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 日経新聞
5日の日経平均株価は続落し、前週末比151円安の1万8274円で終えた。日本時間の朝、憲法改正の是非を問うイタリア国民投票で改憲反対派が勝利したことが伝わり、改憲派のレンツィ首相が辞意を表明したことでリスクオフムードが広がった。ただ、引けにかけては押し目買いも入り、波乱要因として身構えていたイベントにも市場の動揺は小さかった。日本株は中長期的な強気シナリオが勢いを増しており、もう一段の上昇を見込む声がある。

 「健全な調整だ」。カブドットコム証券の河合達憲氏は5日の相場をこう表現する。日経平均は1日に年初来高値を更新し、急ピッチな上昇には警戒感も出ていた。4日のイタリア国民投票の結果は「絶好の利益確定売りのきっかけになった」(河合氏)。売りは短期筋の手じまい売りにとどまり、中長期の機関投資家も売り急ぐような気配はなかった。

 株式市場の反応が限定的だったのは、為替のドル円レートが1ドル=113円台で推移したことが大きい。主力企業の想定為替レートは100~105円が多く、現状の円安水準が続けば輸出採算の改善を通して大幅な業績改善が期待できる。大和証券が集計したアナリストの業績見通しの方向性を示す「リビジョン・インデックス」を見ると、前週末に今年初めてプラスに転じた。指標をとりまとめている鈴木政博氏は「電機や商社などの業績に明るさが増している」と指摘する。5日もこうした業種が物色され、三井物産やルネサスエレクトロニクス、日立建機などが年初来高値を更新した。

 「世界の投資家は日本の政治の安定感を再評価している」と話すのは、海外投資家の動向に詳しいBNPパリバ証券の岡沢恭弥氏だ。欧州はポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭する中で政治リスクが増している。米国はトランプ次期政権が就任後、実際にどのような政策を打ち出してくるかが読みにくい。一方、日本は安倍晋三首相のもとで長期政権が続いており「日本株は『安倍プレミアム』が評価されてきている」(岡沢氏)。

 株価チャート上でも強気シグナルが点灯しつつある。日経平均は来週には26週移動平均が52週移動平均を下から上に突き抜ける「ゴールデンクロス(黄金交差)」を形成する見通しだ。

 13~14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)などを控え、短期的には調整が入ってもおかしくはない。ただ、市場関係者の鼻息は荒く、ウィズダムツリー・ジャパンのイェスパー・コール最高経営責任者(CEO)は「日経平均は2万3000円を目指すだろう」と強気な見方を示す。米大統領選後の相場は懐疑の中で育ってきたが、少しずつ楽観論が成熟しつつある。