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松村:佐賀先生が考えていらっしゃる方向に進むと思いますよ。がん細胞は周囲に間質があり、そこが薬をブロックするために抗がん剤や分子標的薬の効きが悪いことがわかっています。ですので、私は今、がん細胞そのものではなく、間質に集積する抗体を研究しています。 がん細胞のすぐ近くから、その抗体を付けた抗がん剤 を放出させるのです。高分子ミセルとのハイブリッド も考えています。抗体とリポソームの組み合わせはす でにありますから。

松村:がんの診断や治療で大きな鍵になるのがフィブリンで す。がんの浸潤は、周囲の組織を溶かすということで、 血管があれば出血し、そこで血液凝固が起きます。脳 腫瘍、膵がん、胃がんのような難治性で浸潤性の高い がんほど静脈血栓症の患者さんが増えることが多くの 臨床データから明らかです。無症候性で凝固異常(フィ ブリンの増加)が起こるのはがんだけの特徴なので、 それをつかむ抗体を作っていて、いずれ PET や MRIでの画像診断や血液検査で簡便に測る方法ができればと 考えています。

松村:抗がん剤の DDS 化の最大のメリットとしては、副作用対策費が減ることが挙げられます。吐き気などの副 作用を抑える薬の処方量が少なくなり、入院で行って きた化学療法がこれまで以上に外来化学療法に移行し ます。パクリタキセルをアルブミンによって DDS 化したアブラキサン ® はパクリタキセル製剤の約 2.5 倍 の価格ですが、よく効いた患者さんの払う医療費はパ クリタキセル製剤よりも安くなるという計算がありま す。パクリタキセルの高分子ミセル製剤はさらに神経 毒性が弱く、患者さんにも医療経済にも貢献すると予 想しています。製薬会社の側では、承認に向けて、こ のようなメリットを担当機関へ説得していくことが大 事ですね。日本の PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)もそういう情報を待っていると思います。