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  • 2022/01/30 09:45
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掲示板のコメントはすべて投稿者の個人的な判断を表すものであり、
当社が投資の勧誘を目的としているものではありません。

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    ガス代の上限を設定する
    ガス代を節約するもう1つの方法は、取引にガス代の上限を設定する方法だ。これは、イーサリアムブロックチェーンにX gweiを合計のガス代として送ることで、支払う上限はX gweiであると伝えることだ。取引が完了すると、実際に必要となったガス代の合計との差分が、イーサリアムネットワークから返金される。

    ガス代の上限を設定することは、ガス代の節約に役立つだけでなく、取引に対して想定以上に支払うことはないという安心感も与えてくれる。しかし、ガスリミットの設定と同様に、取引に必要なガス代よりもガス代の上限を低く設定してしまうと、支払ったガス代を失い、取引が差し戻されることになるので注意が必要だ。

    レイヤー2スケーリングソリューション
    最後に、イーサリアムの「レイヤー2スケーリングソリューション」を使ってイーサリアムブロックチェーンとやり取りすることでも、ガス代を節約できる。スケーリングツールとは、取引スピードを上げ、1秒当たりに処理できる取引数を上げることを目的としている。アービトラム(Arbitrum)、ループリング(Loopring)、dYdXなどが人気だ。

    レイヤー2スケーリングソリューションはオフチェーンである。つまり、イーサリアムブロックチェーンとは別個に取引を処理する。レイヤー2スケーリングソリューションには様々なものがあるが、似たような仕組みで働く。レイヤー2の取引はオフチェーンで発生し、イーサリアムネットワークによって検証され、オンチェーンで記録される。

    ガス代に話を戻すと、レイヤー2スケーリングソリューションは取引完了に必要なガスユニットを減らすことで、ガス代節約の方法を提供する。取引検証時のみイーサリアムとやり取りするため、マイナーが処理に必要とするガスが少なくなるのだ。

    レイヤー2ソリューションはまた、イーサリアムネットワークの混雑も緩和し、すべてのユーザーに対して基本料金がより安くなるという恩恵をもたらす。このようにレイヤー2スケーリングソリューションは、ガス代を大幅に節約する助けとなるのだ。

    |翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂|画像:Shutterstock|原文:What Are Ethereum Gas Fees?

  • イーサリアムの「ガス代」とは?【基礎知識】
    1/29(土) 7:00配信

    タダで食べられるランチなんて存在しなければ、無料の取引なんてものも存在しない。ATMで20ドル引き出すために5ドル払うのを不愉快に感じるとしたら、500ドル送金したり、ペンギンの画像を受け取るために100ドル支払わなければならない状況を想像して欲しい。

    極端な例のように聞こえるかもしれないが、イーサリアムネットワーク上で取引したり、機能を実行するために、時にはそうなることがあるのだ。さらに、イーサリアムが月末にガス代を返金してくれることはない。

    ガスとは?
    ガスとは、ユーザーがネットワークとやり取りするためにイーサリアムが要求するイーサ(ETH)の数を表す言葉だ。ガス代は、取引を検証するために必要とされるエネルギーに対するイーサリアムマイナーへの報酬、そして悪意あるユーザーがネットワークを攻撃するには、コストがかかり過ぎるようにすることで、イーサリアムネットワークにセキュリティを提供するために使われる。

    マイナーに取引の検証を続けてもらい、ネットワークのセキュリティを維持するためのインセンティブとして効果的な手段ではあるが、ガス代はイーサリアムにまつわるものの中で、全てのユーザーが最も嫌う要素でもある。手数料に対する一般的な嫌悪感からだけではなく、ネットワークが混雑している場合には、信じられないほどに高くなることもあるために嫌われているのだ。

    #Ethereum gas fees are like Uber surge prices. You have to be drunk to not notice how bad they are.

    ― Kate Irwin (@pixiekate13) 2022年1月4日

    「イーサリアムのガス代はウーバーのピーク料金みたい。酔っ払っていない限り、どれほどひどいものかに気づけるはず」

    それでは、ガス代がそれほど高くなる理由と、イーサリアムエコシステムを利用する時にお金を節約するための方法を見ていこう。

    ガス代の算出方法は?
    ガス代がそれほど高い理由、お金を節約するための方法を理解するには、その算出方法を理解することが大切だ。

    イーサリアムの手数料は通常、1 ETHよりもはるかに少ないため、イーサリアムでは「wei」と呼ばれる単位を採用している。

    1 ETHは、1 wei x 10の18乗だ。weiを使った最も一般的な単位で、ガス代を表すのにも使われるのが「gigawei(gwei)」、つまり10億 weiだ。ガス代トラッキングツールをチェックして、平均ガス代が100 gweiになっていたら、取引に対して0.0000001 ETH(等記事執筆時点で、0.00031ドル相当)の基本料金を払うということになる。

    NFT(ノン・ファンジブル・トークン)を作ったり、OpenSeaなどのマーケットプレースでNFTを購入したことがあるとしたら、NFTの取引に100 gweiは、割安に感じられるかもしれない。それは基本料金は単に、手数料全体の一部に過ぎないからだ。

    イーサリアムのアップグレード「ロンドン」によって採用された手数料の仕組みに従うと、現在の手数料の合計は次の通り算出される。

    ガス代計 = ガスユニット(リミット) x (基本料金 + チップ)

    ガスユニット(リミット):これは、取引で消費されるガス代の上限である。調整は可能だが、慎重に行うことが大切だ。イーサリアムブロックチェーンとのやり取りのタイプによって、完了に必要なガス代は異なってくるからだ。

    基本料金:取引をイーサリアムブロックチェーンに含めるのに最低限必要なガス代である。基本料金は、取引のタイプに関わらず、需要によって決定される。基本料金は需要に左右されるため、ネットワークとやり取りしているユーザーの数に応じて増減する。

    チップ:優先手数料とも呼ばれるチップは、取引をより速く完了してもらうための追加料金だ。イーサリアムマイナーが特定の取引を他のものより速く完了させる金銭的インセンティブを提供するため、チップと呼ばれる。優先手数料を払った取引を検証したマイナーは、その見返りにチップを受け取る。マイナーはどの取引にチップが含まれているかを確認できるので、できるたけ多くのチップを受け取るために、チップの高額な取引を優先的に完了させる。

    取引を完了させるのに必要なガス代よりも低くガスリミットを設定してしまうと、取引は差し戻されるが、ガス代を取り返すことはできない点に注意が必要だ。マイナーはすでに取引を処理するために労力を費やしており、取引が完了しなくても、その分の手数料を受け取るからだ。

    ガス代の計算を、例を使って考えてみよう。私があなたに1ETHを送ろうとしているとする。イーサリアムネットワーク上でETHを移動させるのに必要なガス代の平均は2万3000 gweiだ。それを、ガスリミットとして設定する。この時点での取引に最低限必要なガス代(基本料金)は150 gweiだが、速く届けるために、20 gweiのチップを追加する。この場合、計算式は次のようになる。

    1ETHを送るためのガス代計 = 23,000 gwei x(150 gwei + 20 gwei)

    そうすると、ガス代の合計は3910000 gwei、つまり0.00391 ETH(当記事執筆時点で約13ドル相当)となる。A氏がイーサリアムブロックチェーンに1.00231 ETHを送ると、B氏が1ETHを受け取れる、ということだ。

    ガス代の高さの理由
    ガス代の算出方法を理解したところで、ガス代がなぜそれほど高くなるかを理解していこう。ガス代が高騰している理由は主に、以下の2つがある。

    ・ガス代がイーサ建てだから・イーサリアムのガス代が変化するから

    イーサ価格高騰によって、ガス代も高騰
    ガス代が高くなっている主な理由の1つ目は、イーサが高くなっているからだ。その値上がりの背景には、新しいユーザーをイーサリアムエコシステムに引き寄せ続けている、分散型金融(DeFi)とNFTセクターの人気がある。

    I love #Ethereum even with all the gas fees, but this is hilarious 😂#ETHGasPrice pic.twitter.com/cWHYJ42w3n

    ― Crypto Kabab (@cryptokabab) 2022年1月7日

    「ガス代が高くてもイーサリアムは大好きだが、これは笑える#ETHガス代

    『ガス代を払ってみたら、イーサリアムロゴの意味が分かった』」

    基本料金高騰によって、ガス代も高騰
    ガス代の高騰のもう1つの理由は、基本料金が変化し、上がっているからだ。前述の通り、基本料金は需要に応じて調整される。イーサリアムブロックチェーンへの需要の高まりの結果、基本料金は一貫して上がり続けているのだ。

    イーサリアムブロックチェーン上では3000を超える分散型アプリケーション(Dapp)が展開されており、イーサリアムネットワークユーザーと並んで、それらすべてのDappも、取引を含めてもらおうとしている。Dappだけで、イーサリアム上で10万以上のアクティブユーザーを占めており、1日の合計実施取引数は25万を超える。

    イーサリアムの広範な普及は、ガス代のボラティリティの高さにもつながった。ガス代をより一定したものにするために、イーサリアムのEIP(イーサリアム改善提案)1559では、それまでのオークション形式のガス代決定の仕組みから、直近のブロックによって基本料金が決定されるよう変更された。

    EIP 1559がもたらした影響についてはまだ議論が続いているが、イーサリアムへの需要の高まりによって高騰する基本料金が、ガス代の合計を増加させ続けていることは確かだ。

    イーサリアム2.0は、イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムがプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へと移行する大型アップグレードだ。ネットワークにもたらされるメリットは数多くあるが、その1つは、取引処理能力を大幅に改善し、マイナーへの依存を廃止することで、イーサリアムの手数料を競合と同じレベルまで引き下げることだ。

    ガス代を節約する方法
    イーサリアムブロックチェーンを使う際にガス代を完全に回避することは不可能だが、その負担を軽くする方法はいくつかある。

    適切な時間を選び、忍耐強く待つ
    残念ながら、ガスユニットの影響を直接緩和するための方法はないが、基本料金とチップを下げることで、ガス代の合計を下げる方法は存在する。

    基本料金を下げるためには、イーサリアムを使うユーザーの数が少ない時間に取引を行えば良い。イーサリアムネットワークとやり取りするのにより労力がかかる時には、基本料金が高くなる。イーサリアムネットワークとやり取りしようとする人の数が多い時には、より多くの労力がかかる。

    つまり、イーサリアムネットワークとやり取りする需要が低い時間帯を見つけられれば、基本料金が少なく済むのだ。一般的には、週末が狙い目だ。

    チップを下げる方法もある。チップは、取引時間を短縮するためにマイナーに支払う追加料金だ。取引が一刻を争うものでなく、忍耐強く待てるのならば、チップを下げてガス代を節約できる。

  • >>19

    まだ遅くない、いま「NFT」に注目すべき理由
    1/27(木) 8:22配信

    各方面に広がる「NFT」

     最近、メタバースなどが話題になっていることもあって、「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」に注目が集まっている。

    【NFTの取引量】

     2021年3月には英国の競売大手クリスティーズがデジタルコラージュのアート作品を競売にかけ、6930万ドルで落札されたことが大きく報じられた。以降も次々と高額でNFTアートが売れている。

     フランスサッカーリーグのパリ・サンジェルマンに所属するブラジル代表選手のネイマールも、2作品のデジタルアートを購入したことをSNSで報告している。1作品につき時価で50~60万ドルほどの価格だったらしい。

     Twitter創業者のジャック・ドーシー氏が最初に投稿したツイートもNFTで販売され、290万ドル以上で購入された。ちなみに、ドーシーはその売り上げをアフリカの新型コロナ対策をしている慈善団体に全額寄付した。

     NFT市場は、今後もさらなる拡大が予想される。米国のブロックチェーン分析会社チェイナリス(Chainalysis)が発表したリポートによれば、21年のNFT市場は410億ドル規模になっているという。

     ところで、どのくらいの人がこの「NFT」なるものをきちんと理解しているだろうか。近い将来には、かなり大きなビジネスになっていく可能性を秘めている。25年には現在よりもビジネスが倍増し、800億ドル規模になるとの試算もあるくらいだ。

     まず、とにかく分かりやすくNFTとは何かをあらためておさらいしたい。

    NFTとは?
     NFTとは英語で「Non-Fungible Token」のことで、その頭文字をとったもの。「Non-Fungible」は「替えがきかない」「唯一無二」という意味で、「Token」はその証明という意味になる。日本語では「非代替性トークン」と呼ばれている。代替できないということは、そのデータが複製できないものであると証明できる。

     その証明をするのに、取り引きデータの改ざんができないブロックチェーン技術が使われてる。ブロックチェーンは暗号資産(仮称通貨)などで使われることで知られる。

     デジタルデータなら簡単にコピーができてしまいオリジナル作品でも価値はなくなってしまうが、NFTではどれがオリジナルなのかを保証してくれる。実世界でも絵画で贋作などが存在するが、デジタルの世界では「本物証明」をブロックチェーンで行うのである。

     冒頭のアート作品の競売についての記事では、フランスのAFP通信がNFTについてこう説明している。

     「NFTとは、ブロックチェーン技術を用い、デジタル作品を唯一無二の所有可能な資産に作り替えたものだ」

     こうした技術が発展していくと、例えば、ゲームなどバーチャル(仮想)空間の中で土地を購入するようなことが可能になる。ゲーム内の土地を購入してNFTで自分だけのものにすれば、その後に売買もできるようになる。そういう形でビジネスが広がる可能性も期待されている。仮想空間のメタバースでも同様のビジネス展開が期待されていて、利用者が増えれば土地などの価値も高まっていく。

     テクノロジーのトレンドを次々と生み出す米国では、21年の初頭からこのNFTにからむ記事を頻繁に見るようになった。

     そもそもNFTなる単語自体が、米国のトレンドともいえる。ただ、この言葉を見ただけでもなかなか意味が理解しづらい。知り合いの米IT関係者などは、「テック界隈はわざと外部の人がすぐに理解できないような言葉を流行らせたがる」と言っていたことがあるが、まさにその好例だろう。最近流行っているメタバースやWeb3(Web3.0:ブロックチェーン技術によって実現する分散型ネットワークのこと)なんて言葉もパッと見て意味は分からない。

    エンタメ業界にも広がるNFTの可能性
     そんなNFTであるが、近い将来に面白いトレンドになる可能性があると筆者は考えている。なぜなら、NFTはアートだけでなく、例えばエンタメ業界にも広がっているからだ。特に興味深いのは、音楽業界。最近ミュージシャンたちが次々とNFTに参入し始めている。

     例えば、英国出身のミュージシャン、オジー・オズボーン。21年12月末に、22年1月からデジタルのオリジナルキャラクターを発売すると発表した。同氏といえば、80年代にアイオワ州で行ったコンサートのステージ上で、コウモリの頭を生きたまま噛(か)み切ったエピソードが話題になった。そのことから、NFTのキャラクターはコウモリをモチーフにしたもので、オジーが自ら9666個のさまざまなコウモリのキャラクターを販売するという。

     この試みは、すでに米国で流行っている「ボアード・エイプ・ヨット・クラブ」という類人猿をモチーフにしたNFTキャラクターのビジネスに似ている。冒頭で触れたサッカー選手のネイマールが購入した2つの「デジタルアート」もこの「ボアード・エイプ」のキャラクター2種類である。

     オジー以外にも、ヘビメタバンドのメガデスも、オリジナルのキャラクターアート1点ものをNFTで販売した。

    新たな音楽業界の可能性も
     新たな試みをしているのが、ミュージシャンのダニエル・アランだ。コロナ禍でライブなどができず苦しい状況に陥っているミュージシャンは少なくないが、NFTを使って活路を見い出しており、そこで新たな音楽業界の可能性も見せつけている。

     同氏は自分のオリジナルの楽曲をNFTで販売。曲の著作権をある程度維持しつつ、曲ごとに数千ドルを売り上げているという。

     さらに、楽曲のロイヤリティの半分をクラウドファンディングで販売し、そこから得た資金で、レコード会社などの干渉も受けずに楽曲を制作している。

     米国では他にも、ラッパーなどが制作前にアルバムのロイヤリティの一部をNFTで販売し、ファンたちが購入しているケースもあり、それが制作費になっているという。またメガデスのように、ミュージシャンが関連のデジタル商品をNFTで販売しているケースも多い。

     現時点で、NFTが未来のビジネスを率いていく存在になるとは思わないが、新たなビジネスチャンスであることは間違いない。「どうせ一瞬の流行で終わるんじゃないの?」という声は米国でもあるが、今後、メタバースやゲームなどと融合していくことで、大きな可能性も感じなくはない。

    メタバースは「次のインターネット」になるか
     すでに述べた通り、メタバースの世界で言えば、土地を買ったり、アバター用の洋服を売ったり、シューズを購入したり、唯一性をもったさまざまなものが売り買いされるようになるはずだ。メタバースが「次のインターネット」になれば、こうしたビジネスチャンスもどんどん広がる。

     加えて、NFTはブロックチェーンの仕組みからも分かる通り、中央集権型ではない。22年以降、世界では「中央集権的」ではないものに注目が集まっていく可能性がある。

     例えば、先にも触れたWeb3という言葉は、GAFAなどインターネットを牛耳っている“権力者”らからインターネットを解放させてもっと自由な世界を広げようとする考え方だが、そういう活動が知られるようになってくるかもしれない。

     一部の国家や企業が世界を支配する現在の世界は、ブロックチェーンやNFTなど新しいテクノロジーが次々と誕生している世界と比べると、中央集権的で窮屈に感じるようになるかもしれない。

     新しいプラットフォームの中で、新たな価値観が生まれる。そんな可能性を秘めたNFTから目を離してはいけない。

    (山田敏弘)

    ITmedia ビジネスオンライン

  • 7分でわかるDeFi(分散型金融)の仕組み【基礎知識】
    1/27(木) 6:00配信

    分散型金融(DeFi)は、暗号資産(仮想通貨)の世界でも最も重要なトピックの1つとなっている。

    DeFiの目的は、伝統的金融(TradFi)エコノミーから完全に自立した、まったく新しい金融システムを生み出すことにある。この目標に向けて何十億ドルもの資金が投下され、世界中で何千人もの開発者たちが取り組んでいる。

    当記事では、DeFiの理解を深めることを目指す。

    イーサリアムとDeFiエコシステムの起源
    プログラマーのヴィタリック・ブテリン氏は2013年、ビットコインに携わった後に、次なる暗号資産プロジェクトとして、イーサリアムを共同で立ち上げた。

    イーサリアムは複数の異なる機能を持ったブロックチェーンとしてデザインされているという点で、ビットコインとは異なっている。その機能とは、デジタル通貨となること、国際的な支払いのために使われること、そのコード上で実行されるブロックチェーンアプリケーションを持つことであった。

    現在では、イーサリアム上で1つのデジタルエコノミーが出来上がっており、その一部となっているのが、DeFiのエコシステムだ。

    DeFiとは、イーサ(ETH)などの暗号資産を基盤とした暗号資産ムーブメントであり、(インターネットに接続できる)世界のすべての人に開かれている。

    DeFiはトラストレスなアプリケーション、つまり、銀行や政府などの中央集権的存在が管理したり、ホストしていない。暗号化、スマートコントラクト、ブロックチェーンテクノロジーといった暗号資産の要素によって、このDeFiシステムは、グローバルコミュニティが活用できるようになっている。

    イーサリアムでは、ソリディティ(Solidity)と呼ばれる堅固なスマートコントラクトプログラム言語を活用。ソリディティは、金融コントラクトに必要となるロジックすべてが、アプリケーションコードに含まれることを可能にする。

    現在では、アバランチ(Avalanche)やテラ(Terra)、ファントム(Fantom)など、多くの暗号資産がDeFiアプリケーションの運営をめぐってイーサリアムと競走しているが、DeFiを生み出すために使われた最初のプロジェクトはイーサリアムであり、今でもDeFiに使われる最大のネットワークとなっている。

    初のDeFiプロジェクトとなったメイカーダオ(MakerDAO)は2015年、イーサリアムブロックチェーン上に生み出された。

    メイカーダオでは、ユーザーがイーサをスマートコントラクトを通じてロックし、米ドルにペグされたステーブルコインのダイ(DAI)を生み出すことを可能にする。

    ダイは多くの場合、オアシス(Oasis)と呼ばれるメイカーダオの預金プラットフォームで使われ、実質的には分散型銀行が生まれている。ステーブルコインとスマートコントラクトの力によって、オアシスはユーザー向けに、貸付・借入プラットフォームを作り出したのだ。

    DeFiエコシステム内での貸付と借入
    貸付・借入プラットフォームは、DeFiエコシステムの中でも大きな部分を占めるようになった。ユーザーは暗号資産をスマートコントラクトにロックし、それに対して借入ができるのだ。暗号資産をスマートコントラクトにロックし、そのコインが借り手に貸し出されるようにすることで、利回りを稼げるようにもなっている。

    注目すべきは、DeFiエコシステムでの貸し手が手に入れる利回りが、伝統的金融システムでのものよりはるかに高いという点だ。

    スマートコントラクトを実行することは、伝統的な銀行を運営するのに比べて、費用効率がはるかに良い。そのため、貸付で生まれる利回りのほとんどが、スマートコントラクトを通じて貸し手に直接わたるのだ。

    多くの人が、透明性の高いスマートコントラクトに信頼を寄せ、それを活用することによって、高い利益を上げている。

    超低金利の世界において、このように費用効率の良いスマートコントラクトは、テクノロジーによるソリューションと言えるだろう。

    多くの人は、中央銀行がここまで低い金利を容認していることに腹を立てており、それに対するソリューションは政治的な説得ではなく、テクノロジーによってもたらされている。借り手と預金者の両方に、チャンスが生まれているのだ。

    堅固なDeFiポートフォリオを築くことで、伝統的銀行システムへの賭けにヘッジをしておいた方が、賢明かもしれない。

    コンパウンド
    コンパウンド(Compound)は、ユーザーが様々な暗号資産を供給して、利息を稼ぐことを可能にする自律アルゴリズムプロトコルであり、DeFiの貸付・借入分野での主要アプリケーションの1つだ。

    ネイティブ通貨はコンプ(COMP)で、データ提供を手がけるDeFi Pulseによると、コンパウンドのコントラクトには現在、89億ドルが預け入れられている。

    コンパウンドはさらに、イーサなどの暗号資産に対して借り入れを行い、支払いに使われるステーブルコインを(利息付きで)借り入れることもできる。これは、含み益のある証券に対して現金を借り入れる伝統的金融のコンセプトと、非常に似ている。誰でもが、コンパウンドプロトコルに資産をロックし、それに対して複利での利息を継続的に稼ぎ始めることがすぐにできるのだ。

    伝統的銀行とは異なり、コンパウンドの利率は需要と供給をベースに自動的に調整される。

    ユーザーがコンパウンドプロトコルにトークンを供給すると、利子を生み、担保として機能する資産を象徴するcトークンを受け取る。コンパウンドユーザーは、自らが持つcトークンの価値の最大50%まで借り入れが可能だ。

    伝統的金融システムと同様、借り入れた資産に対しては清算ポイントが存在しており、そこに到達するとユーザーは直ちに流動性を手にし、いつでも資産を引き出せるようになる。

    Aaveとフラッシュローン
    DeFiエコシステムにおける、もう1つの主要貸付・借入プラットフォームがAaveだ。コンパウンドと同様、Aaveもイーサリアム上で運営される、分散型でオープンソース、カストディアルなプロトコルである。

    ネイティブ通貨はAAVE。現在Aaveのスマートコントラクトには、118億ドルが預け入れられている。Aaveでは、ユーザーは暗号資産の貸付・借入ができる。貸し手は、プロコトルに提供した資産に対して利回りを獲得できる。コンパウンドと同様に市場の需要と供給に応じて、利率が調整される。

    Aaveはまた、「フラッシュローン」と呼ばれる独自のサービスを提供している。フラッシュローンとは、「1ブロック借り入れ取引」のことで、ユーザーが同じブロック内で借り入れと返済を行う取引だ。

    借り入れと返済が同じブロックで起こる場合に限って、スマートコントラクトが貸し付けを許可する。これは新しい機能で、裁定取引やクイックトレーディングで使われる。このようなローンは伝統的金融の世界には存在せず、TradFiを大きく改善するものと考えられている。

    フラッシュローンによって、暗号資産エコシステム内で取引所間の裁定取引が可能になる。CoinDeskではフラッシュローンの仕組みを過去に、以下のように説明している。

    「トレーダーは多くの取引所における価格差を利用して、利益を上げることができる。例えば、ピザコインが2つの市場で異なる価格をつけているとしよう。取引所Aでは1ドル、取引所Bでは2ドルだ。ユーザーはフラッシュローンを利用して、別のスマートコントラクトに取引所Aで100ピザコインを100ドルで購入するように要求する。そして、それを取引所Bで200ドルで売却する。借り手はローンを返済し、差額を手にすることができるのだ」

    分散型取引所
    スマートコントラクト、ステーブルコイン、貸付・借入プラットフォームの誕生は、DeFiにおいてもう1つ大切なものを生み出した。分散型取引所(DEX)だ。こちらも、DeFiにおいて非常に大切な要素である。DEXは2021年、取引高が1兆ドル以上増加した。

    DeFiが大切な理由
    DeFiの目標は、トラストレスで非許可型の開かれた金融市場を作ることだ。DeFiの進展のために、たくさんの開発努力と、多額の投資が投入された。

    DeFiにおけるテクノロジーの大半はTradFiシステムを基盤とし、それを改善するようなものであり、ユーザーにとってより良い結果をもたらす可能性がある。DeFiが進化と強化を続ける中、DeFiを理解し、それと関わり合い、活用する準備を整えることが非常に大切だ。

    |翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂|画像:Shutterstock|原文:Understanding DeFi and Its Importance in the Crypto Economy

    このようにして、フラッシュローンは暗号資産取引所間での価格安定性を高め、究極的には暗号資産エコノミーを強化する。

  • NFT投資を理解する【基礎知識】
    1/30(日) 8:00配信

    暗号資産(仮想通貨)の世界では、毎日のように新しい詐欺が登場しているようだが、この業界の成長はとどまるところを知らない。

    NFT(ノン・ファンジブル・トークン)の人気は、少なくとも今のところ、作成者たちがNFTの価格を吊り上げ、人々が食いついてきたところでその資金を持ち逃げする「ラグプル(rug pulls)」などの詐欺のニュースを目立たなくしているようだ。

    例えば、NFTプロジェクト「Frosties」で大規模なラグプルが発生した。2000人以上が、アイスクリームのキャラクターのデジタルコレクション品に130万ドルを支払ったが、匿名の作成者はソーシャルメディアぺージを閉鎖し、姿をくらましてしまった。

    およそ8,900個のNFTコレクションはまだ存在しているが、デジタル資産の強さは、そのリーダーの強さに比例する。Frostiesコミュニティを率いる人がいなくなった今、これらのアートは単なる可愛らしいキャラクターでしかなくなってしまった。

    DYOR(自分でリサーチをする)
    一般的な指針としては、どんな規模であれNFTを買う時には、「DYOR:自分でリサーチをしよう(Do Your Own Research)」となる。しかし、規制当局や政府も追いつけないほどの速度で進化を続け、ハッカーたちが何十億ドルもの資産を奪っていくこの業界において、「リサーチ」は、グーグル検索やツイッターのスペースでのチャットなど、根拠のあやふやなものに感じられてしまうかもしれない。

    NFTコレクターたちは、新しいプロジェクトやコミュニティに投資をする前に、その分野の人たちと友達になることを勧める。足を踏み入れやすい簡単な方法としては、無料のツイッタースペースでのチャットやディスコードのコミュニティに参加し、NFTプロジェクトが買い手に提供する追加のメリット(ユーティリティと呼ばれる)や、業界内部のニュースなどについて学ぶことだ。

    NFTは、漫画や芸術作品、人形コレクションやスニーカーなど、レアなコレクション品に例えられる。楽しむ分には構わないが、それで老後の資金をすべて賄おうと思ったりしないことだ。

    もちろん時にNFTは、経済状況を劇的に変えてくれることもある。NFTコレクション「World of Women」の例を見てみよう。2021年7月にリリースされたこのコレクションは、初期の平均価格は0.1 ETH(約300ドル)であった。現在ではマーケットプレイスのOpenSea(オープンシー)でもランキングの上位につけ、その価格は7~8ETH(当記事執筆時点で2万1000~2万4000ドル)だ。

    「Women Rise」のNFTコレクションも売り切れるほどの人気で、わずか数カ月で、取引高は1900 ETH(当記事執筆時点で約590万ドル)に達した。

    NFTを購入すると、ブロックチェーン上に消去できない形でデジタル所有権の記録が残る。そのためトークンは、会員証のような役割を果たすことができるのだ。

    どのコミュニティにとっても有効という訳ではないが、多くのNFT作成者たちは、NFT購入に特典を与えることで価値を高めている。例えば、NFTが結びつけられたアート作品に加えて、オンラインクラブやゲームコミュニティ、ディスコードでのチャットやインタラクティブな体験への、独占的なアクセスを買い手に与えているのだ。

    NFTのリスクと見返り
    急速に流れ込む資金が、NFTの世界を分断している。NFTの秘める可能性は否定できないものたが、それにまつわるリスクと見返りには、頭がクラクラしてしまうほどだ。

    「NFTは、犬が新しいおもちゃを手に入れて、あまりに興奮して噛みに噛んで粉々にしてしまう感じだ。そうしておもちゃはなくなってしまう」と、ブロックチェーンPR企業ライト・ノード・メディア(Light Node Media)の共同創業者兼CEO、ネルソン・マーチャンJr(Nelson Merchan Jr.)氏は話す。

    「それと同じことを、NFTに対して私たちもしていて、ここに来て『こんな風にはしない方が良いのかも』と気づき始めているのだろう」(マーチャン氏)

    自身も2017年以来暗号資産に投資しているマーチャン氏は、2021年6月のリリース直後に人気NFTコレクション「Pudgy Penguins」を購入した。同NFTコレクションの作成者たちは先日、プロジェクトが壮大な約束を果たすのに待ちくたびれたコレクターたちによって、追放された。しかしマーチャン氏は驚くことに、このプロジェクトの現状についてあまり心配はしていないようだ。

    「間違いなくラグプルではなかった」とマーチャン氏は語り、ラグプルは素早く匿名で行われると指摘した。例えば、ラグプルとされるNFTプロジェクト「Bored Bunny」の場合には、詐欺師たちは1月5日、ソーシャルメディアアカウントを閉鎖するまでのわずか数時間で、2000ETHもの資金を持ち去ったのだ。

    「Pudgy Penguins」プロジェクトの場合には、リーダーの交代プロセスはコミュニティ主導で公開されており、ある程度民主的だったとして、まだ可能性があるとマーチャン氏は主張する。

    「失敗とされたプロジェクトの中には、実際には優れたものもある」と、マーチャン氏は述べる。「失敗を通じて、コミュニティはNFTから何かを築き上げる方法を見つけ出し、『何とか成功させよう』と立ち上がらなければならなくなる。このようなNFTプロジェクトは、成長の可能性を大いに秘めていると私は感じている。何とかしてみせる、と決意したコミュニティなのだから。結局のところ、NFTでも、暗号資産全体に関しても言えることだか、コミュニティがすべてなのだ。コミュニティが強ければ、プロジェクトも強いものになる」

    長期的価値という点に関しては、投資家はNFTが既存のインフラとどのように融合できるかについて、未来を見据えて考えるべきだと、マーチャン氏は主張する。

    NFTには、メタバースにおいてスマートコントラクトやQRコードを通じて、チケットやVIPメンバーシップ、セールなどに利用されることで、さらに大きな価値を解き放つ可能性がある。

    マーチャン氏は、クラブを例に次のように説明した。「クラブは常に、人々に何度も通ってもらい、自らのブランドを気に入ってもらう方法を探している。これにはNFTがぴったりだ。ひと月に何度か同じクラブに通ったとしよう。行く度に特定の数のNFTをもらえる。ひと月に3、4回行けば、NFTのレア度が上がるかもしれない」

    レアなNFTとはつまり、保有者が得られる特典がレアということだ。取引はすべてブロックチェーン上に記録されるので、このデジタル半券的なものは、子供の時にコレクションを集めていた靴の空き箱より、間違いなく優れているだろう。

    分散型バリュー投資
    NFTコミュニティへの投資は、分散型バリュー投資と考えることができるかもしれない。

    「実際には、NFTから生まれるコミュニティ、少なくもコミュニティの生まれる可能性に投資しているのだ」とマーチャン氏は語り、「外から見れば、そのほとんどが失敗かもしれない。しかしエネルギーは実際には、非常に強力なものだ」と主張した。

    コツは、盛り上がっているからといって買ってしまわないことだ。どれほど魅力的に見えたとしても。

    「極めてクレイジーな業界だ。長期的な視野を持つ必要がある。転売のためにNFTを買うのだとしたら、それは単なるトレーディングだ。そこには多くのリスクがつきまとう」と、マーチャン氏は言う。

    「しかし、本当にコミュニティが好きだから、あるいは直感的に、成功すると感じさせる何かがあるからNFTを買うのだとしたら、その方がずっと好ましいと私は思う」

    |翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂|画像:Sergei Elagin / Shutterstock.com|原文:What Advisors Should Know About NFT Investing

  • >>17

    美術館はメタバースを利用するメリット大きい?
    公的機関もメタバースへの参入に意欲を見せている。ロシアのサンクトペテルブルクにある国立エルミタージュ美術館の現代美術部門の責任者であるドミトリー・オゼルコフ氏は、近いうちにすべての美術館が、各自のメタバースを持つようになると予測している。

    同氏は、2021年11月に開幕したエルミタージュ美術館初のバーチャル展覧会のキュレーターを務めており、このバーチャル展覧会では、デジタルアート作品をNFTという形で展示している。

    有形商品を販売する企業であっても(たとえそれが信じがたいことに思えたとしても)、メタバースで成功することは可能だ。実際、メタバースでしか売れないアイテムを販売し、成功する例も少なくない。コカ・コーラが昨年7月にNFTのコレクターズアイテムを制作し、メタバースオークションで販売したのは最も有名な例だ。また、高級ブランドのグッチは、ロブロックスで仮想バッグのオークションを行い、リアル店舗で販売する有形のバッグよりも高い売り上げを達成している。

    メタバースは大企業だけのものではない。プロデューサーや開発者、アーティストがメタバース上で直接商品を販売することも可能だ。特にデジタルアーティストは、NFTマーケットプレイス「OpenSea」のようなプラットフォームを利用して、コレクターに自分の作品を販売することで、収益性の高い直接的な販売方法を見つけることができる。

    マーケティング手法もメタバース用に新たに開発されている。アメリカのファストフードチェーン、ウェンディーズは、ブランドのマスコットに似たキャラクター(アバター)を制作し、フォートナイトなど有名なオンラインゲームに参入。アバターの冒険はライブ配信され、何十万人もが固唾を飲んで戦いを見守った。

    また、ファッション企業も若年層を取り込むためにゲームの世界に参入している。例えば、バレンシアガはフォートナイトとコラボし、ゲームのキャラクターにバレンシアガの服を着せた。バーバリーは、中国のモバイルゲーム「王者栄耀(伝説対決)」とコラボし、ゲームのプレイヤーにバーバリーの衣装を提供した。

    パンデミック発生以降、多くの企業がテレワークや在宅勤務を実施している。実際、Zoomのようなサービスを利用すれば、自宅にかかわらず、世界中どこで仕事をしていてもお互いにコミュニケーションをとることが可能だ。が、一方でZoom疲れを起こしている人がいるのも事実だろう。

    こうした中、自らも仮想空間を手がけるアメリカのスタートアップ、スパーティアルは会議をZoomからメタバースに移行し、チームが仮想空間でオンラインミーティングをできるようにした。この仮想空間では、オフィスの雰囲気を再現したり、オンラインで独自の新たな拠点を開発することも可能だ。

    メタバースは企業にどんな価値を生み出すのか
    ここまで紹介した例は、メタバースが新たなビジネスモデルや顧客体験を生み出すための無数の道を開いていることを示している。では、今メタバースは、あなたのビジネスにどのような価値を生み出すことができるだろうか。

    第1に、メタバースによって、企業はより価値ある、人々の記憶に残る、そしてインタラクティブな顧客体験を実現することができる。新規顧客(ゲーマーなど)に対応し、長期的な顧客関係を構築することが可能となる。また、従業員との関係のおいてもメタバースを利用することで、従業員同士のコミュニケーションをより円滑にすることもできるだろう。

    第2に、メタバースは没入型の顧客体験を可能にするとともに、新たな(そしておそらくデジタルな)商品やサービスの開発を可能にする。メタバース内のショッピングセンターでのショッピング、コンサート、ファンイベント、そして美術館を訪れる体験は、「リアル」な体験ではないかもしれないが、自宅のソファに座っていても楽しむことが可能だ。

    そして最後に、遠くない将来3Dアニメーションが主流となり、商品を見るためにスクロールしなければならないようなホームページは、単に古くさいと思われるようになるだろうと、筆者は考えている。私たちが今知っているネットが、今後「かっこ悪い」「古くさい」と思われるようになれば、遅かれ早かれ多くの企業がメタバースに参入せざるをえなくなるだろう。

  • 今さら聞けない「メタバース」が騒がれている理由
    日本企業にとってどんなメリットがあるのか
    パリッサ・ハギリアン : 上智大学教授(国際教養学部)2022年01月27日

    この数カ月の間に、私たちは新たなトレンドやテクノロジーについてよく耳にするようになった。注目すべきは、「NFT(Non Fungible Token:非代替性トークン)」と「メタバース」は次にくる大きな影響をもたらす技術であり、もしかすると、画期的なビジネス革命となるかもしれないと考えられていることだ。

    確かに現段階ではメタバースやNFTが、これまでの技術と同様に変化や価値を生む出すものか判断するのは難しい。そして、何かにおいて先駆者であることは不安や困難を伴う。が、新技術やトレンドにおいては、追う立場になる方が事業撤退などさらなる困難に見舞われる可能性がある。

    ついにネットに「入っていく」時代に
    そこで本稿では、メタバースとNFTがどのように新たなビジネスモデルを形成し、既存のビジネスプロセスに組み込まれていくのかについて考察したい。

    まずメタバースとは、NFTとは何だろうか。

    メタバースとは、ネット上の仮想現実のことであり、人とネットとのコミュニケーションが進化した形と考えていい。ここへ来るまではいくつかの段階があった。

    ネットが普及し始めた頃、私たちはパソコンからしかネットにアクセスできなかった。ネットをデータベースのように使うのが主流で、当時の多くのビジネスモデルは、情報の共有と検索(例:グーグル)に重点を置いていた。

    その後、携帯電話が登場し、ネットをつねに「持ち歩く」ことができるようになると、企業はアプリと呼ばれる全く新しいビジネスモデルを開発できるようになった。当時開発の重点は利便性に置かれており、私たちは電話で食事やタクシー、商品の注文ができ、チャットで友人とコミュニケーションが取れるようになったわけだ。

    メタバースはそこからさらに一歩進んでいる。メタバースの世界では、私たちはネットをつねに持ち歩くだけでなく、その中に「入っていく」のだ。ネットは、データベースや便利なツールといった存在から、体験の世界へと変貌を遂げるのである。

    メタバースとは、たんに商品や情報を購入できるネット上のプラットフォームではなく、モノ(商品)や人を、3D(3次元)で体験できる仮想世界のことを指す。ゲームをしないビデオゲームのようなものと言っていいだろう。フェイスブックからメタに社名を変更した同社マーク・ザッカーバーグCEOは、メタバースを「身体化されたインターネット(embodied internet)」とも表現している。

    メタバースという考え方は、完全に新しいものではない。ビジュアルが素晴らしいゲームの多くは、メタバースのプラットフォームを使用している。自分自身のアバターを作って、第二の人生を築くことができる「セカンドライフ(Second Life)」もメタバースの1つだ。

    さらに、近年は「Decentraland(ディセントラランド)」「Sandbox(サンドボックス)」「Superworld(スーパーワールド)」といったメタバース・プラットフォームが力をつけている。

    持っているだけで意味があるもの
    メタバースの特徴の1つは、仮想空間上でデジタル商品を売買できることである。こうしたデジタル商品は「NFT」と呼ばれている。

    NFTは仮想世界上にしか存在しないが、通常の有形の商品と同様に取引可能で、Ginco創業者の森川夢佑斗氏の記事「デジタル画像が数億円!『NFTバブル』本当の正体」は、これを理解するために、「利用価値」と「所有価値」を区別している。

    「利用価値」とは、購入した商品を利用することによって、購入者にもたらされる利益のこと。例えば、東京に土地を買えば、その敷地に家を建てることも、売ることも、庭をつくることも可能で、利用価値があることは明らかだ。

    一方、「所有価値」とは、主にモノを所有することに主眼を置いた価値観を指す。その最たる例が、美術品を買う(所有する)こと。例えば、非常に価値がある絵画を購入したとしても、セキュリティのためその絵を飾らずに、安全な場所に保管するとする。つまり購入者はこの絵画を実際に使用するわけではないが、この絵画は自分が所有しているからこそ価値があるのだと思っている。NFTもこのような感覚で、使うことよりも所有することに価値があるという考え方だ。

    では、こうした技術がなぜ重要なになるのだろうか。

    2022年の現在、メタバースやNFTはまだ主流の技術ではない。今までのゲームやセカンドライフのプラットフォームの利用は一部の人にかぎられている。実際、メタバースが普及するための最大の課題の1つは、一般の人々が簡単にアクセスできるインターフェイスを構築することだ。だが、これらに関連する新たな技術の開発は、パンデミックによって加速している。

    こうした状況を見据えて、フェイスブックは昨年、企業名をメタに変更。NFTの取引高は急増しており、2020年は9490万ドルだったが、2021年には249億ドルにまで膨らんでいる。

    ソウル市は市ごとメタバース化を目指す
    こうした中、大手を中心にすでにメタバースの利用や参入に動き出している例も見られる。上述の大手プラットフォームを利用しているところもある一方、企業が自ら消費者などとインタラクトできる独自プラットフォーム構築を目指す動きもある。

    以下はその例だ。

    ・2022年1月、韓国のサムスン電子はディセントラランド上で新たな仮想世界を立ち上げた。同社のメタバース上の店舗は、実際のニューヨークの旗艦店をモデルにしており、訪問者はメタバース内にある劇場や、そこにある「サステイナブル・フォレスト」を見学することが可能だ。

    ・ソウル特別市は世界主要都市として初めてメタバースに参入すると発表し、独自のメタバースを構築中である。完成すれば、現在市役所の窓口でのみ対応している市民からの苦情や相談などを、メタバース上でアバター職員が対応できるようになる。

    ・百貨店の三越伊勢丹は、伊勢丹新宿本店の雰囲気を味わいながら、いつでも好きな時に買い物ができる仮想店舗「REV WORLDS(レヴワールズ)」を、仮想新宿にオープン。デパ地下グルメから、ファッション、ギフトまでさまざまなショップが入店し、利用者はオンライン上で実際に商品を購入可能だ。

    音楽業界でもメタバースの利用は盛んになっている。例えば、少女時代などが所属する韓国エンタメ大手SMエンターテインメントは昨年、メタバース構想を含めた経営戦略を発表、昨年デビューした「aespa(エスパ)」のメンバーにはそれぞれアバターがおり、メタバース上でも活動している。

    また、BTSが所属するHYBEや、BLACKPINKを擁するYGエンターテインメントなど韓国大手芸能事務所3社ととソフトバンクは昨年12月、韓国ネイバーの子会社が運営するメタバース・プラットフォーム「ZEPETO(ゼペット」に170億円を出資、世界で2億5000万人の顧客獲得を目指すとしている。ゼペットでは、BLACKPINKのほか、ITZY、SF9はすでにゼペットを通じてファン交流を行っている。

  • >>12

    「メタバース」株式市場で期待の理由、注目の関連11銘柄
    1/27(木) 17:48配信
    ニューズウィーク日本版

    <フェイスブックの社名変更で一躍注目を浴びた「メタバース」。株式市場でも投資テーマとして注目されており、関連銘柄が急騰している。断然注目は、あのソニーだ>

    <メタバースとは?>

    そもそもメタバース(Metaverse)とは、「〇〇を超える」を意味する「メタ(meta)」と宇宙の意味の「ユニバース(universe)」を組み合わせて作られた造語で、大規模な仮想空間を指します。【佐々木達也 ※かぶまどより転載】

    米フェイスブック<FB>が2021年10月に社名を「メタ・プラットフォームズ」に変更し、マーク・ザッカーバーグCEOが今後はメタバースに注力すると宣言して話題となりました。また、米ウォルト・ディズニーのボブ・チャペックCEOもメタバースへの参入を準備していると述べています。

    メタバースの空間上では、参加者はインターネットを介してショッピングやコミュニケーション、ライブコンサートへの参加、旅行といった様々な活動を、現実世界と同様の臨場感で体験することができます。参加者は「アバター」と呼ばれるキャラクターのような分身を自由に選んで、自由なファッションやメイクを身にまとい、参加者同士での交流も可能です。

    ■異業種からの参入も相次ぐ

    メタバースには異業種からの参入も相次いでいます。

    たとえば、ANAホールディングス<9202>はスマホやタブレットからアクセスできる仮想空間での旅行プラットフォーム「SKY WHALE」の開発や運営を手掛けるANA NEOを2021年5月に設立。「SKY WHALE」ではバーチャル旅行を楽しめるほか、空港を模した仮想空間のモールでショッピングなどのサービスを利用することができるそうです(2022年にサービス開始予定)。

    従来も、オンラインゲームで参加者同士でのミニゲームやチャットでのコミュケーションは可能でした。大ヒットゲーム「ファイナルファンタジー14」「あつまれ どうぶつの森」などで交流を楽しんだ方も多いのではないでしょうか。

    ■現実世界にリンクした仮想空間

    では、なぜいまメタバースの普及が進んでいるのでしょうか?

    メタバースの目指す仮想空間では、参加者同士のコミュニケーションにとどまることなく、ショッピングやアイテムの売り買いなどを通じて、より現実世界にリンクした経済活動が可能となることから、今後も企業などの参入が相次ぐと見込まれています。

    コロナ禍でデジタル上でのコミュニケーションへのシフトが一気に進んだほか、ネットショッピングの利用の加速、スマホなどデジタル端末の性能の進化によって、メタバースが広がるために必要な素地が整ってきていることも背景となっています。

    <課題はハードウェア、セキュリティ、法整備>
    ■メタバースの今後の課題

    このようにさまざまな分野での利用が期待されているメタバースですが、今後に向けた課題もあります。

    メタバースのリアルな体験はスマートフォンによるAR(拡張現実)アプリでも可能ですが、やはり、より臨場感のある体験にはVRゴーグルなどの専用のハードウェアの利用が求められます。VRゲームやコンテンツの普及で数年前よりは手頃になってきましたが、高性能な端末は高価なことが多く、一般消費者にはハードルが高いと言えます。

    また、ヘッドセットの付け外しなどの手間や、VR空間を視聴することによる目の疲れ、いわゆるVR酔いなどの問題もあります。

    ちなみに、米アップル<APPL>はスマートフォンに代わる次世代のハードウェアとしてウエアラブルのゴーグルやVRヘッドセットなどを開発しているとみられ、期待されています。

    そのほかにも、リアルなコンテンツの制作に時間・資金がかかるといった問題や、クレジットカード決済などの経済活動が増えることによるセキュリティや法整備をどう担保するかといった問題も、今後の課題となりそうです。

    <メタバース関連の注目銘柄>

    このように、メタバースはこれから長期的に投資テーマとして注目される可能性があります。さらに、メタバースは半導体やエンタメ、ゲーム、旅行など様々な業界で今後キーワードとして注目されそうです。

    ■メタバースで盛り上がる関連業界

    米半導体大手のエヌビディア<NVDA>は2021年12月7日、商用展開を開始したメタバース開発プラットフォームの日本での導入支援にSCSK<9719>やNTT(日本電信電話<9432>)、伊藤忠テクノソリューションズ<4739>など24社が参画すると発表しています。

    また、スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>、カプコン<9697>などの大手ゲーム会社なども、コンテンツ開発力やこれまでに培ったキャラクターのような知的財産権(IP)、ユーザー層といった強みを生かすことで、メタバースの広がりによる恩恵が大きいとされています。

    さらに、メタバース空間を構築するためのサーバーや端末などには、当然ながら半導体が多く用いられます。よりリアルな仮想空間の実現のためには演算能力の高い半導体チップや高性能なメモリーなどが不可欠になるため、東京エレクトロン<8035>、アドバンテスト<6857>、レーザーテック<6920>、SUMCO<3436>などの半導体関連銘柄にとってもプラスとなるでしょう。

    <断然注目が、ソニーグループである理由>
    ■断然注目は、あのソニー

    そんなメタバース関連銘柄のなかでも注目したいのが、ソニーグループ<6758>です。

    ソニーは2016年に「プレイステーションVR」を発売しており、さらに2022年1月5日、次世代機であるプレイステーション5用の新型「プレイステーションVR2」を正式発表しました。この新型VRシステムは解像度や視野角などあらゆる点を強化して、プレイステーションらしいユニークな体験を実現できるとされています。

    また、ソニーが出資している米エピックゲームズが手がけるオンラインゲーム「フォートナイト」は全世界で3億5000万人のユーザーを抱えています。そのゲーム内ではアリアナ・グランデや米津玄師が仮想空間でライブを行って話題となりました。そのほか、映画のプロモーションやアイテムの売買なども活発に行われています。

    このようにソニーは、グループ全体でメタバースに必要なハード、ユーザー、コンテンツなどについてすでに強みを持っているのです。

    代表執行役会長兼社長CEOの吉田憲一郎氏はソニーの存在意義(Purpose)を「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」と定義しています。メタバースの広がりはソニーの「半導体」「ゲーム」「音楽」「映画」などの事業分野と相性が良いため企業成長の大きな柱となりそうです。

    <注目度が高いだけに注意も必要>

    幅広い業界で注目が集まるメタバースですが、投資家の関心が高いこともあって、関連銘柄には多額の短期資金が流入して株価が急騰することも多くなっているため、実際に投資するにあたっては注意が必要です。

    ●シャノン<3976>

    マーケティングなどのソフト開発を手がけるシャノン<3976・マザーズ>は、2021年10月末にメタバース型のバーチャル展示会開催サービスを企業向けに開始すると発表し、株価が急騰。11月4日には2,710円の年初来高値をつけましたが、その後は資金の逃げ足も早く、12月には1,400円台まで売られて、いわゆる「行って来い」の株価推移となりました。

    ●シーズメン<3083>

    アパレル小売のシーズメン<3083・ジャスダック>は、2021年12月初旬にファッションブランドのメタバース参入支援事業を開始すると発表。10月にはメタバースのアバター向けなどのアパレルブランドを立ち上げるなど、メタバース関連として物色されました。株価は、10月安値の280円から11月高値は2,540円と急騰し、乱高下する場面がありました。

    今後もいろいろな企業がメタバースに参入するとみられますが、短期での株価乱高下も想定されることから、そうした材料をもとに手がける場合には「そういうものだ」と割り切って、機敏なスタンスを取る姿勢が必要でしょう。

  • ニュースワード「国家安全保障戦略」
    1/26(水) 15:04配信
    時事通信

     国家安全保障戦略 外交・安保の基本方針を示す文書。「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」の上位に位置付けられる。1957年に岸内閣が定めた「国防の基本方針」に代わり、2013年12月に第2次安倍内閣がおおむね10年間の構想として初めて閣議決定した。
     現行戦略は世界の平和と安定に自ら寄与する「積極的平和主義」を掲げる。策定後に中国の覇権主義的な動向が一層顕著になり、経済安保など新たな概念も生まれたため、改定することにした。

  • メタバース 平均株価変動率-0.62%

    「メタバース」の定義は定まっていないものの、インターネット経由でアクセスできる共有の仮想世界空間を表す用語で、特にVR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術を利用したデジタル空間を指すことが多い。メタバースでは、利用者は自らのアバター(分身)を使って、現実世界のようにコミュニケーションやゲームに参加するなどの活動が行えるほか、暗号資産(仮想通貨)を使ってデジタル資産を購入するなどの経済活動もできる。  旧フェイスブックが社名を「メタ・プラットフォームズ」に変更し、ソーシャルメディア企業からメタバース企業への移行を目指すと表明するなどIT大手でも積極姿勢を見せるところが増えている。

  • ニュースワード「四半期開示」
    1/21(金) 16:28配信
    時事通信

     四半期開示 企業の売上高や純利益など業績に関する情報を四半期(3カ月)ごとに開示すること。投資家の判断材料になる有用な情報を提供するため、上場企業は金融商品取引法で2008年に四半期報告書の作成が義務付けられ、その後、記載事項の簡略化など見直しが行われてきた。
     岸田文雄首相は昨年9月の自民党総裁選時から四半期開示の見直しを表明。「働く人への分配機能の強化」のため、長期的視点を持った企業経営の重要性を訴えている。

  • >>8

    ――デバイスからソフトウェア、コンテンツまで幅広く手がけていますが、将来的にどこからどこまでをメタが担おうとしているのでしょう?

    メタバースはモバイルインターネットの次に来る、非常に大きなインターネットの潮流だと思っている。日本では「どの企業が最初に覇権を取るか」といった議論になりがちだが、1社だけで何かをつくるというものではない。

    われわれも、すでに持っている技術やプラットフォームを他社にもオープンに提供する。そのうえで、これまでのビジネスからの学びとして最初から重視しているのが、経済的(収益を得られる)機会をオープンにすること。どんな企業にも参入してもらい、デジタル経済を活性化させる。

    さらにプライバシーや安全性、公平性といったものも重要だ。われわれが1つのプラットフォームを作って、乗ってくださいということではない。

    ビジネスモデルは「今後の発展次第」
    ――1社独占にはならないにしても、多くの企業に参画してもらうためにはメタならではの強みも必要になります。この点をどう考えますか?

    われわれの強みはコミュニティを支援して、人と人とのつながりを作っていくこと。メタバースの中でもこれを追求していく。

    例えばワークルームでは、メッセンジャーのアプリが使えるようになっている。VRの中にいながら、VRの外にいる人とも会話できるのは新しい体験だ。これは今まで作ってきたサービスがあるから可能なこと。物理的な距離が離れていても空間を共有して何かができるというのは強みだと思う。

    ――メタバースを取り巻くビジネスとしては、今現在はデバイスの売り上げが多いと思います。ビジネスモデルの展望は。

    社内でも議論しているさなかだが、どういうビジネスモデルになるのかはメタバースの発展次第というところだ。

    もちろん現在の当社のVRビジネスではデバイスの販売が最も大きく、ついでアプリの販売がある。ただNFTも含めたコマースなど容易に想像できる新しいビジネスもあるし、将来的にその構成がどうなるかはわからない。

    5~10年のビジョンを対外的に提示して、幅広いステークホルダーとメタバースを作っていく中で、改めてビジネスモデルを考えていく。

  • 「フェイスブック」「インスタグラム」も機能増強
    メタバースで仕事も遊びも、メタが目指す新世界
    中川 雅博:東洋経済 記者
    2022.01.17

    フェイスブックから社名を改めたメタ。年間1兆円以上を投じて模索するのは、エンタメにとどまらないメタバースの新たな可能性だ。

    メタが目指す「現実とバーチャルを負担なく行き来できる世界」とは?(画像:メタ)
    仮想空間「メタバース」の存在が、世界の巨人をも大きく変えようとしている。

    アメリカのフェイスブックは2021年10月末、社名を「Meta(メタ)」に刷新した。マーク・ザッカーバーグCEOは直前の決算会見で、2021年だけでメタバースの構築にすでに約1兆円を投じ、今後さらに増やす考えを示した。

    写真・動画共有の「インスタグラム」、チャットサービスの「メッセンジャー」なども合わせたグループ全体のユーザー数は30億人を超える。これまではスマートフォンやパソコンの画面上だった人々の交流の場を、仮想空間にも広げる狙いだ。
    メタは2014年にVR(仮想現実)ヘッドセットを手がけるオキュラスVR(現オキュラス)を買収した。2020年10月には低価格の新型ヘッドセット「オキュラス・クエスト2」を発売し、ここ日本でも販売台数を大きく伸ばしたという。
    社名変更の背景やメタバースに眠る商機について、メタの日本法人・フェイスブックジャパンの味澤将宏代表に話を聞いた。

    目指すは「相互に行き来できる」世界観
    ――なぜ社名を「メタ」にしたのでしょうか。

    2004年の創業当時は「フェイスブック」のサービスのみを手がけていた。が、この10年でインスタグラムやメッセンジャー、(チャットアプリの)ワッツアップなどのサービスも加わり、VRやAR(拡張現実)、AIや機械学習といった技術群など、事業ポートフォリオが非常に広くなった。

    今回われわれとして次なるソーシャル・エクスペリエンス(交流体験)を提供するため、今後5~10年にわたって次世代のコンピューティングのプラットフォーム、つまりメタバースを構築することをビジョンに掲げた。

    もともとフェイスブックという社名と実際の事業群に乖離が生まれていたが、明確に新しいビジョンを出すタイミングで、それを表す社名に変更しようということが社内で決まった。

    ――すでにメタバースアプリ「ホライズン・ワールド」や仮装オフィス空間「ホライズン・ワークルームズ」などを公開しています。メタが構築するメタバース像はどのようなものですか。

    いくつか重要な要素がある。1つはイマーシブ。没入感がある、その空間にしっかりと入り込めるものであること。もう1つはインターオペラビリティ(相互運用性)といわれる部分。単一のプラットフォームに閉じられた世界ではなく、(さまざまな仮想空間と)相互に接続され、行き来できる世界観だ。

    会社のミッションは、コミュニティをつなぎ、人と人との距離を近くすること。これは以前から変わっていない。物理的に離れていても同じ空間にいるような感覚を生み出したい。これをほかの企業やクリエーター、各国政府と一緒に作っていく。

    これまでの開発の延長線上で、既存のフェイスブックやインスタグラムにもメタバースの機能がついていく。例えばインスタグラムでは写真のフィルターやコマース(通販)でAR機能を備えており、非常に多く使われている。

    ――今注目を集めているメタバースは、現実世界とは別人格のアバターで遊ぶような形のものが多いです。一方でフェイスブックは実名主体のサービス。メタバースでもメタが目指すのは現実世界の延長線上のようなものですか。

    確かにフェイスブックは実名で使う人が多いが、インスタグラムは必ずしもそうではなく、興味・関心の軸でつながるサービスだ。われわれが目指すメタバースはどちらにもなりうると思っている。

    職場のような現実のつながりをバーチャルに置き換えることで、物理的な距離が離れていても実際に会っているように活動することは可能だ。一方で別人格として遊んだり、教育を受けたりといったこともできる。どちらかに限定することは考えていない。

    オキュラス・クエスト上にあるコンテンツを見ても、実にさまざまだ。ゲームやエンターテインメントに加え、フィットネスや教育など、今後も多くの事例が生まれるだろう。実世界の延長線上のものもあれば、バーチャルなコミュニティとして新しく広がるものも出てくると思う。

    複雑な研修や体験学習にも使える
    ――エンタメだけでなく、仕事や教育の現場でも使える余地がありますね。

    仕事という面では、場所にとらわれない働き方を加速する意味でもメタバースは革新的。(パソコンやスマホなど)二次元の画面上ではできなかった仕事上の体験ができるようになるかもしれない。

    例えば外科手術の研修などは、同じ場所にいないとわからないことも多い。ビデオ会議では不十分でも、(メタバースで)空間を共有できればリアルに近い研修を行える可能性が広がる。

    教育でも、日本では(KADOKAWAグループが運営する通信制高校の)「N高」がオキュラス・クエストを導入し、空間を共有するバーチャル上の体験学習を促している。

    ――アバターに着せる洋服などのニーズも生まれていますが、メタのプラットフォームでもNFT (Non-Fungible Token、非代替性トークン)が活発に取引されることになる?

    そうしたクリエーターが新しくものを創造する仕事も生まれるだろう。(メタが2021年10月末に開催した)開発者会議では具体的なNFTの話は出なかったが、プラットフォームを超えてデジタルの世界でいろいろなものを持ち運べるようにするには、NFTが必要だ。

    発表ではコマースの領域を強調していたが、クリエーターがデジタルなアートや体験を届けられるような、オープンな場所を作っていく。

    ――現状はアメリカ本社での発表が中心ですが、日本での商機は。

    そもそもオキュラス・クエストのビジネスにおいて、日本の重要度は高い。まず市場規模が大きい。販売台数は公表できないが、非常に好調だ。

    加えて、日本には有望なIP(知的財産)を保有している会社が非常に多く、ゲームなどの開発者も豊富だ。今後のメタバース構築に向けて、とくにVRの分野では彼らと一緒に取り組める余地は大きい。

    VRヘッドセット「Oculus Quest 2」は先代機から価格を下げたうえ、軽量化などによって装着しやすくした(写真:メタ)

    クエスト2を発売した目的として、まず多くの人々に体験してもらいたいということがある。逆に言えば、メタバースは体験してもらわないとその面白さや利便性はなかなか伝わらない。(クエスト2の拡販を通じ)VRを身近にして、仮想空間を体験してもらう下地が整ったと思う。

    クエスト2は先代機から処理速度や操作性、解像度、軽量性などを大きく改良した一方、価格は手頃にした(クエスト1は4万9800円~、クエスト2は3万3800円~)。セールスやマーケティング、カスタマーサービスなど、この領域にかかわる日本のチームもここ2年ほどで大きくした。

    細かな表情や反応までアバターで表現
    ――今後、デバイスはどのように進化させますか。

    「ホライズン・ワークルーム」を使ってもらえれば、開発の方向性がわかると思う。ここでは専用のコントローラーを使わなくても、手のジェスチャーで操作ができる。パソコンのキーボードをVRの画面上でそのまま使えるなど、物理的なものとバーチャルなものの連携も進めている。

    さらに(ヘッドセットに埋め込まれたセンサーなどを使い)表情や視線をアバターでも表現できるようにしている。われわれも実際に会議で使っているが、表情や反応はかなり伝わる。

    われわれが目指すのは現実とバーチャルをなるべく少ない負担で行き来できるようにすること。そういう意味では(ヘッドセットを装着する)VRだけではなく、(メガネなどでも表現できる)ARもメタバースでは重要。目の前に見えている現実に仮想のものを置いていくイメージだ。

    ――メタバースに関心を示す日本企業も増えています。

    (フェイスブックやインスタグラムなどの)既存のビジネスでも、コマースやクリエーター支援であらゆるパートナーシップを築いてきた。その延長線上にメタバースのビジョンを提示したことで、非常に多くの企業や開発者、政府の関係者と活発な議論が始まっている。

    必ずしも一足飛びにメタバースの話をしているわけではない。既存のサービスの上でできることもあるので、VRやARを使った新しいコマースの仕組みを作るなどの話もしているところだ。

  • >>6

    実際、世界中の企業がメタバース上でのNFTビジネスに動き始めている。

    アメリカのナイキはブロックチェーン技術を用いるバーチャルスニーカー販売の企業を2021年12月に買収。またアメリカでメキシコ料理チェーンを展開するチポトレは、メタバースプラットフォーム「ロブロックス」内に出店。リアル店舗でブリトーと引き換えられる限定コードを配布するなど、リアル・バーチャル横断の取り組みを行っている。

    デジタル上の資産を個人でスムーズに売買できるシステムも整い始めた。例えば世界最大のNFTマーケットプレイス「オープンシー」では、ブロックチェーンゲームのアイテムやデジタルアートが、イーサリアムなどの暗号資産を用いて取引されている。

    ブロックチェーンを使ったゲームなら、ゲーム内で創造した成果物などに金銭的価値をつけられる。「数年内にはメタバース内で家などを建ててNFTとして販売し、親より稼ぐようになる子どもが続出するだろう。人々はメタバースを通じて、学歴や資格などで決まってきたリアル世界のヒエラルキーから解放されるかもしれない」(サードバースの國光氏)。

    リアル世界と遜色ないような稼ぎ口が発展すれば、そこで活躍したいと考える個人や企業がよりメタバースに集まりやすくなるだろう。

    参入各社の「同床異夢」
    セカンドライフ時代との技術や価値観の違いは、確かにありそうだ。ただ、メタバースがマスに定着するかを占ううえでは、拭えない懸念もある。

    その1つは、デバイスやVR制作の技術が、かつてより進化したとはいえ未熟だという点だ。またそれらを使う側の企業も、技術の特性や現時点での限界を深く理解しないまま踏み込んでいるケースが少なくない。

    法人向けにメタバース関連のコンサルティングや制作支援を行うSynamon(シナモン)の武井勇樹COO(最高執行責任者)は、「顧客企業のアイデアの中には、そのまま実装するとユーザーがVR内で酔ってしまうようなものもある」と話す。

    「そういう場合には軌道修正を提案している。細かな調整を怠ると、せっかく時間とお金をかけて行ったイベントなのにユーザー離れを起こしてしまったり、VRそのものに”がっかり感”を持たれてしまう危険もある」(武井氏)

    実はかつて、セカンドライフ内に支社を構えていた東洋経済。画像は2007年に行った、バーチャル支社のお披露目パーティーの様子(編集部撮影)

    もう1つの懸念は、業界内が決して”一枚岩”ではないという点だ。2021年12月には技術・サービスの普及などを目指す業界団体・日本メタバース協会が設立されたが、暗号資産系企業4社が音頭を取る組織構成に対し、業界内外から「当事者不在では」と疑問の声が上がった。

    「メタバース=NFTではない。声の大きい人が『これがメタバースの定義だ』と言うと、(一般の理解が)その通りになってしまう。それは業界の健全な発展にとっていいことなのか」(メタバース関連企業幹部)

    参入企業が急増しているだけに、メタバースで成し遂げたいビジネスがバラバラになるのはある程度仕方がない。互いの差異に折り合いをつけつつ協力関係を築けるかが、今後の業界発展のカギになるかもしれない。

  • 「セカンドライフ」の二の舞は避けられるのか
    メタバース沸騰が「過去のブーム」とまるで違う点
    長瀧 菜摘:東洋経済 記者 /武山 隼大:東洋経済 記者
    2022.01.13

    あっという間に衰退してしまったセカンドライフの時代と現在とでは、いったい何が違うのか。技術や価値観など、さまざまな面から考察した。

    メタバースプラットフォーム「クラスター」では、ユーザー自ら制作したバーチャルのカフェなどでアバターを介したコミュニケーションが日々行われている(画像:クラスター)

    にわかに沸騰するメタバース市場。VRデバイスやスマートフォンを通じ、人々が気軽に交流できるようになった仮想世界で今、世界中の種々雑多な企業が新規事業立ち上げや巨額投資に勤しんでいる(詳細は前回記事:熱狂メタバースに突き進む企業それぞれの皮算用)。

    もっとも、メタバースブームは今回が初めてではない。

    過去のブームの象徴的な存在が、アメリカのリンデンラボが2003年から運営する「セカンドライフ」だ。日本でも一般の個人はもちろん、サントリー、ソフトバンクモバイル(当時)、電通、三越などの大手企業が続々参画。セカンドライフ内に仮想店舗を出したり、マーケティング活動を行ったりと、2000年代初頭から一大ブームとなった。

    リンデンラボは自社サービスを指すものとして、当時から「メタバース」という言葉も用いている。さらに空間内ではリンデンドル(空間内の通貨)での取引や、リンデンスクリプト(空間内で創造物を作るための簡易プログラミング言語)を使ったクリエーターの呼び込み・空間の拡張も行っていた。

    ところが2007年をピークに、アクティブユーザー数は減少に転じる。セカンドライフ自体は現在も稼働しているものの、企業は相次いで撤退。あっという間に”オワコン”と化した。

    今回のメタバースブームも、一時的なものにすぎないのではないか。セカンドライフの時代と現在とでは、何が違うのか。取材を重ねる中で見えてきたのは、当時から大きく事情が変化した3つの点だ。

    デバイスの発展で「大衆化」
    1つ目は、デバイスやネットワークの劇的な進化だ。当時はまだ初代iPhone(2007年発売)の普及前で、メタバースに参加できたのはハイスペックなパソコンなどを所有する一部の消費者のみだった。その状況が、スマホやそれに対応するアプリの普及で一変。若年層も含め、誰もが簡単にメタバースにアクセスできるようになった。

    さらに、2020年10月にメタ(当時の社名はフェイスブック)が発売したヘッドセット型のVRデバイス「オキュラス・クエスト2」も、市場拡大の下地をつくるのに一役買っていそうだ。販売実数は公表していないが、「売れ行きも非常に好調」(フェイスブックジャパンの味澤将宏代表)だという。

    先代機に比べ処理速度・操作性を改良した一方、価格は下げた(先代機は4万9800円~、新型機は3万3800円~)。「メタバースは没入感のある仮想世界を実際に体験してもらわないと(面白さや利便性が)わからない。オキュラス・クエスト2はそのミッションの達成に向けて、非常にいいスタートを切れている」(味澤氏)。

    2つ目の変化は、スマホの普及にも後押しされる形で醸成されたデジタル文化だ。SNSが一般化したことで、人々がリアルと必ずしも同一でないバーチャルのアイデンティティを持つことが当たり前化した。

    「女子高生にインタビューすると、学歴よりもインスタグラムのフォロワーがほしいという声をよく聞く。彼女たちにとっては、デジタル世界のアイデンティティがリアル世界のそれより勝るということ。この価値観はアバター(自身の分身となるキャラクター)を介して仮想空間で他人と交流するメタバースと非常に相性がいい」

    ブロックチェーン技術を用いたコミュニティサービスなどを展開するベンチャー・ガウディの石川裕也CEOはそう分析する。

    「技術やサービスがより洗練されていくことで、あくまでリアルが主でバーチャルが従だったこれまでの価値観が薄れ、バーチャル上の個性や生活が主という時代が来るかもしれない」

    そう展望するのは、VRゲームを皮切りにメタバース事業の拡大を志向するベンチャー・サードバースのCEOで、業界を長年眺めてきたgumi創業者の國光宏尚氏。このような価値観の変化も、メタバースの発展に影響しそうだ。

    個人が「稼げる」新しい仕組み
    3点目で最も大きい変化が、ユーザーや企業が「稼げる」機会の拡大だ。セカンドライフの時代には、インターネット上で決済すること自体がまだ一般消費者層まで定着していなかった。が、EC(ネット通販)やサブスクリプションサービスの普及で、スマホやPCでデジタルにお金を払うことは日常化した。

    加えて、メタバースを取り巻く経済圏をさらに強力にするのがNFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)だ。これまでは”コピー上等”だったネットの世界に、「本物・偽物」「所有」「資産化」といった、フィジカルなものの価値を保証するのと同じ概念が根付き始めている。

  • 【キーワード解説】
    NFT
    Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略。「電子証明書」のようなもので、改ざんが難しいブロックチェーン技術を用いて、アートやゲームアイテムなどのデジタルデータに作者の情報などを記載。その作品が唯一無二のものであることを証明する。第三者への転売も可能で、売買金額の一定割合を原作者に還元するプログラムを書き込むこともできる。

  • Congratulations on the new thread!

    「Web3」について知っておくべきこと…大企業の支配が及ばない次世代のインターネットとは
    Katie Canales
    Dec. 20, 2021, 11:00 AM TECH INSIDER17,332

    Web3、メタバース、暗号通貨、NFT(写真のアートワーク)はすべて、次世代のインターネットで重要な役割を果たすだろう。

    「Web3」とは次世代のインターネットであり、ブロックチェーン上に存在する。

    分散型のネットワークを基礎としているため、フェイスブックやグーグルのように誰かにコントロールされることはない。

    ツイッター、ゲームストップ、レディット、アンドリーセン・ホロウィッツなどが、Web3の構築にリソースを投入している。

    次世代のインターネットでは、プラットフォームごとにソーシャルアカウントを持つことはない。1つのソーシャルアカウントがあれば、フェイスブック(Facebook)やツイッター(Twitter)からグーグル(Google)、ショッピングサイトなどのさまざまなサイトに移動できるようになる。

    ユーザーの動きは、アマゾンウェブサービス(AWS)のような巨大テック企業のサーバーではなく、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の基盤になっているブロックチェーンにカタログ化されるだろう。つまり、現在はフェイスブックやグーグルなどがそれぞれの帝国を支配しているが、Web3では1つの組織がインターネットを支配することはない。

    Web3の世界へようこそ。Web3とは、巨大テック企業が市場の大半を支配する現在のWeb2の次の世代のインターネットだ。Web2の前にはWeb1があり、そこでは単にWebページ上の情報を読むだけだったが、Web2ではよりソーシャルなインターネットへと移行した。

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