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内閣府ナノバイオファースト2011年10月号より
(松村保広先生の発言部分を抜粋)

まず、現在のお仕事、ナノバイオファーストでの役割 をご紹介ください。

松村:ナノテクノロジーを使った高分子ミセル製剤を中心に、抗がん剤の臨床試験を担当しています。日本化薬とともに開発中のパクリタキセルを内包させた高分子ミセル製剤は、現在、日本で臨床第II相 試験が終わり、ここ 1 年くらいの間に第III相試験を始める予定です。また、シスプラチン内包のものは台湾で第I相試験が終わっており、頭頸部腫瘍をターゲットに第II相試験に入るべく、日本のほかの医師とともにプロトコル決定に参加します。

高分子ミセルによるDDSのイメージングには、どんな 印象をお持ちでしょうか。

松村:このプロジェクトではナノDDSを治療と診断の両方に使うことが目標ですが、治療薬は患部に長く留める ことで効果が出る場合が多く、一方で、診断用に使うなら腫瘍のコントラストをつける必要があります。悩ましいところです。

がんの化学療法の現状に関して、どのようにお考えでしょうか。

松村:分子標的薬ばかりが注目され、国立がん研究センターでも研究倫理審査委員会で検討される新薬候補の約 8 割が分子標的薬で、しかもほとんどが外国の製薬会社の製品です。分子標的薬は高額で、現状では、患者さんは高額療養費制度は使えるものの、1カ月50 ~ 100 万円程度の自己負担が必要で、延命効果は3カ月程度です。この状況が続くと日本の健康保険制度は破綻します。日本で1カ月約60万円する肝臓がんの分子標的薬ソラフェニブは 英国NICEは承認したものの健康保険の適応にはしませんでした。つまり、使用する場合は自由診療になります。外科手術や放射線治療の目は治癒ですが、全身に広がったがんでは化学療法しかなく、その目的は延命になります。分子標的薬では骨髄毒性などの従来の抗がん剤の副作用が少ない一方で、出血や間質性肺炎のようなコントロールしにくい、つまり分子標的薬による治療を止めざるを得ない副作用が出ます。早期がんと進行がん、血液がんと固形がんを分けて、化学療法を見直し、戦略を立てないといけないと考えています。

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