専業主婦(夫)や無職の人もiDeCoに加入できる?
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20歳以上60歳未満であれば、専業主婦(夫)や無職の人もiDeCoに加入できます。iDeCoは当初、自営業者や企業年金のない会社員を対象とした制度でしたが、2017年の制度改正によって加入対象者の範囲が拡大し、専業主婦(夫)や無職の人もiDeCoに加入できるようになりました。
会社員・公務員に扶養されている専業主婦(夫)は、iDeCoの第3号被保険者に該当します。無職や学生も、自営業やフリーランスなどと同じ、第1号被保険者としてiDeCoに加入可能です。
第1号被保険者と第3号被保険者のiDeCo加入者数は増加傾向にあります。2020年3月時点で約17.8万人だった第1号被保険者は、2022年11月時点で約30.3万人と1.7倍に増加。第3号被保険者は、5.3万人から12.3万人と2.3倍に増えました。
退職金や公的年金の受取額が減少傾向にあるため、自分で老後資金を貯められるiDeCoの加入者は今後も増加していくことが見込まれます。
※参照:iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者数等について(2022年9月時点)(外部サイト)
専業主婦(夫)がiDeCoに加入するメリット
ここからは、専業主婦(夫)がiDeCoに加入して得られる主なメリットを紹介します。iDeCoの基礎知識でもあるので、加入を検討する際にはぜひチェックしてみてください。
自分名義の老後資金をコツコツ貯められる
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若いうちから自分名義の老後資金をコツコツ貯められるのがiDeCoの特徴です。専業主婦(夫)で厚生年金に加入していなかったり、加入期間が短かったりした場合、公的年金の受給額が会社員・公務員と比較して少なくなります。iDeCoに加入すると人生100年時代の老後資金をカバーしやすくなるでしょう。
iDeCoの口座は一人ひとり明確に区分されて管理されているため、積立金を自身の資産として保有できる点もポイントです。自分名義の資産を準備していれば、不慮の事態にも対応しやすくなります。
運用益が全額非課税! 利益を丸ごと再投資できる
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iDeCoを利用するメリットの1つは、資産運用で得た利益が全額非課税になること。通常、運用益には20.315%の税金が課せられますが、iDeCoを利用すればそのまま再投資に回せます。
利益を再投資すれば、利益が利益を生み出す複利効果によって、大きなリターンを期待できるでしょう。運用期間が長くなれば長くなるほど、雪だるま式に利益が膨らんでいきます。
資産を受け取る際にも控除が使える
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iDeCoでは、積み立てた資産を受け取る際に所得控除を受けられます。使える控除は退職所得控除と公的年金等控除の2つ。一括で受け取る一時金として受け取れば退職所得控除、5年以上20年以下の期間にわたって年金として受け取れば公的年金等控除が適用されます。一時金と年金を併用して受け取ることも可能です。
以下では、受け取り方法ごとの節税メリットを具体的に解説します。
一時金として受け取る場合
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一時金として受け取る場合は、退職所得控除の対象です。控除額は、以下の計算式で算出できます。
- 加入期間が20年以下:40万円×加入年数
- 加入期間が20年超:800万円+70万円×(加入年数-20年)
退職所得控除は、iDeCoの加入期間が長いほど大きくなります。例えば、30年間掛金を積み立てて、運用資産を受け取った場合は、800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円まで非課税です。
年金で受け取る場合
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年金として受け取る場合、公的年金等控除が適用されます。控除額は受け取る人の年齢や、公的年金も合わせた収入額によって異なりますが、65歳未満なら収入の合計が60万円まで、65歳以上なら110万円まで全額控除されることを覚えておきましょう。詳しい控除額を知りたい人は、国税庁の公式サイト(外部サイト)でご確認ください。
年金で分割して受け取れば、残っている資産を継続して運用できるため、利益をさらに伸ばせる可能性があります。ただし、iDeCoに資産が残っている限り、手数料が発生する点には注意が必要です。
掛金は少額から! 無理のない範囲で積立が可能
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iDeCoでは、月々5,000円から掛金を設定できます。iDeCoの掛金には加入者資格区分ごとに上限額があり、専業主婦(夫)の掛金の上限額は毎月23,000円・年額27万6,000円です。掛金は1,000円単位で調整できるため、家計やライフスタイルに合わせて無理のない金額を設定できるでしょう。
途中で拠出をストップし、それまで積み立てた資産の運用のみを行うことも認められています。年1回に限り、掛金の変更も可能です。ただし、iDeCoは60歳まで引き出せないので、生活費や近い将来必要なお金などは別途確保したうえで、掛金を設定する必要があります。
専業主婦(夫)がiDeCoに加入するデメリット
節税メリットの大きい私的年金制度のiDeCoですが、専業主婦(夫)のiDeCo加入にはいくつかのデメリットもあるので覚えておきましょう。
無職や収入が少ない人は所得控除を受けられない
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主婦(夫)が加入する際のデメリットは、所得控除の恩恵を受けにくいこと。所得のある人は、毎月の掛金が全額所得控除されるため、所得税・住民税の負担を軽減できます。無職や収入の少ない人はそもそも所得税を納めていないので、所得控除のメリットは受けられません。所得税の納税義務が発生するのは、103万円を超える年収がある場合です。
所得控除メリットを受けられるまで収入を増やすことも、選択肢の1つといえます。企業や勤務条件によって異なりますが、年収が106万円、または130万円以上あると第3号被保険者の対象外となり、配偶者控除を受けられなくなる可能性がある点には注意しましょう。
iDeCoのメリットは、掛金の所得控除だけではありません。運用益が非課税になるほか、受給時にも税制優遇を受けられるため、それぞれのメリットを総合的に考慮しながら、加入するかどうかを検討することが大切です。
手数料が利益を上回る「手数料負け」に注意
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iDeCoの加入・運用にはさまざまな手数料が必要です。少ない掛金で加入する場合には、手数料を運用益が上回ってしまう、いわゆる手数料負けに注意しましょう。
例えば、iDeCoでは加入・移管時には2,829円と、掛金を払うたびに105円、口座を保有しているだけで毎月66円を支払わなければなりません。金融機関に支払う運営管理手数料も別途必要です。少額で運用利回りの低い商品を運用した場合も、得られる利益が少なくなるため、手数料負けする可能性があります。
無理をする必要はありませんが、資金に余裕がある人はできるだけ掛金を増やして運用するとよいでしょう。運営管理手数料も0〜500円程度と幅があるので、できるだけ無料の金融機関を選ぶことが大切です。
運用成績によっては元本割れする可能性も
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iDeCoでは運用成績によって、元本割れする可能性があることも理解しておきましょう。iDeCoで運用できるのは、投資信託と、保険や定期預金に代表される元本保証型の商品の2種類です。
投資信託とは、投資家から集めた資金をもとに、専門家が運用を代行する金融商品のことで、高いリターンを期待できますが、元本割れするリスクもあります。元本保証型の商品は、得られるリターンは小さいものの、低リスクで運用が可能です。
元本割れのリスクを抑えるためには、長期運用と分散投資を意識しましょう。
金融商品の価格は一時的に下落しても、そのあとに再上昇することがほとんどです。長期間運用していれば、価格の動向をじっくり追いかけられるため、短期的な価格変動による損失を防げるメリットがあります。
複数の商品に資産を分けて投資する、分散投資もリスク軽減に有効です。値動きの異なる商品を保有していれば、いずれか1つの価格が下がっても、ほかの商品で損失をカバーできる可能性があります。
専業主婦(夫)がiDeCoに加入する際の手順
専業主婦(夫)がiDeCoを始める際には、一定の手続きが必要です。ここからは、国民年金の第3号被保険者に該当する専業主婦(夫)が、iDeCoに加入するときの一般的な手順を解説します。
ステップ1:まずは、加入資格を確認
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最初に、iDeCoへの加入資格があるかを確かめておきましょう。20歳以上60歳未満の専業主婦(主夫)であれば、基本的に誰でも加入できます。
ただし、国民年金・厚生年金・共済年金などをすでに受給している場合や、iDeCoの老齢給付金を受給したことがある場合は加入できないので注意しましょう。
ステップ2:掛金の額を決める
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次に、いくら掛金を拠出するか決めます。国民年金の第3号被保険者に該当する専業主婦(主夫)の上限額は月23,000円、年27万6,000円です。掛金は月々5,000円から1,000円単位で設定できます。年1回以上、任意の月にまとめて拠出できることも覚えておきましょう。
iDeCoの積立金は60歳にならないと引き出せないので、無理のない掛金額を設定することが大切です。
ステップ3:金融機関を選んで口座を開設する
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掛金額が決まったら、次に金融機関を選んでiDeCo口座を開設しましょう。
手数料や取り扱っている商品の種類は金融機関によって異なります。できるだけ手数料が安く、運用したい商品の取り扱いがある金融機関を選ぶのがおすすめです。投資初心者で口座開設やその後の運用に不安がある人は、普段使い慣れている銀行や証券会社で開設するのもよいでしょう。
ステップ4:運用する金融商品を選ぶ
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最後に、運用する金融商品を選びます。商品によって運用利回りは異なりますが、投資初心者がハイリスク・ハイリターンの商品を選ぶのはおすすめできません。少ない掛金で運用利回りの低い商品を選ぶと手数料負けの可能性もあるので、運用結果を事前にシミュレーションしておくことが大切です。
投資信託の運用を検討している場合は、信託報酬にも注意が必要です。信託報酬とは、資産運用をプロに代行してもらうための手数料で、商品を保有している限り支払わなければなりません。iDeCoは長期運用が基本なので、数%の信託報酬が最終的な総資産額に大きな影響を与えます。できる限り信託報酬が安い金融商品を選びましょう。
確定拠出年金の加入者が専業主婦(夫)になったらどうする?
ここからは、第3号被保険者の専業主婦(夫)になるケースと、企業型確定拠出年金の加入者が専業主婦(夫)になるケースの手続きを紹介します。
iDeCo加入者が専業主婦(夫)になるケース
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iDeCoに加入していた会社員が退職して専業主婦(夫)になる場合は、引き続きiDeCoへの加入が可能です。加入者被保険者種別変更届を金融機関に提出して、被保険者の種別を第2号被保険者から第3号被保険者に変更します。
専業主婦(夫)になると掛金の上限額も変わるため、拠出額を変更しなければならないケースもあるでしょう。掛金を変更する際は、加入者掛金額変更届を金融機関に提出しましょう。
企業型確定拠出年金の加入者が専業主婦(夫)になるケース
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企業型確定拠出年金に加入していた人が専業主婦(夫)になる場合は、iDeCoに資産を移換して掛金を拠出し続けるか、移換後は掛金を拠出せず運用するだけにとどめるかを選択できます。
まずは、資産を移管させる金融機関に、個人別管理資産移換依頼書を提出しましょう。iDeCoの加入者となって掛金を拠出する場合は、個人型年金加入申出書などの提出も求められます。
企業型確定拠出年金からiDeCoに資産を移す手続きは、半年以内に行いましょう。手続きをせずに半年間が経過すると、国民年金基金連合会に資産が移されて運用が停止し、手数料だけを支払い続ける状態になってしまいます。
専業主婦(夫)のiDeCoに関してよくある質問
専業主婦(夫)のiDeCoの加入に関して、よくある質問をまとめてみました。自分に当てはまる疑問がある場合は、ぜひ参考にしてください。
iDeCoに加入する専業主婦(夫)は確定申告が必要?
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収入のない専業主婦(夫)は、原則、確定申告を行う必要がありません。ただし、配偶者の扶養範囲である年収103万円未満で働いている主婦(夫)の場合は、確定申告によって住民税を減らせます。
60歳以降に給付金を年金払いで受け取る場合も、受給金額やほかの所得の有無に応じて確定申告が必要です。金融機関から届くiDeCoの掛金払込証明書の金額を、確定申告書の小規模企業共済等掛金控除の欄に記入し、証明書を添付して申告してください。
iDeCoの年末調整・確定申告をより詳しく知りたい人は、次のページもチェックしてみてください。具体的な手続き方法や注意点などを解説しているので、参考になるはずです。
専業主婦(夫)が復職したらiDeCoはどうなる?
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iDeCoに加入している専業主婦(夫)が、本格的な仕事復帰をした場合、企業型確定拠出年金に移管するか、iDeCoに継続して加入するかを選べます。
iDeCoに継続加入できるのは、勤務先に企業年金がない場合や、勤務先の制度が確定給付企業年金のみの場合です。勤務先に企業型確定拠出年金があり、iDeCoとの併用条件を満たしている場合も引き続きiDeCoの運用が続けられます。勤務先の担当者にiDeCoに加入していたことを報告すると、必要な手続きを教えてくれるはずです。
復職先でiDeCoを続ける場合、加入資格区分が第3号被保険者から第2号被保険者に変わります。加入者被保険者種別変更届(第2号被保険者用)に、事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書を添付して、金融機関に提出しましょう。
勤務先の企業型確定拠出年金に移管する場合には、iDeCoの加入者資格を喪失するため、加入者資格喪失届を金融機関に提出する必要があります。企業型確定拠出の規約はあらかじめ、勤務先の総務・人事に確認しておくとよいでしょう。
iDeCoの金融機関はどのように選ぶといい?
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iDeCoには手数料負けのリスクがあるため、なるべく手数料が安い金融機関を選ぶことが大切です。投資信託を購入する場合は、信託報酬にも注意しましょう。
自分に合った商品を幅広い商品から選びたいなら、商品のバリエーションが豊富な金融機関を選ぶことも大切です。投資初心者なら、電話でのサポートやチャット相談などアフターフォローが充実している金融機関を探しましょう。
以下のページで、各証券会社のサービス内容を詳細に紹介しています。金融機関選びに迷っている人はチェックしてみてください。
専業主婦(夫)はNISAの利用も検討してみよう
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収入が少ない専業主婦(夫)や無職の人の場合は、iDeCoと同時にNISAの利用も検討するとよいでしょう。
NISAは一定額以内の投資で得られた利益が非課税になる制度で、一般NISAとつみたてNISAに分けられます。一般NISAの非課税投資枠は年120万円、非課税期間は最大5年間。つみたてNISAの非課税投資枠は年40万円、非課税期間は最大20年間です。
iDeCoは60歳まで資産を引き出せませんが、NISAには制限がないのでいつでも自由に引き出せます。近い将来必要になるお金を貯める際には、NISAの利用を検討してみましょう。