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貼っていくスレ
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世界遺産に登録されているカッパドキアや、ケバブなど世界三大料理にも数えられるグルメで知られるトルコ。首都イスタンブール近郊は、古くからアジアとヨーロッパを結ぶ交易の拠点として栄え、親日国としても知られています。そんなトルコと日本の本格的な交流が始まってから、ことしでちょうど130年。トルコは今、その市場規模や成長性から、日本企業の間でビジネスの相手先として関心が高まっています。先月、25年以上にわたって日本企業とともにインフラ輸出などのプロジェクトに関わり、日本の旭日中綬章を受章したトルコの実業家、アフメット・チャルック氏が来日。日本とトルコのビジネスの可能性について、インタビューしました。そこにはどんなチャンスがあり、どんな課題があるのでしょうか。(経済部記者 池川陽介)

トルコは“親日国”だと言われています。きっかけは130年前の明治23年。トルコの軍艦「エルトゥールル号」が和歌山県沖で遭難したのです。台風による強風と高波の影響を受けて沈没し、乗組員500人以上が亡くなりました。

この時、地元の住民が乗組員の救助にあたり、69人の命が救われました。それ以来、トルコは“親日国”として、日本と長く友好関係を続けています。イラン・イラク戦争のさなかの昭和60年には、イランに取り残された200人余りの日本人の脱出をトルコ航空が手助けしたというエピソードもあります。

そんなトルコに今、日本企業が熱い視線を送っています。注目しているのは、市場規模と成長性です。トルコの人口は8300万人。中東ではエジプト、イランに次ぐ規模です。国民の年齢の中央値は国連の推計で31.5歳。48.4歳の日本よりひと回り以上若いのです。

ジェトロ=日本貿易振興機構が去年、トルコに進出している50社余りの日本企業に行ったアンケートでは、7割が「市場規模と成長性に魅力を感じている」と回答しました。

またトルコはヨーロッパ、中東、アフリカ、中央アジアを結ぶ場所にあり、地理的にも大きなメリットがあります。特にEU=ヨーロッパ連合との間では、貿易にかかる関税を原則お互いゼロにする「関税同盟」を結んでいます。トヨタなど各国の自動車メーカーは、トルコに生産拠点を設けて、ヨーロッパに輸出するビジネスモデルを展開しています。

こうしたことを背景に、トルコに進出している日本企業は、去年11月の時点で192社とこの5年で50社程度増えました。

今月30日にはトルコ航空が、7月には全日空が、それぞれ羽田-イスタンブール便を就航させる予定で、ビジネス面だけでなく観光面でも両国の関係の強化が期待されています。

2月、日本と深い関係を持つトルコの実業家が来日しました。トルコ企業「チャルック・ホールディング」の創業者、アフメット・チャルック会長です。

チャルック氏は、25年以上にわたって、三菱商事やセコムなど数々の日本企業と協業し、インフラや金融、建設や通信など幅広いビジネスの展開に携わってきました。去年春には、日本とトルコの経済関係の強化に貢献したとして旭日中綬章を受章しています。

トルコと日本をよく知るチャルック氏に両国のビジネスの展望について聞きました。
Q 日本とトルコのビジネス関係をどうみていますか。
チャルック氏
「トルコと日本は、トルコの労働力と日本の技術力が互いに足りない部分を補う補完関係にあります。私はこれまで数多くのプロジェクトを実現させてきましたが、まだポテンシャルのほうが大きい。日本とトルコの企業が一緒になって、周辺国や第三国で、さらに大きなプロジェクトを実現させていきたいと思っています」
Q 日本企業はトルコでどんなビジネスチャンスがありますか?
チャルック氏
「日本企業の特徴は高い技術力を持っていることです。日本人は、高い規律を持って働き、経験も豊富にあります。トルコの市場では、新しい技術、特にデジタルの分野でチャンスがあります。日本企業の技術を持って、新しいチャンスを発掘できると思っています」
「日本企業と協力できる可能性があるのはアフリカです。電力ビジネスやインフラ投資、デジタル分野や決済などの分野ではすでにビジネスを始めているものもあります。今後、日本企業と一体になってアフリカでの活動を活発に進めたいですね」
課題は不安定な情勢と関税

一方で、課題もあります。先ほど紹介したアンケートで、進出した日本企業にトルコでのビジネスの課題について複数回答で聞いたところ、7割が「不安定な政治・社会情勢」をあげました。

アメリカとの関係悪化をきっかけに、トルコの通貨リラはおととし、大きく下落しました。現在はだいぶ落ち着いていますが、リラの大幅下落とそれに伴うインフレで、トルコ国内の景気は停滞が続いています。

また、日本とトルコの間のEPA=経済連携協定の交渉も課題です。EPAを結んだ国どうしは互いの関税を撤廃したり大幅に下げたりすることで経済活動を活発化させることができますが、交渉はまだまとまっていません。

トルコはEPAを結んでいない国に対して、特定の品目で独自に関税を上乗せしています。日本もその対象で、例えば日本のボールペンには通常の関税3.7%に加えて、23%の追加関税が課されるなど、日本企業にとっては大きなハンデになっています。
Q 日本とのビジネスには課題も多いと思いますが、どう考えていますか?
チャルック氏
「トルコの周辺国の情勢が不安定になったことで、トルコでも日本企業のビジネスが減った時期があります。今はだいぶ落ち着き、観光客や投資額も増えている。これが増え続けることを願っています。トルコは安全な国なので、観光でもビジネスでも、多くの日本人に来てほしいです」
「日本とトルコはお互いをもっと深く知り、もっと戦略的にあるべきだと思います。ビジネス単独でなく、政治や金融なども絡めて、ビジネスを進められるような形に発展していければいいと思います。もう1つ付け加えるとするならば、お互いのマーケットをそれぞれの国がもっと知る必要があると思います。私が知っているところでは、トルコに投資をした日本企業は、その投資に満足していると思います」
まず空港に降り立つべし


距離は遠いものの、親密な関係が続いてきたことから“遠くて近い国”とも呼ばれてきた日本とトルコ。ジェトロの担当者は、トルコの国民性の1つとして「ことばは話せなくてもまずは空港に降り立つべし」というチャレンジ精神を挙げています。

人口減少や少子高齢化などさまざまな課題に直面する日本は、前向きなトルコとビジネス面での交流を重ねることで、解決できる課題も少なくないのかもしれません。

最後に、取材を終えた後、チャルック氏が私に語ったことばを紹介したいと思います。

「日本の国旗には『太陽』があり、トルコの国旗には『月』が入っています。まさにお互いの足りない部分を補う関係にあるとは思いませんか?」

遠くて近い日本とトルコ。互いのよさを生かしてタッグを組めば、きっと大きなビジネスチャンスが待っている。そう感じた取材でした。

貼っていくスレ 世界遺産に登録されているカッパドキアや、ケバブなど世界三大料理にも数えられるグルメで知られるトルコ。首都イスタンブール近郊は、古くからアジアとヨーロッパを結ぶ交易の拠点として栄え、親日国としても知られています。そんなトルコと日本の本格的な交流が始まってから、ことしでちょうど130年。トルコは今、その市場規模や成長性から、日本企業の間でビジネスの相手先として関心が高まっています。先月、25年以上にわたって日本企業とともにインフラ輸出などのプロジェクトに関わり、日本の旭日中綬章を受章したトルコの実業家、アフメット・チャルック氏が来日。日本とトルコのビジネスの可能性について、インタビューしました。そこにはどんなチャンスがあり、どんな課題があるのでしょうか。(経済部記者 池川陽介)  トルコは“親日国”だと言われています。きっかけは130年前の明治23年。トルコの軍艦「エルトゥールル号」が和歌山県沖で遭難したのです。台風による強風と高波の影響を受けて沈没し、乗組員500人以上が亡くなりました。  この時、地元の住民が乗組員の救助にあたり、69人の命が救われました。それ以来、トルコは“親日国”として、日本と長く友好関係を続けています。イラン・イラク戦争のさなかの昭和60年には、イランに取り残された200人余りの日本人の脱出をトルコ航空が手助けしたというエピソードもあります。  そんなトルコに今、日本企業が熱い視線を送っています。注目しているのは、市場規模と成長性です。トルコの人口は8300万人。中東ではエジプト、イランに次ぐ規模です。国民の年齢の中央値は国連の推計で31.5歳。48.4歳の日本よりひと回り以上若いのです。  ジェトロ=日本貿易振興機構が去年、トルコに進出している50社余りの日本企業に行ったアンケートでは、7割が「市場規模と成長性に魅力を感じている」と回答しました。  またトルコはヨーロッパ、中東、アフリカ、中央アジアを結ぶ場所にあり、地理的にも大きなメリットがあります。特にEU=ヨーロッパ連合との間では、貿易にかかる関税を原則お互いゼロにする「関税同盟」を結んでいます。トヨタなど各国の自動車メーカーは、トルコに生産拠点を設けて、ヨーロッパに輸出するビジネスモデルを展開しています。  こうしたことを背景に、トルコに進出している日本企業は、去年11月の時点で192社とこの5年で50社程度増えました。  今月30日にはトルコ航空が、7月には全日空が、それぞれ羽田-イスタンブール便を就航させる予定で、ビジネス面だけでなく観光面でも両国の関係の強化が期待されています。  2月、日本と深い関係を持つトルコの実業家が来日しました。トルコ企業「チャルック・ホールディング」の創業者、アフメット・チャルック会長です。  チャルック氏は、25年以上にわたって、三菱商事やセコムなど数々の日本企業と協業し、インフラや金融、建設や通信など幅広いビジネスの展開に携わってきました。去年春には、日本とトルコの経済関係の強化に貢献したとして旭日中綬章を受章しています。  トルコと日本をよく知るチャルック氏に両国のビジネスの展望について聞きました。 Q 日本とトルコのビジネス関係をどうみていますか。 チャルック氏 「トルコと日本は、トルコの労働力と日本の技術力が互いに足りない部分を補う補完関係にあります。私はこれまで数多くのプロジェクトを実現させてきましたが、まだポテンシャルのほうが大きい。日本とトルコの企業が一緒になって、周辺国や第三国で、さらに大きなプロジェクトを実現させていきたいと思っています」 Q 日本企業はトルコでどんなビジネスチャンスがありますか? チャルック氏 「日本企業の特徴は高い技術力を持っていることです。日本人は、高い規律を持って働き、経験も豊富にあります。トルコの市場では、新しい技術、特にデジタルの分野でチャンスがあります。日本企業の技術を持って、新しいチャンスを発掘できると思っています」 「日本企業と協力できる可能性があるのはアフリカです。電力ビジネスやインフラ投資、デジタル分野や決済などの分野ではすでにビジネスを始めているものもあります。今後、日本企業と一体になってアフリカでの活動を活発に進めたいですね」 課題は不安定な情勢と関税  一方で、課題もあります。先ほど紹介したアンケートで、進出した日本企業にトルコでのビジネスの課題について複数回答で聞いたところ、7割が「不安定な政治・社会情勢」をあげました。  アメリカとの関係悪化をきっかけに、トルコの通貨リラはおととし、大きく下落しました。現在はだいぶ落ち着いていますが、リラの大幅下落とそれに伴うインフレで、トルコ国内の景気は停滞が続いています。  また、日本とトルコの間のEPA=経済連携協定の交渉も課題です。EPAを結んだ国どうしは互いの関税を撤廃したり大幅に下げたりすることで経済活動を活発化させることができますが、交渉はまだまとまっていません。  トルコはEPAを結んでいない国に対して、特定の品目で独自に関税を上乗せしています。日本もその対象で、例えば日本のボールペンには通常の関税3.7%に加えて、23%の追加関税が課されるなど、日本企業にとっては大きなハンデになっています。 Q 日本とのビジネスには課題も多いと思いますが、どう考えていますか? チャルック氏 「トルコの周辺国の情勢が不安定になったことで、トルコでも日本企業のビジネスが減った時期があります。今はだいぶ落ち着き、観光客や投資額も増えている。これが増え続けることを願っています。トルコは安全な国なので、観光でもビジネスでも、多くの日本人に来てほしいです」 「日本とトルコはお互いをもっと深く知り、もっと戦略的にあるべきだと思います。ビジネス単独でなく、政治や金融なども絡めて、ビジネスを進められるような形に発展していければいいと思います。もう1つ付け加えるとするならば、お互いのマーケットをそれぞれの国がもっと知る必要があると思います。私が知っているところでは、トルコに投資をした日本企業は、その投資に満足していると思います」 まず空港に降り立つべし   距離は遠いものの、親密な関係が続いてきたことから“遠くて近い国”とも呼ばれてきた日本とトルコ。ジェトロの担当者は、トルコの国民性の1つとして「ことばは話せなくてもまずは空港に降り立つべし」というチャレンジ精神を挙げています。  人口減少や少子高齢化などさまざまな課題に直面する日本は、前向きなトルコとビジネス面での交流を重ねることで、解決できる課題も少なくないのかもしれません。  最後に、取材を終えた後、チャルック氏が私に語ったことばを紹介したいと思います。  「日本の国旗には『太陽』があり、トルコの国旗には『月』が入っています。まさにお互いの足りない部分を補う関係にあるとは思いませんか?」  遠くて近い日本とトルコ。互いのよさを生かしてタッグを組めば、きっと大きなビジネスチャンスが待っている。そう感じた取材でした。