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アンジェス(株)【4563】の掲示板 2021/10/06

【デイリー新潮】
国産ワクチンは承認条件緩和でも
今冬に間に合わず.....海外製ワクチン有効性の高さも壁(その3)

<副反応を恐れるあまり>

思い起こせば、日本は1980年代まで「ワクチン先進国」だった。米国などに技術供与していたほどだったが、日本でワクチン開発が衰退した大きな要因は訴訟だった。1970年頃から予防接種の健康被害が社会問題化していたが、1992年の東京高裁での国の全面敗訴が決定的だった。世論に押される形で国は上告を断念し、1994年には予防接種法が改正されて、接種は努力義務となった。副反応を恐れるあまり国内の接種率は一気に下がり、日本の製薬企業は需要が安定した既存ワクチンの製造に特化し、新規開発をほとんど行わなくなってしまったのだ。

一度消えかけたワクチン開発だったが、2009年に蔓延した新型インフルエンザの世界的流行で再び盛り上がりを見せた。政府は約1000億円の補助金を出してワクチン開発を支援する姿勢を示したが、感染の早期収束で立ち消えとなった。

ワクチンの開発には巨額の投資が必要であり、有事にしか使わない製造設備を維持し続けることは民間企業の力だけでは不可能だ。英国では製薬企業が資金回収への懸念を抱えることなく設備を維持できるようにするため、政府が製薬企業に維持費の一定額を負担することで、必要なときに必要な量を優先的に受け取れる「サブスクリプション(定額制)」方式の新薬の調達契約を導入している。

ワクチンを含めた新たな薬の開発を平時から進められる仕組みを作らなければ、日本の感染症対策はいつまでたっても世界に劣後したままなのではないだろうか。
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●藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。