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「金融市場ではあまり知られていないが、中国政府は4月、動画投稿アプリ『TikTok(ティックトック)』を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)の株式と取締役会1議席を秘かに取得、これにより中国政府は取締役3人のうち1人の席を確保、世界屈指の個人データの宝庫である同社の内部に直接アクセスできるようになった(Unnoticed by the financial markets, the Chinese government quietly took a stake and a board seat in TikTok owner ByteDance in April. The move gives Beijing one seat on a three-person board of directors and first-hand access to the inner workings of a company that has one of the world’s largest troves of personal data)」(同FT紙ソロス寄稿文)−。

米国の著名投資家でファミリーオフィス「ソロス・ファンド」と慈善団体「オープン・ソサエティー財団」会長兼創設者G・ソロス氏が英FT紙への寄稿文で民間企業に赤い牙を剥く習近平共産党を痛烈に批判する。

かかる共産党政府の規制強化による民間叩きは本物であり、既に中国政府はEC(電子商取引)最大手アリババ集団とその子会社に甚大な影響力を及す株式を取得しつつある。

ところが、「習近平主席は全くマーケットの仕組みを理解していないばかりか、全ての中国企業を一党独裁国家の道具とみなしている」(同FT紙ソロス寄稿文)−。
故に、「民間叩き」の跫音が中国株の激しい投げ売りを招き、中国の世界的な野望に狂いが生じ始めている。

「出る杭は打つ」の共産党指導部の民間叩きの好例が、中国当局による20年11月のアリババ集団傘下の金融会社「アント・グループ」の突然の新規株式公開(IPO)延期であり、それ以降、民間IT企業への締め付けは強まるばかりだ。

共産党政府はアリババに独占禁止法違反で約182億元(約3100億円)の罰金を科し、ユーザー数100万人超の中国企業の海外上場には当局の審査を義務付け、企業の呼び出しや指導が相次ぐ。

しかも、「習近平指導部は民間企業より独占が酷い大手国有企業に独禁法を適用せず、逆に国有企業同士の合併を促し、国有企業の寡占化を進めつつある」(ある中国専門家)。

むろん、承知の上で中国株を買う投資家は数多いるが、海外の年金基金など運用機関を介して老後資金を中国株に当てる多くの人々にとって、習近平共産党の民間企業への剥き出しの赤い牙は命取りになりかねない。

実際、世界の運用会社が最重要視する世界株指数「MSCI ACWI」に連動してパッシブ運用されている資金額は推定5兆ドル(約550兆円)に上り、その数倍に上る額が同指数を目安にアクティブ運用されている。

「MSCI ACWI」銘柄のうち特にESG評価が高い銘柄指数「MSCI ACWI ESリーダーズ」にアリババと中国ネット大手テンセント(騰訊控股)の2社が構成トップ10に入っている。かかる指数運用を通じて、数千億ドルの米投資家マネーが、企業統治基準を満たさない中国企業に半ば強制的に流入しているだ。

米SEC(証券監視委員会)ゲンスラー委員長は中国への投資リスクに再三再四、警告を発しているが、過去20年にわたる固定資産投資を含めた不動産ブームの沸騰とその資産効果を通じ、中国は高成長路線を邁進してきた。

しかしながら、毛沢東・スターリン化する習近平主席の中国は、もはや投資家が知る従来の中国と違い、忽然として投資家の前に中国経済の「不都合な真実」が姿を現し、中国株の暗雲となりかねない。