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久光製薬の株式は長期ホールドの末、だいぶ前に手放しましたが、この会社が将来どのようになっていくのかには興味があります。私は一般に言われているような「積極的な成長戦略のためのMBO」ではなく、「創業家による資産防衛と利益囲い込みのための要塞化」が目的だろうと思います。

今回のMBOを実施する中冨家の資産管理会社「タイヨー興産」について調べてみました。以前は久光製薬の連結対象会社として有報にも記載されていたようですが、ある時期から連結対象から外れた一方で、広告のインハウスエージェンシーとして「久光エージェンシー」が連結対象となっています。
両社の住所をGoogleで調べてみると、ともに福岡県久留米市を拠点としており、マンションの部屋番号まで、まるっきり同じです???
これを見たときに、以下の仮説が成り立つのではないかと思いました。

決算説明会の資料によると、久光製薬は年間約150億円という巨額の広告費を投下しています。これはグローバルの広告費なので、仮に半分が日本での広告費、そのうち8割を久光エージェンシー(HAGE)が取り次ぎ、HAGEが20%(一般的な手数料率らしい)の手数料を取っているとなると、年間10億円程度の売上が入ってきます。HAGEがサントリーのようにインハウスエージェンシーとして活発に活動していると思えませんので、実態は大手広告代理店への横流しでしょう。すると、売上≒利益と言うことができると思います。
こうしてHAGEが得た収益・資金を、同じ部屋にある中冨家の資産管理会社であるタイヨー興産に業務委託料や配当などで還流し、タイヨー興産が蓄積した資金を今回のMBOに使用する。
つまり、久光製薬が広告費を削ると、HAGEの利益が減り、巡り巡って中冨家(タイヨー興産)への資金供給が細るため、「広告費は削減されない(むしろ維持される)」という逆説的な力学が働いているのではないか?

資金も機会もあった上場時代にリスクテイクをしてこなかった企業が、非公開化したからといって急変するとは考えにくい。「口うるさい株主から解放されて研究開発に集中できる」のではなく、「利益創出のために広告費削減を主張するうるさい株主から解放されて、安心して広告投資ができる(=中冨家の資産になる)」というのが本当の目的では?もちろん、広告投下で売上が伸びれば万々歳。

四季報によると、久光製薬の主幹事は野村證券ですが、今回のMBOの幹事は野村ではなくSMBC日興証券となっています。またリリースによると、買収資金の貸し手として三井住友銀行、三菱UFJ銀行の名前が挙げられていますが、通常ならメインバンクの三菱UFJの名前を先に挙げるところ、三菱UFJより先に三井住友の名前が挙がっているところをみると、資本市場の成長を重視する「野村證券」ではなく、銀行融資とプライベートバンキングに強い「SMFG」が本案件の組成の背後にいることが推察されます。銀行として重視するのは「夢のある成長」より「LBOローンの確実な返済」。

このMBOは企業戦略というよりも、銀行のバックアップの元で行われる「超大型の事業承継・資産管理プロジェクト」であり、リスクを排除した現状維持(延命)バイアスが強くかかっているように思います。真の狙いは、 貼り薬という斜陽だが収益を生んでいる市場(キャッシュカウ)を、株主からの「成長しろ」という圧力を受けずに、創業家だけで静かに享受し続けるための「守りのMBO」ということではないでしょうか。。。

あくまで仮説ですけどね。

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