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米国株
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米国株の掲示板

金利上昇に備えよ…! これからの米国株で生き残るための「ベストバイ銘柄」
1/12(水) 7:02配信
現代ビジネス

グロース株が売られ、バリュー株が買われる

 米国の長期金利がついにコロナ前水準へ戻った。先週末1月7日の米国10年国債利回りは一時1.8%台をつけ、2020年1月ぶりの高水準になった。週足ローソク足では大陽線(債券価格は大陰線)となり、堂々の節目突破。市場では金融引き締めが加速する展開を織り込みつつある。

 株式市場でも「セクター・ローテーション」と呼ばれる物色の変化が活発化してきた。グロース(成長)株が売られる一方、相対的にバリュー(割安)株が買われる展開が鮮明となってきた。

 こうした動きは、米国の代表的なETF(上場投資信託)をみれば一目瞭然だ。アップルやマイクロソフトなどのグロース株で構成されるバンガード・グロースETF(VUG)は、昨年12月27日終値325.09ドルから、先週末1月7日の終値304.21ドルまで6.4%の急落となった。

 これに対して、JPモルガンやJ&Jなどのバリュー株で構成されるバンガード・バリューETF(VTV)は、149.42ドル(1月7日)で終値ベースの最高値をつけている。

 「金利の上昇局面はグロース株よりもバリュー株が優位」とされるセオリーどおりの流れだが、過去の金利上昇時においてはグロース株のパフォーマンスが極端に落ちたわけではない。

 リーマン・ショック以降を振り返っても、中長期的に相場のリード役を担ってきたのは、むしろグロース株であるといってよいだろう。投資環境が厳しくなるならば、自力で成長できる銘柄の方へ投資資金が向かう側面もあろう。株価上昇の原点は利益成長にあるからだ。

 一時的にはグロース株への逆風は続きそうだが、これまで同様にグロース株の下落局面は投資の好機とみている。ただし、グロース株の中でも選別は絞り込まれることにはなるだろう。ビジネスの成長性、安定性、財務の健全性などが、従来以上に厳しくチェックされそうだ。

 今後はグロース株の中でも、特に優良な高クオリティ銘柄へ「質への逃避(flight to quality)」が進むとみる。

簡易的な3つのチェックポイント

 プロの投資家は、競争力の高いビジネスモデル、潤沢なネットキャッシュ(現金・現金同等物-有利子負債)、フリーキャッシュフロー(純現金収支)の伸び率、などで高クオリティ銘柄を選別することが多い。これらは一般にはやや手間のかかる吟味が必要となる。

 そこで簡易的な選別方法として、(1)ROE(自己資本利益率)、(2)自己資本比率、(3)時価総額、の3点チェックをお勧めしたい。

 (1)ROEは、株主が投下した自己資本に対して企業がどれだけの利益を上げているかを示す代表的な指標だ。

 ちなみに日経平均株価に採用されている225銘柄の平均値は9.55%(1月7日現在)。赤字企業も含めた平均値となることから、10%超えは88銘柄、20%超えならば僅か12銘柄だ。なおROEについては、利益がたいして出ていなくとも、分母の自己資本が小さければ、高い数値となることもあるので注意が必要だ。

 こうしたトラップを回避するには、分母である(2)自己資本もチェックしたい。本来ならば、自己資本比率は単純な高低比較ではなく、企業の業種・業容や成長ステージに応じて評価すべきだ。

 しかし、一定レベルまで成長している企業であれば、財務健全性を示す基準として素直に評価できる。こちらの日経平均株価採用225銘柄(以下、採用銘柄)の平均値は42.02%だ。「良好」の基準とされる50%は、採用銘柄の中でも75銘柄しかない。

 (3)時価総額は簡単にいえば企業の値段だ。企業が発行している全株式を現在の株価で取得する場合の金額である。こちらの採用銘柄の平均値は2兆1236億円だがバラつきはかなり大きい。約3700銘柄ある東証全体を含めても10兆円超えは僅か6銘柄しかなく、1兆円超えも146銘柄を数えるのみである。

 ちなみに「実績ROE20%以上、自己資本比率50%以上、時価総額1兆円」の条件 (1月7日時点)で東証全体をスクリーニングしてみると、エムスリー<2413>、モノタロウ<3064>、中外製薬<4519>、リクルート<6098>、ディスコ<6146>、アドバンテスト<6857>、HOYA<7741>、東エレクトロン<8035>が該当する。

 いずれも高クオリティに相応しい銘柄ばかりだ。逆に言えば、上記8銘柄しか該当しない時点で、日本株にとってはかなり厳しめな検索条件であることもわかる。

割安感の目立つ高クオリティ5銘柄

 ただし、米国株市場に目を向けると、実に71銘柄がこの条件をクリアしてくる。あらためて米国株市場の懐の深さがうかがいしれよう。そのなかでも割安感が目立つ5銘柄を厳選してみたい。

 半導体関連では、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が筆頭だろう。実績PER40倍台は一見すると割安感は乏しくみえる。

 しかし、実績ROEは驚異の72.1%だ。しかも直近5年のフリーキャッシュフローの成長率は90%を超えている。これは他を圧倒する高収益ぶりだ。

 データセンターに加え、メタバースを背景とするゲーム市場の成長を鑑みれば、高水準の伸び率は今後も続くとみる。同じ高クオリティ銘柄のエヌビディア(NVDA)と比べても割安感が強い。

 また、ここにきて見直されているのがインテル(INTC)だ。半導体関連としては収益力が課題とされてきたが、それでもROEは25.6%だ。日本の半導体関連企業と比較すれば、高収益企業の部類に入る。

 PERが10倍程度であることを鑑みれば、お値打ち感があると思われても無理はない。最近では次世代の半導体メモリー「SRAM」への開発意欲の高さも評価を高める要因となっている。

 メタ・プラットフォームズ(FB)〈旧フェイスブック、ティッカーもMVRSに変更予定〉の株価は、社名変更の発表後に失速し、ここ数ヵ月は300ドルから350ドルの往来相場にある。

 アップルによるプライバシー規制強化への警戒感が強まっているが、相場の下値圏では底堅さを強めてくる。(1)「Instagram」や「Facebook」経由の訴求力、(2)新規動画サービス「Reels」の好発進、(3)メタバース市場への期待感、なども優勢となるようだ。

 グーグルことアルファベット(GOOGL)もやはり見逃せない。検索エンジン「Google」や動画共有サイト「YouTube」で不動の地位を築いていることは言うまでもない。

 また、「IoT(モノのインターネット)」分野への投資を積極化させており、自動運転技術の開発でも本命の一角とみられている。なんといっても資金力は圧倒的だ。ネットキャッシュ1000億ドル超えは世界1位であり、2位のアップルにダブルスコアの差をつけている。

 電炉大手のニューコア(NUE)はROE40%超の高収益企業でありながら、実績PERは7倍程度の割安銘柄だ。グロースとバリューの二刀流といってよいだろう。

 米国ではバイデン米大統領の支持率低下が気になるところだが、昨年11月にはインフラ投資法案を成立させており、中間選挙に向けて選挙公約の実現が期待されるところだ。関連銘柄としても注目したい。

 今後はジャブジャブだったマネーの蛇口が徐々に閉められることになりそうだ。グロース株の資金配分への調整が進む段階では、高クオリティ銘柄がつられて調整することも想定される。

 ただし、今週から本格化する企業決算で収益の拡大基調が再確認されれば、高クオリティ銘柄にとっては絶好の投資好機となりそうだ。

宇野沢 茂樹(証券アナリスト)