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スルガ銀行(株)【8358】の掲示板 2018/05/13〜2018/05/15

「まっとうなビジネスに戻して『群れ』に紛れてしまうなら本物ではなかったということだ」―。金融庁幹部はスルガ銀行についてこう評する。同庁は2017年秋に公表した金融レポートで、地方銀行106行の本業の利益率を表したグラフを載せた。縦軸は利益率、横軸は利益率の増減幅を示し、106個の点が散らばった。

目立つのがスルガ銀行。突出して高い利益率を表している

そのグラフの右上に、他の点からかけ離れて描かれたのがスルガ銀行だった。要するに、利益率やその伸び率が他と比べて突出して高いことを示している。実際、スルガ銀行の貸出金利回りは3.6%を超え、1%強にとどまる地銀や0%台に落ち込んだメガバンクと比べて圧倒的に高い。

預金残高は4兆円強と地方銀行の中で30位前後にとどまるが、17年3月期の連結純利益は約430億円。統合の特殊要因で利益がかさ上げされた常陽銀行と足利銀行を傘下に持つめぶきフィナンシャルグループ(FG)、横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディアFG、千葉銀行に次ぐ4番目だ。

上位3位はいずれも預金残高が10兆円以上の有力地銀。スルガ銀行がそれに匹敵する利益を稼ぎ出しているためグラフの右上に位置しているわけだ。なぜか。他行が低リスクの自治体や優良企業への融資をめぐる金利競争に明け暮れるなか、他行が手を出さない資金需要を埋める融資をしている――。こんな見立てがこれまでの定説だった。

スルガ銀行が力を入れた非正規社員やひとり親世帯の住宅ローンといったユニークな商品はその典型だ。「リスクが高いから貸さない」のではなく、「リスクに見合った金利で貸す」という考え方が、高い利益率を支えてきた。リスクも取らずに低収益ばかりを嘆く銀行へのアンチテーゼとして、金融庁もスルガ銀行の経営を「地銀の1つの生き方」(幹部)としてきた。

ただ、今回の女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」への投資トラブルは、スルガ銀行の高収益が、本来は取るべきではなかったリスクを取った結果ではないか、との疑念につながる。その高収益が、審査書類の改ざんを認識しながら融資するといった違法行為に関与することでうみだされているものだったとすれば、持続可能なわけがない。

そうなれば、金融庁のグラフ右上で輝いていたスルガ銀行は、低い利益率や伸び率に甘んじる多数の地銀の「群れ」に紛れ、普通の地銀になってしまう。金融庁幹部の冒頭発言は、そんなことを意味している。

日本の銀行は低収益体質の構造的な原因が、信用度に見合った利益を得られない「低クレジットスプレッド」にあるとされている。半面、リスクの高い人にはそもそも融資しないという消極的な姿勢も大きく影響している。リスクに見合った利益を追求していたスルガ銀行がつまずいた負の影響は大きい。(亀井勝司)