潰れるといわれている証券会社はない。不安なら金融機関の格付けを確認しよう

出典元:Getty Images
ネットで特定の証券会社が「潰れそう」「危ない」といったクチコミを目にすることはありますが、国内の証券会社で、破綻の危機が迫っている証券会社は基本的にありません。とくに大手証券会社であれば経営は安定しているといえます。
証券会社の経営の安定度合いは、JCR(株式会社日本格付研究所)の格付けが参考になります。格付けは経営状況をスコア化したもので、会社が安定していれば「A」、危険性が高い場合は「C」が付けられます。
最新のJCRの格付けを確認すると、どの証券会社もAかBが付与されており、Cに該当しているところはありませんでした。ネットで見かける噂は、利用者の不満や憶測が混ざっている可能性があり、必ずしも正しい評価ではないことは知っておきましょう。
※JCR公式サイト(外部サイト)
過去には倒産した会社もある。証券会社が倒産する理由とは?
大手の証券会社や知名度の高い会社でも、さまざまな要因によって倒産してしまう可能性はあります。ここでは、証券会社が倒産する代表的な理由を2つ見ていきましょう。
吸収合併による消滅

出典元:Getty Images
M&Aによる吸収合併で、証券会社が消滅することがあります。M&Aとは、経営基盤の強化や事業拡大などさまざまな目的のために、会社の合併・買収を行うことです。
吸収合併で2つの会社が1つに統合される場合、存続する側の会社に一切の権利義務が継承され、吸収される側の会社は消滅します。例として、2019年に高木証券が東海東京証券に吸収合併されて消滅しました。2021年にも、エース証券が東海東京証券に吸収合併されています。
ただし、多くの場合、消滅した会社のサービスは存続するうえ合併によりサービス内容が向上することも珍しくありません。利用中の証券会社が吸収合併されることは、顧客にとって必ずしもデメリットとはいえないでしょう。
不祥事や経営悪化による自主廃業・倒産

出典元:Getty Images
さまざまな要因により証券会社の経営が悪化し、自主廃業や倒産に追い込まれることがあります。
例として、1997年に大手証券会社の山一證券が自主廃業しました。山一證券は、バブル崩壊をきっかけに経営が悪化。損失を隠蔽する不正会計などの問題も加わり、自主廃業に至っています。
安泰と思われている証券会社でも、不祥事や経済危機などさまざまな要因が重なった結果、倒産してしまう可能性はゼロではありません。分別管理の義務により万が一倒産しても顧客の資産は守られますが、普段使っている証券会社が突然なくなってしまうリスクは存在します。
証券会社が倒産したらどうなる? 株や投資信託などの資産は戻ってこない?
利用中の証券会社が倒産してしまった場合に、預けた資産がどうなるのかを知っておくことも重要です。倒産後の資産の扱いや補償の対象について解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
証券会社が倒産しても預けた資産はなくならない

出典元:Getty Images
利用中の証券会社が倒産しても、基本的に資産は全額返還されます。金融商品取引法により、証券会社は顧客から預かった資産を自社の資産と分けて管理する、分割管理の義務を課されているためです。
ほとんどの証券会社は法律に従って分別管理を行っているため、万が一会社が倒産した場合でも、顧客の資産を返せなくなることはありません。返還された資産を別の金融機関に移せば、資産運用を継続できます。
証券会社が顧客の資金を自社資金として使うと法律違反となり、業務停止や罰金などのペナルティが科されることも。顧客の資産は法律によって守られているため、証券会社が倒産するかどうかを過度に心配する必要はないでしょう。
ちなみに分別管理の対象となる資産には、国内株式や債券、投資信託などが挙げられます。海外で発行された株式や債券、先物取引やオプション取引をはじめとするデリバティブ取引の証拠金なども対象です。
参考:日本証券業協会「「お客さまの資産を大切に管理!」―金融商品取引業者等の分別管理Q&A―(平成23年10月版)」(外部サイト)
e-Gov法令検索「金融商品取引法」(外部サイト)
業務停止命令が出た場合も投資家が損失を被ることはない

出典元:Getty Images
資産を預けている証券会社が業務停止命令を受けても、投資家が直接損失を被ることはないと覚えておきましょう。先述したとおり、証券会社は顧客の資産に与える損失を最小限に抑えられるよう、分別管理を行っています。
ただし、利用者に対するサービスや取引の処理速度に一部遅れが出る可能性はあるため注意が必要です。金融庁から業務停止命令が出された場合、証券会社は最長で6カ月間、一部または全部の業務を行えません。
停止処分の期間や内容は状況によって異なるため、万が一利用中の証券会社が業務停止命令を受けた場合は、公式サイトなどで公表される情報を落ち着いて確認してください。不明点や相談したいことがあれば、問い合わせ窓口を活用しましょう。
分別管理や補償の対象外の資産は返還されないおそれがある

出典元:Getty Images
証券会社に預けている資産が分別管理や補償の対象外だった場合、倒産時に返還されないおそれがあるため注意してください。
分別管理が行われない資産の例として、証券会社に貸し出している貸株や、FX取引の委託保証金および未決済建玉の評価益などが挙げられます。また、信用取引の本担保株式・本担保現金および未決済建玉も基本的に分別管理の対象外です。
証券会社で分別管理が行われていない場合も、日本投資者保護基金の補償対象であれば、顧客1人あたり1,000万円を上限に資産が返還される可能性があります。ただし、有価証券店頭デリバティブ取引やFX取引などは補償対象に含まれないので、預けた資産が戻らないリスクがあることもふまえたうえで取引を行いましょう。
参考:日本証券業協会「「お客さまの資産を大切に管理!」―金融商品取引業者等の分別管理Q&A―(平成23年10月版)」(外部サイト)
日本投資者保護基金「Q&A - Q4 証券会社に預けている金銭や有価証券は、全て日本投資者保護基金の補償対象ですか。」(外部サイト)
倒産のリスクに備えるには? 資産が1,000万円以上なら口座を分散しよう

出典元:Getty Images
資産を確実に守るなら、証券会社に預ける投資資金の分散を心がけましょう。預け入れる資金は、1社につき1,000万円までに抑えるのがおすすめです。
法律により、証券会社が倒産しても顧客の資産は全額返還されます。しかし、万が一証券会社が法律に違反していた場合、資産の全額を取り戻せない可能性も否定できません。
証券会社が分別管理を行っておらず資産が返還されない場合、日本投資者保護基金が顧客1人あたり上限1,000万円までの資産を補償してくれます。1つの会社に預ける資産を1,000万円以下に抑えれば、分別管理義務違反が発覚したケースへのリスクヘッジが可能です。
倒産・廃業を過度に恐れる必要はない! 証券会社で投資を始めよう
証券会社が倒産しても顧客の資産は全額返還されるうえ、日本投資者保護基金による補償制度も存在します。基本的に預けた資産は守られるので、口座を開設する際も証券会社の倒産や廃業を過度に心配する必要はないでしょう。
以下のページでは、さまざまな証券会社をランキング形式で紹介しています。証券口座の開設先に悩んだときは、ぜひ参考にしてみてください。