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QDレーザー 6613の掲示板

[ 研究開発の動向 ]
集積フォトニクスの主要ターゲットの 1 つが、光配線・光インターコネクトであり、将来的にはチップ内へ の導入も期待されている。この光配線の実現に向けた研究開発は国内外で継続的に進められており、シリコ ンフォトニクス技術を用いた多チャンネル光送受信機や光モジュールなど、各国で多くの取り組みが進んでい る。また、最近の動向として、ニューラルネットワークやニューロモルフィックコンピューティングなどの新た なコンピューティング技術への応用をめざした研究が進められている。集積フォトニクス技術で実現されたこ れらの専用プロセッサ(フォトニックアクセラレータ)に関連する研究が欧米を中心に盛り上がっている。国 内でも JST-CREST「新たな光機能や光物性の発現・利活用を基軸とする次世代フォトニクスの基盤技術」で 光パスゲートコンピューティングなどの研究が進んでいる。量子情報の分野でも集積フォトニクスの活用が進 んでいる。シリコン光回路を用いた光量子状態の生成や量子テレポーテーションの実現など多くの進展がみら れ、化合物半導体量子ドットやダイヤモンド色中心を用いた高性能単一光子源や超伝導体単一光子検出器を シリコン /SiN の光回路に集積して量子集積光回路を実現しようとする試みがある。
集積フォトニクスは情報処理分野以外への応用も広がりをみせている。自動運転における測距・センサ技術 として重要なLiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)につ いては、大規模光集積回路の実現が可能なシリコンフォトニクスを活用した非機械式ビームスキャニングによ る高精度・小型化・低コスト化の実現が期待されている。ここでは、比較的高パワーなレーザダイオードが 必要であるが、人間の目に損傷を与えないアイセーフの観点から、従来の通信波長帯で使用されていた近赤 外あるいは中赤外領域の光が適している。集積フォトニクスを活用したオンチップ光コムも注目を集めつつあ り、計測や分光のほかマイクロ波フォトニクスへの応用に関する研究が多く報告されている。さらに、オンチッ プ加速器やオンチップ光ジャイロスコープ、光集積回路を用いた超解像イメージングなど、欧米を中心に集積 フォトニクスの新たな応用研究も進んでいる。
超小型化と低消費エネルギー化をめざして、さまざまなナノフォトニクス技術がデバイスに応用され始めて いる。発光デバイスとしては、ミクロンスケールまたはそれ以下の超小型のレーザがさまざまなシステムで実 現されている。フォトニック結晶ナノ共振器構造を用いたレーザでは、極低しきい値での室温連続電流注入発 振が達成されている。受光器としては、フォトニック結晶をベースとしたさまざまな超小型受光器が研究され ており、プラズモニクスによる光アンテナ効果を利用した小型化も図られている。光変調器、スイッチ関連で は、シリコンフォトニクスを中心にさまざまな電気光学変調器が開発されているが、近年プラズモニクス構造 をベースとして非線形ポリマーを組み合わせた素子が開発され、性能が飛躍的に向上しつつある。光メモリと しては、微小共振器を用いた双安定レーザ型が欧州で研究され、日本ではフォトニック結晶ナノ共振器を用い た光非線形双安定スイッチ型が研究されている。
シリコンフォトニクスを中心に発展してきた集積フォトニクスの更なる高機能化・高性能化を実現するため、 各種光素子をそれぞれに適した材料で実現し集積化する異種材料集積(ハイブリッド集積)技術への注目・ 期待がこれまで以上に高まっている。基板貼り合わせ技術や転写プリント法などの新たな集積化技術、シリコン基板上への直接成長技術など、1 つのチップ上へのハイブリット集積技術が大きく進展している。また、個々 のチップを集積化する実装技術においても光ワイヤリングと呼ばれる手法などで進展がみられる。さらに、強 誘電体を含むさまざまな材料のシリコン基板へのハイブリッド集積とその光機能実証が報告されるなど、集積フォトニクスの可能性が広がりつつある。