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QDレーザー 6613の掲示板

( 5 )科学技術的課題
当面、シリコンフォトニクスにとってもっとも重要な適用領域は光インターコネクトであり、この領域で重要 な主な指標は、高帯域密度(単位例:Tbps/cm2、Tbps/cm )、低消費電力(単位例:mW/Gbps、pJ/ bit )、低コスト(単位例:ドル /Gbps )の 3 つである。高帯域密度化のためには、高速化と高密度化が必 要であり、前者は前記の400 Gbps実現に向けた取り組みが行われているが、後者は特に光トランシーバに 接続する光ファイバのピッチによって制限されていることが多く、この部分の研究開発を加速する必要がある。 消費電力は主にLSIと光変調器/受光器間の電気配線の静電容量と電圧振幅で決まるため、低消費電力化 の鍵は、この電気配線を短縮する実装構造・方法を電子デバイスの実装構造・方法と整合させることにある。 低コスト化のためには、シリコンフォトニクス製品のエコシステムを既存のエレクトロニクスのエコシステムに 整合させる必要がある。前述の米国のAIM Photonicsは、これをめざした動きである。
ナノフォトニクス分野全体でみると、引き続き新奇な現象や従来の常識を打ち破るような特性が達成され続 けており、アカデミックな成果は出続けていくものと思われる。一方、ナノフォトニクスの根幹を支えるナノ加 工技術に関しては、依然、研究室レベルの技術に頼るところが多い。今後は大規模集積化と大量生産が可能 なナノフォトニクス作製技術の開発が重要なポイントになる。シリコンフォトニクスのなかにどれほどナノフォ トニクスに関連した作製技術を導入できるか、または、既存のシリコンフォトニクス技術で作製可能なナノフォ トニクス構造の範囲を広げていくかが鍵となると思われる。
集積フォトニクスでは、高性能光素子を実現する物理と高度な加工・プロセス技術、それらの特性を劣化 させることなく大規模集積化する技術が必要である。単体素子で高性能な素子も集積化には適さないことも 少なくない。デバイス開発においても性能の追求とともに集積化を意識した研究開発が今後重要になってくる。 集積化技術においては、プロセス整合性やスループット、更には歩留まりやコストも考慮して、個々のデバイ ス性能を最大限に引き出す技術の開発が求められる。特に光子 1 つひとつを扱う量子集積光回路では、個々 のデバイスに極限的性能が求められるため、古典光を用いる集積フォトニクス以上に高度な技術開発や新た な発想が求められることが予想される。また、一般に集積化技術は既存デバイスに対応して技術開発が行わ れるが、集積フォトニクスのパラダイムシフトをもたらしうるデバイスや材料の革新に対して柔軟に対応できる 手法の開発も期待される。その観点から、研究開発が活発となっているハイブリッド集積技術の更なる高度 化に対する期待は大きい。一方、量子応用を含む集積光回路の一層の高機能化・高性能化をめざし、今後 はナノフォトニクスデバイスの導入も進むことが予想される。そのため、シリコンフォトニクス作製技術を含め 加工技術の一層の微細化・高精度化も重要になると考えられる。