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太洋物産(株)【9941】の掲示板 2016/11/20〜2017/11/06

米抜きTPP推進に舵 11カ国、5月に閣僚協議 <日経web版>2017/4/15 1:20


 トランプ米政権が誕生し、環太平洋経済連携協定(TPP)離脱を通告して3カ月弱。空中分解の危機にひんしたTPPを救おうとする動きが出てきた。日本政府は米国以外の11カ国による協定発効に舵(かじ)を切り、5月下旬にベトナムで開く閣僚協議で米抜きTPPの本格検討に入る。

 「TPP11を進めることをどう思うか」。4月初旬、世耕弘成経産相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)会議のために来日した閣僚らに問いかけた。TPP11とはTPPに合意した12カ国から米国を除いた11カ国の交渉のことだ。政府は従来、「米国抜きのTPPは意味がない」(安倍晋三首相、昨年11月の記者会見)と慎重姿勢だったが、ここへきて方針を転換した。

 その理由の一つは、トランプ政権が米抜きでTPPを進めることに異議は唱えないことが明確になったことだ。2月の日米首脳会談で両首脳は、米国のTPP離脱を踏まえ、アジア太平洋地域の貿易・成長促進に最善の方法を探ることで合意した。会談後に公表した共同声明には「日本が既存のイニシアチブを基礎として地域レベルの進展を引き続き推進することを含む」という一節がある。これに「日本がTPP11を進めることも含む点を米国側に確認した」と政府関係者は言う。

 TPP11を日本に主導してほしいという期待は少なくない。シンガポールの外交筋は「米離脱後はTPP内で最大の経済規模の日本が動かなければ話は進まない」と言う。米国でも議会の一部や有識者の間には、日本が米国に代わってアジアで貿易自由化を進めてほしいという声がある。米国のアジア重視政策の柱だったTPPからの離脱でアジアで中国主導が強まることへの警戒もある。

 政府はまず、5月下旬にベトナムで開くTPP閣僚会合で、TPP11の発効方法の検討を事務方に指示する共同声明の採択を目指す。米抜きTPP発効には、米国を外す協定改正を11カ国で合意する必要がある。日本、オーストラリアなどは前向きだが、難しいのはベトナム、マレーシアの説得だ。米国という大きな輸出市場を期待して交渉で譲歩した両国にとり、米抜きTPPの魅力は小さい。ベトナムなどが米国の圧力で譲歩した措置の撤回を求め始めれば、本格的な中身の再交渉になり収拾がつかなくなる。TPP合意内容は守りつつ米国抜きを決めるという高度な交渉術がいる。

 日本がTPP11を進める背景には通商で2国間主義を強める米国へのけん制という意味合いもある。18日に初会合を開く日米経済対話で米国は貿易赤字削減のための個別協議を日本に求める見通しだ。先の米中首脳会談でも米国は貿易不均衡是正で「100日計画」を持ち出すなど性急に成果を求める姿勢が鮮明だ。

 TPPが掲げた多国間の「質の高い自由化」という理念に、短期志向のトランプ政権の関心は薄い。経済対話で米国との協議は続けつつ、TPP11を発効させ、将来米国が多国間の枠組みに戻る余地を残すのが日本の戦略だ。外務省幹部は「日米経済対話とTPP11は表裏一体」と話す。米国も含む相手国11カ国を対象にしたコメや乳製品の輸入枠をどうするかなど、TPP11に向けて日本国内で解決すべき課題もある。日米の2国間協議で米国がTPPでの日米合意を上回る市場開放を求めてきたときの対応も難しい。

 それでも、日本にとってTPP推進の意義はある。政策研究大学院大学の川崎研一特任教授の試算では、米を含むTPP12の日本の実質国内総生産(GDP)押し上げ効果は1.37%。TPP11では1.11%と小さくなるが、米抜きでもその経済効果は無視できない。

 英国の欧州連合(EU)離脱やトランプ政権の誕生で、多国間主義が揺らぎ、2国間の紛争に傾きがちな世界。その中で多国間の貿易自由化を目指すTPPを守ることは反グローバル化を押しとどめる意味も持つ。自民党総裁の任期延長で最長2021年9月まで続く可能性も出てきた安倍政権。これはトランプ大統領の1期目の任期(21年1月)を超える。米抜きでもTPP発効に導けば、安倍外交の立派なレガシー(政治的遺産)になるのではないか