ここから本文です

「洗脳研修」と求人詐欺

ブラック企業が「洗脳研修」を行う理由はこれだけではない。「洗脳研修」は募集時・契約時に提示された労働条件を実質的に書き換えるかのような役割を果たす。先ほどのAさんの場合はこうだ。

配属が決まったAさんを待っていたのは長時間労働の連続だった。朝9時までに出社して、23時半に退社するような働き方がすぐに日常化した。

募集要項には「週休2日制」「長期休暇」と記載されていたが、当初から週休は1日であり、入社して数ヶ月が経つと、「お前も慣れてきただろ」と言って休みであるはずの曜日にも出社することを要求された。周りにも、一週間休みなく働く人は珍しくなかった。長期休暇もなく、有給休暇を取るという発想もなかった。

給与については、募集要項には「月20万円」と書かれていたが、実際には基本給が15万円ほどで、固定の残業代等を含めて20万円になるということだとわかる。どれだけ働いてもそれ以上の残業代は支給されなかった。

典型的な「求人詐欺」の事案だ。求人詐欺とは、求人票に本来よりも高い条件を提示することで、労働者を騙して採用するという手口である。この事例の場合、休暇については明らかに実態とは異なる条件で募集がなされており、給与についても、固定残業代について募集時・契約時には全く説明がなかった。明らかに騙されている(求人詐欺への対策ノウハウについては、拙著『求人詐欺―内定後の落とし穴』(2016年、幻冬舎)を参照していただきたい)。

しかし、社員たちはこれらのことを少しもおかしいと思っていないようであったという。というのも、「洗脳研修」によって「会社や上司の言うことは絶対」という意識を植え付けられてしまい、社員たちは騙されて入社させられたことにすら疑問を抱くことができなくなってしまうからだ。

ttps://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20160420-00056844/