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日本株が「8月末までに回復する」と言い切れる理由

2021年も半分が過ぎようとしている。今までの期間、日本株式相場はどうであったか、そして今後どうなるか。それを現時点で評価、予想してみたい。(トリオアセットマネジメント株式会社代表取締役 奥村 尚)

● 日米欧の今年の株式相場は 四つの下げ局面

 一言に凝縮すると、今までも、そしてこれからも、米国次第、ということになると思う。

 日米両国の今年の株価推移を見るとはっきりわかる。欧州もいれて代表的な株価指数を並べると次のようになる (日経平均、独DAX、米NYdow、6月10日まで)。

 今年の株価推移で、日欧米が共通して下げた節目は四つある。下げた理由は、全て米国によるものだった。そのあたりを、まずは確認しながら見ていこう。

 今年に入り最初の3カ月、株式市場は日欧米ともに好調に推移した。特に2月末までは日本が一番だった。

 トランプ前大統領の弾劾裁判が無罪評決で決着がつき、追加景気対策の早期成立への期待が高まっていた時期である。日本は、ファイザーのワクチン特例承認を出した。この時は、役人が休日出勤して週末に承認を出したというニュースにも私は驚いたものだった。内閣府が公表した2020年10~12月期のGDP速報が良かったということもあり、今年の上半期高値を付けた。

 この間、1月末の下落が最初に目につくが、これが下げ局面、最初の節目だ(図中〈1〉)。

 これはゲーム専門店の米ゲームストップ株をめぐる、米国のヘッジファンドと個人投資家によるマネーゲームに影響されたものだ。ゲームストップの株価は2020年4月には2.5ドルだったが、今年1月28日には483ドルに高騰し、そして2月19日には38.5ドルに下がる乱高下となった。

 この影響で、欧州と日本の株式相場も下落した。

 ネットで情報拡散されることで急激な株価変動が起きる「ミーム株」は、米国株式市場において個人投資家の人気が高い。その影響で日本の株式相場も下がったときは、買いチャンスと思って良いだろう。

● 欧米に比べて 回復が遅い日本

 二つ目の下げ局面は3月の節目だ(図中〈2〉)。

 3月中旬の米連邦公開市場委員会(FOMC)の後に大きく下落した。テーパリングを行うのではないかと市場が解釈したことによる下げだ。

 テーパリングは米連邦準備制度理事会(FRB)が行っている資産購入を規模縮小することで、要するにカネのバラマキを縮小することである。車でいうとアクセルを離す行為だ。その足は、いずれブレーキに向かう。それを嫌気した下げだった。

 だが、テーパリングは市場の思い込みであり、パウエル議長が粘り強く金融緩和を継続すると発言し続けたこともあり、欧米の株式相場はあまり下がらず、すぐに戻した。

 一方、日本は1都3県が緊急事態宣言の解除という追い風があったのに、この時も日本株が一番下げた。この頃、日銀もETFを大量に買い続けたにもかかわらず、だ。

 三つ目の節目(図中〈3〉)はコロナ感染拡大への懸念によるもので、世界的に軟調であった。バイデン大統領のキャピタルゲイン増税の嫌気もあった。

 この時は円高を伴った株価下落だったので、リスクオフの動きではないかという危惧もあったが、世界的にはリスクオフという雰囲気もなく、結局日本だけが一番大きく下げた。緊急事態宣言が4都府県に出されたのがこの下落後の4月25日であり、その後、株価下落が止まった。

 四つ目の節目(図中〈4〉)では、米国の物価指数の上昇を背景にインフレ警戒が広がり、5月11~13日の3日間で日経平均は7%、2000円を超える下げとなった。この時、日本は年初来の上げがリセットされ、100の位置に戻ってしまった。

 四つの節目は、世界同時株安であったが、その理由は日本ではなく、米国(あるいは欧米)である。にもかかわらず、日本だけいつも一番大きく下げている。

 各節目における日米の下落の大きさを一覧にしてみるとわかりやすいが、全て日本の方が大きく下げている。米国株は日本の下落率と比べ、平均46%しか下落しておらず、しかもあっという間に戻している。

 結局、いろいろな局面で下げはあれど、欧米は回復が早い。そして、戻っていないのは日本だけなのだ。

● 日本の株価下落率が 大きい二つの理由

 なぜ、こうなってしまったのか。

 昔からある、「米国がくしゃみをすると日本が風邪をひく」「いつもそうだから」という言い方が最も説明できているが、それでは身もフタもない。日本の下落率が大きい理由として考えられるのは、米国のインフレ懸念と、日本のコロナウイルス感染状況への懸念という二つだ。

 この二つの理由を、もう少し掘り下げて説明したい。

 まずは米国のインフレ懸念についてだ。

 米国の金利上昇を世界の市場は恐れている。世界中の中央銀行や政府がカネをばらまいているので今の好景気になっているが、その状況が一変するからだ。

 中央銀行はインフレを抑制(物価を安定)するのが仕事だから、過度な景気を抑えるために誘導金利を上げる。そうなると経済の血であるカネの流れが止まるからせっかく動きだした経済が止まる。こうしたシナリオを株式市場は警戒しているのだ。

 あまり指標が良すぎると、中央銀行が利上げを誘導しなくても、米長期金利が自主的に上昇する。そうすると、金利の上昇はマズい、という警戒感が発生して株価が下落する、というパターンになるのだ。米国の景気を示す指標で良い数値が出るたび本来は株価が上がるはずだが、今年はそうでもないのは、市場が警戒しているのだ。

 次に、日本のコロナウイルス感染状況への懸念についてだが、これは日本のワクチン普及が進まないことが大きな原因だ。

 日本のワクチン普及の現状はひどい。6月13日の時点で日本の接種率がG7で最下位なのは仕方ないとしても、先進国クラブOECD(38カ国)でも最下位。65歳未満の人への接種券の発送は、大半の自治体はメドが立っていない。将来が見えない、という状況が最もつらく暗い状況なのだが、今がまさにその状況であるといえる。

● 日経平均株価は 今夏に回復の可能性

 しかし、これら2つが日本株下落の原因なのであれば、むしろ日本株は今からでも買いである。その理由を説明したい。

 まず、米国のインフレ懸念については、いまだ払拭(ふっしょく)されてはいないものの、心配はないと言えるだけの状況証拠がそろってきた。

 米雇用統計は、4月、5月(発表はそれぞれ5月、6月)ともに芳しくはないが、失望するほど悪くもない。これこそが、今最も株式市場が渇望していることだ。あまり良すぎると、中央銀行(正確にはFOMC)が金利を上げる懸念が高まるだろう。

 もうひとつ。ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーなど大手投資銀行は、米長期金利は今後大きく変動しない見通しを出し、そしてそのシナリオに沿ったボラティリティー低下を見込むトレード戦略を推奨した(6月7日 Bloomberg)。それが影響しているかどうかはわからないが、それ以降、米国金利は目に見えて下げ、ボラティリティーも低下した。

 ただし、今後2カ月程度というトレード戦略であり、8月以降は不透明だ。

 FRBは例年8月、巨大なスキーリゾート地で知られる西部ワイオミング州ジャクソンホールで経済シンポジウムを行う。そのときにいろいろな話を切り出す。現時点では利上げは2023年まで考えないとしているが、テーパリングをいつ頃から始めたいか、という話題があるか注目される。

 二つ目の日本のワクチン事情についても、ワクチン接種率は次第に高まっている。Our World in Dataは、オックスフォード大学を中心に世界の主要大学やメディアが協力する世界規模の問題を見える化したサイトである。このサイトに掲載されているG7のワクチン普及率(少なくとも1回接種した人の人口に占める割合)グラフをご覧いただきたい。

 6月10日で日本は12.6%だが、これはカナダやフランスの3月30日の数字と同じだ。2カ月半の遅れということになる。つまり順調にいけば2カ月半後の8月末には日本の接種率は今の欧米の水準となる可能性が高い。

 とすると、8月末になる前に、日本の株価は欧米並みに回復すると考えて良い。6月11日の株価指数は欧米とも年初から14%程度(日本は6%)上げた。約8%の差は、日経平均でいうと3万1000円の位置だ。十分に達成できると思う。

奥村 尚