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    本当は真面目に為替のお話したいんですが、初心者なので私から生意気に発信できません笑
    なので、皆さんのストレスとかここで吐き出していってください(^^)v
    そこからも得るものが有る気がします👀
    ただし、私以外の誰かの悪口とかやめてください!
    それとヒワイなのはやめてください!
    よろしくお願いします(^^

掲示板のコメントはすべて投稿者の個人的な判断を表すものであり、
当社が投資の勧誘を目的としているものではありません。

  • >>217

    魂の資本主義を復活させる
    「GAFA」のような企業が利益を独占していても、いずれ、良質なものづくりを必要とする時がくる…。

     岸田政権の方針に反対というわけではない。分配も、デジタルも、脱炭素も、基礎研究も、人への投資も必要である。しかしそういったことを本格的に実現するには、国民にそうとうの覚悟が必要で、赤字国債を発行して大規模な予算を投じればいいというものではないだろう。

     よくいわれる「GAFA」のような企業に利益を独占されるのは腹立たしいが、日本という国が、アメリカや中国のような国に対抗し、その後を追うような政策をとるのは、うまくいかないような気がする。日本人特有の、仕事に魂を込めるという姿勢を捨てるべきではなく、それが経済力に反映される状況を復活させる方がいい。二つの可能性がある。

     一つは、いわゆる政治改革、行政改革、規制改革などによって中枢をスリム化し、ともすれば崩れがちな「ものづくりの質」を高め続けることである。今は「GAFA」のような企業が利益を独占していても、いずれ、良質なものづくりを必要とする時がくる。もう一つは、日本人の仕事の魂を、デジタル時代に合わせていくことである。マンガ、アニメ、ゲームなどの質が高いのもその一つであり、これはメタバースやAIクローンなどの技術にも活かせるだろう。ものづくりの魂がソフトウエアづくりの魂に転化すれば大きな力となる。

     そして重要なことは、社会がこういった魂に活躍の場を与えることである。それが結果に現れた場合には高く評価することである。アメリカはもちろん、中国や韓国などでも、努力の結果としての成功にはそれなりの対価を与えているが、現在の日本では同調と忖度ばかりが評価されている。全体に保身社会となって、戦後の成長を切り拓いてきたような、魂のある挑戦者がいなくなっている。

     岸田政権は「新しい資本主義」の方針を決める有識者らによる実現会議を組織したが、そのメンバーはこれまでの資本主義における成功体験をもつ人が多い。「新しい酒は新しい皮袋に」のたとえもある。新しくない会議から何か新しいことが生まれるだろうか。無駄な会議こそ日本凋落の一因ではないか。

     かたちばかりの新しさを求めるより原点に立ち返ることである。

     「勤勉・入魂・挑戦」それ以外の道はない。今、日本のスポーツ人が強いのは、それを知っているからだ。

     この国は必ずよみがえる。

  • 岸田政権目玉の「新しい資本主義」は古い? 本当に必要なのは「魂の資本主義」
    1/30(日) 9:05配信
    Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE

     昨秋、自民党総裁選に勝利し、内閣総理大臣に就任した岸田文雄氏。就任後、まもなく自らが議長となる「新しい資本主義実現会議」を発足させ、「成長と分配の好循環」「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトに有識者との話し合いを進めています。

    コロナ禍の新年に考える「神社参拝とデジタル・コミュニケーション」

     建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、岸田総理のこの目玉政策について「優等生的で、爆発的な突破力は感じられない」と感じており、「もう一度、資本主義の原点に立ち返る必要があるのでは」と考えているようです。それでは、若山氏が考える資本主義の原点とはいったいどんなものなのでしょうか。独自の視点から論じます。

    新しいのか、古いのか
    「新しい資本主義」を基幹政策とする岸田文雄総理

     岸田政権の目玉となる基幹政策は「新しい資本主義」だ。

     特に「分配」を重視するというが、雑誌『文藝春秋2月号』に寄稿された岸田文雄総理の文章を読むと、多方面に目配りが利いて、これが実現できるなら大いにけっこうと、賛同せざるをえない。しかしいかにも優等生的で、爆発的な突破力は感じられない。逆に現代のグローバルな資本主義が切り開いた先鋭力をくじく恐れはないだろうか。「新しい」というよりむしろ「古い」修正資本主義の匂いを感じる。

     一方、斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』も話題になっている。たしかに私利私欲追求の資本主義が壁につきあたっている中で「コモン(共有)」という概念が重要な意味をもつことはたしかだろう。しかし僕ら建築家は、これまでの設計でコモンの空間を追求してきて、それがいかに実現しがたく、上手に利用されにくいものであるかということを身にしみて知っている。スターリン粛清や文化大革命や過激派学生運動が歴史の彼方にかすみつつある現在の若い人たちは、マルクス主義の理想と現実のギャップに対する実感がないのではないか。

     そしていずれにおいても、このところ幅を利かせてきた新自由主義的な市場重視の結果としての格差拡大と、温室効果ガスによる地球規模の気候変動の加速が前提である。この資本主義に対する二つの反省が現在、世界のコモンセンスとなっていることはたしかである。

    日本人の仕事は「入魂主義」

     前回、日本人は仕事に魂を込めると書いた。少しくり返すが、仏師は仏像に魂を込める。刀鍛冶は刀剣に魂を込める。大工は柱梁に魂を込める。料理人は料理に魂を込める。音楽家は演奏に魂を込める。新聞記者は記事に魂を込める。俳人は5・7・5に魂を込める。日本人は誰も、自分の仕事に魂を込めている。

     たとえば、建築家は自分の作品の価値を、床面積や販売価格といった数値でとらえようとはしないものだ。ル・コルビュジエのサヴォア邸や安藤忠雄の住吉の長屋など、経済的価値は無視されるほど小さいが、建築史における文化的価値はとても大きい。仕事に込められる魂の価値はGDPには計上されないのである。

     岸田政権は「人に投資する」として、企業の人材育成を援助するという。それは結構なことであり必要なことであるが、それが本当に、仕事に対する魂を育てることになるかどうか。日本だけではなく、どこの国でも、科学者や芸術家の仕事は、金では動かないところがある。技術者は産業に組み込まれた存在だが、日本の技術者は特に、利益を無視してでも仕事に魂を込める性質があり、その努力のほとんどはGDPに反映されない。日本人の仕事は、資本主義的でも社会主義的でもなく、入魂主義的なのだ。

    ものづくり文化の三国同盟
    現在の日本は、ものづくり魂と社会環境がマッチしていないのではないか…

     もちろんその技術者魂が、経済的な数字に反映されることもある。一昔前、トヨタ、ホンダ、ソニー、パナソニック、ニコン、キヤノン、セイコー、富士フイルムなどの製品、また原子炉、造船、プラントなど、すべての工業分野において、日本技術圧勝時代があった。その意味で僕らの世代は、誇りをもって仕事ができ、海外に出ても心豊かに過ごせたのは、幸せだったのかもしれない。

     それはたまたま、日本人の昔からの職人魂と工業製品の品質とがちょうどマッチして競争に勝ち抜いた、めったにない時代であったのだ。

     僕は建築家でもあり、大工を中心とする日本の伝統的木造建築技術の精妙さが近現代の工業製品に反映された、と書いてきた。日本は木の文化の国であり、木材の扱い方には伝統的に積み上げられた職人の魂がやどるのだ。

     一方海外を見渡すと、イタリアの革製品にはそれに近い伝統的なものづくり精神の蓄積を感じるし、ドイツの鋼製品にも同様のものを感じる。日本とイタリアとドイツには、フランスの合理主義(理論に現実を合わせる)と視覚的美意識、イギリスとアメリカの現実主義と組織づくりの能力とは異なる、ものづくりに対する精神的こだわりがあるようだ。そう考えれば日独伊三国同盟も、あの時代における合理主義と現実主義に対する、精神主義の同盟であったという見方もできようか。リーダーたちは賢明であったとはいえないが、国民にはそういう無意識の同意があったのではないか。敗戦によって、その軍事面における効用は否定されたが、ものづくりにおける効用は生きつづけたのではないか。

     もちろん戦後のイタリア経済が強いとはいえないが、何といってもミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチを生んだ国であり、都市の隅々にその文化が息づき、小さな町の建築にも歴史の重みが感じられる。文化的潜在力は途方もなく大きいのだ。今度は軍事のではなく「ものづくり文化の三国同盟」を結んではどうか。若者たちに期待したい。

     しかし現在の日本は、どうもそのものづくり魂と社会環境がマッチしていないような気がする。

     中枢管理組織は何も決められない会議で時間を無駄にしている。何か問題が起きると現場の実態を無視した細かい規則でがんじがらめにする。その管理と現場のギャップが、検査の手抜き、データ改竄などの、これまでならありえないような失態を生む。テレビ局は視聴率を気にして、アイドルとお笑い芸人ばかりに脚光を当て、若者はそちらに引き寄せられる。

     難しい数学や理科の勉強をして、実験、観察、計算。汚れも危険もある現場の仕事。華やかな脚光を浴びることもない。しかも金融やマスコミや商社などと比較して収入が高いとはいえない。他国と比べてもこの国の専門技術者が優遇されているとはいいがたいのだ。

     現代日本の大きな問題は、政治、管理(行政と大企業)、教育、マスコミなどの形式主義と怠慢、すなわち魂の貧困が、ものづくり魂そのものにほころびを生じさせていることではないか。

    実はキリスト教(新教)が資本主義の原点であった

     ドイツの政治・経済・社会学者マックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(大塚久雄訳・岩波文庫1989年刊)は社会科学の分野における世界的な名著であるが、その内容は、キリスト教の中でもプロテスタント(新教)に特有の、勤勉、倹約、天職の概念、計画性、個人的価値観などの倫理概念が資本主義を推進したという論理である。たとえば『フランクリン自伝』(松本慎一、西川正身訳・岩波文庫1957年刊)などにその精神が読み取れるし、福沢諭吉や渋沢栄一などの著書と行動にも、キリスト教に代わる日本的な(儒教的なあるいは武士道的な)道徳精神と資本主義との関係が読みとれる。資本主義の根幹は、利潤や所得や消費といった経済指標で表されるものだけではない。マルクスもケインズも魅力的な理論であるが、仕事に打ち込む人間の魂への視線が感じられない。

     今の日本では、経済政策、財政政策、金融政策などについての専門家の判断が大きく分かれ、人によってはお金をどんどん発行すればいいとか、無駄遣いを奨励するような発言も見られるのだが、僕の周囲には、経済学にうとい技術屋が多く、ほとんどの人は勤勉、倹約、挑戦、革新という旧来の技術者モラルを信奉している。「新しい資本主義」を追い求めるのもいいが、今の日本は、もう一度この「資本主義の原点」に立ち返る必要があるような気がするのだ。

  • “東証大暴落”100兆円吹っ飛ぶ 新興市場はリーマン・ショック超える惨状
    冷淡「岸田ショック」に怨嗟の声、悲鳴に耳は傾けないのか
    1/28(金) 17:00配信
    夕刊フジ

    日経平均株価が841円安を記録した27日の東京株式市場。東証1部の株式時価総額は昨年9月のピークから100兆円近く吹っ飛んだ。個人投資家中心の新興市場は2008年のリーマン・ショックを超える惨状だ。株式市場に冷淡な岸田文雄政権の取り組みを問題視する市場関係者も多く、「岸田ショック」に怨嗟(えんさ)の声が上がる。

    28日午前の日経平均は反発して取引が始まり、上げ幅は一時、400円を超えた。ただ、押し目買いは限定的とみられ、先行きについては懸念する声が大きい。

    東証1部の時価総額は昨年9月14日に約778兆円まで増加していたが、27日時点で679兆円と100兆円近く消失した。日経平均は昨年来安値を下回り、年明けから約1カ月で計2600円余り下げた。

    深刻なのが個人投資家が多い新興市場だ。東証マザーズ指数の1月の下落率は、リーマン・ショックのあった08年10月や東日本大震災があった11年3月を超える水準だと市場関係者の間で指摘され、「岸田ショック」がツイッターのトレンド入りする場面もあった。

    株安の直接の要因は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の記者会見が、利上げなどの金融引き締めに積極的だと受け止められたことだったが、日本株の下落トレンドには国内要因も大きい。

    岸田首相は株式の売却益など金融所得課税の強化についてたびたび言及、25日にも国会で「株主資本主義からの転換は重要な考え方の一つ」と述べた。

    岸田首相が掲げる「新しい資本主義」も市場では材料視されていない。株式市場の悲鳴に首相は耳を傾けないのか。

  • 「株主資本主義からの転換」にある「財務省の遠大なる戦略」とは
    1/26(水) 17:35配信

    ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月26日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。岸田総理が「株主利益の最大化を重視する『株主資本主義』の弊害を是正したい」と語ったというニュースについて解説した。

    岸田総理「株主資本主義からの転換へ」と発言
    2022年1月24日、記者の質問に答える岸田総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202201/24bura.html

    岸田総理大臣は1月25日の衆議院予算委員会のなかで、看板に掲げた「新しい資本主義」の分配政策面に関し、株主利益の最大化を重視する「株主資本主義」の弊害を是正したいとの考えを示した。「株主資本主義からの転換は重要な考え方の1つだ。政府の立場からさまざまな環境整備をしなければいけないという問題意識を持っている」と述べた。

    飯田)国民民主党の前原さんの質問に対して答えたということですが、どう見たらいいでしょうか?

    高橋)普通の経営者から言わせれば、「株主資本主義ではなくて株主社会主義でしょう」とみんな冷やかして言います。このなかには「財務省の遠大なる戦略」があるのですが、それを誰も解説したことがありません。

    飯田)裏にそんな戦略があるのですか?

    高橋)まず、「労働者の利益のため」と言うのだけれど、撒き餌というか見せ金があって、それが「賃上げ税制」なのです。岸田政権でも賃上げ税制による税収効果がわかるのですが、せいぜい1000億円程度なのです。

    飯田)なるほど。

    高橋)その次に、「資本家の方から金を取る」という話になって、配当課税の強化になるわけです。これが本命で、こちらは数千億円~1兆円規模のオーダーの増収になるのです。このセットでいつもやっていて、撒き餌としての賃上げ税制があり、その後に配当課税の強化をやる。そういう遠大なる計画があって、それに則っているだけなのです。体よく「労働者のために」という言い方をしますが、逆に言うと経営者、資本家の方から金を取るという政策です。

    飯田)配当課税の強化というのは、例の分離課税を見直して行くという話ですか?

    高橋)そうです。今回の「株主資本主義」という名称は、その布石です。労働者の賃上げを少し見せて撒き餌を行い、最後に配当課税の方に持って行くというストーリーです。

    飯田)総裁選のときに少し出たけれども、批判が多くて一旦うやむやになった話ですよね。

    高橋)言ってしまったのですよね。だから今回は「株主資本主義」などと遠回しに言っているのです。聞かれたときは当面、賃上げ税制の話をしておくわけです。賃上げ税制は効果がないから、いくら言っても大丈夫なのです。そのうち頃合いを見て、配当課税の話に行くはずです。

    飯田)そうすると、働いている者からすれば、賃上げはほとんどなく。

    高橋)ありません。そして配当課税の方に「ドカン」と行くわけです。そちらの方が税収も大きいから、そこを狙っています。要するに増税ですね。

    飯田)分離課税をするというのは、日本でも広く一般に投資をやってもらおうという、NISAやiDeCoと同じ流れのように見えたのですが。

    高橋)そうなのですが、そこに手を入れたいと。資本家の方に手を入れると成長の元手がなくなるのだけれど、今回の岸田政権には成長戦略がないでしょう。それと表裏一体ですよ。

    飯田)成長戦略がなく、パイを大きくせずに、パイの切り分け方だけを考えると。

    高橋)そこに財務省がいるから、取りやすいところに手を突っ込むという戦略があるのです。

    飯田)財務省にとっても、パイを大きくしてからの方が財政再建になるのではと、素人的には思うのですが。

    高橋)財政再建を考えていないのです。はっきり言えば、財政再建は必要ないですからね。

    飯田)財政再建は言うだけで必要ない。

  • 「目先の世論には逆らえない」岸田政権がコロナ規制に突っ走る“悲劇的な結末”
    1/19(水) 7:16配信
    プレジデントオンライン

    2022年1月17日、東京の衆議院本会議場にて、マスク姿で所信表明演説に臨む岸田文雄首相。岸田文雄首相は国会議員を前に、オミクロンの株によって日本で発生した新型コロナの拡散を抑制することを約束する政策演説を行った。

    新型コロナの感染が再び拡大している。みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔さんは「感染の再拡大を受け行動規制の厳格化が復活しそうだする。支持率は過去最高を更新したが、投資家の支持を失えば日本経済の低迷は長期化する」という――。

    ■「内閣支持率は過去最高」乖離が広がる世論と市場の声

     政府は1月19日、新型コロナウイルスの感染拡大対策として東京と神奈川、愛知など13都県に「まん延防止等重点措置」の適用を決定する方針を固めた。19日に正式決定するという。

     13都県が対象地域になれば、すでに適用されている沖縄・山口・広島とあわせて16都県になる。恐らく地域の拡大で、景気下押し効果は広範に及ぶだろう。

     結局、何も変わっていないと失望した向きは多いのではないか。岸田政権発足当初は既に高いワクチン接種率を背景に行動制限に依存しないコロナ対策が打ち出されるとの期待が少なからずあった。

     「普通の風邪と見分けがつかない」と言われるオミクロン変異株だからこそ、新しいアプローチは試行される余地があったように思えるが、岸田首相の「やりすぎのほうがまし」との言葉が端的に示すように行動規制の厳格化が再び復活する。

     人流抑制の効果に疑義が呈されても行動制限を要求したり、既に市中感染が拡がっても厳格な入国規制を継続したりするのは、それが支持率上昇に寄与することが明白だからであろう。時事通信が1月に行った世論調査では51.7%と過去最高を記録している。

     政権発足から3カ月間、目立った実績はない(むしろ先送りが目立つ)が、特筆されるものがあるとすれば、所信表明演説から強調される「コロナ対策>経済正常化」の優劣関係くらいだろう。

     今回、一部の自治体(愛媛県など)が行動規制の効果を疑問視した上で要請しないと表明しており、筆者もそれが合理的と考えるが、現状の世相を考えれば、為政者としては勇気の要る判断と言える。

    ■強制的な貯蓄過剰が続く

     昨年、主要先進国の中で日本だけが大きなマイナス成長を断続的に繰り返し、金融市場では株や為替が低調な動きに終わったことは記憶に新しい。春先以降、年の半分を何らかの行動制限と共に過ごしたのだから当然の帰結である。成長率の仕上がりはそのまま物価ひいては金融政策の仕上がりに直結し、実質・名目双方のベースで円相場を押し下げた。

     資源価格が騰勢を強める中、円が減価しているので日本経済の交易条件(輸出物価÷輸入物価)は当然悪化し、交易損失の拡大をもたらす。

     交易損失の拡大は理論上、実質賃金の下落を意味するので家計部門の生活実感は確実に悪くなる。海外から見れば「安い日本」が仕上がる話であり、昨年、方々でそうした特集が展開されたことは周知の通りである。

     世論が行動規制の厳格化を望んでいるとしても、それが成長率押し下げを通じて「安い日本」の遠因になってしまっている事実を為政者は認知し、もっと情報発信すべき段階にあると筆者は考える。

     今、まさに昨年と同じ道を歩もうとしており、それは円相場で言えば、「50年ぶりの円安」をさらに下押しする可能性を示唆する。

     日本経済の貯蓄・投資(IS)バランスは家計・企業(以下民間)部門共に過去に経験のない水準まで過剰貯蓄が積み上がっており、政府部門の消費・投資で何とか底割れを防ぐ状況にある(図表1)。

     民間部門の消費・投資が盛り上がらない状況で物価が上がるはずもなく、物価が上がらないので金融政策も現状維持が続く。インフレ懸念と共に正常化プロセスを急ぐ海外の金融政策とは乖離(かいり)が大きくなり、円安は(とりわけ実質ベースで)進みやすくなる。行動規制は民間部門に貯蓄を強いる政策であるため、この傾向は1~3月期、強まるはずである。

    ■問題は解除タイミング…厳格な規制を求める世論になびく功罪

     過去の経験を踏まえれば、問題は発令よりも解除のタイミングである。解除の際は楽観ムードが強く忘れられがちだが、規制されても解除判断が迅速ならば被害は限定される。

     昨年は日本のワクチン接種率が猛烈なペースで上昇し、米国のそれを抜き去るという動きが認められながらも、緊急事態宣言の延長が漫然と繰り返された。夏場に至るまでは五輪開催を前に緩めることができないという見方もあった(結局、五輪開催中も緊急事態宣言だったが)。

     この点、今年は7月に参院選を控え、世論が厳格な規制を支持しているという状況にある。政治的には早期解除に至るインセンティブが大きくないと言わざるを得ない。

     もっとも、今回は東京都が病床使用率を要請の基準(20%以上で「まん延防止等重点措置」、50%以上で「緊急事態宣言」の発令を要請)としてあらかじめ示している。

     解除に際して、本当にこの基準が機械的に適用されるのであれば、かつてのようななし崩し的な延長もないはずであり、予測可能性は高まっているという望みもある。

     とはいえ、過去2年間で散見された無理筋な意思決定を振り返ると「総合的」や「臨機応変」などのワーディングと共に解除を渋る懸念も頭をよぎる。繰り返しになるが、世論の支持がある以上、政治はどうしてもそれになびきやすい。

    ■行動規制で進んだ外国人投資家の日本離れ

     問題は、そうした「コロナ対策>経済正常化」という政策姿勢に関し、世論は支持しても金融市場は支持していないという事実である。

     根拠薄弱な行動規制と共に過剰貯蓄を積み上げる日本経済に投資する理由は乏しく、実際、行動規制が慢性化し始めた昨年4月以降、外国人投資家の日本株買いが見られなくなっている(図表2)。

     日経平均株価が世界の潮流についていけなくなったのもやはり昨年4月以降だ(図表3)。4月に3回目の緊急事態宣言が発出され、以後延長が繰り返されてきたことと無関係とは言えないだろう。

     なお、ドル安が進んでも円高にならない最近の為替市場の背景には、こうした株式投資を巡るフローも関係しているように感じる。

    ■「市場の声」は首相の耳に届くのか

     こうした日本を避けて通ろうとする「市場の声」が「聞く力」を自負する岸田首相に届くのかどうか。

     株や為替の動きが日本経済に与えるダメージがクローズアップされてくれば、「やり過ぎの方がまし」という現在のコロナ対策の基本姿勢も修正される余地はあるだろう。

     しかし、一度経済から退場した企業や個人が再び復活するには長い時間がかかる。それは日本の潜在成長率低下としていずれ表面化する話である。

     不可逆的なダメージをこれ以上広げないために、成長重視の路線に舵を切ることが望まれるだろう。それがコロナ禍で耐え難い犠牲を強いられた若年世代を念頭に置いた政策運営にもなるはずである。

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    唐鎌 大輔(からかま・だいすけ)

  • 「円安という“麻薬依存”、今こそ抜け出すチャンス」「国民は“瀬戸際にいる”との意識を」野口悠紀雄氏が語る日本経済への危機感
    1/25(火) 13:26配信
    ABEMA TIMES

     物価上昇と円安の影響が、公共料金や日用品の価格にまで及んでいる。直近の理由には原油価格の高騰が挙げられるが、円の価値の下落も長期化している。例えば日本円の“強さ”を示す「実質実効為替レート」を見ると、固定為替レート(1ドル=360円)だった1970年代に近い値を示している。一方、日本の平均賃金は横ばいを続け、2015年には韓国に抜かれている。

     24日の『ABEMA Prime』に出演した経済学者で一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏は「実質実効為替レート」について次のように説明する。

    日本円の「実質実効為替レート」

     「これは日本円の購買力が基準の年からどのくらい変化しているかを示したものだ。値が低いほど購買力が下がったことを意味していて、要因としては市場での為替レートと、日本と諸外国との間の物価上昇率の差が挙げられる。80年代、90年代には日本の実質実効為替レートが非常に高かった、私が家族を連れてヨーロッパ旅行をしたときには、まさに“王侯貴族”のようだった(笑)。購買力が高いということが、いかにすばらしいかということも実感した。

    「ビッグマック指数」

     今回、この値が1970年代と同程度になったということだが、私は当時アメリカに留学していたので、この値が低いことがいかにみじめかを実感している(笑)。アメリカの大学のそばのアパートを探すと、一番安い物件でも家賃が100ドルだった。1ドル=360円の時代なので、日本での給料が月2万3000円ぐらいだったのに対して、家賃は3万6000円ということになる。“ビッグマック指数”も同じようなものだが、今はそういう大変な状況になっているということだ」。

    黒田総裁は…

     一方、実質的に円安を誘導する役割を担ってきた日銀の黒田総裁は「悪い円安とは考えていない」という主旨の発言もしている。また、パックンは「今のアメリカは高いインフレが起こっている。財政支出をしたためにお金がジャンジャン回って通貨が弱くなり、為替レートも下がっている。しかし日本の状況はそうではない。経済学の基本が崩壊しているのではないか」と首をかしげる。

     野口氏は説明する。

    「パックンさんの言うように、物価上昇率が低い日本では、自動的に円高になっていかなくてはいけない。ところが先ほども言ったように、円高になっては困るという産業界の声に応えて政策当局が為替市場に介入して無理やり円安に抑えてきた。アベノミクスによって円安が顕著に進行したことは事実だが、政策として円安にしたのはアベノミクスが初めてではなく、90年代の後半から続いてきたことだし、特に2000年代に入ると、積極的に為替市場に介入し、円安に導くということをやってきた。95年頃から実質実効為替レートが下がってきているのもそのためだ。

     背景にあるのは、非常に円高になっていたことで、“これではとてももたない”という声が日本の産業界から上がったことだ。産業界から円安を求めるのは、円安になると企業の利益が見かけ上は増えるからだ。つまり輸入価格が上がっても、企業はそれを負担せず、製品価格に転嫁できる。つまり、消費者に押し付けられるからだ。

    各国のGDPは

     一方、円安になれば国内の賃金は上がっていかなければならないが、実際には上がっていない。これは実質的な賃下げをしているということだし、国際的に見れば、日本は安い労働力で生産をしているということになるだろう。本来であれば、企業は円高に対応するために技術開発をし、生産性を上げるべきだった。

     それをせず、円安になると利益が増えるということに安易に頼り、ここまで来てしまった。だから私は、円安というのは“麻薬”だと思っている。日本の産業構造を変え、生産性を上げるという“手術”が必要だったのに、“麻薬”でごまかし続けて、ついに20年、30年が経ってしまったということだ」。

     さらに野口氏は続ける。

    平均賃金は…

     「日本の輸出産業は今でも自動車だが、各国では新しい輸出も始まっている。例えば台湾では、他の国が真似できないくらい非常に高性能の半導体を作り、利益を上げている。韓国の賃金が上がっているのも同じ理由だ。しかし、日本にはそれらに相当するような輸出品が自動車の他にない。

     今はまだそれでもいいけれど、例えばEVが主流になったとき、日本の自動車産業が優勢を維持できるかどうか分からない。あるいは自動運転になれば、自動車はハードウェアというよりも半導体、ソフトウェアのかたまりのようなものに変化する。テスラの時価総額がトヨタを上回ったのも、そのような大きな環境変化のためだ。やはり日本はこれまでのような産業構造を変えて、まさに日本でなければできないような、高い付加価値のものが作れるようにならなければいけない。そうならない限り、日本の賃金が上がることはない」。

     日本経済は、その“麻薬”をやめることはできるのだろうか。野口氏は、“今がチャンスだ”と指摘する。

     「この数カ月、アメリカでは原油価格によってインフレが起き、日本ではさらに円安が続いている。そして輸入価格が上がれば、日本国内では物価が上昇する可能性がある。そうなると、企業はこれまでのように輸入価格の上昇分を価格に転嫁できず、自ら負担しなくてはならなくなるかもしれない。これが“悪い円安”と言われるものだ。その意味では、企業も今なら反対はしないかもしれない。今こそまさに円安政策から脱却し、本来の姿に戻るチャンスだ。

     それでも価格に転嫁されれば物価が上がり、賃金は上がらないままなので、働く人の生活はさらに苦しくなる。預金も目減りすることになるし、国民生活は貧しくなる。ただし、政治は産業の現場に介入してはいけないと思う。例えばアメリカでは“IT革命”が起きたが、これは政府が引っ張ったわけではなく、ベンチャー企業が大きくなっていくことで生まれたものだ。日本はこれまで産業の衰退を防ぐために色々な面で政府が介入してきた。半導体もそうだが、全て失敗している。そうではなく、変革を妨げている既得権益や参入障壁を崩すことこそが重要だ。

    インフレとデフレ

     だから国民も見守っているだけではいけない。政府による春闘介入や賃上げ税制といったレベルではなく、日本の社会を大きく変えなくてはいけないし、それは政治を変えなくてはいけないということだ。そのためにも、日本人の多くが危機感を持つことが重要だ。賃金が各国に抜かれてしまう、あるいは日本が先進国でなくなってしまうかもしれない、まさに瀬戸際にいるという意識を強く持たなければならない」。(『ABEMA Prime』より)

  • 物価上昇、「良い悪い」という線引き難しい=岸田首相
    1/25(火) 9:28配信

     1月25日、岸田文雄首相(写真)は衆院予算委員会で、国土交通、文部科学、法務3省の2022年度予算案資料で表記に誤りがあったことについて「3省の予算案資料の過ちは大変遺憾で、重ねてお詫びしたい」と述べた。

    [東京 25日 ロイター] - 岸田文雄首相は25日の衆院予算委員会で、物価上昇が経済に与える影響について「良い、悪いという線を引くのは難しい」との考えを示した。企業の価格転嫁が進み、賃上げを伴う経済成長の好循環の中での物価上昇が望ましい、との考えも述べた。

    階猛委員(立民)の質問に答えた。足元の物価上昇について、岸田首相は「世界的な原材料費やエネルギー価格高騰が背景ある」と指摘した。

    首相は、価格転嫁が足踏みして「賃上げが行われない悪循環は脱しなければならない」との考えも述べ、「価格転嫁の施策パッケージを用意し、関係者が努力することで(転嫁が)行われるよう進める。そのうえで賃上げが行えるよう税制などで賃上げの雰囲気を作りたい」とした。

    一方、消費税に関しては「社会保障を支える重要な安定財源として重視している」との認識を改めて示し、「(消費税率を)引き下げる政策手段は取らない」と語った。

    <「重ねておわび」と首相>

    2022年度予算審議を巡って国土交通、文部科学、法務3省からの提出資料で表記に誤りがあったことについては「過ちは大変遺憾で、重ねておわびしたい」と陳謝した。

    首相は「気の緩みとの指摘は当然で、改めて気を引き締め、再発防止に努めるよう指示した」と語った。

  • デフレからの脱却成し遂げ、持続可能な経済を構築する=岸田首相
    1/24(月) 14:53配信

     1月24日、岸田文雄首相(写真)は午後の衆院予算委員会で、「デフレからの脱却を成し遂げる」とともに、社会課題を解決しながら持続可能な経済社会を構築するとの考えを示した。

    [東京 24日 ロイター] - 岸田文雄首相は24日午後の衆院予算委員会で、「デフレからの脱却を成し遂げる」とともに、社会課題を解決しながら持続可能な経済社会を構築するとの考えを示した。竹内譲委員(公明)への答弁。

    岸田首相は、新型コロナウイルスの危機を乗り越え、経済を立て直し、財政健全化に向けて取り組むことが岸田政権の経済財政運営の基本であると改めて指摘。「新型コロナとの闘いに打ち勝ち、経済を再生させるために危機に対する必要な財政支出を躊躇(ちゅうちょ)なく行い、万全を期したい」と述べた。

    岸田首相が掲げる「新しい資本主義」のもと、デジタルや気候変動対応などに官民の投資を集め、社会課題を成長のエンジンへと転換していくとした。

  • 国民に「愛される」岸田首相が市場に嫌われるワケ
    本気で賃金を上げたいのなら何が必要なのか?
    かんべえ(吉崎 達彦) : 双日総合研究所チーフエコノミスト 2022年01月22日

    筆者がのけぞるくらい支持率が上がった岸田内閣。だが賃金が上がると本気で考えている人は少ない

    最近の世論調査を見て思わずのけぞった。NHKのデータによれば、岸田内閣を「支持する」と答えた人は昨年12月から7ポイント上がって57%となった 。逆に「支持しない」と答えた人は20%にすぎない(同6%減)。内閣が発足して3カ月、「尻上がりにどんどん数字が良くなる」、という現象は歴代政権でも珍しい。

    内閣支持率だけでなく、自民党支持率まで上昇の驚き

    この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら
    それだけではない。自民党の支持率も上がっている。やはり昨年12月から6.2ポイント上昇して41.1%となった。むしろ野党の支持率が、軒並み低下していることが目を引く。

    特に立憲民主党は前月比3.3%減で5.4%となり、日本維新の会5.8%の後塵を拝する始末。これではまるで、「自民党がちゃんと不人気な総理を挿げ替えることができるのなら、日本政治に野党なんて要らないじゃん!」と民意が告げているようではないか。

    いや、それは「55年体制」の頃の話であって、やっぱり野党は与党のあら探しをするだけでなく、ちゃんと政権担当能力を持つように努力してもらいたい。特に立民の皆さんはせめて2ケタの支持率がないと、「政権交代可能な2大政党制」への道は遠いと言わざるをえませんぞ。

    かくして昨今は「青木レシオ」(政権支持率+与党第一党の支持率)が100に迫るという椿事が起きている。半年前の当欄では、青木レシオが50を割りかけていることを理由に、「8月13日以降『菅下ろし』が始まるかもしれない」と寄稿したものだ 。

    菅義偉内閣も、2020年9月の発足当初は高い支持率を誇っていた。その後は右肩下がりが続き、昨年8月下旬には本当に「菅下ろし」が始まって、とうとう退陣に追い込まれてしまった。コロナ下で政権を維持することは、どこの国でも至難の業なのである。

    ところが岸田内閣は不思議な安定感を示している。今週は通常国会が始まったが、国会論戦は空回り気味だ。立民の泉健太代表は、首相の答弁姿勢を「つかみどころのないタコのような逃れ方」と評している。

    裏を返せば、いかに追及が不発に終わったかということで、野党として最大限の賛辞と言っていいのではないか。「早稲田出身の首相は短命」「メガネをかけた総理は長続きしない」などと、発足当初は不吉なジンクスが囁かれていた岸田首相だが、このまま夏の参院選を乗り切れば、堂々の長期政権への道が見えてきた。

    市場の評価はサッパリ、何を目指すかも「謎」
    ところがこの岸田さんは、マーケットにおける評価はサッパリである。以前の安倍・菅政権は基本的に「プロ・ビジネス」路線であったし、何より株価を気にかけてくれていた。その点、岸田首相は株式市場が嫌がるようなアイデアを次々に口にするのである。

    最初は「金融所得課税」だった。現在はひっこめているものの、参院選が終われば年末の税制改正で再浮上してくるだろう。昨年12月には「自社(自己)株買いの制限」に言及して、日経平均株価が300円下がる局面もあった。

    年明けには「四半期決算の見直し」にも言及している。短期的な利益を追求する企業の姿勢を変えたいとのこと。英仏などは実際に四半期開示を廃止したけれども、今も主要企業は任意で情報を開示している。そりゃあそうだろう。「あそこは情報開示に消極的だ」と投資家に思われたら、途端に株は売られてしまう。この辺の理屈が、あまりわかっておられない様子である。

    「新しい資本主義」というスローガンも、1月17日の施政方針演説の中であらためて説明しているが、何を目指しているのかよくわからない。その一方で、成長戦略の具体策として出てくるのは、「デジタル」「5G」「マイナンバーカード」「経済安全保障」など、あいかわらずの項目ばかりなのである。

    考えてみれば、岸田さんは安倍内閣の後半3年間の政調会長であったし、その時代に事務局長として支えていたのが木原誠二現官房副長官であった。このコンビから、まるっきり違うアイデアが出てくるようなら、それこそ驚きといえよう。つまり政策の中身は変わっていないのだ。

    「新しい資本主義」とか「成長と分配の好循環」といったお題目は、いわば祝詞(のりと)のようなものと受け止めればいいのではないか。先週は当欄で、山崎元氏が「岸田首相は『資本主義の本質』をわかっていない」と厳しめに書いていたけれども 、「岸田さんは神主さん」と考えれば、さほど腹も立たないというものだ。

    資本主義は時代の要請に合わせて勝手に変化する
    私見を述べさせていただくならば、資本主義とは誰かが考案した思想体系、いわば「イズム」ではない。だから時代にあわせて「株主重視型」になったり、「公益重視型」になったりする。融通無碍に変化して、今日までしぶとく生き残ってきた。逆に社会主義のような人の思考による「イズム」は、環境変化に追いつくことができず、ことごとく失敗に終わってきたというのが過去の歴史が教えるところである。

    ゆえに「新しくなければ資本主義ではない」。誰かがことさらに「新しい資本主義」などと定義するまでもなく、時代の要請に合わせて勝手に変化していくのが資本主義というものなのではないだろうか。

    実際にコロナ下からアフターコロナに向けて、われわれを取り巻く環境は大きく変わっていくだろう。とりあえず、目の前で始まっているのは世界的なインフレである。そのことがアメリカの金融政策を大転換させ、世界の金融市場を揺さぶり、投資環境を大きく変えようとしている。長らく低金利と低物価が続いてきた日本経済も、否応なく大きな渦に巻き込まれていくだろう。ちょうどオミクロン株がそうであったように、「日本だけは無事」とはならないはずである。

    インフレがほぼ確実に押し寄せてくる中にあって、日本経済に必要なことはデフレマインドを払拭し、「物価と共に賃金も上がる」体質に転換していくことであろう。今や「賃上げは正義」であると言っても過言ではない。

    そして岸田内閣は「賃金を上げる」と言っている。ただし本気で正義を目指すならば、「賃上げ税制」といった小手先のやり方や、経団連に「お願い」するだけでは足りない。マーケットの論理から言えば、賃上げとは政府にお願いするものではない。市場メカニズムによって、労働者が経営者から勝ち取るものであるべきだ。

    そのために必要なのは労働移動である。現在は資金繰り支援や雇用調整助成金といった形で、政府は苦しい企業を助けている。その結果が、コロナ下にもかかわらず2.8%(昨年11月)という低い完全失業率だ。しかるに政府の支援を受けている会社が、賃上げしてくれるとは考えにくい。

    コロナ禍も3年目を迎えている。まだまだ対策が必要な分野もあるだろうが、本気でこの国の賃金を上げたいのなら、どこかで見切りをつけるべきではないのか。産業構造の新陳代謝を進めて、働き手にはもっと見込みのある会社に移動してもらうほうがいい。救済すべきは企業よりも個人であるべきだ。あるいはリカレント教育などを通して、労働力の底上げを目指すべきであろう。

    岸田さんに伝えたい「2つのこと」
    と、ここまで書いたところで、「こんなことを書くと嫌われるだろうなあ」と思い当たった。「かんべえ(筆者)は新自由主義者だ」などと言われるんだろうなあ。山崎氏が前出のコラムで書いていた通り、「新自由主義という言葉を使う人の議論はほとんどが的外れ」だとワシも思うけど。

    およそ日本社会においては、デービッド・アトキンソン氏のように歯に衣を着せぬ人はだいたいが嫌われる。ことによると岸田さんは、マーケットで嫌われているからこそ、国民的な人気が高いのかもしれない。

    おそらく国民にとってもマーケットにとっても、理想の首相とは岸田さんのようなコミュニケーションスタイルで、菅さんのような内政と安倍さんのような外交をやってくれる人ということになるだろう。他方、岸田さんの身になってみれば、前任者たちとの差別化も必要であるからこそ、新機軸を出そうと努めているのかもしれない。

    岸田さんも、見かけ通りの「ミスター・ナイスガイ」ではあるまい。もし本稿をお読みになった場合には、ぜひ2つのことをお伝えしたい。ひとつは政権を長期安定的なものにするためには、世論調査の支持率と同様に株価もある程度は重要であるということ。

  • >>207

    上辺だけの規制改革になる

     それから、規制改革である。

     論考は「改革マインドがない」と批判されていることに言及し「明確に否定させていただく」と述べている。なぜ、批判されたかと言えば、規制改革に言及してこなかったからだ。それを意識したのか、論考は「4万件の法律、政省令などの一括的見直しを行い、今春には規制見直しプランをとりまとめます」と述べた。

     これを聞いて、霞が関の官僚たちは「誰が吹き込んだか知らないが、この首相は何も分かってないな」と、ほくそ笑んだことだろう。霞が関のすべての省庁が関わっている「4万件もの法律、政省令を一括で見直す」など、できるわけがないからだ。

     だからこそ、歴代の政権は規制改革専門の会議体を作って、1件ごとに関係者、関係省庁とともに具体的な議論と改革を積み重ねてきた。手間はかかるが、残念ながら、それは民主主義のコストである。

     一括でできるとすれば、せいぜい「岸田内閣は規制改革を進めます」と宣言する法律でも作って、お茶を濁す程度だろう。そんな宣言をしただけでは、まったく実質的な改革にならず、既得権益勢力は痛くも痒くもない。結局、何も変わらないからだ。

     岸田首相は「世界最高水準の研究能力がある大学を日本に形成するため、10兆円規模の大学ファンドを本年度内に実現し、運用を開始する」と胸を張った。だが、これは岸田政権の政策ではなく、菅義偉前政権肝いりの政策である。

     論考は菅首相の「菅」の字に一言も言及していないが、前政権の遺産を、あたかも自分の手柄のように語るのは、いかがなものか。

     結局、岸田首相が唱える「新しい資本主義」は、言葉が踊っているだけだ。中身は乏しく、下手をすると「金融パニックを引き起こす」というシロモノである。これまた朝令暮改になるのは、時間の問題だろう。

    長谷川 幸洋(ジャーナリスト)

  • 「新しい資本主義」は矛盾だらけ…岸田首相の経済政策、実は「壊滅的」だった!
    1/21(金) 6:32配信
    現代ビジネス

    突っ込みどころ満載の「新しい資本主義」

     岸田文雄首相が「文芸春秋」2月号に、ご自慢の「新しい資本主義」を解説する論考を発表した。ようやく具体的な経済政策が出てきたか、と思ったら、やはりよく分からない。それどころか、主張が相互に矛盾している。首相はいったい、何をしたいのか。

     「私が目指す『新しい資本主義』のグランドデザイン」と題する論考は、次のような書き出しで始まっている。

    ----------
    「私の提唱する新しい資本主義に対して、何を目指しているのか、明確にしてほしいといったご意見を少なからずいただきます」
    ----------

     首相自身も、世間の評価を気にしていたのである。そこで「このままでは、マズイ」とみて「緊急寄稿」したようだが、中身は突っ込みどころが満載だ。

     たとえば、冒頭「市場や競争に任せれば全てがうまくいくという考え方が新自由主義」と書いている。同じことは、1月17日の施政方針演説でも述べていた。だが、私の知る限り、そんな乱暴なことを主張している「新自由主義者」は、実は1人もいない。

     新自由主義はたしかに、政府の過剰な介入を嫌って、不要になった規制をなくすよう求める。だからといって「規制をなくせ、そうすれば万事うまくいく」などと唱えているわけではない。私が安倍晋三、菅義偉両政権で参加した日本の規制改革(推進)会議でも、そんな議論はなかった。首相の話は、だれも言っていない極論をでっち上げた誇張だ。

     続けて、気候変動問題に触れて「昨年7月の熱海市の土石流災害をはじめ、各地で被害が発生しています」と書く。熱海市の災害では、被害者が土地所有者らによる無茶な開発が原因として、損害賠償を求めて提訴している。それを気候変動問題に結びつけるのは、乱暴だ。首相が開発業者に味方して、免責を認める話になりかねない。

    根本から「矛盾」している
     以上は「序の口」だ。本論で、首相は「『人』重視で資本主義のバージョンアップを」と主張して、こう書いている。

    ----------
    〈人的資本を大切にしない経営では、長期的に企業価値を最大化することが困難となり、かえって長期的に株主に還元を行なうことが困難になってしまいます、そこで、私の新しい資本主義では、その鍵を「人」、すなわち人的資本に置くことにします。「モノから人へ」が、新しい資本主義の第一のキーワードです〉
    ----------

     そのうえで、企業の人材への支出が対GDP比で0.10%と米国やフランス、ドイツに比べて小さい点を指摘し、政府は3年間で4000億円規模の施策パッケージで「能力開発支援、再就職支援、他社への移動によるステップアップ支援をおよそ100万人程度の方に講じる」という。

     いかにも善政のようだが、ちょっと待てよ、と言いたくなる。能力開発支援はいいとして「再就職支援と他社への移動、つまり転職支援」は、雇用の流動化促進にほかならず、それはまさに、首相が嫌いな「新自由主義」の政策ではなかったのか。

     左翼は「首切り反対」を唱えて、雇用の流動化に抵抗する。だが、低い生産性の業種、企業から高い生産性の業種、企業への人材流動化を通じて経済全体としての生産性を高める。そのために「市場の機能を活用して、雇用を流動化させる」のは、新自由主義そのものだ。

     もっと言えば、欧米では、こうした政策を、もはや「新自由主義」とさえ呼ばない。〇〇主義などと大げさに呼ぶには、当たり前すぎるからだ。むしろ、世界標準で見れば、日本の終身雇用のほうが異端だったのである。何かと言えば、〇〇主義などとレッテル貼りして攻撃するのは、日本が井の中の蛙である証拠だ。

     そんな日本でも、雇用の流動化は、とっくに始まっている。定年間近な人を別にすれば、雇用者の立場で考えても、生産性が低く将来性のない企業にしがみついているより、新たな機会を求めたほうがいいからだ。

     岸田首相は「人的資本を大切にせよ」と説教する一方で「雇用の流動化は応援する」と言っている。雇用の流動化を進めたいのか、それとも終身雇用を守れ、と言っているのか、いったい、どっちなのか。どちらの立場にも心地よい話をしているようにしか見えない。

     首相は具体的な政策として、人的資本の「非財務情報について金融商品取引法上の有価証券報告書の開示充実に向けて、金融審議会での検討をお願いする」「人的資本の価値を評価する方法について、各企業が参考になるよう、今夏には参考指針をまとめる」という。

     私は、人的資本の大切さ自体に異論はないので、もしも客観的に評価できる指標が示せるのであれば、ここは理解できる。ただし、ありとあらゆる業種に適用できて、しかも企業と雇用者に公平で有効な指標があるかどうかは、分からない。

    金融パニックが起こりかねない

     首相は「新たな『官民連携』で付加価値を引き上げていく」ことも提唱している。これも一見、もっともらしいが、具体論を聞いてギョッとした。こう言っているのだ。

    ----------
    〈新たな成長に向けて企業の事業再構築を進めていくためには、主な貸し手、メインバンクが債務を軽減すれば新たな投資が可能であると判断する場合には、全ての貸し手の同意がなくても、債務の軽減措置が決定できるよう、法制整備を図ります〉
    ----------

     つまり、企業の「主な貸し手、メインバンク」が「新たに投資すれば事業再構築が可能になる」と判断すれば、残りの貸し手の同意がなくても、法的に債務軽減をできるようにする、と言っている。そんなことを言い出して、大丈夫なのか。

     多くの企業はメインバンク1行だけでなく、複数の金融機関から融資を受けている。ところが、メインバンクの判断だけで債務の軽減ができるようになったら、他の金融機関はどうなるのか。自行の経営判断とは関係なく、金利減免を強制されてしまいかねない。

     それでなくても、金融機関は長く続いている低金利で、融資が儲からずに困っている。そんな法律ができたら、金融機関は自分がメインバンクになっている企業以外の融資先からは、一斉に融資を引き上げてしまうのではないか。

     私が銀行経営者だったら、将来の減免リスクに備えて、自分がメインバンク以外の企業取引は避けたくなる。みんなが一斉にそう動いたら、企業と銀行は大混乱に陥るだろう。

     これはメインバンクの主導権を過剰に認める政策であり、企業融資の市場原理を根底から脅かしかねない。首相の論考は具体的な制度の中身を語っていないが、私は本当に動き始めたら「金融パニックが起きてもおかしくない」と思う。

    「人への投資」はお題目なのか

     首相は「大胆な投資の実現」とも言っている。

     民間企業の設備投資が2000年から19年までで日本は1.1倍にとどまり、米国やフランスに比べて低い。研究開発投資も日本の1.06倍に対して、ドイツは1.35倍、英国は1.33倍、米国は1.31倍などと数字を挙げた。そのうえで「政府は今後5年間の研究開発投資の目標を、政府全体で約30兆円、官民合わせた総額は約120兆円」と紹介している。

     だが、首相は前段で「人への投資」を強調したのではなかったか。それならそれで、人的投資を一挙に拡大すれば良さそうなものだが、ここでは「付加価値を上げていくために重要なのが投資」と強調して、設備投資と研究開発投資を重視している。

     しかも金額は、と言えば、人的投資が先に紹介したように「3年間で4000億円」であるのに対して、研究開発投資は約120兆円という。桁違いだ。これでは、人への投資は、単なるキャッチフレーズにすぎないことを白状したようなものだ。

  • 2022-01-20 23:35
    【Market Winコラム】「借金塗れ」の宿命を背負う日本

    ある旧知の経済学者が、「働き手が減る中で成長を維持するには、財政政策や量的緩和などの景気刺激策が不可欠であり、日本経済はある意味、借金塗れになる宿命を背負っているといっても過言ではない」と断じる。

    総務省が12月1日、2020年の国勢調査確定値を公表したが、これまでの常識が非常識に変わる「人口問題」が改めて我が国の経済社会に甚大な影響を及ぼしつつある。
    特に、経済活動の担う生産年齢人口(15-64歳)は約7508万人、5年前の前回調査から約226万人減り、ピークの1995年に比べ約14%も少なくなっている。

    総人口に占める割合も59.5%と70年ぶりに6割の大台を割り込み、「女性や高齢者の就労で補っても限界があり生産性を高めなければいずれ生産年齢人口減少の影響をカバーし切れなくなる」(同経済学者)−。

    むろん、働き手が増えれば景気が上向き、減少すれば景気が低迷するのが世の東西を問わぬ習いである。長期金利はそんな「人口動態」の変化を先取りして長期の低落トレンドを辿ってきたのである。

    長期金利が2%を下回ったのは日本が1997年、欧州(ドイツ)は2011年で、いずれも生産年齢人口が減少し始めた時期と一致する。

    日欧の長期金利は2016年以降、マイナス化が始まったが、これも4カ国の生産年齢人口がピークアウトした直後のことであり、世界経済成長の両輪は生産年齢人口と債務の増加であったことの証左に他ならない。

    もっとも、2014年を境に、主要国の生産年齢人口が減少に転じたにも拘わらず、さらに債務が増加する「歪な構図」が深まり、それがコロナ禍とサプライチェーン混乱ボトルネック(供給制約)にカーボン革命の脱炭素化などインフレに乗じ長期金利が上昇に転じる一要因となっている。

    もちろん、歪でムシの良い債務増加が長続きするはずはないが、人口減少は働き手の減少を通じ成長を下押しするだけでなく、急速な高齢化に対応すべく日本は否応なく社会保障制度の整備が急務となる。

    公的年金などを支える硬直的な財政支出が増えれば財政赤字は拡大し、日銀の疑似「財政ファイナンス」である量的緩和(QE)の長期化は避けられない。

  • >>204

     彼らのような「小金持ち」から搾り取って、この国の閉塞感が改善されるとは思はない。

     日経新聞「明日は見えますか 格差克服『社会エレベーター』動かせ」(1月5日朝刊)で「日本の問題は平等主義がもたらす弊害だ。突出した能力を持つ人材を育てる機運に乏しく、一方で落ちこぼれる人たちを底上げする支援策も十分でない。自分が成長し暮らしが好転する希望が持てなければ格差を乗り越える意欲はしぼむ」との記述がある。

     まさに若者に夢が持てる社会が必要なのだ。結果平等では、夢は育たない。

    ■富裕層には所得税、相続税が重くのしかかっている

     日本では、長い出世競争に打ち勝って、やっとたどり着いたCEO職で平均年棒が1億2000万円程度。厳しい累進課税の税金を払った後では郊外に小さな家しか建てられない。そんな住宅環境、生活環境を見ても、日本の若者は夢など持てないだろう。

     ましてや日本は格差是正の名目で所得税の累進は厳しいし、相続税は重税化している。配偶者と子供2人で4800万円の基礎控除しかない。

     先進国の中で、そんな国は日本くらいではなかろうか?  世界は相続税の軽減化の方向だ。国会で質問した時、米国では重税化しているとの答弁を得たことがあるが、無税だった相続税が復活したものの相続人は1人約10億円の基礎控除がある(毎年インフレ率で変わる)。両親から相続すれば約20億円の控除だ。

     日本を引っ張るリーダーたちのエネルギーや時間、興味は、相続税節約という後ろ向きの論点に向かっている。残念でならない。欧米の高所得者層はどこに投資したらリターンがいいかを議論しているのとは対照的だ。これは、これから伸びる産業(=リターンの高い産業)に資金が集まることで、国が一層発展することにもつながる。

    ■日本の富裕層を攻撃しても貧しくなるだけ

     このように「小金持ち」しかいない日本で、中間層が没落して生じた格差の是正策として小金持ちを引きずり下ろせばどうなるのか?  日本から国外に逃れるかもしれない。そうすれば私が子供の頃のように皆が平等に貧しくなるだけだ。

     しかも当時と違い夢や希望が無くなっているのだから社会の輝きは失われ、ますます国力は落ちていくことだろう。

     日本プロ野球の一流選手をすべて大リーグに追いやれば、日本には二流選手ばかりが残る。年棒のばらつきは無くなるので選手は平等になるが、平均年棒はガクンと落ちる。プロ野球は面白みが欠け、産業として衰退し選手の所得は減る悪循環に陥るだろう。

     没落していった中間層を再度引き上げるためにはパイを大きくすることだ。パイの分配の仕方だけを考えていては、パイはさらに縮小し、1人当たりの受け取る絶対量は減少する。パイを大きくするためには、結果平等と対極にある競争が不可欠だ。

     アメリカのバイデン大統領はたびたび「競争のない資本主義は資本主義ではなく、搾取にほかならない」と口にし、報道で発言が取り上げられる。イギリスの経済学者・ケインズ氏が「アニマル・スピリッツ(野心)が失われると資本主義は衰退する」と説いたように、野心の源泉となるのは競争は極めて重要だと言える。

     競争よりも格差是正を金科玉条として分配を最重要項目として邁進した日本経済のなれの果て(=40年間のダントツのビリ成長)を説明するのに適切な文言だと私は思う。

     日本の停滞は、競争の不足が招いた結果だろう。産業の新陳代謝や労働力の移動を促す構造改革を怠ったまま、それを放置してきた。そこで分配政策を掲げても長期低迷の失敗を繰り返すことになるだけだ。

    ■このままでは「共同貧困」に陥る…日本には競争と先富論が必要だ

     中国の習近平国家主席は昨年8月、「共同富裕」というスローガンを大々的に打ち出した。

     これまで中国には、1980年代に鄧小平氏が唱えた「先富論」(豊かになれるものから先に豊かになる)という改革開放の基本原則があった。結果的に中国は世界2位の経済大国へと発展したが金持ちに富が集中したため、習氏は「共同富裕」という分配の概念を導入した。

     まずはパイを大きくして、そのうえでの分配なのだ。

     日本はどうだろうか。40年間も世界ダントツのビリ成長を続け、分配するパイは大きくなっていない。むしろ縮小を続けているのに、中国や成長を続ける資本主義の国々をまねして、分配に力を入れれば日本は「平等に皆、貧乏」の「共同貧困」に陥るだけだ。(富ではなく)不幸を分配する悪循環に陥った社会主義国家没落の再現となるだろう。

     失敗してもまた立ち上がることができるセーフティーネットを確立したうえで、一定の格差を認め、競争を導入し、若者に夢を与え、パイを大きくするべきだと私は思う。分配はその次だ。新興国のようで情けないが、今の日本には「先富論」こそが、必要だ。

    ----------
    藤巻 健史(ふじまき・たけし)

  • 「日本人はみんな貧乏になる」岸田政権の"新しい社会主義"ではだれも幸せになれないワケ
    1/20(木) 18:16配信
    プレジデントオンライン

    なぜ日本の景気はいつまでも良くならないのか。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史さんは「岸田政権の『新しい資本主義』では日本人は貧乏になるだけだ。格差是正や分配よりもやるべきことがある」という――。

    ■「新しい社会主義」に傾きつつある日本

     岸田文雄首相は「新しい資本主義」を旗印に掲げている。政権発足から3カ月が経過したが、私はいまだにこの言葉に違和感を覚える。「新しい社会主義」の間違いではないか、と思うことがある。

     この「新しい資本主義」という言葉を聞くたび、私は、JPモルガン勤務時代に部下の外国人たちが「日本は世界最大の社会主義国家だ」と言い残して帰国していったことを思い出す。それが彼らが数年間、日本で働き生活したうえでの実感だったのだ。

     同じように「日本は世界で最も成功した社会主義の国」と揶揄(やゆ)されることがある。護送船団方式や強固な官僚制、国民皆保険制度などとともに、高度成長を成し遂げた成功体験までもある。

     長期低迷が続く今でも欧米に比べれば日本の格差は小さく、競争より結果平等の横並び意識も強い。これではイノベーションは起こらず、経済の新陳代謝は鈍る一方だ。

     この、まるで社会主義国家のような経済運営が現在の日本経済の長期低迷をもたらし、40年間で世界ダントツのビリ成長しかできなかったと私は考えている。

     「官製賃上げ」に象徴されるように、日本は真の資本主義国家ではない。

     経済成長を実現できない現状のまま、分配だけが進めばどうなるだろか。これは中国が進める「共同富裕」ならぬ、「共同貧困」への道を突っ走ることになる。これは社会主義諸国が「不幸の分配」を行って隘路に入り、崩壊に至った過程と類似している。

     私は、この長期低迷を乗り越えるためには「新しい資本主義」の構築ではなく、「社会主義的な経済運営」をやめ「真の資本主義国家」を作るのが重要だと思う。

    ■不幸の分配と結果平等という社会主義の隘路

     今の若い人は「社会主義」と聞いてピンと来ないかもしれない。

     私が「社会主義ではだめだ」と最初に強く実感したのは「ベルリンの壁」が崩れた1989年末。JPモルガンの資金為替部の幹部会議に出席するために東ベルリンの最高級ホテルに泊まった時だった。

     当時、東西ベルリンの境界線にでは、銃器を持ったいかめしい東側兵士がパスポート検査をしていた。彼らはなかなかパスポートを返してくれないので、バスの中で待つわれわれはえらく緊張したのを覚えている。

     まだ観光客はほとんどおらず、東ベルリン一のホテルはガラガラだった。レストランでの夕食は夜8時から始まった。前菜、主食、デザートだけのコースだったが、真夜中の0時までかかった。最初は歓談していたわれわれも会話に飽き、あることがきっかけでウエートレスに文句をつけた。が、彼女に無言でにらみ返されただけで終わった。

     この時、私は「社会主義とは何ぞや」について身をもって理解した。働いても働かなくても給料は変わらないので誰も熱心に働かない。国は衰退するだけだ、と。

     東ベルリンを走る車は「段ボール製」と言われていた。本当かどうかは知らないが、性能が極めて悪かったということだろう。さらに西ドイツ経済からははるかに遅れていた。余談になるが、ある美術館に展示されている彫刻を現地の人たちが素手で触っていくのにはショックを受けた。

    ■格差是正と分配を旗印にする疑問

     世界では今、格差が問題となっている。富が富裕層に集中しすぎたからだ。

     これは資本主義がうまくいった証拠でもあるし、その副作用でもある。格差是正が政府の仕事になるのはわかる。

     しかし、日本の格差は中間層の没落によって生じたものだ(図表1)。「富裕層に富が集中したことにより拡大した」欧米とは異なる。それは専門家のほぼ統一された見解だ。その日本で格差是正を問題にし、さらなる分配を旗印にするのは疑問である。

     「行き過ぎた格差」を是正するのは政府の仕事かもしれないが、行き過ぎてもいない格差を是正し「結果平等」へと邁進するのは資本主義国家の仕事ではない。社会主義国家の仕事である。究極まで格差是正を追求すれば完璧な社会主義国家の成立だ。働いても働かなくても同じ、努力してもしなくても同じの社会主義国家だ。

     日経新聞「明日は見えますか 格差克服『社会エレベーター』動かせ」(1月5日朝刊)で京都大の橘木詔名誉教授は「(日本は)格差の大きさより全体的な落ち込みが問題だ」と指摘されている。まさにその通りだ。

     「国民の生命と財産を守る」のは政府の最低限の仕事だ。そのためセーフティーネットの構築は極めて大切となる。そのうえで競争を促す。平等な競争環境をつくることこそが、政府の仕事なのではないのか?  結果平等ではなく機会平等だ。

    ■格差は原動力になる。問題の本質は格差の固定化だ

     71歳の私が子供の頃は、日本は今よりはるかに貧しかった。

     私の父は東芝勤務のサラリーマンで「上の下」か「中の上」の生活レベルだったのではないかと思うが、毎月一度のすき焼き鍋が最高のごちそうだった。タクシーなど、もったいなくてまず乗れなかった。

     自宅に来客のある時は出前のお寿司をとった。これが最高級のぜいたくだった。風呂の水は1週間に1度か2度しか交換せず、上がり湯で体をきれいにした。給食は脱脂粉乳だった。多くの子供たちは栄養失調で青ばな(青っぽい鼻水)をたらし、上着の袖は拭いた青ばなでテカテカに光っていた。

     かつて貧困度はエンゲル係数で測ったものだ。エンゲル係数とは「1世帯ごとの家計の消費支出に占める食料費の割合」だ。この数値が高ければ、絶対的な貧困層と言える。私が子供の頃はエンゲル係数が今よりはるかに高く、貧乏だった。

     しかし相対的な貧困を示すジニ係数は、きっと今よりかなり低かっただろう。皆、平等に貧乏だったのだ。だからと言って、皆が落ち込んでいたわけではない。今日より、明日。明日より明後日にはよりよい生活ができるとの夢があったからだ。

     一定の格差は社会を前進させる原動力になりうる。問題は、固定化である。絶望や諦めに社会が覆われては、社会の活力自体が失われてしまうことになりかねない。

    ■富裕層を叩いても無意味

     格差是正の議論となれば、必ず富裕層がターゲットになる。

     私はJPモルガン勤務時代、仕事の関係で数多くの世界の大金持ちと知り合ったが、日本の金持ちとはスケールが違った。もし世界の大金持ちと同じような生活を送れば、日本ではすぐに週刊誌のネタになってしまうと思う。

     日経新聞「ファストリ、中途人材に年収最大10億円 IT大手と競う」(1月16日朝刊)では、「デロイトトーマツグループの20年度の調査によれば、日本の最高経営責任者(CEO)の報酬総額の平均は1億2千万円。米国は15億8千万円で、日米の格差は前年の12倍から13倍に拡大した。欧州でも英国のCEOは3億3千万円の年収がある」とある。平均が15億8千万円ということは、億単位の年収の人が米国にはごろごろいるのだ。

     米国の若者は会社経営者の大きく立派な家を見て「自分も」と夢を持つ。大リーガーやプロバスケットボール選手、プロアメリカンフットボール選手たちのぜいたくな生活を見て「自分も」と思うのだ。夢がかなう確率は低くても夢が持てるというのは大事なこと。戦後の日本人が生き生きしていたのと同じだ。

     要するに、日本にいるのは絶対的な大金持ちではない。ジニ係数で言うところの相対的なお金持ちだけだ(世界から見れば小金持ち程度だろう)。大リーガーと日本のプロ野球手の年棒、日米社長の年棒などを比較すれば、容易に想像できる。

  • 「生活保護を受けているほうがはるかに楽」…「貧困のワナ」に陥る日本社会からの脱却
    1/19(水) 10:31配信
    幻冬舎ゴールドオンライン

    現行の生活保護制度は給付水準がかなり高めに設定されており、生活保護者たちを「働かせる気がない」といえる。ここでは、どうすれば改善できるのかについて、前日銀副総裁・岩田規久男氏が解説する。 ※本連載は、書籍『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。

    「生活保護から抜け出そう」という気になれないワケ
    夫婦2人・子1人(夫33歳、妻28歳、子供4歳)で東京都区部に居住する場合の最低生活保障水準は月額約23万円、年額約276万円(生活扶助に住居扶助を含む)である(厚生労働省資料より)。

    しかも、社会保険加入はほぼ免除され(介護保険は生活保護費から保険料を拠出している)、医療費は全額補助される。働かずに、これだけの最低生活保障を受けられるなら、ワーキングプアよりも生活保護世帯になったほうがはるかに生活水準は上昇する。

    現行の生活保護制度は、就労することを基本原則としていない。

    厚生労働省はこの点を反省して、2013年度から、生活保護制度に就労・自立に向けた取り組み(生活保護受給者等就労自立促進事業)を導入し、就労自立給付金、勤労控除、就労活動促進費の補助等の制度を取り入れた。

    就労自立給付金は、保護受給中の就労収入のうち一定額を積み立て、保護廃止時に支給するものであり、八田(2009)や鈴木(2012)(※)などがかねてから提案してきた制度である。それまで、生活保護世帯はそれから抜け出たときに、預金をまったく持たないという不安定な状況に置かれていたから、この制度の導入は望ましい。

    しかし、上限が単身世帯10万円、多人数世帯15万円と極めて低い水準に設定されており、このような少額の預金では「貧困のワナ」から抜け出すことは困難である。

    勤労控除も就労して20万円を得ても3万3600円でしかない。これは勤労所得に83.2%もの限界税率で税金を課すのと同じである。日本の1億円を超えるような高給与所得者でも、限界税率は住民税を含めても55%である。しかもこの給与所得者には195万の給与所得控除(2021年度から)が適用される。

    就労支援事業にしても参加率は35.8%でしかない(2017年度)。これは支援事業への参加が強制でなく、任意だからである。就労活動促進費の補助も月5000円で、原則6ヵ月までと少額である。

    以上のように、厚生労働省は生活保護制度を就労自立支援型に改革したというが、本気度が感じられず、まるでいつまでも生活保護を受けていなさい、と言わんばかりである。同省が本気でなければ、生活保護受給者も生活保護から抜け出そうと本気にならないだろう。

    「生活保護から抜け出せない」問題を解決するには…
    生活保護制度の最大の問題は、生活保護受給者になるためには資産調査などの厳しい関門があるが、いったん受給者になったらやめられないという点にある。やめて、ワーキングプアになるよりも受給者であり続けるほうが、はるかに生活が楽だからである。

    こうした問題を解決するためには、まず、雇用保険の加入期間が短いため、失業しても雇用保険金の受給資格のない人を稼働能力があるかどうかで選別し、稼働能力がある人は、以下に述べるように改革された就業支援制度の対象にし、生活保護制度の対象にしないことである。

    日本には稼働能力層を対象にする求職者支援制度がある。この制度では、雇用保険を受給できない人を対象に、民間の教育機関が実施する職業訓練を受ける代わりに、生活費として月額10万円が原則1年間支給される。

    しかし、月額10万円は生活保護費に比べてあまりに少額である。鈴木亘(2014)はこれを、住宅扶助を含めた生活保護費と同じ水準に引き上げることを提案している。

    著者はかねてから、このように生活費を引き上げた上で雇用保険を改革し、求職者支援制度対象者に雇用保険が提供する就労支援・促進プログラムへの参加を強制する案を考えていた。

    そのように考えていたところ、厚生労働省は2014年度の改正で、求職者支援制度に求職者支援訓練を導入し、さまざまな訓練コースを設けるようになった。

    例えば、厚生労働省東京労働局のホームページを見ると、2021年7月開講の訓練コースの案内が出ている。コースは基礎コース(「初心者からできるビジネスパソコン基礎科」など)と実践コース(「アプリ・WEB・システムエンジニア養成科」など)から構成されている。

    著者はさらに進めて、雇用保険受給資格のない失業者に対して、雇用保険金ではなく、税金で雇用保険並みの給付金を補助し、その他は雇用保険受給者とまったく同じ条件で就労支援する制度が望ましいと考える。これは、求職者支援制度(ただし、右のように改革した制度で、現行の制度ではない)と雇用保険制度の統合に他ならない。

    「貧困のワナ解消」「生活保護費節約」のための案
    しかし、2014年度の改正でも雇用保険受給対象者向けとそれ以外の人向けが別々のコースとして提供されており、相互乗り入れができない。

    これは、前者がハローワークの管轄下にあり、後者が厚生労働省の地域の労働局の管轄下にあるためであろう。

    このような縦割り行政の壁を取り払って、稼働能力のある人はどちらが運営するコースも受講できるようにすれば、彼らの選択肢は拡大し、就職支援としてより効果的なものになるであろう。

    以上のように改革すると、生活保護制度は稼働能力のない人またはそれに近い人だけが対象になる。

    生活保護制度の対象者は障害者と貧困の高齢者世帯に限定され、「稼働能力のある人でも、生活費保護世帯になると、そこから抜け出せない」という「貧困のワナ」に陥ることを防止でき、税負担の生活保護費も節約できるであろう。

    ※ 八田達夫(2009)『ミクロ経済学2 効率化と格差是正』東洋経済新報社

      鈴木亘(2012)『年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革』日本経済新聞出版社

    岩田 規久男

    前日銀副総裁

  • 黒田日銀総裁が最大のリスク要因…「悪いインフレ」放置の呆れた“思考停止”ぶり
    1/19(水) 14:10配信
    日刊ゲンダイDIGITAL

    「壊れたレコード」のように毎度の語り(日銀の黒田東彦総裁)/(C)共同通信社

     日銀は17日と18日行った金融政策決定会合で、現状の大規模な金融緩和を維持することを決めた。その後の黒田総裁の記者会見。賃金が上がらないのに、値上げラッシュで物価高騰が現実化し、スタグフレーション(不況下の物価上昇)すら懸念される中、何を語るのかと思いきや、これまで通りの無策でア然だった。

    元日銀参事・岩村充氏があぶりだす「黒田バズーカ」の本質

    ■「壊れたレコード」変わらず

     日銀は、18日公表した「展望リポート」で2022年度の物価上昇率見通しを前年度比1.1%と前回(昨年10月)の0.9%から上方修正した。しかし、今後の物価上昇について黒田氏は、「資源高などによるもので一時的」「まだ1%程度。(目標の)2%に近づく状況にはない」という認識。「利上げとか、金融政策の変更は全く考えていない」として、「緩和を粘り強く続けていくことで、好循環の物価上昇を目指していく」と、壊れたレコードのように毎度のセリフを繰り返した。

     日銀の「生活意識に関するアンケート調査」(昨年12月時点)では77%が1年前と比べ物価が上がったと答えている。米国が近く金融引き締めに舵を切るのは確実で、日米の金利差から「悪い円安」が進み、「悪いインフレ」が加速しかねないのに、それについても黒田氏は「悪い円安ではない」と断言した。

     金融ジャーナリストの森岡英樹氏が言う。

    「物価上昇が一時的とは思えません。日米の金利差が開けば、資金は当然、金利の高い方へ流れる。円安が定着する可能性があり、そうなれば悪い輸入物価上昇が続きます。黒田氏は、自分を総裁に選んだ安倍元首相が退陣した時に『辞めたい』と言ったそうですが、慰留された経緯がある。壊れたレコード状態なのは、反動が怖くて出口戦略に行けないこともありますが、気力を失っているからでしょう。黒田氏の残り任期は来春までの1年3カ月。鈴を付ける人がいない限り、今のままです。『法王』と呼ばれた一万田元総裁を超え、歴代最長となった黒田氏が、この物価上昇局面で最大のリスク要因となってきました」

     岸田首相は18日、「ダボス会議」のオンライン講演で「アベノミクスからの転換」を表明した。だったら、アベノミクスで思考停止の日銀総裁のままでいいのか?

  • アベノミクス失敗を認めることになる?「量的緩和策の撤回」を言い出せない日銀の本音
    1/18(火) 7:00配信
    ビジネス+IT

    各国中央銀行が金融正常化に動き始める中、日銀はどのような対応に出るのか? 緩和策の終了はアベノミクスの否定につながってしまうが…

     日銀の国債保有残高が減少に転じている。各国の中央銀行はすでに金融正常化に動き始めており、金利の本格的な引き上げも近い。日銀だけが緩和策を続けることは現実的に不可能だが、アベノミクスの否定につながってしまうことから、正面切って緩和策の終了を言い出せない状況にある。明確なアナウンスなき保有残高の減少は、日銀の苦肉の策だろうが、時間稼ぎにしかならない可能性は高い。

    ●当初から量的緩和策が効果を発揮しない可能性が指摘されていた

     日銀が公表した2021年末の国債保有残高は521兆円と、前年比で14兆円のマイナスとなった。年ベースで保有残高が減少するのは、黒田東彦総裁の就任後としてはもちろんのこと、白川方明前総裁の時代以来、13年ぶりのことである。

     安倍政権は「デフレ脱却」が日本経済復活の鍵であるとして、金融緩和を主軸とするアベノミクスを提唱。日銀の黒田総裁は安倍氏の意向を受けて、大規模な量的緩和策に踏み切った。

     量的緩和策は、日銀が国債を積極的に購入することで大量のマネーを供給し、市場にインフレ期待を生じさせる政策である。日本は長く低金利の状態にあり、これ以上、名目金利を下げることができない。このためインフレ期待を醸成し、実質金利を引き下げることで設備投資を促すというのが量的緩和策の狙いである。

     各国は量的緩和策がそれなりに効果を発揮したが、日本の場合、諸外国とは異なる事情が存在していた。年金財政の悪化や、長引く賃金の低下によって消費者は将来不安を抱えている。こうした経済環境下においては、十分な乗数効果が発揮されず、仮に設備投資が増加しても、持続的な成長には結びつかない可能性が高い。

     量的緩和策の実施には弊害が伴うため、上記の改革を先に実施すべきという慎重論も根強かった。だが、アベノミクスを熱狂的に支持する声にかき消され、こうした意見は顧みられることはなかった。

     2%の物価目標を達成するため、日銀は年間60兆から80兆円もの国債を買い続けたが、物価はほとんど上がっていない。国債保有残高が増えれば、金利が上がった時に日銀の財務が悪化するリスクが高まる。日銀は簿価で国債を評価しているので、仮に金利が上がっても(つまり国債の価格が値下がりしても)損失を計上する必要はない。

     だが、時価を反映しないバランスシートを市場がそのまま受け止める可能性は低く、さらに言えば、額面を超える金額で買い入れた国債については、償還時には損失を計上しなければならない。

     本来であれば、量的緩和策について見直しを行うべきだったが、安倍政権が量的緩和策の継続を強く求めている以上、黒田総裁にそうした選択肢はなかった。


    ●日銀はすでにテーパリングを始めているが…

     こうした中、日銀が選択したのは、表面的には量的緩和策の継続をうたいつつ、実質的に量的緩和策から脱却を進めるという方策である。中央銀行が国債の買い入れ額を減らしていくことをテーパリングと呼ぶが、本来ならテーパリングを始める段階で中央銀行は市場に対し、その方針を示す必要がある。実際、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は2021年11月からテーパリングを開始しており、2022年3月には量的緩和策を終了するとしている。

     だが日銀の場合、「テーパリングを始める」と言ってしまうと、アベノミクスを否定することになってしまうため、そうした言動はできない。結果的にこっそりと買い入れ額を減らすという、テニクカルな手法に頼らざるを得なかったのが現実だ。


     2017年以降、日銀は買い入れのペースを落としており、2020年には「年間80兆円をメドにする」という長期国債の買い入れ目標も撤廃した。表向きはコロナ危機に対応するため、国債購入の上限をなくしたということになっているが、実際には買い入れ増額ではなく、減額に対応できるようにしたいという日銀の思惑があった。そして、とうとう2021年には国債の保有残高が前年比でマイナスとなり、現実的に国債保有残高を減らすことに成功した。

     量的緩和策の撤回を言い出せない中、国債保有残高の減少に成功したことは、日銀の事務方(いわゆる日銀官僚)にとってはそれなりの成果と言って良いかもしれない。だが、こうした対応はあくまでもテクニカルなものであり、本質的な問題解決ではない。事務方のホンネとしては、事実上のテーパリングを続けて時間稼ぎを行い、黒田氏の任期が切れる2023年あたりから正常化を本格化させたいところだろう。

     ところが市場環境の変化がそれを許さない可能性が出てきている。全世界的な物価の上昇に伴い、米国の金利が上がりそうだからである。

     このところコロナ危機からの景気回復期待を背景に、全世界的な物価上昇が進んでいる。景気回復期待だけが原因であれば、物価上昇は一時的なものだが、背景にはもっと複雑な事情がある。近年、新興国がめざましい経済成長を実現しており、コロナ後はその勢いがさらに加速すると予想されている。ところが資源や食糧といった一次産品は、生産量を急激に増やすことができない。このため長期にわたって需要過多が続くという予想が高まっているのだ。

    ●日本だけ緩和策継続はヤバい?それでも低金利から抜け出せない事情

     景気拡大と需要過多(逆に言えば供給制限)がセットになると、インフレが進む可能性が一気に高まってくる。米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、物価上昇に関して、当初は一時的であるとの見解を示していたが、昨年11月の議会証言で前言を撤回。インフレ抑制に全力をあげる方針を明確にした。

     米国はクルマ社会であり、ガソリン代の上昇は政権の政治生命を左右する。1973年に発生したオイルショックへの対応をめぐっては、金利の引き上げに躊躇し、スタグフレーション(不景気とインフレが共存すること)を招くという苦い経験もしている。もしインフレが加速するようなら、FRBは金利の引き上げを断行するだろう。

     そのようなシナリオになった場合、日本経済には強い逆風が吹く。

     各国が金利を引き上げる中、日本だけが低金利を続けていれば、円安がさらに進行する。昨年後半から円安傾向が顕著となっていたが、年初にはとうとう1ドル=115円を超えた。円安が進めば、輸入物価が上昇するので、インフレが激しくなり、最終的には金利にも上昇圧力が加わるという悪循環になってしまう。

     アベノミクス否定という政治的な障壁を取り除いたとしても、実際に金利を上げることの弊害は大きい。なぜなら今の日本経済はすべて低金利であることを前提に組み立てられているからである。

     政府はすでに1,000兆円の債務を抱えており、金利が上昇すれば政府の利払い負担は一気に増加する。金利が2%だった時代はつい最近のことだが、仮に日本の金利が2%に上がっただけで、政府の利払い費は最終的に20兆円に達する(すべての国債が新しい金利に入れ替わるには9年かかる)。日本の税収は約60兆円しかないので、税収の3分の1が利払いに消えてしまうのだ。このような状況になれば、政府は景気対策どころの話ではなくなり、社会保障費や防衛費、地方交付税など減額が許されない予算にまで影響を与える可能性がある。

     民間の経済活動における最大の問題点は住宅ローンだろう。多くの利用者が変動金利でローンを組んでいるので、金利が上がった場合、返済額が一気に増える。猶予措置などで破産を抑制しても、返済額の増加で消費が冷え込むのは間違いない。2022年には日銀にとって、正念場の年となるだろう。

    経済評論家 加谷珪一

  • 米国バイデン政権2年目の正念場~「バイデンのオセロゲーム」評価は?
    1/19(水) 10:42配信
    CBCテレビ

    ジョー・バイデン氏が米国大統領に就任して、2022年1月20日でちょうど1年を迎える。政権についてからの日々を「バイデンのオセロゲーム」を名づけてみた。

    トランプ前政権とは違うカラー
    オセロゲームは、黒と白2種類のコマを使うボードゲームで、相手のコマをはさむと、そのコマは自分の色に反転する。前大統領の共和党ドナルド・トランプ氏と民主党バイデン大統領、どちらが黒でどちらが白かは定かではないが、バイデン氏の1年は、トランプ政権の政策を次々とひっくり返すことに費やされた。トランプ氏が唱え続けた「アメリカ・ファースト(自国第一主義)」からの脱却をめざし、バイデン氏は「国を結束させる」「同盟関係を修復する」と訴え、それを実行した。

    バイデン政権の外交とは?
    地球温暖化対策に取り組む「パリ協定」。トランプ政権が脱退したが、即刻復帰した。WHO(世界保健機関)からの脱退手続きも中止して留まった。核軍縮の新戦略兵器削減条約(新START)も5年間延長した。中東和平問題では、イスラエルに肩入れした前政権と違い、再び相対するパレスチナの支援を再開し「二国間共存」へ舵を切った。これからすべて国際社会に大きく関わるものばかりであり、トランプ前大統領が軽視(?)したG7サミット各国からも歓迎の声が上がった。しかし、一方で、バイデン大統領が「オセロゲーム」でコマを“ひっくり返さなかった”あるいは“ひっくり返せなかった”ものが2つある。この2つのテーマが、世界に影を落としている。

    アフガン撤退のジレンマ
    ひとつは、アフガニスタンからの撤退である。2001年9月の同時多発テロ以来、米国はアフガニスタンに軍を駐留させたが、それを終了した。ベトナム戦争の10年間を大きく超える20年という歳月だった。これはトランプ前政権とタリバンが結んだ和平合意に基づくものだったが、米軍撤収のタイミングでタリバンは攻勢に出て、政府を倒した。米国内の世論は、戦争の長期化に疲れていて基本的には「撤退を支持」。しかし、国際社会においては、この撤退の持つマイナス面がクローズアップされた。
    「米国はアフガンとのパイプ役の座を譲り、その影響力は低下してしまった」
    日本記者クラブで講演した中東調査会の青木健太氏はこう分析する。厳冬を迎えたアフガン、その人道支援も大きな国際問題になっている。

    台湾をめぐる中国との緊張
    もうひとつは、対中国政策である。中国を「敵」としたトランプ前大統領と違って、バイデン大統領は「競争相手」と言う。2021年11月には中国の習近平国家主席とオンラインながら、顔を見合わせて会談をした。しかし3時間半に及んだ会談は、多くのテーマで平行線。とりわけ深刻なのは「台湾問題」だった。台湾をめぐる米中対立は前政権から続いている、中国はあくまでも台湾の独立を認めないが、米国は蔡英文政権を支持して一歩も引かない。その緊張の舞台が台湾海峡である。米連邦議会の調査委員会は「台湾海海峡をめぐる“危険な不確実性の時代”に突入した」と分析し、ブリンケン国務長官も「中国が台湾に侵攻すれば、多くの人にとって恐ろしい結果になる」と動きをけん制する。

    どう動く?アメリカ国内の世論
    中国への強硬姿勢に対しての米国内での支持は大きい。「中国に厳しく」という世論はまずます強く、対中国政策で弱気な対応を見せれば、それはバイデン氏の民主党政権にとって国民の支持を失いかねない局面に直結する。秋には中間選挙がある。2021年11月の2つの州知事選挙、バージニア州ではバイデン大統領が応援に入ったにもかかわらず民主党候補が破れ、ニュージャージー州でも民主党の現職知事が大苦戦して辛くも逃げ切った。中間選挙の結果、そして次期大統領選の結果によっては「オセロゲーム」の主役が再びチェンジしかねないのだ。

    2022年の世界も“世界唯一の超大国”と言われる米国を中心に動くだろう。2月の北京冬季五輪パラリンピックを見据えた外交戦術、さらにロシア軍が国境に展開して緊張が続くウクライナ情勢など外交の課題は山積である。その一方、苦戦している国内での支持率。「バイデンのオセロゲーム」の評価はいかに?バイデン政権2年目は、秋の中間選挙に向けて、国内外の多くの緊張と共に歩んでいくことになる。
              
    【東西南北論説風(312)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

  • 岸田政権の残念な「オミクロン対応と経済政策」で、また日本がデフレ脱却に失敗しそうなワケ
    1/15(土) 7:02配信
    現代ビジネス

    オミクロン株の急拡大

     2021年末から各国でオミクロン変異株の感染拡大が続いている。最初に感染拡大が起きた南アフリカに続きイギリスなど欧州で感染者が増え、やや遅れて2021年末には米国でも感染者が急増、昨年半ばのデルタ株の感染期のピークを大きく超えてすでに感染者は増えている。米国でも、レストラン予約数が昨年半ば同様に減少するなど、2022年早々に一部サービス消費へのブレーキが強まっている。

     従来の変異株よりもオミクロン株の重症化率が低いことは、南アフリカや欧州の状況を見れば明らかであるが、死者が抑制されるとしても、米国の入院患者はデルタ株が拡大した昨年半ば時点をすでに上回っている。昨年半ばにデルタ株が拡大した時期は、経済政策の効果もありサービス消費全体はほぼ影響をうけなかったが、2022年早々に再び新型コロナが経済全体の足かせになるリスクが浮上している。

     周知の通り米欧では新型コロナによって、これまで人口対比でも多くの死者、感染者がでている。ただ、2021年に米国経済は5%超の高成長(筆者試算)となり、同年4-6月時点で実質GDPの水準は新型コロナ禍前を超えた。新型コロナ直後の落ち込みが大きく、そこからの反動増もあるので、5%超の高成長といっても経済全体が加熱している状況ではないだろう。

     一方で、2021年は政策当局の想定を上回るインフレ率上昇が米国中心に起きており、米国ではインフレ抑制が政治的な優先事項になっている。コロナ後の米欧で起きていることは、1990年代半ばから長期間続いている世界的な低インフレが永続するとの見方が覆ったことを示唆すると筆者は考えている。インフレは究極的には貨幣的な現象であり、政策当局が繰り出す金融財政政策によってインフレ率は上昇するのである。

    日本の物価の現状
     こうした中で、日本の状況はどのように位置づけられるか? 先進各国でCPI(消費者物価)が大きく上昇するなかで、日本のエネルギー除いたベースのCPIコアは前年比-0.6%(2021年11月)である。携帯電話料金の引き下げで押し下げられているので、これを除けばエネルギー除くCPIコアはプラスになるが、それでも1%未満が基調的なインフレ率になるだろう。

     米国とは異なり、日本ではインフレ率が依然として低すぎるので、今後の政策対応次第ではデフレに陥るリスクをケアする必要がある。そのため、必要な政策対応も米国とは大きく異なる。

     2021年の米国で見られたように、効果的で十分な財政政策がしっかりと実現していれば、日本でも経済成長が上振れ同時に2%に近づくインフレ上昇が起きていた可能性があると筆者は考えている。

     実際には2021年1-3月からは経済成長が止まり、ほぼゼロ成長で停滞したことで、CPIはわずかなプラスにとどまった。最大の要因は、米欧対比では規模が小さいコロナ感染拡大に対して、医療資源が早々に逼迫したことである。

     このため、緊急事態宣言が長きにわたり発動され、民間の経済活動が萎縮した。医療機関に対して危機時のガバナンスが行われた米欧のように医療資源が機能していれば、2021年に日本でも経済成長率は上振れたと筆者は見ている。

     その上で米国同様に、経済成長押し上げに直結する大規模な給付金などで家計の支出が刺激されれば、米国と同程度の高成長が起きただろう。「たられば」になるが、日本で最大の問題であった低インフレから脱却して、米欧と肩を並べるようなインフレ率の大幅な上昇の可能性があったのではないか。新型コロナ問題には多くの人が苦しんでいるのだが、日本経済にとってはデフレ克服のきっかけを提供しているとの評価ができる。

    岸田政権には期待できず
     2022年早々に日本でもオミクロン変異株の広がりで感染者は増えているが、治療効果が高い経口薬が広がれば、新型コロナの状況は大きく変わる可能性がある。新型コロナが経済成長を抑制しなければ、日銀の金融緩和政策の効果が強まり、米欧に追いつく格好で日本のインフレ率も2%に近づくシナリオにも期待できる。

     この意味で、日本はデフレ克服のチャンスはまだあるとも言えるが、一方で、岸田政権がしっかりとコロナ対応を繰り出し、成長を高める経済政策を行うかどうかについて筆者はあまり期待していない。むしろ、アベノミクス路線からの転換につながりそうな、「新しい資本主義構想」が具体化する中で、脱デフレの前に経済成長を抑制するマクロ安定化政策に転じるリスクがある。

     具体的には、「モノから人へ」の方針のもと所得分配政策が強まり、金融所得税をはじめとした増税と公的部門の肥大化が同時に実現する。「コンクリートから人へ」のキャッチフレーズを打ち出し増税政策に邁進して、経済官僚に金融政策を任せた、かつての民主党政権の失敗を繰り返すとすれば最悪である。

     また、2021年の日本の経済成長を抑えた医療体制逼迫に関して、これを回避する十分な対応ができていない可能性がある。外国での先例からすれば、オミクロン株の感染者は、昨年半ばのデルタ株感染者拡大時よりも大きく増える可能性が高い。感染者が増えても弱毒化したと見られる変異株に応じた適切な対応が行われればいいが、今後もコロナは2類感染症として原則対応されるのだから、感染者数が増えれば病床使用率も上昇するだろう。

     岸田政権は、病床確保のための「見える化」のシステム整備を行っているが、病院間の情報共有が進んでいない事例がみられる。また、病床と医療人材の双方を増やすインセンティブを高める充分な予算措置、そして医療機関へのガバナンスを効かせる法的措置が行われていない、と筆者は認識している。実際に、岸田政権は病床確保強化のための感染症法改正案について国会への提出を見送る。夏場の参議院選挙を控えて、リソースを選挙に回すために危機に備えた対応強化を控えたのだろうか。

     また、諸外国ではブースターワクチンの接種が相当に進んでいるが、日本でのブースター摂取率は1月7日時点で75万人と、諸外国対比で圧倒的に低い。オミクロン変異株の重症化を防ぐためにワクチン接種は必要だろうが、ブースター接種の遅れも、事態が流動的に動く中で日本の保健行政が依然として十分機能してない可能性を示している。

     2021年同様に米欧対比で少ない感染拡大であっても病床使用率が上昇すれば、再び経済活動自粛が強要される。日本は、ゼロコロナを目指して厳しい経済統制が行われる中国とは異なるが、強い同調圧力によって似たような経済停滞が起きてしまう。デフレ克服の機会を、2022年も再度逸することになるのだろうか。

     *

     本稿で示された内容や意見は筆者個人個人に属するもので、所属する機関の見解を示すものではありません。

    村上 尚己(アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト)

  • 2022-01-17 13:23
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    【相場の細道】キシダノミクスは株価抑制?

     岸田首相の「新しい資本主義」を標榜する経済政策「キシダノミクス」は、日経平均株価の上昇を抑制する政策なのではないかと警戒されている。岸田首相は「人の話をよく聞く」と評判だが、株式市場の声には耳を傾けてくれないのだろうか。
     安倍元首相は、ニューヨーク証券取引所で「バイ・マイ・アベノミクス」と喧伝したが、岸田首相は、「セル・マイ・キシダノミクス」と呼び掛けている。

    1. 金融所得課税の強化
     岸田首相は、自民党総裁選で金融所得課税の見直しについて言及していた。
     岸田首相が自民党総裁選で勝利した2021年9月29日、日経平均株価は639.67円下落して29544.29円で引け、3万円の大台を割り込んだ。翌日以降も下げ止まらず、首相に就任した10月4日も326.18円下落して2万9000円を割り込み、10月6日にかけての下げ幅は計2655円にも達した。

    2. 自社株買いの制限
     2021年12月14日、岸田首相は衆院予算委員会で立憲民主党の落合衆院議員から自社株買い制限の検討を求められ、「企業のさまざまな事情や判断があるので画一的に規制するのは少し慎重に考えなければいけないが、個々の企業の事情などにも配慮したある程度の対応、ガイドラインとかは考えられる」と発言した。岸田首相の企業の自社株買いの制限を示唆する発言を受けて、日経平均株価は28309.67円まで下落し、前日比207.85円安の28432.64円で引けた。

    3. 株価を意識せず
     2022年1月14日、山際経済再生大臣は「新しい資本主義は株価を意識してはやりません」と明言した。
     日経平均株価は、一時28000円を割り込んで27889.21円まで下落後、前日比364.85円安の28124.28円で引けた。

    4.日銀の利上げ議論報道
     2022年1月14日の早朝、「日本銀行が物価目標2%の達成前に利上げを議論」との観測記事が報じられた。
     ドル円は、「BOJ」「rate hike」という文字に反応した米系ファンド筋のAIトレードのドル売り・円買いで114円を割り込み、113.49円まで売られた。
     1月17-18日の日銀金融政策決定会合を控えて、日本銀行はブラックアウト期間(※金融政策に関する発言は禁止)に入っていることで、岸田政権の議員による発言だと思われる。
     日本銀行が利上げに踏み切るには、フォワードガイダンスを改定しなければならないことから、金融政策の知識はあるものの、理解していない議員、おそらく金融機関出身の議員の発言だと思われる。
     日本銀行は、昨年10月以来となる上場投資信託(ETF)701億円の購入を行ったが、利上げ観測報道を否定したのかもしれない。

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