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「中国が台湾に武力侵攻し併合すれば、中国が半導体チップで世界をリードする生産国になる」−。共和党トム・コットン上院議員は台湾問題が米中ハイテク覇権抗争の帰趨を制すと警戒する。

新型コロナウイルス「武漢起源説」に加え、もう一つの米中「新冷戦」の危機的かつ深刻な米中対立に、台湾を巡る半導体「産業囲い込み」覇権抗争と「一つの中国」を巡る地政学リスクがある。

既に、米外交問題評議会(CFR)は1月公表の報告書「Preventive Priority Survey」において、米国の国益に対する危険度は北朝鮮の核開発問題に続く2番目の脅威であり、半導体を巡る「産業囲い込み」覇権抗争と「一つの中国」等の地政学的な台湾を巡る米中間の深刻な危機を初めて「最高レベル」の紛争に指定した。

ボストンコンサルティングによれば、2020年の半導体の生産能力は台湾と韓国が世界の40%強のシェアを握り、うち最大の半導体生産国である台湾が全体の22%を占める。特に、回路線幅7ナノメートル以下の先端半導体の受託生産のほぼ全てを台湾TSMCと韓国サムスン電子両社が占める。

半導体生産シェアは2000年に24%だった欧州は20年に10%割れ、米国も1割程度にとどまり急速に存在感を喪失、そこに台湾を巡る「産業囲い込み」覇権抗争の激化が米中の深刻な危機となって顕在化しつつある。

ブルトン欧州委員(域内市場担当)は「数年内に地政学的な意味を含め半導体分野で緊張が高まる」と予測する等、既にEUは域内生産立て直しの支柱に有力半導体メーカーの工場誘致を進め、「EUは台湾TSMCと韓国サムスン電子と接触」(2月ブルームバーグ)−

米国も半導体の海外依存見直しに着手、バイデン大統領は2月24日、「(中国等を念頭に)国益や価値を共有しない外国に依存する訳にいかない」と半導体サプライチェーン(供給網)を見直す大統領令に署名した。

米制裁を受けて中国も半導体の自給体制の構築を急ぎつつあり、既にグローバルな半導体を巡る米中「産業囲い込み」覇権抗争は熾烈化の一途にある。

渦中の台湾は既に米国の支援を受けつつ「脱中国」を進め、台湾の鴻海精密工業は初めてインドで米アップル最新機種「iPhone12」の生産に乗り出し、中国生産の7-10%程度を移管する等、「世界の工場」中国依存の生産体制を見直しつつある。

米アップルは現在、iPhoneの生産を鴻海の他、ペガトロン(和碩聯合科技)、 ウィストロン (緯創資通)の台湾3社に全量委託し、年間約2億台のうち最多の約6割を鴻海が請け負い、年間1億数千万台を生産する。

これまでは、その大半を中国で生産してきたが、人件費高騰や米中対立激化の影響を避ける上で「脱中国」の動きを急ぎつつある。とりわけ、インドに狙いを定め、米中対立の激化した20年からインド政府も外資企業の「脱中国」生産の受け皿の役割を担うべく環境整備を急いでいる。

特に、スマホでは有力外資に売上増加分4-6%の補助金を5年間支払う優遇策を設け、20年夏にはペガトロンがインド進出を決め、ウィストロンもインドでの生産拡大を打ち出した。

さらに、鴻海は21年からアップル端末「iPad」を初めて中国以外のベトナムで生産、ノートPC「MacBook(マックブック)」もベトナムで生産開始する等、さらなる「脱中国」生産はインドとベトナムの2カ国中心に加速するとされる。