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だが「多くの専門家は近年の企業債務の積み上がりには既視感があるとみている」(パウエル議長)。一つのカギがCLO(ローン担保証券)だ。CLOはレバレッジドローンという信用力の低い企業向けの融資を束ねて証券化したものだ。リーマン・ショックに火を付けたのは、低所得者への住宅ローンを束ねた証券化商品であるCDO(債務担保証券)だった。
米景気の拡大は10年近くに及び、債務不履行に陥った企業は多くない。このため投資家は債務不履行のリスクから目をそらしがちで、余剰マネーが信用力の低い企業に向かう。レバレッジドローンは最近、四半期に400億ドル以上のペースで増え続けている。
企業の採算が悪化すれば、金利が上昇し借金を返せない企業が続出する恐れがある。国際通貨基金(IMF)も「債務はさらに増え、将来大きな景気後退につながりかねない」と指摘する。
FRBにとって悩ましいのは景気拡大と金融安定の両立だ。利上げを進めれば金融の過熱を抑えられるが、今年は海外景気の減速などを背景に早々に利上げを停止した。
これまでFRBはバブルを事前に見つけることは難しいとの立場から、バブル崩壊が起これば金融緩和で事後的に対応する姿勢をとってきた。FRB議長が金融面のリスクについて事前に警鐘を鳴らすのはやや異例の対応だ。
「最近のFRBは『国際決済銀行(BIS)ビュー』に近くなっている」。複数の日銀幹部はこう指摘する。BISビューとはバブルなど金融面の不均衡を未然に防ぐよう金融政策を運営するスタンスのことだ。
FRBは6日にも金融安定性報告書で企業債務の膨張を分析し、金融の安定を損なうリスクを指摘した。パウエル議長は「金融システムの脆弱性を通して、借り手への逆風の高まりが経済全体へと拡散するかを点検していく」と述べた。中央銀行らしい慎重な表現だが、警戒感が決して小さくないこともにじむ。