陰が薄く感じるアンドリュー・ベイリー総裁は、2020年3月16日にイングランド銀行の総裁に就任した。

     ベイリー氏はキャリアの大半をイングランド銀で過ごした生え抜き。1985年にイングランド銀行に入行し、総裁秘書や発券部門の責任者などを経て、2013年に副総裁(金融機関監督担当)に就いた。16年に金融規制機関であるFCAのトップに転じ、カーニー総裁の後任としてイングランド銀行の総裁に就任した(2019年12月20日付日経新聞)。

     前任のカーニー総裁はやや異色の総裁であった。イングランド銀行の総裁の前はカナダの中央銀行であるカナダ銀行の総裁であった。

     そのカナダ銀行(中央銀行)のシェンブリ副総裁は3月11日に、国民が新型コロナウイルス流行期間中に増やした貯蓄を使って消費し始めれば、経済成長に「大きく影響」する可能性があると述べた。金利上昇ペースが加速する可能性があることを示唆した(12日付ロイター)。

     18日にはイングランド銀行で金融政策を決めるMPCが開催される。

     11日の欧州中央銀行(ECB)で金融政策を決める政策理事会では、今後数か月の債券購入ペースを加速させる方針を示した。域内経済の回復を脅かす債券利回り上昇の抑制を図ることが目的となるが、これはやや時期尚早に思われた。

     それというのも、ここにきての米国や欧州などでの国債利回りの上昇は、新型コロナウイルスのワクチン接種などによって、正常化にむけて経済の回復が期待できるとともに、大型の経済対策による個人消費の回復などによる物価の正常化などを期待してのものであるためである。

     イングランド銀行のベイリー総裁はBBCラジオ4とのインタビューで、「過去1か月ほどの間に英国でも幾分の金利上昇が見られた」が、「これまでのところ、金利の動きは景気見通しの変化に沿ったものだと考えている」と語った。

     これが素直な見方であると思われる。このため、18日のイングランド銀行のMPCでは、現在の資産購入ペースを維持することが示唆されるとみられる。年内にペースを減速させる可能性もあるとされている。

     長期金利が景気や物価の回復を読んで動き、コロナ禍以前の水準程度に戻ることを恐れる必要性はないと思う。ましてや、景気や物価のトレンドから鑑みて、いまは追加緩和を模索、もしくは容易にさせる工夫をするときではなく、中央銀行は正常化に向けての出口を探るときに来ていると思う。

  • 日銀はデジタル円の実証実験を開始

     日銀の黒田総裁は16日のFIN/SUM(フィンサム)2021における挨拶のなかで、中央銀行デジタル通貨(CBDC)についても言及した。

     「最後に、中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、一言触れておきたいと思います。日本銀行では、昨年10月に中央銀行デジタル通貨に関する取り組み方針を公表したあと、この方針に沿って、実証実験に向けた準備を進めてきました。この春からはいよいよ実験を開始する予定です」(日銀のサイトにアップされた挨拶文より)

     日銀による中央銀行デジタル通貨の実証実験は、3段階に分けて行われる。令和3年度の早い時期に始めるとしている第1段階の実験では、発行や流通といったCBDCの基本機能に関する検証を行う(1月19日付SankeiBiz)。

     これが第一段階となる。これがこの春から開始される。第1段階の実験を1年程度行った上で行われる第2段階では、保有金額に上限を設定できたり、通信障害といった環境下でも利用できたりするかなど、通貨に求められる機能を試す。第2段階の具体的な期間については明らかにしていない。第3段階では実際に民間事業者や消費者が参加して、実用に向け実験を行う計画となる。

     黒田総裁は、日本銀行として、現時点でCBDCを発行する計画はないとの考え方に変わりはないとしている。しかし、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくことが重要であると考えているとも指摘した。

     カンボジアの中央銀行は昨年10月に、中央銀行デジタル通貨システム「バコン」の運用を開始した。カリブ海の島国バハマでも本格的な運用が始まった。中国も昨年10月に、ハイテク都市の深センを皮切りにデジタル人民元の大規模な実証実験をスタートさせた。

     さらに中国は、中央銀行が発行するデジタル通貨をめぐり国境をまたぐ決済システムの研究を加速すると2月25日に日経新聞が報じた。

     デジタル通貨については、取引情報や個人情報の保護といった課題が存在する。それとともに、個人や企業の決済や取引を記録することも可能になり、脱税やマネーロンダリングを防止しやすい利点もある。
     日銀による中央銀行デジタル通貨は、日銀に個人が口座を設けてすべて直接管理する方式ではなく、既存の金融機関が個人との間でデータをやり取りし、金融機関と日銀でデータのやり取りをするなど二段階方式で行われるようである。  今後、実証実験を経て、それが活用される可能性はある。しかし、資金の流れが透明化されることを嫌がる人たちもいるのではなかろうか。

  • 日銀の資金循環統計より、12月末の日本国債の保有者。個人の金融資産は過去最高額に

     日銀は3月17日に資金循環統計(2020年10~12月期速報値)を発表した。これによると個人の金融資産は9月末時点で約1948兆円となり、過去最高となった。また、民間企業の金融資産も約1275兆円とこちらも過去最高となっていた。

     個人の金融資産の内訳は、現金・預金が前年比で4.8%増の約1056兆円となり、過去最高に。株式等は同0.7%増の約198兆円、投資信託は同5.1%増の約78兆円となっていた。

     この資金循環統計を基に国債(短期債除く)の保有者別の内訳を算出してみた。

     残高トップの日銀の国債保有残高は504兆2757億円、48.3%のシェアとなった。前期比(速報値)からは7兆2367億円もの増加となり、500兆円を超えた。残高2位の保険・年金基金は250兆898億円(24.0%)、6365億円増。残高3位は預金取扱機関(都銀や地銀など)で129兆7225億円(12.4%)、1兆2789億円増。残高4位が海外投資家で75兆385億円(7.2%)、913億円減。残高5位が公的年金の36兆2912億円(3.5%)、8471億円増。残高6位が家計の13兆4140億円(1.3%)、495億円減。その他が34兆2396億円(3.3%)、1兆7775億円減となっていた。

     2020年9月末に比べ国債(短期債除く)の残高は8兆809億円増の1043兆713億円となった。(こちらの国債残高は時価ベース)。

     9月末に比べて海外と個人が小幅減、その他も減少していたが、日銀を始め保険・年金、預金取扱機関、公的年金などは残高を増加させた。

     昨年7月からは第二次補正予算をうけて、国債発行額が大きく増額された。しかし、債券市場ではこれによって売られるようなことはなかった。景気の悪化や物価の低迷による金利の低下圧力もあるが、日銀の国債買い入れと長期金利コントロールも意識されたとみられる。ただし、10年債利回りはゼロ%が下値抵抗線となっていた。債券相場そのものは10月~12月にかけて方向感に乏しい展開となっていた。

     短期債を含めた国債全体の数字でみると9月末の残高は約1220兆円。このうち日銀が約545兆円で44.7%のシェアに。海外勢の残高は約163兆円と短期債を含めると国債全体の13.3%のシェアとなっていた。

  • 日銀は長期金利変動幅を小幅拡大かとの観測記事で債券は一時下落し、円高、株安に。
    なぜこのタイミングで?

    日本経済新聞(電子版)は、18日の12時に、「日銀は18日午後から19日まで開く金融政策決定会合で、金融緩和策の一段の長期化を見据えた政策修正を議論する。長期金利の誘導策は変動を認める幅を現状より若干広げ、プラスマイナス0.25%程度とする方向」と報じた。

     この記事はあくまで観測記事のようではあるが、日銀の意向を反映したものである可能性も高い。それというのも、2日間にわたる決定会合がまさに始まったばかりであり、決定会合期間中にこのような記事が出るのは極めて異例であるためである(過去になかったわけではないが)。

     もしこれが日銀側から出たものとして、何故、このタイミングなのか。すべては憶測にはなってしまうが、事前に日経新聞という市場に大きな影響力を持つ媒体を通じて、市場の反応をみたかったのかもしれない。

     この記事が出ると債券先物は151円25銭から150円85銭まで下げた。ただし、それでも40銭値幅に過ぎない。もちろん観測記事のため疑心暗鬼の売りであったこともあるが、プラスマイナス0.25%程度への拡大もそれほどサプライズではなかったようにもみえる。

     外為市場では、日本の長期金利の上昇を意識してか、ドル円は109円近くから108円60銭近くに下落した(円高になった)。しかし、米長期金利の居所を考えると日本の長期金利の0.25%程度までの上昇などたいしたことはなく、すぐに戻り109円近くに戻した。

     日経平均も一時3万円割れとなっていたが、こちらも下げ幅は限定的。

     もし市場動向を確認したかったのであれば、長期金利の誘導策をプラスマイナス0.25%程度としても問題はなさそう。たぶん0.30%程度でも問題はないと思われる。

     0.30%ではなく0.25%にしたのはどうしてなのか。黒田総裁と雨宮副総裁にやや意見に違いがみられたが、それはどうなったのか。

     いずれにしても明日の決定会合の結果を確認する必要がある。まさかとは思うが、イングランド銀行の元総裁のキング氏のように、総裁が反対票を投じるということは、コンセンサスを重視する日銀では起こらないと思うのだが。

     ちなみに長期金利の具体的レンジは決定会合で決めることはなく、変動幅のさらなる拡大もありうるといった表現とし、総裁会見で具体的なレンジを公表するというのが、前回のパターンであった。

  • 米長期金利の次の節目は1.9%近辺

     2020年3月に米10年債利回りは一時、0.31%まで低下した。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によるリセッション懸念に加え、原油先物価格が急落したことで、リスク回避の動きを強めたためである。

     その後、米10年債利回りは上げ下げし、8月に0.5%あたりまで低下したあと、じりじりと上昇基調に転じた。新型コロナウイルスのワクチン普及による景気回復への期待もあったが、米国株式市場がハイテク株などを主体に切り返してきたことから、リスク回避の反動のような動きとなって、米10年債利回りは反発したのである。

     米10年債利回りは1%あたりが節目となっていたが、2021年に入り、その1%を突破。米大統領選挙でバイデン氏が勝利し、民主党が大統領と上下両院の過半数を握るブルーウエーブが実現。これにより、大型の追加経済対策が実施されるとの観測により、米国の景気回復期待と物価の上昇観測、さらに米国債の増発も意識されての、米10年債利回りの上昇となった。

     米10年債利回りは1.2%が次の節目となっていたが、2月12日に1.21%まで上昇したことで、1.2%の節目を抜けてきた。さらに次の節目は、チャート上は1.6%あたりとなった。

     2月25日に米10年債利回りは1.61%に上昇し、次の節目に到達した。ここでいったん上昇は小休止となった。米10年債利回りは3月2日に1.4%割れとなったあと、再び切り返し、1.6%を前にして足踏み状態となっていた。

     米下院は3月10日に、1.9兆ドル規模の追加経済対策を可決した。12日にバイデン大統領が法案に署名し、成立した。

     これによる個人消費の押し上げを通じて、景気回復を後押しすることになる。そして、バイデン大統領は11日、5月1日までに成人の希望者全員がワクチンを接種できる体制を整えると表明した。ワクチン普及が加速し、経済の正常化が進むとの見方も強まった。

     1.9兆ドル規模の追加経済対策の具体的な財源については、将来の富裕層などへの増税などで賄われるとの見方もあるが、当面は国債増発で賄われることが予想される。これは米国債の需給悪化要因ともなる可能性があるとともに、政府債務の悪化も懸念されるところとなる。

     このタイミングで12日の米10年債利回りが一時1.64%に上昇したのである。チャート上、この1.6%を抜けると、次の節目は2019年12月あたりの水準である1.9%近辺となる。

     米労働省が12日に発表した2月の卸売物価指数は前月比0.5%上昇となった。前年同月比では2.8%上昇し、2018年10月以来、2年4か月ぶりの大幅な伸びとなった。労働市場のスラック(需給の緩み)が大きいことを踏まえると、企業がコスト上昇を消費者に転嫁することは難しいとの見方はある。

     しかし、原油価格の動向など次第では、消費者物価指数も上昇してくる可能性は十分にありうる。それが米長期金利に反映されると1.9%あたりまで上昇する可能性もある。

     このあたりFRBはどのようにみているのか。16日、17日のFOMCの動向にも念の為注意しておきたい。

  • 日銀の点検の目的のひとつは国債市場の機能回復か

    日銀の雨宮副総裁は8日に読売新聞のオンラインセミナーで異例とも言うべき講演を行った。その目的には18日、19日の金融政策決定会合での点検の説明があった。

     5日の衆議院の財務金融委員会に呼ばれた黒田日銀総裁が、長期金利の変動幅について「『点検』の中で当然、議論になると思うが、私自身は、変動の幅を大きく拡大することが必要とも適当とも思っていない」と述べた。

     これを受けて債券相場は急反発するなどしており、日銀の点検による長期金利の変動幅の可能性を市場はかなり意識していたことをうかがわせる。

      8日の雨宮副総裁のオンラインセミナー後の質疑応答では、5日の黒田総裁の発言について「(長期金利の変動幅拡大の是非について)点検の中で議論になると前置きした上で、自身の考え方として発言したもの」と指摘した。黒田総裁は個人的にはレンジ拡大には反対のようだが、雨宮副総裁はその必要性をセミナーで説いていた。

     念の為、雨宮副総裁のセミナーは5日の黒田総裁の発言前には告知されており、総裁発言を受けて急遽開催されたものではない。

     8日の雨宮副総裁の講演内容を確認すると、日銀は長期金利が動きやすい環境作りを意識していることがうかがえる。

     雨宮副総裁は講演で、長短金利をきわめて低位で安定的に推移させる効果に必然的に伴う副作用として、イールドカーブ・コントロールは国債市場の機能度に影響を及ぼすことを指摘していた。そして、実際、イールドカーブ・コントロールの導入後、多くの指標が、国債市場の機能度が低下したことを示していると指摘した。

     コロナ禍にあって大量の国債が増発された。日銀は大量の国債を買い入れていることもあり、国債の利回りは低位に保たれている。しかし、パンデミックはいずれ収まる。景気の回復とともに物価も上昇するようなことがあれば、それに応じた金利形成が行わなければならない。それが無理矢理抑えられるとなれば、市場機能がさらに失われてしまう。

     景気や物価の正常化が起きれば日銀が大量の国債買い入れもいずれ縮小しなければならなくなる。そのときに国債市場の機能が失われてしまうと大量に発行される国債が円滑に消化されなくなるリスクも出てくる。

     今回の日銀はそこまで踏まえたものかはわからないが、国債市場の機能を低下させないための措置を講ずることが予想される。そのひとつが長期金利レンジの拡大の示唆となる可能性がある。

  • カナダ銀行は早期利上げを示唆、それに対しECBは長期金利上昇を抑制、日銀は緩和余地を拡大?

    カナダ銀行(中央銀行)のシェンブリ副総裁は11日、国民が新型コロナウイルス流行期間中に増やした貯蓄を使って消費し始めれば、経済成長に「大きく影響」する可能性があると述べた。金利上昇ペースが加速する可能性があることを示唆した(12日付ロイター)。

     カナダ銀行はこれまで、経済のスラック(需給の緩み)が吸収されるまで金利を据え置く姿勢を示していてが、シェンブリ副総裁は4月にこれらの見通しを更新するとした。

     このカナダ中央銀行の動きは注意しておく必要があると思う。カナダ銀行は意外にフットワークが軽く、状況に応じて金融政策を変更させる柔軟性を持っているためである。

     これに対して、11日のECB理事会では、今後3カ月間の資産購入をこれまでより「かなり速いペースで実施する」と決めて発表した。欧州では米金利上昇を追いかけるように長期金利が上昇していた。新型コロナウイルスの感染拡大リスクが消えず、経済・物価の回復が力強さを欠くなか、金利だけが上昇する事態を避ける狙いがあるそうである(12日付ロイター)。

     金利だけが上昇する事態というが、長期金利は本来市場で形成されるものであり、先を読んで動くものである。何故、長期金利が上がってきたのか、その理由を踏まえてから行動すべきと思うが、とにかく勝手に上昇するのは許さんと言わんばかりである。

     そして、日銀は18、19日の金融政策決定会合で、上場投資信託(ETF)の購入について「年6兆円ペース」としている購入原則を削除する方向だと、12日付の毎日新聞朝刊が情報源を示さず報じた。

     すでに日銀は国債買い入れの額について「無制限」にするという言い方で「80兆円枠」を外していたが、今回のETFの購入についても「柔軟」な買入のためのものと思われる。

     しかし、今回の日銀の点検では、長短金利の引き下げが経済状況が悪化した際のツールの1つであると明確に位置付けるとみられ、長短金利に引き下げ余地があることを示すため、当座預金の三層構造の見直しを検討する見通しだとも報じられている。

     現状、日銀が追加緩和する必要性には乏しい。むしろカナダ銀行のように、今後の景気の過熱や物価の上昇を意識すべきと思う。そのような最中にどうして、利下げ余地を作る必要性があるというのであろうか。

     そうではなく景気や物価の情勢応じて、長期金利が自由に動くことを認めるべきではなかろうか。勝手に動いては困るから中銀が抑えようとしたり、コントロールしたりしているが、本来、長期金利は自由に動くからこそ、その値動きが何らかのリスクを示すなどの指標となる役割ともなっている。その機能を奪ってしまって良いものであろうか。

  • 物価上昇の足音、長期金利の上昇の背景にも

     2月19日に発表された1月の全国消費者物価指数(除く生鮮)は前年同月比でマイナス0.6%となっていた。2月26日に発表された東京都区部の2月の全国消費者物価指数(除く生鮮)は前年同月比でマイナス0.3%となっていた。

     このようにマイナスの状態に消費者物価指数があって、インフレを気にする必要は果たしてあるのかという疑問もあろう。

     米国の消費者物価指数も1%台半ばあたりとなっている。しかし、向こう5年間のインフレ期待を示す指数は4日に一時2.5%を超え2008年以来の水準を付けた。

     この期待インフレ率の上昇、つまり物価は先行き上昇するであろうとの見方も米長期金利の押し上げ要因となっている。

     米債だけでなくこれは欧州の国債利回りも同様であり、日本国債の利回りも欧米の国債利回りの上昇を受けて、上昇基調となっている。

     今後、物価は上昇するとの債券市場参加者の見方はどこから来ているのか。物価の先行きの見通しは難しく、期待インフレ率そのものも現時点での観測に過ぎない面もある。

     しかし、今回の物価上昇観測にはいくつかの要因があることも確かである。

     最も重要なのはこれまで物価が抑えられた要因が新型コロナウイルスの感染拡大であったこと。しかし、ワクチン接種などでいずれ感染拡大にブレーキが掛かり、経済が正常化するであろうこともたしかであり、その際に物価も正常化に向かうであろうことが予想される。

     すぐに感染拡大にブレーキが掛かるという見方はできないまでも、経済が少しずつ回復している兆候はある。それが銀や銅などの一次産品の価格にも現れている。原油価格も同様であり、WTIは60ドル台を回復し、5日には一時66.40ドルと、2019年4月以、2年ぶりの高値を付けている。

     産業の米というべき半導体も不足している。そして食料品の価格も世界的には上昇しつつある。今後は物価が次第に上昇してくるであろうことは予想できるのではなかろうか。

     それが原油先物などを通じてオーバーシュートする可能性もある。5日の黒田日銀総裁の発言などをみても、中央銀行は簡単には方向転回はしないであろう。政府の大規模な財政政策も実施されている。先行きが開ければ個人は蓄えていた貯蓄を消費に向ける可能性もある。

     上記のグラフにもあるように、日本の消費者物価指数が前回2%を超えたのは2008年7月から9月にかけてであった。この際には中国など新興国経済成長をみての仕掛け的な動きが原油先物市場に入り、原油価格が100ドルを超えたことが要因であった。

     しかし、このときの日本の長期金利は1%台にあり、比較的安定していた。現在の0.1%水準に比べれば高いが、今の水準が異常なのである。この際に物価が2%を超えたからといって日銀が金融引き締めに動くという観測はなかった。むしろ原油先物はそんなに買い上げられて何を考えているのだとの印象を持たれていた。すでにサブプライム問題が金融市場を襲い、2008年9月にはリーマン・ショックが起きた。中央銀行は危機に対し、緩和策で対応することとなり、長期金利はむしろ下げてきた。

     今回の原油先物の上昇はこのときとは様相が異なる点にも注意したい。つまり、原油先物は何を考えて上がっているのか、というより、先を読んで仕掛けているなとのイメージとなっている。そしてもし経済が正常化され、物価に上昇圧力が加われば、いずれ中央銀行の金融政策も正常化される必要がある。相場は常に先を見て動く。

     米長期金利の上昇は円安要因ともなっていることにも注意したい。原油価格の上昇と円安によって、日本の物価には上昇圧力が加わることになる。

     すでに原油価格は前年同月に比べて現在のほうが高くなっており、それだけでも物価には上昇圧力となる。ここにきてガソリン価格が上昇しているのもその現れである。また、緊急事態宣言によりGoToトラベルによる一時的な影響もひとまずなくなる。

     今後は日本の物価にも上昇圧力が加わり、原油価格や円安などの動向次第では、無理と思われた日銀の物価目標が見えてくる可能性すらありうる。それですぐに日銀が政策転換することは考えづらいが、少なくとも日本の長期金利にも上昇圧力が加わりやすくなろう。それを無理に押し止める必要があるか、それで本当良いのかも問われよう。

  • 日銀の株(出資証券)がストップ高となった背景、これもバブルを示すものか

    日本銀行は株式会社ではないものの出資証券を発行している。日銀の資本金は1億円となっており、その55%が政府から、45%が民間からの出資(日本銀行法第8条)となっている。現在の日銀は、いわば半官半民の存在(認可法人)となっている。だから日銀は政府の一部機関であり、政府債務と日銀保有の国債は相殺できるという見方はおかしい。

     今回はそれはさておいて、東京証券取引所に上場する日銀の出資証券の価格が3月1日にストップ高となる3万3000円になったことが話題となっていた。2日も上昇し、2018年10月以来の高値である4万円を付けた。

     日銀の黒田総裁は1月27日の参院予算委員会で、現在の株価水準から試算した保有ETF(上場投資信託)の含み益が12兆~13兆円であることを明らかにしていた。今年度上期には株価上昇によるこのETF運用益の増加から、最終利益にあたる当期剰余金が9288億円と過去最高水準を記録するなど空前の好決算となっていた。

     好業績が好感されて株価が上昇したとの見方もできなくはないが、日銀の業務目的は利益をあげることではない。日銀券の価値を安定させることが日銀の主たる業務の目的となっている。そのためにどうしてETFを大量に買わなければならないのかという議論もさておき、注意すべきは日銀株(出資証券)にも投機的な資金が流入しているとの点であろう。

     日銀の株(出資証券)が大きく上昇したのは今回が初めてではない。日銀株は1984年の8月に付けた上場来安値18000円から1988年12月の上場来高値75万5000円まで約41倍に上昇していた。

     いうまでもなく1985年のプラザ合意などを起点に発生していたいわゆるバブルによって日銀の株価も吹き上げられていたのである。ただし、それは崩壊前の1989年末までは続かず、その1年前に終了していた。

     今回も同様に個人などの資金が日銀の出資証券に向かうなど、マネーゲームの様相ともいえよう。これが何を意味するのかは言うまでもないと思う。ちなみにスイスの中央銀行のスイス国立銀行の株も スイス証券取引所で大きく上昇していたそうである。これも個人投資家を中心とした株式市場の熱狂を反映しているともいえよう。

  • 長期金利は上がり過ぎなのか。正常化を前提とすれば、上がらない理由はない

     FRBのブレイナード理事は、経済成長や消費の見通しは改善し始めているものの、大規模債券購入のペース減速に向けて米金融当局が示した条件を満たすには、「しばらく」時間がかかるとの見解を示した。また、最近の債券市場の不安定な動きによって、さらにずれ込む可能性があると指摘した(3日付ブルームバーグ)。

     市場参加者は先を読んで動く。それに対して中央銀行当局者は足下の経済データなどを基に慎重に判断を行う。足下の経済は改善しはじめているものの、まだおぼつかない。物価の伸びも抑制されている。それなのに長期金利が大きく跳ね上がると、せっかくの回復の芽を摘んでしまうとの見方にもみえる。

     これに対して債券市場では、コロナ後の正常化を睨んだ動きを見せ始めている。ワクチン接種によって感染拡大が抑制されれば、経済や物価が正常化する。そうであれば、米長期金利のコロナ禍以前水準である2%あたりまで上昇してもおかしくはない。そういった判断もあり、節目のひとつとなった1.6%まで一気に上昇してきたとみられる。

     リッチモンド地区連銀のトーマス・バーキン総裁は、今年は新型コロナウイルス流行からの米経済の回復が続くことを引き続き楽観しており、米国債利回りの上昇はさほど懸念していないとの考えを示したが、これはマーケットに近い見方であったと思われる。

     しかし、FRBが長期金利の上昇を容認かと認識されるとさらに長期金利の上昇が加速される恐れもあり、ブレイナード理事はブレーキを掛けようとした。

     たしかに景気や物価が正常化に向けて改善の兆候がより示されれば、それに応じた金利上昇はFRBも容認しよう。しかし、それはまだ早いとの認識でいると思われる。

     しかし、足下だけでなく当然、予測も重要となる。今回のようなパンデミック下における金融市場の動向など現実に経験した人はなく、中央銀行の関係者を含めて、先々が読み切れないことも確かであろう。

     パンデミックはいずれ収束することは歴史が示している。そうして経済もいずれ正常化しよう。その際に中央銀行は機敏に動けるのか。たぶん動けない。特に引き締めには躊躇しよう。これは日本のバブル時もひとつの事例となるかもしれない。

     さらに大規模な政府の財政政策が過度に効く可能性はないのか。物価も上昇してくることが予想される。その大胆な政府の政策の原資が国債発行であれば、国債の需給バランスとともに政府債務の膨張、財政ファイナンスに近い状況に対して長期金利はどう判断してくるのか。正常化を前提にそこまで考えると、上がらない理由はないようにも思えてくるのだが。

  • 長期金利の上昇でFRBや日銀はどう動くのか

    米10年債利回り(米長期金利)は節目とされた1.6%を上回った。つまりここを突破するということは米長期金利もコロナ禍以前の水準に戻るということにもなる。

     米国株式市場は主要三指数が一時、過去最高値を更新していたが、米国株式市場の上昇の背景にあったのは非常時対応の中央銀行の金融緩和策と政府の財政政策によるものである。大型の経済対策による景気回復期待もあった。

     新型コロナウイルスのワクチン接種の開始によって感染拡大にブレーキが掛かる可能性が出てきており、経済の正常化が現実味を帯びてきた。これも米長期金利がコロナ禍以前に戻る理由ともなろう。

     米長期金利の上昇には物価上昇期待も背景にある。原油先物は上昇基調となってきており、現状、WTI先物は60ドル台だが、チャート上からは80ドルや100ドルあたりに上昇してもおかしくない。ただし、いくら中国や米国などを中心に原油需要が回復しつつあるといっても、WTI先物を80ドルあたりにまで引き上げる要因にはなりづらい。いわゆる投機資金が入ることで、一時的に引き上げられる可能性があるとみている。

     日本や米国は原油価格の上昇は物価に直接影響を与えることもあり、景気の回復も加わり、FRBの物価目標が達成される可能性が出てきている。ただし、FRBは物価目標を超えてもそう簡単に利下げはしないと宣言してしまった以上、利上げは遅れる可能性がある。しかし、その前にテーパリングを行ってくる可能性はありうる。

     FRBとしては米長期金利がコロナ禍以前の水準にまで戻ることは許容範囲ではなかろうか。そうなると米長期金利が2%を超えたとしてもおかしくはない。

     日銀による3月の点検の意図としては現在の超緩和策を継続させるためのものであったかもしれない。しかし、今後の世界経済や物価の動向、米長期金利の動向などによっては、点検そのものの意味合いに変化が出てくる可能性もある。つまりそれは経済の正常化にも備えるものというようなものになったとしてもおかしくはない。長期金利のレンジ拡大も選択肢に入っているとされているが、現実に日本の10年債利回りが0.2%を上回ってくる可能性もありうるか。

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