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米経済のピークアウト感が見え隠れ。米朝接近を横目にイランで起きていること=近藤駿介

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現時点で市場が直面している地政学リスクは北朝鮮とイランの2つ。これらには大きな相違点があり、債券市場とFRBの間では米経済の景気判断に乖離が生まれています。(『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』近藤駿介)

プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料版『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』を好評配信中。
地政学リスクの主役はイランへ。FRBと市場の景気判断に乖離が…
北朝鮮とイランにある大きな相違点
途中にイラン核合意廃棄を挟みながらも、パフォーマンス好きのトランプ大統領と、演出好きな金正恩委員長という2人が織りなす「Show Time」を見せ付けられた1週間であった。

現時点で市場が直面している「地政学リスク」は北朝鮮とイランの2つ。しかし、この2つの「地政学リスク」には大きな相違点がある。それは、舞台裏での交渉の有無である。

北朝鮮問題は、ポンペオ国務長官が2度にわたって金正恩委員長と直接会うほか、習近平主席や文在寅大統領が間に入るなど、舞台裏では様々な駆け引きが行われている。舞台側で様々な駆け引きが行われているということは、米朝が一定のシナリオに沿って動こうとしている証左だといえる。

米朝は「核廃棄プロセス」で対立している
米朝間での対立点は核廃棄に向けてのプロセス。核廃棄後に経済政策を解除する「リビア方式」を主張する米国と、「段階的核廃棄」を主張する北朝鮮の間で、どのレベルで折り合いがつくかが焦点となっている。

「リビア方式」で忘れてはならない点は、1993年に核廃棄に応じたカダフィ大佐に対して、NATO軍が2010年末から始まった「アラブの春」の際の国民弾圧を理由に、2011年の4月にカダフィ大佐の邸宅を空爆して政権を崩壊させた歴史的事実。

強硬派のボルトン大統領補佐官が主張する「リビア方式」は、単に核放棄後に経済制裁を解除するというプロセスに留まらず、場合によっては空爆も辞さないというところまで含んでいることは明らかだ。

カダフィ大佐の失敗を熟知している北朝鮮からすれば、米国から早期での体制保障を取り付けなければ意味がない。

ポンペオ国務長官が完全な非核化を条件に、北朝鮮側に体制保証や経済支援の用意があるというトランプ政権の考えを伝えていたと報じられているのも、カダフィ大佐と同じ轍は踏まずに保証を与えることで、「リビア方式」を受け入れさせようという意思の表れだといえる。

北朝鮮問題はピークを超えた
国際社会に後ろ盾になる国が存在しなかったカダフィ大佐のリビアと異なり、現在の北朝鮮には「中国」という後ろ盾と、「韓国」という同胞がいる現実を鑑みると、「検証可能で不可逆的な形」での体制保証は与えやすい状況にある。

金正恩氏がポンペオ国務長官との会談後に「新たな代案を高く評価した」などと伝えているのも、「検証可能で不可逆的な形」での体制保障に対する提案があったからだと思われる。

こうした一連の動きから察するに、地政学リスクとして北朝鮮問題はピークを超えたと言えそうである。

落としどころが見えない「イラン問題」
「キューバ危機」や「リビア方式」という過去の事例を共通認識として水面下での交渉がなされ、ピークを超えた北朝鮮問題。

それに対してイラン問題には、共通認識となる事例はなく、水面下で交渉が行われているにしても落としどころが見えない状況にある。

奇しくも、週明けの14日には米国のイスラエル大使館がエルサレムに移転され、その式典には最近表舞台にほとんど出なかったユダヤ教徒であるクシュナー、イヴァンカ夫妻が参加することになっている(編注:原稿執筆時点2018年5月13日)。

トランプ大統領がイランとの核合意からの離脱を表明してから既にイスラエルとイランの間では軍事的衝突も起きており、「地政学リスク」の主役はシナリオの見えないイランに移って来ている。

地政学リスクの「主役交代」で市場は…
こうした「地政学リスク」の主役交代によって、米国本土が攻撃を受ける可能性は低下したといえ、金融市場の「地政学リスク」に対する警戒感も一旦はピークアウトすることになりそうだ。NYダウが7日続伸を見せたのも、こうした「地政学リスク」の主役交代の動きを受けたものだと言えそうだ。

株式市場が「地政学リスク」の主役交代を好感してリスクオンの動きを見せ始める一方、債券市場は米国経済に対して慎重な見方が強まっている。

イラン問題もあり原油価格が3年ぶり高値になると同時に、金融政策の指標となっているPCEコアデフレーターが前年比1.9%上昇とFRBの目標圏内に達し、パウエルFRB議長が物価に強気の見解を示す中で、米国債のイールドカーブはフラットニング化してきている。

米国10年国債利回りは心理的な節目となっている3%の攻防が続く中、FRBが物価に対して強気の姿勢を見せたこともあり2年国債の利回りは2.5%に乗せており、10年国債と2年国債の利回り格差であるイールドスプレッドはトランプ大統領が勝利した大統領選挙後の最低水準である0.428%まで縮小し、イールドカーブのフラットニング化が顕著になっている。

原油価格上昇という目の前に見えるインフレ要因があるにもかかわらずイールドカーブのフラットニング化が進むというのは、債券市場は米国経済の先行きに警戒感を抱いていることの表れだといえる。

米経済にピークアウト感が見え隠れしている
北朝鮮問題のテーマにした「政治的Show Time」の陰に隠れてしまっているが、米中間の貿易問題に進展はない。

トランプ大統領がUSTRに2か月以内に1600億ドルに相当する制裁を検討するように指示したのは4月のことであり、結論が出るのは6月に入ってからとなる可能性が高い。

トランプ政権がどのような制裁措置を打ち出すのかが明らかでない現段階は、企業が大きな決断をし難い局面だといえる。つまり、足元は米国経済が堅調であったとしても、企業活動が制約され停滞しやすい時期にある。

先週に発表された「ISM購買担当者指数」が、製造業・非製造業ともに前月を下回るだけでなく、市場予想も下回ってきたのはこうした点が反映されている可能性を否定できない。

中国に対してどのような制裁措置を打ち出すのか不透明で動き難い中、金融市場は次回6月のFOMCでの25bpの利上げ(FFレート1.75~2.00%)を100%織り込んでいる。2年国債利回りが2.5%台に乗せて来ているのも、FRBの利上げを織り込んでいるからである。

一方で10年国債利回りが節目の3%の攻防になっているのは、米国経済のピークアウト感が見え隠れし始めているからである。

FRBと債券市場、どちらの見方が正しいのか?
北朝鮮問題の解決は、米国社会に漂う漠然とした不安を払しょくするものではあるが、米国経済に対しては中立的なものである。

社会を覆う暗雲が晴れることを好感してリスクオンに走る株式市場と、米国経済にほぼ中立と思える北朝鮮問題とは関係なく米国経済の行方に警戒感を強める債券市場。

それは、今後の物価情勢に強気の姿勢を見せるFRBと、利上げ等による米国経済の鈍化を警戒する債券市場との対立でもある。

株式市場と債券市場、そしてFRBと債券市場の将来の見通しに対する乖離は、どちらが正解であるかが明らかになった時点で修正に向かうことになる。