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私と経済の掲示板

FRBタカ派転向で市場混乱 中期債が乱高下、商品は下落

米連邦準備理事会(FRB)が金融政策に関するスタンスを、引き締めを加速する「タカ派」に転換したことで、金融市場が大きく混乱している。金融政策の動向を反映しやすい中期債の利回りが乱高下し、商品や株式相場も不安定になっている。新型コロナウイルス変異型への警戒も続くなか、市場の動揺が長引く恐れがある。

ここ数日、米2年物国債の利回りが大きく上下している。新型コロナのオミクロン型への警戒が広まった11月26日、FRBが量的緩和の縮小(テーパリング)を急がないとの思惑が強まり、0.6%台から0.4%台に下落した。ただ、30日にパウエル議長がインフレ対応でテーパリングのペースを速める意向を示すと、一時0.6%台まで急上昇した。

短期金融市場が織り込む利上げの回数も2022年末までに「1~2回」から「3回以上」が主流となった。

市場では新興国からの資金流出の懸念が強まりつつある。既にトルコリラは11月の対ドル下落率が3割に迫るほか、南アフリカランドは4%下がっている。

  • >>25307

    基軸通貨を持つ米国の金融緩和であふれたマネーは高利回り・高リスクの新興国に流れ、経済を支えてきた。FRBのタカ派転換は、こうした新興国への資金流入の前提を変えかねない。

    13年にも、当時のFRB議長の金融引き締め発言が原因になった市場混乱「テーパータントラム」では、経常赤字などを抱えるトルコや南アなどは「フラジャイル・ファイブ(脆弱な5カ国)」として問題視され、実際に通貨安に悩まされた。

    商品と株式市場は米緩和縮小の前倒しに加え、オミクロン型による景気悪化懸念というダブルパンチで不安定になっている。11月30日の国際商品市場では、原油やガソリンなどのエネルギー関連を中心に売りが広がった。

    指標となるニューヨーク原油先物が前日比3.77ドル(5.4%)安の1バレル66.18ドルとなったほか、米天然ガス先物(ヘンリーハブ先物)も5.9%安、米ガソリンも4.7%安となった。自動車の排ガス触媒に使うパラジウムやプラチナ(白金)などの貴金属もそれぞれ4%前後下げた。綿花が4.3%安、小麦が4.2%安など農産物にも下落が広がった。

    野村証券の大越龍文シニアエコノミストは「テーパリングの加速で米金利とドル相場に上昇圧力がかかり、ドル建てで取引する国際商品は上値が抑えられやすい」と指摘する。

    11月30日の米国株式市場では、米ダウ工業株30種平均が前日比652ドル(1.86%)安の3万4483ドルと大幅安となり、10月13日以来約1カ月半ぶりの安値を付けた。景気悪化への懸念が高まり、世界景気と企業業績が連動しやすいエネルギーや物流などの景気敏感株が下げた。

    一方でアップルが3%高と逆行高となるなど、IT(情報技術)株は底堅い展開となった。米長期金利の低下で、高PER(株価収益率)株は将来稼ぐ利益をもとにした理論株価を計算する際の割引率が低くなり、相対的な割安感が出やすくなるためだ。

  • >>25307

    パウエル議長が緩和縮小の前倒しを狙う最大の理由はインフレ対応だ。ただ、インフレ対応と景気の下支え、そして市場安定を同時に実現するのは非常に狭き道といえる。11月30日の米債券市場で10年債や30年債の利回りはむしろ低下しており、市場は利上げと景気回復の両立に対して疑念を示す。

    商品市場でも非鉄金属の代表品目である銅は1.4%安と下げが限定的だった。亜鉛や鉛、米木材先物などは上昇した。非鉄金属は、供給制約を背景に全般的に在庫が縮小するなど品薄感が強まっている。インフレ抑制のために金融緩和を縮小しても、足元の供給制約に直接働きかけることはできない。このため供給制約が強い品目を中心に商品価格が下支えされている。

    みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「供給制約を受けた利上げが妥当か市場は疑念を抱いている」と話す。不安定な市場が続く可能性はある。