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「PPIは予想外の下落、CPIは予想通りで上げていましたね」
「物価より、焦点は雇用の方に移っているんじゃないですか?
雇用者数の年次改定値が-91万人だったから、FRBとしてはそっちも考えなければいけなくなっているはずだから…」
「物価の話は、『収まっていく』という見方がけっこう出て来ているようだ。
雇用関係が悪くなるから消費が抑えられていく、という主張が現実味を帯び出したよな。
別の言い方をすれば、景気の縮退が起こりそうだということだ」
「そうですね。
ですから、今週の小売売上が少し手掛かりになるのかもしれませんが、指標上の本命は10月発表の雇用統計になるのではないでしょうか。
その前にPCEなどがありますが、もう、あまり焦点が当たっていないようですし…。
ただ、その前に先を読んだ人たちがポジションの整理などをするのかもしれません。
FRBの金利発表などが契機となって」
「雇用が冷え込んでいくのだとしたら、株価は材料出尽くしとかで反転しそうですよね。
でも、そういう統計データより、日本株の方は石破総理の退陣と次の候補者の経済政策への思惑で爆上げしていました。
こういう時って、読むのが難しいですよね」
「確かにそうですね。
株は複雑系と言われますよね」
「だが、何か解くカギがありそうな気もするよな。
たとえば、伊藤の方程式を解くとか」
「ウィーナー過程は、いたるところで連続でなければ成り立ちません。
株の世界は、今週の総理退陣のようなハプニングだらけですから、あまり意味がないですね。
特に、トランプ政権下においては」
「いや、そういうハプニングは、測度0の集合に属するだろう。
だから、ハプニング以外の所では、ある程度の予測ができるのではないかい?」
「少しは可能性があるのかもしれませんね。
でも、売買頻度の少ない銘柄のチャートを見ればわかるように、基本は離散関数ですよね、株は」
「物理現象について、数学的に厳密過ぎるだろう。
実際、欧米の証券会社などは、NASAのロケット工学などの研究者たちをヘッドハンティングして、伊藤の方程式のような確率過程を基礎とした式を解いて株価などを決めていると言われている。
そして、アメリカ系の証券会社とヨーロッパ系の証券会社では、用いる式の細部が微妙に異なっているなどとも言われている。
だから、彼らの方程式を真似できれば、それに合わせて売買して大儲けができると言われているよな。
大口がこれから売買するタイミングが手に取るように分かってしまうのだから」
「彼らが用いている方程式の同定は困難だと言われていますよね」
「たしかに、そういう問題はあるのだろうな」
「さっきの話で気になったんですけど、FRBが利下げすると経済が崩れるとか言われてますよね。
実際は『経済が悪くなり出してから手当てしても、その効果は遅れて現れるから、経済の悪化はすぐに止まらず進行する』ということみたいですが。
ということは、今回もそうなりそうですよね」
「その確率は高いと思います」
「いやいや、ちょっと待ってくれ。
そうならなかった時もあったじゃないか」
「ですが、そういう例の出現回数は、非常に少なかったですよね」
「だからといって、今回もそうとは言い切れない。
何か、『利下げとリセッション』の関係を見抜けるモデルでも作れればいいんだけどな」
「それこそ、複雑系に対して無謀な挑戦をするような話です。
複雑系において『利下げの直後にリセッションが現れるかどうか』の関係を解くことは、双子素数の確率密度を解くようなものでしょう」
「いや、それは…たしかにかなり困難な問題だな…日常語的用法として…」
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