iDeCoは原則60歳まで解約不可。途中での脱退は難しい
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iDeCoは原則として60歳まで解約ができません。老後の資産を形成するための私的年金制度であるため、途中解約できる一般の金融資産とは仕組みが異なります。積み立てをしている途中で掛金の支払いが難しくなったり、お金が必要になったりした場合でも、受給年齢になるまでは脱退できません。
また、受給年齢は原則60歳ですが、加入期間が10年に満たない場合は受給年齢が繰り下げられます。例えば、加入期間が4年以上6年未満の場合は63歳から、1カ月以上2年未満の場合は65歳から受給が可能です。加入期間ごとの受給可能な年齢はiDeCoの公式サイト(外部サイト)で確認しましょう。
ただし、加入者が死亡した場合などは例外として途中解約が認められることもあります。例外となるケースは後述するので、あわせてチェックしてみてください。
iDeCoの掛金を途中で払えなくなったときの対処法
まずは、iDeCoの掛金を途中で払えなくなったときの対処法を解説します。iDeCoは掛金額を変更できるだけではなく、拠出を停止できることも覚えておきましょう。
まずは掛金の減額を検討しよう。ただし変更は1年に1回のみ
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iDeCoの掛金を途中で払えなくなったときは、まずは掛金の減額を検討しましょう。iDeCoの最低掛金は毎月5,000円、年間6万円です。毎月5,000円の掛金を確保できる場合は、拠出を停止する前に減額手続きをおすすめします。
掛金は1年に1回だけ変更可能です。iDeCoに加入している金融機関から加入者掛金額変更届を請求してください。変更届に希望する掛金を記入し、返送すれば手続きは完了です。
どうしても払えないときは加入者資格喪失届を提出して拠出を停止する
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毎月5,000円の掛金を拠出できないときは、拠出を停止する手続きを行ってください。iDeCoに加入している金融機関に加入者資格喪失届を提出しましょう。
加入者資格喪失届は、iDeCoを運用している金融機関から取り寄せます。Webからのダウンロードや郵送が可能なので、各金融機関の公式サイトで確認してみてください。
掛金の拠出を停止したあとも、運用指図者となり、それまで積み立てた資産を運用できます。ただし、iDeCo口座で運用を続ける限り口座管理手数料が毎月最低66円発生するほか、運用指図者の期間が長くなるほど、iDeCoを一時金で受取るときの節税メリットが小さくなる点にも注意が必要です。
お金に余裕ができれば、再度iDeCoに加入することでいつでも掛金の拠出を再開できます。運用指図者になるとデメリットも多いため、できる限り掛金の拠出は続けましょう。
死亡や高度障害などのケースでは例外的に解約できる
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iDeCoの加入者が死亡したり、高度障害の状態になったりした場合は、例外として60歳未満でも途中解約が可能です。金融機関で手続きをすることで、加入者が死亡したときは死亡一時金、一定以上の障害状態になったときは障害給付金を受給できます。
上記のケース以外に、国民年金の被保険者に該当しない人が所定の条件を満たす場合も、途中解約が認められて脱退一時金の受給が可能です。脱退一時金を受取れる条件の詳細は次項で解説するため、気になる人はチェックしてみてください。
iDeCoの掛金が払えない! 途中解約や借入れはできる?
ここからは、iDeCoの掛金を拠出し続けることが難しくなった場合、途中解約や借入れはできるのかを解説します。いざというときに役立つ知識なので、ぜひチェックしてみてください。
途中解約はできるが条件を満たすのは難しい
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iDeCoの途中解約は基本的に認められていませんが、一定の条件を満たす場合は、途中解約して脱退一時金を受取れます。
<iDeCoの途中解約の条件>
- 60歳未満であること
- 企業型DCの加入者でないこと
- iDeCoに加入できない者であること
- 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと
- 障害給付金の受給権者でないこと
- 企業型DCの加入者およびiDeCoの加入者として掛金を拠出した期間が5年以内であること、またはiDeCoの資産額が25万円以下であること
- 企業型DCまたはiDeCoの資格を最後に喪失してから2年以内であること
上記の条件をすべて満たすのは難しいため、基本的に途中解約はできないものと理解しておきましょう。なお、脱退一時金として資産を引き出す場合、税制上の優遇は受けられません。
資産を担保にした借入れは認められない
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iDeCoの資産を担保にした借入れは一切認められません。iDeCoは、老後に備えるための私的年金制度です。iDeCoの資産を利用した借入れを認めた場合、制度の趣旨から外れてしまいます。
個人事業主が掛金を担保として借入れをしたい場合は、小規模企業共済の利用がおすすめ。掛金額に応じて、事業資金を調達できます。会社員や公務員は掛金を担保にした借入れ手段は使えないので、無理のない範囲でiDeCoの掛金を設定することが大切です。
掛金を途中で払えなくなった場合のデメリットは?
掛金を途中で払えなくなった場合、所得控除の対象にならない、一時金で受取る場合に税金の負担が増えるなどのデメリットがあります。ここから詳しく解説するので、掛金を停止する予定がある人は確認しておきましょう。
払えなかった分の掛金は所得控除の対象外
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掛金の拠出を停止すると、払えなかった分は所得控除の対象外になるため、節税メリットを最大限に活用できなくなります。
iDeCoは毎月定額を口座引き落としで拠出するのが基本であり、追納も認められていません。掛金を引き落とす口座にお金を用意できなかった場合、その月は掛金の拠出がなかったものとして扱われるので注意が必要です。
ただし、iDeCoに加入する際は、申込みのタイミングなどにより、翌々月に2カ月分の掛金がまとめて引き落とされることもあります。
資産を一時金で受取る場合は税負担が増える可能性がある
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掛金を途中で払えなくなった人は、iDeCoを一時金として受取る場合に税負担が増える可能性があります。
一時金で受取る際に適用される退職所得控除は、iDeCoの加入年数が長くなるほど控除額が大きくなる制度です。拠出を停止して運用指図者になっていた期間は、iDeCoの加入年数に算入されず、控除額が減ってしまうので注意しましょう。
iDeCoの掛金を継続して支払うためのポイント
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iDeCoの掛金を継続して払うためには、無理のない範囲で掛金を設定することが大切です。生活費や緊急時の備え、近い将来必要になるお金などを差し引いたうえで、iDeCoに回せる金額を割り出しましょう。ライフスタイルが変わったときには、収支状況を見直したうえで、適切な金額を再設定してみてください。
掛金の拠出額に直接影響するものではありませんが、できる限り手数料が安い証券会社を選ぶことも重要です。手数料が安い証券会社のほうがより多くの資金を積み立てられるため、最終的な資産額は多くなる傾向があります。
現在支払っている手数料が負担に感じられる場合は、より低コストで利用できる証券会社に変更しましょう。以下のページでは、各証券会社の手数料を含めたサービス内容をわかりやすくまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。