ここから本文です
投稿一覧に戻る

Achilles Last Standの掲示板

①恒大とは?創業者・許家印氏の政治的背景は?
中国を代表する不動産開発業者である恒大は1996年、中国南部の広東省広州市で創業した。当初は従業員10人弱の小さな会社だったが、低価格の小型マンションで足場を築き、中国の不動産ブームの波に乗り2000年代に急成長した。2020年12月期の売上高は5072億元(約8兆5000億円)にのぼり、物件販売面積は中国で2位だった。

創業者で経営トップである許家印・董事局主席は、1990年代に勤めていた商社で不動産事業の立ち上げに関わり、中所得層向けの住宅物件で大きな成功を収めた。その知見を生かし恒大を設立した後は、物件デザインや資材調達の社内ルールを整備、原価を抑制する戦略で会社を急成長させた。
中国調査会社の胡潤研究院がまとめる中国富豪番付では、2017年に許氏の資産額が2900億元(約5兆円)で首位になったこともある。18年には改革開放政策40周年に絡んで中国共産党などから経済成長への貢献が大きい「傑出した」民営企業家100人の1人にも選ばれた。

経済界での存在感を増した許氏は中国の政策助言機関、全国政治協商会議の常務委員に名を連ねるようになり、政治にも接近した。習近平(シー・ジンピン)指導部が掲げる「脱貧困」などに積極的に呼応、地方の産業振興や教育支援へ資金を投じて有力政治家とのコネクションを築いてきた。

不動産業で大きな成功を収めた許氏は様々な領域へと進出する。その代表格がスポーツで、保有するサッカークラブ「広州FC(旧・広州恒大)」はアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を2度制覇、名門となった。またバレーボールなどの新興にも力を入れた。ビジネスではテーマパーク事業、電気自動車(EV)開発などにも手を広げた。一方で借り入れや社債発行は膨らみ、グループの財務は安定性を失った。

  • >>47

    ②経営難に陥った理由は?
    潮目の変化は20年夏に訪れた。中国人民銀行(中央銀行)は大手不動産会社に対して負債比率など守るべき財務指針「3つのレッドライン」を設けた。「総資産に対する負債(前受け金を除く)の比率が70%以下」「自己資本に対する負債比率が100%以下」「短期負債を上回る現金を保有していること」の項目だ。不動産会社は守れなかった指針の数に応じて銀行からの借り入れ規模などが制限される。
    重い債務を抱える恒大は人民銀の示す指針を守るべく財務改善に動き始めた。方策のひとつが値引きによるマンションの販売加速だ。今年7月、同社の物件販売単価は1平方メートルあたり8055元と前年同月比14%下落した。現金の捻出により一部の負債などは圧縮できたが、それでも改善の足取りは鈍い。不動産市場調査を手がける貝殻研究院によると21年6月末時点で、恒大は「3つのレッドライン」のうち2つを守れないままだ。

    恒大と取引する工事会社や資材会社からは、恒大の代金支払いが滞っているとの声が上がるようになった。本来デベロッパーは絶対的存在で、代金支払いなどで問題が生じても下請け側からは文句が言いにくい。恒大の財務不安が力関係を変化させているようにみえる。ある地方銀行は恒大の預金凍結に走った。融資を巡るトラブルがあったとみられる。