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三年後の仮想通貨を考えよの掲示板

>>645

エルサルバドルのビットコイン法定通貨化、興味深い実験=BIS

[ロンドン 11日 ロイター] - 国際決済銀行(BIS)の幹部は11日、中米エルサルバドルがビットコインを法定通貨に採用する決定を下したことについて、「興味深い実験」だが、ビットコインは投機的な資産であり、決済手段としての基準を満たしていないと述べた。

同行幹部でBISイノベーションハブの責任者ブノワ・クーレ氏は「エルサルバドルは、実に興味深い実験だ」と発言。

「以前から明らかにしているように、BISはビットコインが決済手段としての基準を満たしていないと考えている。ビットコインは投機的な資産であり、そのような資産として規制すべきだ」と述べた。

  • >>653

    なぜエルサルバドルはビットコインを法定通貨にすると決めたのか

    エルサルバドルのブケレ大統領は、6月5日にマイアミで開催されたカンファレンス「ビットコイン2021」向けの動画メッセージで、同国がビットコインを法定通貨にすると発表した(参考記事)。その後、6月9日には10条からなるビットコイン法がエルサルバドル議会の圧倒的支持(84人中62人が賛成)で可決された。同国の法律ルールに基づき、3カ月後に施行される。

    エル・ゾンテビーチのレストラン。「ビットコインが利用可能」という看板を掲げている(写真)

     この動きに呼応するかのように、米ツイッターのドーシーCEOもツイッターにビットコインを使った資金決済機能を搭載すると発表した。

     世界中を驚かせた仮想通貨を法定通貨にするという同国の判断は、日本においては、仮想通貨ユーザーの賛成と、既存の世界で生きている人々の批判という紋切り型の反応に割れている。批判の中には、「問題外の外」などと発展途上国をバカにしたような辛辣なものもある。

     世界に目を向ければ、国際通貨基金(IMF)などがビットコインの法定通貨化によるマクロ経済への影響について懸念を表明している。米上院の銀行委員会も同様の懸念を指摘しているが、今のところ明確には批判してない。むしろ、世界の中央銀行の集まりである国際決済銀行(BIS)やテキサス州の銀行当局は、ビットコインを銀行が資産として持つことにOKを出している。

     海外では年金を含めたファンドや大手企業は既に資産を保有している。日本の交換業者であるビットフライヤーが日本円とビットコインのペア取引を始めると発表するなど、ビットコインは一般に受け入れられる方向に進んでいるように思われる。

     現状、エルサルバドルの判断については賛否両論があるが、どちらも(1)エルサルバドルがビットコインを法定通貨に決めようとした背景、(2)ビットコインには資金決済機能があるのかどうか、(3)ビットコインの持つ弱点をどう克服するか──を真剣に検討することを怠っているような印象を受ける。

     そこで、本稿では、前編として、(1)と(2)の半分について敷衍したい。(2)の半分というのは、法的側面の前に機能面に焦点を当てるという意味だ。

    ■ 法定通貨化の裏にある同国の事情

     エルサルバドルは、人口660万人、国内総生産(GDP)が270億ドルほどの小国だ。GDPのうち、米国にいる同国からの移民250万人による本国への送金が60億ドルとGDPの22%を占める。この60億ドルが、エルサルバドルの貧困層の命綱である。

     米国への不法入国を目論む中米人はグアテマラとホンジュラスから来た人々が中心だが、実はここにはエルサルバドル人も含まれている。同国の貧困率(基礎的生活をカバーする資金のない人の割合、米国調べ)は23%と両国(グアテマラ59%、ホンジュラス48%)より低いが、実際にエルサルバドルに行けば、両国に近い印象を受ける。

     つまり、国民の大半を占める貧困層は日々の生活に追われている。銀行口座を持っているのは国民の2~3割で、自宅でインターネットにつながる割合も4割を切る。携帯電話は人口の8割が持っていると言われるが、それは職を得ることを含め生活に不可欠なため、携帯電話に生活費の多くを充てているからだ。多くは前払い式のSIMカードを入れる携帯電話である。

     「銀行口座もないのに、どうやって米国から送金するのか?」と疑問に思う読者も多いだろう。その答えは、「送金業者や電力会社、ガス会社など信頼の置ける公的な色彩を持つ組織を活用して送金している」になる。こういった組織の支店に送金が届き、それを現地の家族が取りに行くという形を取る。

     米国の銀行からエルサルバドルの電力会社の各支店に送金はできないので、そこは送金専門会社が高い手数料を取り、請け負っている。有名なのは、日本でもサービスを提供しているウエスタン・ユニオンとマネーグラムの2社である。

     この構造が、今回のビットコインの法定通貨化の一因なので、覚えておいてほしい。

     ちなみに、犯罪者を全人口で割り十万倍した犯罪指数を見ると、エルサルバドルは67.4で世界第7位の治安の悪さである。同国には麻薬密輸団を含むマフィアも少なくない。

     その背景にあるのは貧困だ。同国の住民は、電気代を節約するため夜は早く寝る。食事には鶏肉や豆類こそ出るが、高価な牛肉は出てこない。こういった貧困から抜け出したい若者が、犯罪組織に加わっていくという悪循環だ。

     1992年に終結した内戦以降、二大政党が実権を握っているが、政治は腐敗しており、過去三代の大統領は、死亡、刑務所送り、ニカラグアへ逃亡というお粗末な状況である。首都サンサルバドルの市長を務めたポピュリストのブケレ氏が大統領に選出されたのは2019年だが、彼の登場は多くの国民にとって希望だった。

     ブケレ大統領は1回目の投票で53%の得票率を獲得し、正々堂々と大統領になった。その彼が国民の支持を背景にビットコインの法定通貨化を進めるという点に関しては、民主的なプロセスを経ているということを理解する必要がある(この意味は、後編で説明する)。

    ■ エルサルバドルがビットコインを選んだ理由

     エルサルバドルの中央銀行は、自国の通貨を独自に安定供給することを諦め、2001年から米ドルを法定通貨としてきた。同国の中央銀行の人間に理由を聞いたところ、独自通貨を維持するコストが高い点に加えて、GDPの20%を占める送金が米ドルであること、高犯罪率の中で独自の通貨を持つには偽札防止が難しかった──といった理由によるとのことだ。

     通貨の維持コストを日本銀行券の例で見ると、例えば、1万円札は平均して2年に1回の割合で新札に入れ替わる。この2年間にお札は日本銀行と市中を出入りし、日銀に戻るたびに偽札かどうかチェックされている。また、チェックの過程で再び市中に出せないと判断された(傷んだ)場合には消却される。お札が生まれてから死ぬまでのコストが膨大だということは容易に想像できるだろう。

     そこで、米ドルを法定通貨にしたエルサルバドルだが、もう一つ乗り越えたい壁があった。それは、上述した米国からの高い送金コストである。

     送金コストは二つあるが、その一つは手数料の高さである。日本でも、国内為替の送金手数料を下げるという話題が昨年から出ているが、外国送金手数料はさらに高い。その代わり、SWIFT(国際銀行間通信協会)を通すことで安全・確実な送金ができる。言い換えれば、SWIFTの安全性を確保するコストが手数料に反映されているのだ。それでも手数料率は、例えば三菱UFJ銀行で見ると、インターネット送金なら3000円、店頭窓口でなら7500円と高い。しかも対象通貨は、日本円、米ドル、英ポンド、豪ドル、ニュージーランドドル、香港ドル、ユーロの8通貨である。

     世界には、銀行口座を持たない成人が38億人いる(世界銀行の調べでは、2018年の成人人口の69%)。こういった人々のために、ウエスタン・ユニオンなどの送金会社がSWIFTに代わる安全・確実な送金を約束する一方、独自のシステムを維持するために高い手数料を取る。現地での電力会社での取扱い手数料を含めれば、送金額の20%程度となる計算だ。

     もう一つの送金コストとは、犯罪被害に遭うコストである。

     銀行口座を持たない人は現金を持ち歩く。彼らは送金できる場所(例えばウエスタン・ユニオン)の支店まで現金を持って行くが、毎月のように通っていると、犯罪集団から目を付けられて支店の外で現金を強奪される。送金直前の支店が襲われるという例も決して少なくなく、実はこのリスクも送金会社の手数料に入っている。警察の見回りもあるが、銀行と比べてシステマティックな防犯体制という点で劣るため、犯罪がなくならない。

     エルサルバドルの大蔵省と中央銀行は他の送金受入国とともに、米国財務省や地区連銀を巻き込んで送金コストの引き下げに取り組んできたが、どれも成功しなかった。そこに希望を与えたのが、ビットコインだった。ビットコインの送金手数料は驚くほど安かったのである。実際、筆者が見てきた限り、過去の様々な取り組みの中でもビットコインが秘める可能性は最も高いと感じる。