ここから本文です

最近の上昇は、この流れに関係があるのでは?

半島雪解けの先、医療機器株に海外マネー
日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 永井洋一
2018/6/11 5:30日本経済新聞 電子版

12日には史上初の米朝首脳会談が予定されている。政治・経済の両面でのトランプ米大統領による既成概念への挑戦は今後も世界の株式市場を揺さぶるだろう。そんな中、一部の海外投資家は日本の医療機器関連株に注目している。

 「地政学リスクのシェルター(逃避先)として中国のヘルスケア市場に関連した銘柄に期待する投資家が増えている」。ストラテジスト人気ランキングで長年にわたり上位に名を連ねるパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズの宮島秀直氏は話す。

 東京株式市場では米国との貿易紛争の渦中にあるハイテクや自動車は買いにくい。日本、欧州、さらに新興国へと景気減速の影が伸びる中、機械や銀行といった景気敏感株も手掛けづらい。食料品や通信などの伝統的なディフェンシブ(防御的)銘柄はすでに沢山保有している――。そんな投資家が物色の矛先を向けているという。

 背景にあるのは「健康中国2030」という中国の産業育成策だ。中国の国策といえば半導体の自給率向上を目指す「中国製造2025」に目を奪われがちだが、健康中国2030は健康関連を国内経済の柱に据える計画。医療サービス市場を20年に8兆元(約137兆円)、30年には16兆元に拡大させるとしている。「海外企業にとっても門戸開放が進み、成長が期待できる有望な市場」(岡三証券の紀香シニアストラテジスト)とみられている。

 実際、医療機器関連株は堅調だ。テルモや島津製作所、シスメックス、日本光電の年初から5月末までの上昇率は1~2割に達する。世界の主要なヘルスケア関連株で構成する「MSCIワールド・ヘルスケア指数(円ベース)」の4%下落や東証株価指数(TOPIX)の6%下落とは対照的だ。

 経済産業省の17年の資料によれば、中国国内で日本製の医療機器は欧米製より手軽で実用的と評価されている。こうした優位性が株価に反映しているのだろう。

 QUICK・ファクトセットによれば今年に入ってから英運用会社ジュピター・アセット・マネジメントによるテルモ18万1000株の取得が明らかになった。米投資会社マフューズ・インターナショナル・キャピタル・マネージメントは島津製作所を296万9000株、カナダの公的年金運用機関であるカナダ・ペンション・プラン・インベストメント・ボードも日本光電9万5000株をそれぞれ取得した。いずれもグロース(成長)株投資で知られるファンドだ。

 化石燃料は有限で人やモノの輸送には常に制約条件がつきまとう。法政大学の水野和夫教授は「地政学的に近い国が集まり、移動空間を縮めるリージョナリゼーション(地域化)はグローバリゼーション以降の時代の必然」と指摘する。

 5月末には米有力アクティビスト(物言う株主)、バリューアクト・キャピタルによるオリンパス株の大量取得が明らかになった。医療機器関連株に資金を投じる海外勢の視線の先には実のところ、朝鮮半島の雪解けを見越して、東アジアを舞台に伸びる成長企業の未来像があるのかもしれない。