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今回の短信での記述としては、

・本試験の主要評価項目である無再発生存期間(RFS)に関して、S-588410群とプラセボ群の比較では、S 588410群におけるRFS延長について統計学的な有意差は認められませんでした。

→もちろんこれが認められればベストでありました。

・「一方で」、食道がん発生部位別あるいはリンパ節転移グレード別の探索的な部分集団解析では、S-588410投与により「一定の発生部位」の患者さん集団で「全生存期間(OS)」が「有意に延長」され、

→「一定の発生部位」とは、食道がんには頸部食道、胸部食道、腹部食道等の「発生部位」の区分があり、それらの内の「一定の発生部位」では「全生存期間(OS)」に統計的有意差が認められたとのことです。
これはもちろんS-588410の「単剤」での効果であり、しかも術後3年生存率(スケジュール的にいっておそらくその程度の期間と推察される)という比較的短期の治験期間でその結果が打ち出されています。近大のP2試験では「術後5年生存率」での統計的有意差であり、しかもそれは「全生存期間(OS)」ではなく「食道がん特異的生存期間」でありました。(一般的には「全生存期間」での有意差示現の方がハードルが高いと思われます)

・「また」リンパ節転移が多い患者さん集団ではRFSやOSの改善が認められる傾向を確認しております。
→一般に、リンパ節転移が多い患者さん集団は予後が悪いとされています。
このハイリスクグループでRFSやOSの改善が認められる傾向を確認できたことの臨床的な意義は非常に大きいと思われます。

・「また、」副次評価項目のひとつである細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘導に関してはS-588410投与により高い誘導率が確認され、
→そもそもこのCTL誘導はがんペプチドワクチン療法では認められないのではないかという議論がありましたが、P3治験でこの効果が正式に認められたことは重要であると考えます。

・主な副作用は注射部位の皮膚反応であり、重篤な皮膚反応は認められませんでした。
→侵襲が大きい食道がん手術後の治療法としてリンパ球減少など重篤な副作用がないというプロファイリングは患者さんのQOL向上としてのメリットは非常に大きいと思われます。

以上より、自分は今回の治験結果は全体としては有意差(RFS)が出ていない以上ベストではないものの、

・食道がんに対してはそれを攻撃するための「爆撃機の量産」が十分になされ、しかもそれは敵地まで有効に飛来し、(高いCTL誘導)、
・その爆撃は一定の部位には良好な効果を発揮し(一定の発生部位におけるOSの統計的有意差を示現。おそらくはPD-L1の発現が高いグループに対してはそのシールドに跳ね返され、却って他の正常細胞にも悪影響があったのだと推測します)、
・リスクのより高いと考えられる「リンパ節転移が多い患者さん集団」に「RFSやOSの改善が認められる傾向を確認」したこと

等、今回のP3の治験結果はセカンドベストであったと思っています。

P3治験は一旦終了していますが、今後、追加的な「フォローアップ」がなされ「RFSやOSの改善が認められる傾向を確認」というレベルから「RFSやOSの統計的有意差を確認」に至る可能性も十分にあるのではと考えています。(安田教授はOSについては術後5年程度の期間で分析を実施することを今年4月のがんサポートで示していました)

現在、がん(固形癌)治療薬の新規有効成分が承認されるのは世界的にも極めて限定的です。日本ではほとんどありません。
これまで承認されてきた分子標的薬にしても免疫チェックポイント阻害剤にしても効果はある特定の「がん種」において一定の「組織型」や「増殖因子」等の「バイオマーカー」が認められるタイプにしか使用できません。

もし今後、「一定の発生部位」での統計的有意差が何らかの「バイオマーカー」と関係づけられ、しかも現在主流の免疫チェックポイント阻害剤との補完的な関係が示されれば、それは「大逆転ホームラン」となることでしょう。

自分はそうなると思っています。