iDeCoの受取り方法は3つ。もらい方によって税金の計算が変わる
iDeCoの給付金の受取り方法は、一時金で一括受取する方法、年金受取する方法、年金受取と一時金受取を併用する方法の3種類です。引き出し方法によって所得の扱いや税金計算の仕組みが変わるので、iDeCoの受取り方法ごとの違いを押さえておきましょう。
iDeCoを年金受取する|雑所得として税金を計算する

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iDeCoは年金形式での受取りが可能です。一般的に有期年金として扱われ、受取期間は5〜20年、受取回数は年1〜12回から選択できます。実際に指定できる期間や回数は証券会社によって異なるので、事前に確認しておきましょう。一部の金融機関では、終身年金として生涯受取ることも可能です。
iDeCoを年金でもらうときは、公的年金と同じ雑所得として計算します。雑所得とは、給与所得や利子配当所得などに分類できない所得のこと。iDeCoや公的年金、副業による所得が挙げられます。
iDeCoや公的年金による雑所得は、公的年金等控除の適用が可能です。公的年金などの収入額の合計から控除額を差し引き、残った金額に対して税金がかかります。控除額は、年齢や収入に応じて変動する仕組みです。
以下の速算表では、課税対象となる雑所得を簡単に計算できます。左の項目は公的年金などの収入の合計額(A)、右の項目は公的年金等に係る雑所得の金額です。
【受取り時の年齢が65歳未満の場合】
- 60万円以下:0円
- 60万円超130万円未満:(A)−60万円
- 130万円以上410万円未満:(A)×0.75−27.5万円
- 410万円以上770万円未満:(A)×0.85−68.5万円
- 770万円以上1,000万円未満:(A)×0.95−145.5万円
- 1,000万円以上:(A)−195.5万円
【受取り時の年齢が65歳以上の場合】
- 110万円以下:0円
- 110万円超330万円未満:(A)−110万円
- 330万円以上410万円未満:(A)×0.75−27.5万円
- 410万円以上770万円未満:(A)×0.85−68.5万円
- 770万円以上1,000万円未満:(A)×0.95−145.5万円
- 1,000万円以上:(A)−195.5万円
※上記は公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合
※参考:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」(外部サイト)
iDeCoを一時金で一括受取する|退職所得として税金を計算する

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iDeCoの資産を一括で受取りたい場合は、一時金を選択しましょう。一時金はまとまった資金を一度に得られるのがメリットです。
iDeCoを一時金で一括受取りする場合は退職所得に該当するため、退職所得控除を受けられます。課税対象となる退職所得は、(収入金額-退職所得控除額)×1/2で算出可能です。退職所得控除額の計算式は、以下のようにiDeCoの加入年数によって異なります。
- 加入年数20年以下:40万円×加入年数(※80万円に満たない場合には、80万円)
- 加入年数20年超:800万円+70万円×(加入年数-20年)
たとえば、加入期間が30年の場合は退職所得控除が1,500万円となるため、一時金が1,500万円以下なら非課税で受取れます。
※参考:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(外部サイト)
年金と一時金|一部を一時金で、残りを年金で受取る

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一部の金融機関では、年金と一時金を組み合わせることも可能です。一部を一時金として受取り、残った資産を年金として受取れます。
年金と一時金を併用して受取るメリットは、退職所得控除と公的年金等控除の2つの控除を受けられる点です。たとえば一時金の金額が大きい場合は、退職所得控除の枠におさまりきらない可能性があります。退職所得控除の範囲内でiDeCoの一時金を受取り、残りを年金として分割受取りをすれば、両方の控除を最大限に活用することが可能です。
iDeCo受取り時の税金はいくら? 税額をシミュレーションしよう
iDeCo(イデコ)の受取り時にどれくらいの税金がかかるのか、3つの受取り方法ごとにシミュレーションしてみましょう。計算に用いる仮定条件は以下のとおりです。
- 運用利回り:3%
- 掛金:月2万円
- 運用期間:30年
- 受取り時期:60歳
- 受取り時の積立額:1,157万4,260円
- 公的年金:65歳から毎年150万円受給する
- 会社からの退職金:なし
※2026年4月時点の税制にもとづいて計算します
年金として受取る場合

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iDeCoを60歳から10年間の年金として受取る場合、60歳から64歳まではiDeCoのみ、65歳から69歳まではiDeCoと公的年金の両方を受取ります。それぞれの雑所得を算出し、税額を計算してみましょう。
iDeCoの受取り方法を10年間の年金とした場合、毎年の受取り額は111万5,620円。国税庁の速算表によると、64歳までの雑所得は111万5,620円-60万円=51万5,620円、65歳から69歳までの雑所得は(111万5,620円+150万円)-110万円=151万5,620円です。
基礎控除95万円が適用されるので、60歳から64歳までの課税所得は0円となり、税額も0円で済みます。一方、65歳から69歳までの課税所得は151万5,620円-88万円(基礎控除)=63万5,620円。所得税率5%・住民税率10%とすると、年間の所得税額は31,781円、住民税額は68,562円となり、5年間の税額は合計50万1,715円です。
※毎年の受取り額はろうきんのシミュレーション(外部サイト)に基づいて算出しています
※基礎控除以外の控除はないものとして試算しています
※参考:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」(外部サイト)/国税庁「No.1199 基礎控除」(外部サイト)
一時金で受取る場合

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iDeCoの一時金を60歳で受取る場合、60歳のときに退職所得が発生し、65歳以降は公的年金による雑所得が生じます。
退職所得控除は800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円です。一時金受取り時の積立額1,157万4,260円は退職所得控除の範囲におさまるため、全額非課税で受取れます。
65歳から69歳までに年間150万円の公的年金を受取ると、雑所得は150万円-110万円=40万円です。年間40万円が課税対象となりますが、基礎控除95万円の範囲内なので税額は0円で済みます。
なお、今回のシミュレーションでは会社からの退職金を考慮していませんが、退職金を受取る場合は退職所得が増え、税金が発生する可能性があることを覚えておきましょう。
※基礎控除以外の控除はないものとして試算しています
※参考:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(外部サイト)/国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」(外部サイト)/国税庁「No.1199 基礎控除」(外部サイト)
年金と一時金で受取る場合

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700万円を一時金として受取り、残りを年金として5年間受取ると仮定して、60歳から10年間の税額を計算してみましょう。年齢ごとに発生する所得をまとめると、以下のとおりです。
- 60歳:退職所得として一時金700万円を受取る
- 60〜64歳:雑所得としてiDeCoを年金で受取る
- 65〜69歳:雑所得として公的年金を受取る
退職所得控除は800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円です。一時金700万円は退職所得控除の範囲内におさまるため、全額非課税で受取れます。
60歳時点での積立額1,157万4,260円から一時金を差し引き、残りを年金で5年間受取ると、毎年の受取り額は91万4,852円。60歳から64歳までの雑所得は91万4,852円-60万円=31万4,852円ですが、基礎控除95万円の範囲内におさまるため、支払うべき税金は0円です。
65歳から69歳までは年間150万円の公的年金を受給するため、雑所得は150万円-110万円=40万円と計算できます。年間40万円が課税対象となりますが、基礎控除95万円の範囲内なので税金は0円です。
※基礎控除以外の控除はないものとして試算しています
※参考:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(外部サイト)/国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」(外部サイト)/国税庁「No.1199 基礎控除」(外部サイト)
iDeCo受取り時の税金で損をしないためのポイント
iDeCoの受取りで損をしないためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。節税効果を最大限活用できるよう、以下の注意点を正しく理解しておきましょう。
iDeCoの加入期間によって受給開始年齢が異なる

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iDeCoの受取り方を考える際は、加入期間によって受給開始年齢が異なる点に注意が必要です。iDeCoに10年以上加入していれば60歳から受取れますが、60歳時点で加入期間が10年未満の場合は、受給開始年齢が引き上げられます。
【加入期間ごとの受給開始年齢】
- 10年以上:60歳
- 8年以上10年未満:61歳
- 6年以上8年未満:62歳
- 4年以上6年未満:63歳
- 2年以上4年未満:64歳
- 1カ月以上2年未満:65歳
なお、60歳以上ではじめてiDeCoに加入した場合は、加入から5年を経過した日から受給できます。
年金受取の場合はiDeCo以外の所得を確認しておく

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iDeCoを年金として受取る場合は、iDeCo以外の所得がいくらあるかを確認しておきましょう。公的年金やほかの収入があると合算して税金を計算しなければならないため、納税額が上がる可能性があります。
収入が多い人は現役並み所得者とみなされ、70歳以上になっても国民健康保険料が3割負担になる点にも注意が必要です。一般的に、現役並み所得者の目安は年収380万円程度とされています。
iDeCoを年金で受取るのであれば、事前に収入と納める税金をシミュレーションしておきましょう。
一時金と退職金を同時にもらうと、退職所得控除を1回分しか使えない

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退職金と同時にiDeCoの一時金を受取る場合、退職所得控除は1回分しか使えません。会社の勤務年数とiDeCoの加入期間のうち、長いほうの年数を用いて退職所得控除が計算されます。退職金と一時金それぞれに退職所得控除を適用できるわけではなく、退職所得として合算されるので注意が必要です。
たとえば、38年勤務した会社の退職金1,500万円と、30年間積み立てたiDeCoの一時金1,500万円を同時に受取る場合、税制上は加入年数38年、3,000万円の収入があったものとして計算されます。
退職所得控除額を計算すると、800万円+70万円×(38年-20年)=2,060万円。退職金だけを受取るなら、退職所得控除によって退職所得は0円です。しかし、退職金とiDeCoを同時に受取る場合は、(3,000万円-2,060万円)×1/2=470万円の退職所得が発生します。
税負担を抑えるためには、退職金と一時金の受取り時期をずらすのが有効ですが、退職所得控除の10年ルール・19年ルールも考慮しなければいけません。それぞれのルールについては次項で解説するため、まとまった金額の退職金がある人はチェックしてみてください。
※参考:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」(外部サイト)
退職所得控除の10年ルール・19年ルールを理解しよう
iDeCoの一時金と退職金の両方を受取る場合は、退職所得控除が調整される10年ルール(旧5年ルール)や19年ルールに注意が必要です。受取り時期によっては退職所得控除を十分に使えない場合があるため、各ルールの仕組みをきちんと理解しておきましょう。
iDeCoを先に受取る場合|10年ルール

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iDeCoの一時金を受取ってから10年以内に退職金を受取る場合、10年ルールが適用されます。10年ルールでは退職金を受取る際の退職所得控除が減額され、税負担が増える点に注意が必要です。一時金と退職金それぞれに満額の退職所得控除を適用するには、受取り時期を10年以上空けなければいけません。
例として22歳から65歳まで勤務し、iDeCoに15年間加入した人が、60歳でiDeCoの一時金を、65歳で退職金を受取ると仮定します。一時金の受取り時は、加入期間15年分の退職所得控除を適用可能です。しかし退職金の受取り時は、勤続年数に対する満額の退職所得控除は適用されず、iDeCoの加入期間と重複する15年分が減額されます。
以前は5年ルールといい、受取り時期を5年空ければ両方に満額の控除を適用できましたが、令和7年度税制改正で受取り時期の間隔が10年に延びました。2026年1月1日の施行日以降は、10年以上の間を空けないと両方で満額の控除を受けられません。ネット上では「iDeCoの退職所得控除が改悪された」という声もあります。
60歳でiDeCoの一時金を、70歳以降で退職金を受取れば退職所得控除を満額活用できますが、70歳以降で退職金を受取れるケースは多くないでしょう。受取り時期の間隔を10年以上空けるのが難しい場合、年金と一時金を併用してiDeCoを受取るほうが税負担を抑えられる可能性があります。
iDeCoではなく退職金を先に受取る場合|19年ルール

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退職金が先に支払われ、iDeCoの一時金をあとから受取る場合は、19年ルールに注意が必要です。勤め先の退職金を受取ってから19年以内にiDeCoの一時金を受取ると、会社の勤務年数とiDeCoの加入期間の重複部分は退職所得控除を適用できません。
例として30歳から60歳まで勤務し、40〜65歳の間にiDeCoに加入していた人が、60歳で退職金を、65歳で一時金を受取ると仮定します。退職金の受取り時は、勤続年数分の退職所得控除を適用可能です。
しかし、加入期間のうち40〜60歳の間は勤続年数と重複するため、一時金を受取る際には20年分の退職所得控除が減額されます。結果的に、一時金には退職所得控除をほとんど使えません。
反対に、退職金を受取ってから20年後にiDeCoの一時金を受取れば、退職所得控除の制限を受けずに済みます。iDeCoは受給開始年齢を75歳まで延長できるため、会社からの退職金を55歳までに受取れば、19年ルールを回避できるでしょう。
退職金とiDeCoの一時金は、受取る順番やタイミング次第で節税額が大きく変わるので、受取り方法は早めに検討しておくことをおすすめします。
一括と年金、受給時の税金はどっちが得? iDeCoの賢い受取り方
iDeCoのお得な受取り方は、人によって異なります。ここからは退職金が多い人、退職金が少ない人・退職金なしの人に分けてiDeCoの出口戦略を解説するので、参考にしてみてください。
退職金が多い人にはiDeCoの年金受取がおすすめ

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退職金だけで退職所得控除を大幅に超える会社員の人は、年金での受取りを選ぶとよいでしょう。
一時金に適用される退職所得控除は控除額が大きいので節税効果も高いとされていますが、退職金やiDeCoの一時金が高額になると所得を十分に減らせないので、かえって給付時の税金が増える可能性もあります。
年金として受取る場合、年齢が65歳以上で、iDeCoと公的年金の合計が年間205万円以下(基礎控除95万円を含む)であれば、所得税は発生しません。お金の受取り方法を検討する際はiDeCoだけでなく、退職金の受取り額もあらかじめ確認しておくことが大切です。
退職金が少ない人や個人事業主などはiDeCoの一時金がお得

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退職金が少ない人、退職金がない自営業者や専業主婦(主夫)には、一時金での受取りがおすすめです。退職所得控除で大幅に課税所得を減らせるので、税金の負担を軽減できます。30年間積み立てた場合は、ほかの退職所得と合算して1,500万円まで非課税です。
自営業者や専業主婦(主夫)のようにそもそも退職金がない人は、iDeCoの一時金との合算によって退職所得控除の節税効果が薄まる心配もありません。
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iDeCoの賢い受取り方を理解したうえで運用を始めるなら、iDeCo口座の開設が必要です。
iDeCoの商品ラインアップや手数料は証券会社ごとに異なります。できるだけ毎月の手数料が安く、自分が運用したい商品の取りそろえがある証券会社を選びましょう。どの証券会社を利用するかによって将来受取れる金額も変わるため、入念な下調べのうえで口座の開設先を決めることが重要です。
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