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春の独り言
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「大関の権威」はもう死語なのか…千賀ノ浦親方は鬼の教え思い出し貴景勝に指導を
 ■5月21日 「大関の権威」などという言葉は、もう死語なのか。けがは仕方ないにしても休場→再出場→再休場という貴景勝の前代未聞の出入りを見て思った。中日の再出場を決めたときの師匠千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)の「相撲を取ってダメだと思ったら休む。大関だから出たり休んだりしたらいけないけど」の談話も首をひねった。

 大関はかつて力士の最高位とされ、2場所連続負け越さない限り落ちないなど特権も多い。貴景勝は4日目まで3勝している。途中休場しても中日からの再出場で5勝して勝ち越せば何とか大関の座は守れたが、特権に報いるため優勝争いに加わっていてこその大関ではないか。

 来月には都内のホテルで大関昇進披露宴が開かれる。座してカド番を迎えたくない気持ちもわかるが「ダメならまた休む」は安易すぎた。貴景勝戦はこう取ると一生懸命考えている相手にも失礼で、お客さんを裏切ることにもなる。大関という地位に対する自覚に欠ける身勝手な行動といわれても仕方ない。

 平成12年夏場所で大関に昇進した武双山(藤島親方=本紙評論家)は腰の故障でその場所をスパッと全休した。「ファンや協会には申し訳なかったが、休んでもすぐ落ちるわけではなく先のことを考え休場させた」と当時の師匠、元武蔵川親方の石山五郎氏。「師匠には休ませる勇気も必要だ」とも話した。

 千賀ノ浦親方は現役時代の愛称が「ドラえもん」。童顔で温厚だが、“土俵の鬼”初代横綱若乃花の弟子として厳しい指導に耐えた。元貴乃花親方から託された貴景勝には遠慮があるのかもしれないが、協会の看板に恥じない大関として育てるためにも鬼の教えを思い出してもらいたい。 (今村忠)