ここから本文です
新 多治争論 アニオタFX
投稿一覧に戻る

新 多治争論 アニオタFXの掲示板

「光の輪は見えず」、ブラックホール初撮影に異論発表

日米欧などの国際共同研究チームが2019年に発表した初めてのブラックホールの撮影画像について、国立天文台などの研究者が異議を唱える発表を30日にした。公開されているデータを独自解析すると、ブラックホールの周囲にみえる光の輪が確認できなかったという。ただ複数の研究チームが追試をして光の輪を確認したという発表をしており、今回の指摘で大きく評価が変わるわけではなさそうだ。

独自に解析した結果、ブラックホールのジェットをとらえたと主張している=三好真・国立天文台助教提供
ブラックホールを初めて撮影した画像は、国際共同研究チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」が19年に発表した。地球から約5500万光年離れた銀河M87の中心にあるブラックホールを撮影した。世界8カ所にある電波望遠鏡を連動させ、地球サイズの巨大望遠鏡を仮想的に実現。ブラックホール周辺のガスなどが放つ電波をもとに解析して、光の輪と中心の影を浮かび上がらせた。ブラックホールは強い重力があり、光でさえも抜け出せない。光の輪と影はその姿を捉えたとされている。

  • >>5449

    異議を出したのは、国立天文台の三好真助教らの研究チームだ。EHTの撮影時の観測データは公開されており、誰でも自由に解析できる。望遠鏡の視野を広げて独自に解析した結果、光の輪は得られなかったと結論づけた。参加した望遠鏡が少なく、必要なデータが足りなかったことなどを理由にあげた。

    三好助教は「特定の領域のデータが欠けており狭い視野で分析したため、EHTは誤って光の輪を得たと考えている」を説明する。独自に解析した画像には、ブラックホールから高温のガスが高速で噴き出すジェットなどが映し出されているという。

    ただ、現在までに海外の少なくとも4つの研究チームがEHTと同様の光の輪が確認できたとする論文を発表している。EHTはホームページ上に発表文を掲載し、公開データを使った別のチームによる解析を歓迎した上で「三好助教らの主張はEHTのデータと手法について欠陥のある理解に基づいており、誤った結論につながる」と記した。

    日本チームの代表を務める国立天文台の本間希樹教授は「この論文には数多くの疑問点がある。EHT内では複数の方法によって慎重に検証をしており、さらに独立な複数のグループもEHTの結果を再現しているので、EHTの結果が揺らぐことはない」と話す。

    今回の発表には懐疑的な意見が多い。電波望遠鏡に詳しい茨城大学の百瀬宗武教授は「妥当な解析とは認められない」と話す。三好助教の論文では、ジェットがあると思われる方向に絞ってブラックホール周辺からの放射を探している点に疑問があるという。さらに、データに十分な情報が含まれない範囲にまで広げて放射を探しているため、ノイズを積極的に拾ってしまう可能性があると説明する。

    三好助教は記者会見で「ジェットがあると思われる以外の方向でも解析し、ジェットが見えないことを確かめた」としたが、論文中には画像は示されていない。視野の設定については「広げるほどノイズが入りやすくなるのは確かだ。私たちの画像でもジェットの根元までは信頼性が高いと考えているが、先のほうにはノイズが含まれている」と説明した。

    慶応義塾大学の岡朋治教授は「個人的にはより多角的に分析されているEHTの結果のほうに説得力があると感じている。ただ、色々な角度からの検証は大切だ。今後の第三者による検証を見守りたい」と話す。