各銘柄の業績や動向を当サービスが募集したユーザーが分析した記事を表示しています。詳細はこちら 純利益商社トップ見込みの伊藤忠商事 バフェットをも唸らせた「三方よし」の経営に迫る 1 4 2025/06/23 08:52 rss ★ ツイート 1 Ko-haku 6月23日 08:52 伊藤忠商事の快進撃が止まらない。2025年3月期の当期純利益は8803億円となり、2026年3月期も9000億円と2期連続で過去最高益を見込んでいる。近江商人をルーツに持つ伊藤忠商事は、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」を経営理念として掲げている。世界一の投資家ウォーレン・バフェットが投資したことでも注目される伊藤忠商事の強みとは。 ■決算から見えてくる伊藤忠商事の特徴 1)「非資源分野」に強み 「デサント」などの新規投資先が利益に貢献し、2026年3月期の純利益は前期比2.2%増の9000億円と、5年ぶりに総合商社トップとなる見込みである。ポイントはその利益のおよそ8割を生み出す「非資源分野」である。非資源分野は比較的景気に左右されにくく、顧客数も多いので安定した収益を生み出すことができる。資源価格の下落などにより、資源分野に強みを持つ三井物産や三菱商事は減益予想となっており、伊藤忠商事の非資源分野を基軸とする事業ポートフォリオが効果的に機能した結果であると言える。 2)投資なくして成長なし ROE(自己資本利益率)も15.7%と、三井物産や三菱商事などの競合他社と比較すると大きく上回っている。「投資なくして成長なし」の理念のもと、成長投資のための積極的な借り入れにより、自己資本比率を38%に抑え、効率的に利益を上げている。今後も更なる事業領域の拡大や経営基盤の強化を行い、長期的な利益成長を実現していく見込みである。 ■バフェットは伊藤忠商事の何を評価したのか 1)バークシャーと伊藤忠商事の共通点 このように着実に利益を上げて成長を続ける伊藤忠商事であるが、これまで日本株に投資してこなかったバフェットを惹きつけた理由は何だろうか。バフェット率いる投資会社バークシャー・ハサウェイと伊藤忠商事のような総合商社には共通点がある。それは、繊維や食料、住生活やエネルギーなど、様々な事業に投資する複合企業(コングロマリット)であるという点だ。しかし、それゆえ各事業のシナジー効果を適切に評価することが難しく、長年、日本の商社株はPBR(株価純資産倍率)が1倍を下回るなど割安のまま放置されてきた(コングロマリット・ディスカウント)。バフェットはそこに目をつけたのである。「自分が分からないものには投資しない」というバフェットであるが、伊藤忠商事のビジネスモデルはバークシャーと類似しており理解しやすかったのだろう。 2)「三方よし」の理念 ビジネスにおける「人柄」の大切さ バフェットは割安感の強かった日本の五大商社に大規模な投資を行ったが、その中でも最初に伊藤忠商事の経営陣と面会しており、彼の関心の高さがうかがえる。海外での幅広い事業ネットワークや、自社株買い・高配当などの積極的な株主還元を評価したことは間違いないが、それでも直接経営陣と面会したのは、会社の数値や業績だけでなく、彼らの人柄を見ようとしたのではないだろうか。過去にバフェットは「扱いにくい人間と取引すべきではない。」「邪悪な人間と組んでうまくいったためしはない。」といった言葉を残しており、ビジネスにおける人柄の重要性を強調している。買い手の喜びが売り手の利益となり、ひいては社会全体に良い影響を与えるという「三方よし」の伊藤忠商事の企業理念が、バフェットの「人柄重視」の考え方と合致したのかもしれない。経営陣のみならず、従業員一人ひとりが商人としての「個の力」を最大限に発揮している伊藤忠商事の豊かな人的資源を評価したのだろう。 ■まとめ 近江商人による麻布の行商から始まった伊藤忠商事は、今や繊維産業だけでなく、食料や住生活、エネルギーと多分野にわたるビジネスを世界規模で展開する大企業となった。バフェットが「この先50年売却しない」と超長期投資を明言した伊藤忠商事は、今後も世界中のマネーを呼び込み続けるだろう。 返信する 投資の参考になりましたか? はい84 開く お気に入りユーザーに登録する この記事にコメントする 読み込みエラーが発生しました 再読み込み お客様の環境ではJavascriptが有効になっていないため、次ページを読み込むことができません。 次ページ以降のコメントを参照したい場合は、Javascriptを有効にしてください。
伊藤忠商事の快進撃が止まらない。2025年3月期の当期純利益は8803億円となり、2026年3月期も9000億円と2期連続で過去最高益を見込んでいる。近江商人をルーツに持つ伊藤忠商事は、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」を経営理念として掲げている。世界一の投資家ウォーレン・バフェットが投資したことでも注目される伊藤忠商事の強みとは。
■決算から見えてくる伊藤忠商事の特徴
1)「非資源分野」に強み
「デサント」などの新規投資先が利益に貢献し、2026年3月期の純利益は前期比2.2%増の9000億円と、5年ぶりに総合商社トップとなる見込みである。ポイントはその利益のおよそ8割を生み出す「非資源分野」である。非資源分野は比較的景気に左右されにくく、顧客数も多いので安定した収益を生み出すことができる。資源価格の下落などにより、資源分野に強みを持つ三井物産や三菱商事は減益予想となっており、伊藤忠商事の非資源分野を基軸とする事業ポートフォリオが効果的に機能した結果であると言える。
2)投資なくして成長なし
ROE(自己資本利益率)も15.7%と、三井物産や三菱商事などの競合他社と比較すると大きく上回っている。「投資なくして成長なし」の理念のもと、成長投資のための積極的な借り入れにより、自己資本比率を38%に抑え、効率的に利益を上げている。今後も更なる事業領域の拡大や経営基盤の強化を行い、長期的な利益成長を実現していく見込みである。
■バフェットは伊藤忠商事の何を評価したのか
1)バークシャーと伊藤忠商事の共通点
このように着実に利益を上げて成長を続ける伊藤忠商事であるが、これまで日本株に投資してこなかったバフェットを惹きつけた理由は何だろうか。バフェット率いる投資会社バークシャー・ハサウェイと伊藤忠商事のような総合商社には共通点がある。それは、繊維や食料、住生活やエネルギーなど、様々な事業に投資する複合企業(コングロマリット)であるという点だ。しかし、それゆえ各事業のシナジー効果を適切に評価することが難しく、長年、日本の商社株はPBR(株価純資産倍率)が1倍を下回るなど割安のまま放置されてきた(コングロマリット・ディスカウント)。バフェットはそこに目をつけたのである。「自分が分からないものには投資しない」というバフェットであるが、伊藤忠商事のビジネスモデルはバークシャーと類似しており理解しやすかったのだろう。
2)「三方よし」の理念 ビジネスにおける「人柄」の大切さ
バフェットは割安感の強かった日本の五大商社に大規模な投資を行ったが、その中でも最初に伊藤忠商事の経営陣と面会しており、彼の関心の高さがうかがえる。海外での幅広い事業ネットワークや、自社株買い・高配当などの積極的な株主還元を評価したことは間違いないが、それでも直接経営陣と面会したのは、会社の数値や業績だけでなく、彼らの人柄を見ようとしたのではないだろうか。過去にバフェットは「扱いにくい人間と取引すべきではない。」「邪悪な人間と組んでうまくいったためしはない。」といった言葉を残しており、ビジネスにおける人柄の重要性を強調している。買い手の喜びが売り手の利益となり、ひいては社会全体に良い影響を与えるという「三方よし」の伊藤忠商事の企業理念が、バフェットの「人柄重視」の考え方と合致したのかもしれない。経営陣のみならず、従業員一人ひとりが商人としての「個の力」を最大限に発揮している伊藤忠商事の豊かな人的資源を評価したのだろう。
■まとめ
近江商人による麻布の行商から始まった伊藤忠商事は、今や繊維産業だけでなく、食料や住生活、エネルギーと多分野にわたるビジネスを世界規模で展開する大企業となった。バフェットが「この先50年売却しない」と超長期投資を明言した伊藤忠商事は、今後も世界中のマネーを呼び込み続けるだろう。
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