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2016年の記事です。

ソフトバンクグループの中国・アリババ集団株の売却益のうち、7割は計上が3年後の2020年3月期になることが分かった。計上額は最大5000億円の見込み。金融派生商品を組み込んだ手法を用いたため、会計上の利益が出るまで時間差が生じる。一度に市場に出回る株数を減らし、アリババの株価への影響を和らげる狙いがある。

ソフトバンクはアリババ株を活用し、100億ドル(約1兆円)を調達した。手法は大きく2つの取引に分かれる。一つは、アリババ自身やシンガポールの政府系ファンドなどへの直接売却だ。ソフトバンクは34億ドル分を売却し、16年4~6月期に売却益を約2000億円計上した。

もう一つは、アリババの米預託証券(ADR)に強制転換する機関投資家向けの社債66億ドルの発行。ソフトバンクはすでに同額の現金を手にしたが、売却益の計上は3年後の20年3月期になる見通しだ。

複雑な仕組みを併用したのは需給への配慮が理由だ。一般投資家に大量に売却すると市場での需給が緩み、ADRの価格が下がる。これを嫌い、ソフトバンク社内の財務チームが中心となって仕組みを考案した。

一連の手続きが全て終了しても、ソフトバンクは27%を持つ大株主で、アリババは持ち分法適用会社にとどまる。アリババの株価が下がれば、ソフトバンク自体の企業価値低下にもつながる。

社債発行なのになぜ株式売却益なのか。そしてなぜ計上が3年後なのか。ポイントは強制転換社債の商品設計と、アリババ株の値動きにある。

社債は年率5.75%の利息が付き、3年後にアリババのADRに転換する。その際のADR数はニューヨーク証券取引所でのADR価格に応じて決まる仕組みだ。転換比率に上限・下限が設けてあるため、売却益は4000億~5000億円程度になる見込み。

ソフトバンクは、この強制転換社債を発行する特別目的会社(SPC)を設けた。ソフトバンクの子会社が、SPCとの間で3年後にアリババ株を受け渡す契約を結んでおり、このタイミングでソフトバンクが株式売却益を認識する。

孫正義社長は「本音を言えば1株も売りたくない」と漏らす。だが、3.3兆円を投じた英半導体設計アーム・ホールディングスの買収のような大きな投資案件が浮上した場合、アリババ株の現金化を再度模索する可能性もありそうだ。