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http://news24.jp/articles/2013/05/17/10228762.html
 いま、世界で注目されている3Dプリンター。モノ作りの革命を起こすともいわれているこの技術にアメリカでは国をあげた取り組みが始まっていた。ニューヨーク支局・柳沢高志記者が取材した。

 4月22日、アメリカ・ニューヨークで3Dプリンター関連企業が約20社が集まり、初めての3Dプリンターの博覧会が開かれた。会場ではなぜかギターを演奏する人がいる。話を聞いてみるとこのギターも3Dプリンターで作ったという。

 3Dプリンターとは普通のプリンターのような感覚で3次元のデータを立体物として作ることができる機械。ある企業は彫刻などの芸術品を保存するためにデータを取り込んで3Dプリンターで複製を作るサービスを行うという。3Dデザイン会社の代表の男性は「数年前は3Dプリンターなんて誰も知らなかった。今はみんなが注目し、すごいものと知っているのです」と語る。

 なぜ、3Dプリンターがいま、世界で注目されているのだろうか。ニューヨークのマンハッタンにある店舗で売られていたのは3Dプリンター。値段は日本円にして約20万円だ。店の奥には、写真ブースがあり、正面と横の2台のカメラで顔のデータを取り込む。するとできたのは記者の顔のフィギュアだ。プリクラのように簡単に、2000円ほどで自分の顔のフィギュアを作ることができるのだ。メーカー・ポットのブレ・ペティス社長は「3Dプリンターによって、すべての人が想像したモノを形にできる大きな力を手にするのです」と熱く語る。

 3Dプリンターはかつて、数千万円する高額なものだったが、この数年で価格が急激に下がり、企業や個人が手に入れやすくなったのだ。オバマ大統領も注目しており「3Dプリンターは製造業に大きな変革をもたらす可能性を持っています」と語っている。中国など新興国に奪われた製造業を3Dプリンター技術によってアメリカに取り戻したいというのがオバマ政権の戦略なのだ。オバマ政権が設立した3Dプリンターの国立の研究施設を日本メディアとして初めて取材することができた。エド・モリス所長は「この機械は他のものと同様の仕組みですが、金属の粉を使ってモノを作り上げるのです」と説明してくれた。金属をプリントアウトできる3Dプリンターなど、最先端技術の研究が進められていた。さらにエド・モリス所長は「この施設は国防総省、エネルギー省、全米科学財団、国立標準技術研究所、そしてNASAと提携しています。民間企業が必ずしも自分たちでできない事が政府機関と協力することで可能になります」と語る。アメリカの民間企業と政府機関の連携によって3Dプリンターの活用を広めようとしているのだ。

 オバマ政権の戦略はこれだけではなかった。バージニア州の公立中学校では、生徒たちが3Dプリンターでスピーカーを作る授業が行われていた。教室には3Dプリンターが5台。実は、オバマ政権は今後4年間で1000か所の中学校や高校に3Dプリンターを設置する計画を進めているのだ。授業を監修する教授は「生徒たちは卒業まで何年も3Dプリンターに触れ、3Dでのデザインを直感的にできるようになります」と説明してくれた。パソコンで設計した部品を3Dプリンターでプリントアウトすることで、スピーカーを作る。ある生徒に話を聞いてみると「将来は弁護士になるのが夢だったけど、この授業を受けて技術者になるのも良いかなって思っています」ということだ。アメリカでは新しい製造業における人材育成が教育の現場でも始まっているのだ。

 こうした3Dプリンター技術、すでにアメリカの大企業も取り入れていた。アメリカ最大の総合電機メーカー、ゼネラル・エレクトリックの研究所。見せてもらったのは飛行機のエンジンの金属部品。ルアナ・イオリオ製造技術長は「ここに空洞の部分が見えますよね。既存の製造機械ではこうした空洞を作るのにはコストがかかったんです」と話す。しかし、3Dプリンターでは複雑な形の部品をより安く作ることができるという。会社全体で、すでに数百台の3Dプリンターを設置し、2020年までに10万種類のジェットエンジンの部品を製造する計画だ。

 世界が注目する新しい技術。アメリカはいち早く国をあげて取り組むことで、製造業の復活を狙っている。