IDでもっと便利に新規取得

ログイン


ここから本文です

全米で浸水被害の恐れがある物件の数は、米連邦政府想定の1.7倍に達する――。世界中の洪水研究者や科学者と共同で洪水予測技術を開発する米非営利団体、ファースト・ストリート財団は新事実を突き止めた。
IPCCなどの新しい研究を踏まえ、「豪雨」や「洪水」「高潮」「海面のうねり」などの影響を予測に取り入れた。将来に起こり得る気候変動を見すえ、浸水のリスクを再評価した結果は「1460万の物件が危険にさらされる」。米連邦政府所管の機関が想定する870万件を上回った。
最新の予測に基づく分析は新たなリスクを浮かび上がらせた。手に入るデータが増えても、解析や更新を怠れば天災ではなく人災を招く。同財団は「最も重要な資産である家を守るため、可能な限り多くのデータと情報を提供し、人々の意思決定を助ける」とリスク開示の意義を語る。

これからの時代は、堤防やダムのような対策から情報の伝達や避難計画、居住地の選択まで、すべてが新しい前提の下で見直しを迫られる。

九州大学の島谷幸宏教授は「従来はダムありきで被害ゼロを目指した。今後は人が住む場所を根本から見直すなど、被害をいかに抑えるかという発想も必要になる」と指摘する。ハード・ソフト両面からの総合対策が欠かせない。

総力戦は温暖化対策でも同じだ。新型コロナウイルスの感染拡大は、経済活動の自粛と引き換えに世界の温暖化ガスの排出を減らした。20年はエネルギー関連の温暖化ガスが前年比8%減るとの試算もある。温暖化対策でも、かつての日常に戻るだけでは不十分だ。再生可能エネルギーの活用や省エネの徹底で、「グリーン復興」による新しい日常をつくることが急務だ。
温暖化が引き起こす気候変動は一国で解決できる問題ではない。最新の知見や技術を世界で共有し、「想定外」としてきた災害に個人や企業、行政が一体となって取り組むことが必要となる。

(気候変動エディター 塙和也、橋本慎一