【ケース別】iDeCo加入中に転職・退職した際の手続きと提出書類
iDeCoの加入中に転職した場合は、転職先の年金制度などによって手続きや提出書類が異なります。ここから、パターン別に具体的な手続きの進め方などを解説するので、自身の状況と照らしあわせながら読み進めてみてください。
転職先に企業型確定拠出年金がある場合
転職先に企業型確定拠出年金がある場合は、大きく分けて3つの選択肢があります。ここから、具体的な手続き方法を解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
企業型確定拠出年金とiDeCoを併用する
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転職先に企業型確定拠出年金があり、iDeCoとの併用が認められる場合は、iDeCoをそのまま継続できます。
iDeCoを継続する場合は、被保険者種別または登録事業所の変更手続きが必要です。第1号、第3号、第4号被保険者は第2号被保険者に変わるので、「加入者被保険者種別変更届(第2号被保険者用)」と「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」を金融機関に提出してください。
もともと第2号被保険者だった場合は、加入登録事業所変更届に事業主の証明書を添付して提出しましょう。
併用を希望するものの資金に余裕がない場合などは、新たに掛け金を拠出することなく、運用のみでiDeCoを継続するのもひとつの方法です。拠出をやめると加入資格が失われるので、加入者資格喪失届に資格を喪失した理由と喪失年月日を明らかにする書類を添付して金融機関に提出しましょう。
iDeCoの資産を転職先の企業型確定拠出年金へ移換する
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企業型確定拠出年金とiDeCoの併用が認められない場合は、iDeCoの個人資産を転職先の企業型確定拠出年金に移換できます。
資産を移換させる場合、iDeCoの加入資格は失われるため、加入者資格喪失届に加入資格の喪失理由と喪失年月日を証明する書類を添付して、金融機関に提出しましょう。加入者資格喪失届に記入する資格喪失理由は「04:運用指図者になるため」を選んでください。細かな手続きは会社によって異なるため、転職先にあらかじめ問い合わせておくとよいでしょう。
iDeCoを継続して企業型確定拠出年金には加入しない
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転職先の企業型確定拠出年金には加入しないで、iDeCoを継続する方法も選択できます。以下の条件のいずれかに該当する場合は、制度上、企業型確定拠出年金とiDeCoを併用できないので注意しておきましょう。
<企業型確定拠出年金とiDeCoを併用できない場合>
- 企業型確定拠出年金が毎月拠出ではない
- 企業型確定拠出年金のみ加入している場合は、企業型確定拠出年金の掛け金が月5万円超
- 企業型確定拠出年金と給付型の年金に加入している場合は、掛け金の合計が月2万2,500円超
iDeCoを継続する場合は、被保険者種別または登録事業所の変更手続きが必要です。「加入者被保険者種別変更届(第2号被保険者用)」と「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」を金融機関に提出しましょう。もともと第2号被保険者だった場合は、加入登録事業所変更届に事業主の証明書を添付して提出する必要があります。
転職先に企業型確定拠出年金がない場合
転職先に企業型確定拠出年金がない場合は、まず確定給付企業年金があるかどうかを確認してみましょう。確定給付企業年金の有無によってiDeCoの取扱いが変わるので、ここから詳しく解説します。
iDeCoを継続するか、確定給付企業年金へ移換する
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転職先に確定給付企業年金がある場合、iDeCoで運用していた資産を移換できる可能性があります。iDeCoを継続するか、確定給付企業年金に移換するかを検討しましょう。ただし、移換できるのは、転職先の規約で認められている場合のみです。
確定給付企業年金にiDeCoの資産を移換する際は、転職先の担当部署に具体的な手続き方法や必要書類を問い合わせましょう。
確定給付企業年金がなければiDeCoを継続する
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転職先に確定給付企業年金がなければ、iDeCoを継続できます。ただし、被保険者種別または登録事業所の変更手続きは必要です。「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」を転職先に記入してもらい、「加入者登録事業所変更届」に添付して金融機関に提出します。
会社員から公務員に転職した場合
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iDeCoに加入している会社員が公務員に転職した場合、そのままiDeCoの運用を継続できます。登録事業所の変更届と「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」を金融機関に提出しましょう。
会社員から公務員に転職すると、掛け金の上限が月2万3,000円(企業型確定拠出年金加入者は月2万円)から月1万2,000円に下がります。ただし、2024年12月には企業年金加入者の拠出額が見直され、公務員の掛け金上限は毎月2万円に引き上げられる予定です。資金に余裕がある人は、制度変更のタイミングで掛け金の増額を検討しましょう。
自営業者・専業主婦(夫)・国民年金任意加入被保険者になる場合
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自営業者やフリーランス、専業主婦(夫)、国民年金任意加入被保険者になった場合も、iDeCoは継続できることを覚えておきましょう。ただし、国民年金に係る被保険者種別の変更手続きが必要です。
自営業者などで独立する場合は第1号被保険者用、専業主婦(夫)になる場合は第3号被保険者用、国民年金任意加入被保険者になる場合は任意加入被保険者用の「加入者被保険者種別変更届」を金融機関に提出してください。
企業年金の加入者が転職してiDeCoに移換する場合の手続きは?
現在企業年金に加入している場合、転職にともないiDeCoへの移換を検討することもあるでしょう。ここでは企業年金からiDeCoに移換できる条件や、具体的な手続き方法をケース別に紹介します。
それまで加入していた制度によって流れが異なるので、以下で詳しくチェックしていきましょう。
企業型確定拠出年金からiDeCoに移換する場合
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転職先に企業年金がない場合などは、iDeCoへの移換が必要です。企業型確定拠出年金の加入者資格喪失手続きと、資産を移換する手続きの両方を行いましょう。
加入者資格喪失手続きについては、転職前の会社に確認したうえで手続きしてください。資産を移換する際は「個人別管理資産移換依頼書」を金融機関に提出しましょう。
移換するだけでは積立ができないため、新たにiDeCoに加入する手続きも必要です。申込みから運用開始まですべてWeb上で完結できる金融機関もあるので、自分に合ったものを選んでください。
厚生年金基金や確定給付企業年金からiDeCoに移換する場合
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厚生年金基金や確定給付企業年金の加入者が以下の条件を満たす場合は、iDeCoへの移換が可能です。
- iDeCoの加入者であること
- 移換元の厚生年金基金や確定給付企業年金、または終了した確定給付企業年金の清算人に移換を申し出ること
- 厚生年金基金や確定給付企業年金の脱退、または確定給付企業年金の終了日から1年以内に上記の申し出を行うこと
資産を移換する際は、「個人年金加入申出書」と「厚生年金基金・確定給付企業年金移換申出書」を金融機関に提出しましょう。厚生年金基金・確定給付企業年金移換申出書は移換元の証明を受けたうえで提出する必要があります。
企業年金連合会からiDeCoに移換する場合
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以下の条件を満たす企業年金連合会の加入者は、年金給付等積立金をiDeCoに移換できます。
- iDeCoの加入者であること
- iDeCo加入者資格の取得から3カ月以内に、移換元に対して移換を申し出ること
利用したい金融機関でiDeCoの加入申込みをしたあと、企業年金連合会に問い合わせて資産の移換手続きを行いましょう。
iDeCoの加入者が転職・退職時に手続きしないとどうなる?
iDeCoの加入者が転職・退職時に手続きをしないと、所得控除が受けられないなどのデメリットが生じます。以下で詳しく解説するので、損をしないためにもぜひ参考にしてください。
掛け金の引き落としが停止され、所得控除が受けられない
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iDeCoの加入者が転職後の手続きを忘れて放置してしまうと、掛け金の引き落としがストップして、さまざまなデメリットが生じる場合があるため注意してください。
まず、掛け金は追納できないため、引き落とし停止期間は掛け金の所得控除が受けられません。掛け金の停止期間は拠出期間にカウントされないため、iDeCoを一時金で受取る際の退職所得控除額が少なくなる可能性もあります。
企業型DCを6カ月放置すると自動移換される
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企業型確定拠出年金の加入者が転職・退職などで加入者資格を失った場合、6カ月以内に何も手続きをしないと、積み立てていた資産は国民年金基金連合会に自動移換されます。
自動移換されたあとは資産を運用できなくなるほか、加入期間に算入されず年金の受給年齢が遅くなることも。加えて、自動移換中は管理手数料の負担が発生します。自動移換後にiDeCoや企業型確定拠出年金へ資産を移すことはできますが、二度手間になることは避けられません。
企業型確定拠出年金に加入していて転職・退職を控えているなら、iDeCoやほかの企業年金に移換するか、脱退一時金を受取れる場合は請求手続きを行いましょう。いずれの場合でも、自動移換されないよう早めに手続きすることが大切です。
転職・退職する人が知っておくべきiDeCoの注意点
転職先の職種によっては掛け金の上限が変わる可能性も
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転職によってiDeCoの加入資格区分が変わり、掛け金の上限が変動するケースも珍しくありません。職業ごとの掛け金の上限額は、以下のとおりです。
- 企業年金に加入していない会社員:月額2.3万円(年額27.6万円)
- 企業型確定給付年金のみに加入している会社員:月額2.0万円(年額24万円)
- 上記以外の会社員:月額1.2万円(年額14.4万円)
- 公務員:月額1.2万円(年額14.4万円)
- 自営業・フリーランス:月額6.8万円(年額81.6万円)
- 専業主婦(夫)・無職など:月額2.3万円(年額27.6万円)
- 国民年金保険の任意加入被保険者:月額6.8万円(年額81.6万円)
上限を超えて拠出した分は返金されますが、1,048円の還付手数料が差し引かれます。転職などによって上限が下がる場合は、特に注意しましょう。
なお、2024年12月には制度改正が予定されており、公務員を含むほかの確定給付型制度とiDeCoを併用している場合は、掛け金の上限が月2万円に引き上げられます。
転職・退職により掛け金の拠出を一時休止した場合でも手数料は発生する
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転職・退職で掛け金の拠出が難しくなった場合などは、加入者資格喪失届を提出することによって拠出を休止できます。ただし、口座管理に必要な手数料66円は毎月支払い続けなければなりません。金融機関によっては、運営管理手数料なども必要になる場合があります。
掛け金の拠出を再開する場合の手続き方法は、利用している金融機関に確認しましょう。
転職・退職によりiDeCoの加入資格を失っても原則資産は引き出せない
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転職・退職によりiDeCoの加入資格を失った場合でも、原則60歳まで資産の引き出しはできません。ただし、以下の条件にすべて当てはまる人であれば、60歳未満でも脱退一時金として資産を受取れる場合があります。
- 60歳未満
- 企業型確定拠出年金加入者でない
- iDeCoに加入できない国民年金保険料免除者や外国籍の海外居住者など
- 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でない
- 確定拠出年金の障害給付金の受給権者ではない
- 通算拠出期間が5年以下、または個人別管理資産が25万円以下
- 最後に企業型確定拠出年金またはiDeCoの加入者の資格を喪失した日から2年以内
例外的な措置はあるものの、資産の受取りは基本的に60歳以降であることを理解しておきましょう。生活費や緊急時の備え、近い将来必要になる資金を考慮したうえで、iDeCoに回せる金額を検討することが大切です。
iDeCoより先に退職金を受取る場合は19年ルールに注意
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転職前の会社で退職金を受取ってから、19年以内にiDeCoを一時金で受給する際は、税制面で不利になるケースがあるので注意が必要です。
19年ルールと呼ばれる仕組みで、会社での勤務年数とiDeCoの加入年数のうち重複している部分は、退職所得控除額が減額されてしまいます。一時金を受取る際にかかる税金は、受取り額から退職所得控除額などを差し引いたものに既定の税率をかけて計算されるため、退職所得控除額が減ると節税効果も小さくなることを理解しておきましょう。
iDeCoの一時金受取りは最長75歳まで延ばせるため、会社からの退職金を遅くとも55歳で受取れば、19年ルールの適用を免れられます。
これからiDeCoに加入する人は証券会社選びが重要
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iDeCoは証券会社によって、手数料や商品ラインアップが異なります。できるだけ手数料が安く、運用したい商品を取扱っている証券会社を選ぶことが大切です。
証券会社は多数存在するため、どれを選んでいいのか迷ったときは、以下のページをチェックしてみてください。各証券会社のサービス内容をわかりやすく紹介しているので、口座の開設先を選ぶ際の参考になるはずです。