iDeCoの掛け金が月額5,000円でも意味がある理由
iDeCoの掛け金は月額5,000円でも十分に意味があります。まずは、iDeCoを利用するメリットを解説するのでぜひチェックしてみてください。
掛け金は全額所得控除の対象に! 節税効果は大きい
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iDeCoのメリットは、掛け金が全額所得控除の対象となるため、大きな節税効果があることです。所得控除の「控除」とは、差し引くという意味。収入から各種控除を差引いたものが課税所得となり、課税所得に所得税率をかけて当年分の所得税と翌年分の住民税が計算されます。
iDeCoの掛け金はすべて収入から差し引けるため、課税所得が少なくなり、所得税と住民税が軽減できることを覚えておきましょう。所得税と住民税の税率をそれぞれ10%とすると、月額5,000円の掛け金でも1年で6,000円ずつ節税できる計算です。
所得控除を受けるには、個人事業主やフリーランスの場合、確定申告して税務署に提出する必要があります。
会社員の場合、給料から天引きされる事業主払込でも、個人口座から引き落とされる個人払込でも、所得控除の適用対象です。事業主払込の場合、企業が手続きしてくれるため所得控除の手間がかかりません。個人払込では金融機関から届く小規模企業共済等掛金払込証明書を添付し、給与所得者の保険料控除申告書を提出すれば、年末調整で所得控除を受けられます。
iDeCoに加入すると所得税と住民税が節税できるだけではありません。iDeCoでは通常20.315%の税金がかかる運用利益も非課税です。さらに給付金も退職所得控除や公的年金等控除の対象となります。iDeCoが「一生で3回得する制度」といわれるのは、上記のような3つの節税効果があるためです。
運用期間が長くなれば将来受取れる金額もアップ
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iDeCoは複利運用ができるため、長く続ければ続けるほどお得な制度といえます。複利運用とは、元金だけでなく利益も投資に回す方法のこと。長く運用を続けるほど、利益が雪だるま式に増えていきます。
掛け金が最低月額の5,000円でも、早めに運用を始めて長く続ければ大きなリターンも期待できるでしょう。iDeCoの複利運用で、将来いくらもらえるかはあとで詳しく紹介します。
iDeCoの掛け金を月額5,000円に設定した場合のシミュレーション
5,000円を毎月支払い続けた場合いくらたまるのか、どれほど節税効果があるかをシミュレーションしてみましょう。iDeCoが、少額でも資産形成に役立つ制度であることがわかるはずです。
運用利益のシミュレーション
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掛け金を月5,000円、運用利回りを4%とした場合の運用利益を、運用期間10年・20年・30年・40年の4パターンでシミュレーションしてみましょう。
- 運用期間10年:元本60万円+運用利益約13.6万円=総額が約73.6万円
- 運用期間20年:元本120万円+運用利益約36.4万円=総額約183.4万円
- 運用期間30年:元本180万円+運用利益約167.0万円=総額約347.0万円
- 運用期間40年:元本240万円+運用利益約350.9万円=総額約590.9万円
少額でも長期間運用すれば、複利効果によって資産を大きく増やせることがわかるでしょう。より詳しく運用利益をシミュレーションしてみたい人は、金融庁の公式サイト(外部サイト)で試算してみてください。
節税効果のシミュレーション
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iDeCoには節税効果もあります。掛け金を月額5,000円とした場合の所得税と住民税を、年収300万円・500万円・700万円のパターンにわけてシミュレーションしてみましょう。
年収300万円の場合、1年間で所得税3,000円+住民税6,000円の計9,000円が軽減されます。年収500万円では、所得税6,000円+住民税6,000円の計12,000円。年収700万円では、所得税12,000円+住民税6,000円の計18,000円を節税できる計算です。
所得が多いほど所得税率が高くなるため、iDeCoの節税効果はより高くなります。ほかのパターンもiDeCoの公式サイト(外部サイト)でシミュレーションできるので、自分の年収でどれくらい節税できるのか詳しく知りたい人は試してみるとよいでしょう。
iDeCoの掛け金を月額5,000円で運用する際の注意点
次は、iDeCoに月額5,000円で加入する際の注意点を解説します。効率よく資産を増やしていくために必要な知識なので、ぜひ参考にしてください。
手数料が高い金融機関を選択すると損してしまう危険性も
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月額5,000円の掛け金でiDeCoを運用する場合は、手数料が利益を上回ってしまうケースも珍しくありません。iDeCoの運用には、加入者手数料や資産管理手数料、資産管理手数料などがかかります。手数料は金融機関ごとに異なりますが、一般的には月額171〜580円、年間2,052〜7,330円程度が必要です。
仮に掛け金5,000円で手数料が毎月500円だとすると、手数料が掛け金の10%を占めてしまいます。利益を確保するには10%以上の利回りが必要ですが、実現できる可能性は低いでしょう。
月額5,000円の掛け金でiDeCoを始めるなら、手数料で損をしないように手数料が安い金融機関を選ぶことが大切です。以下のページでは手数料を含め、各金融機関の特徴を紹介しているのでぜひチェックしてみてください。
投資信託の信託報酬にも注目! できるだけ安い商品を選んで
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月額5,000円の掛け金で利益を確保するには、信託報酬の安い運用商品を選ぶことも重要です。信託報酬とは、投資信託の運用を資産管理のプロにお任せするための手数料のこと。一般的には、保有額の0.5〜2.5%を支払わなければなりません。信託報酬は商品を保有し続ける限り必要となるため、割高な商品を選ぶと少額の掛け金では利益を伸ばしにくくなります。
iDeCoは長期運用が基本であるため、信託報酬が少しでも安い運用商品を選ぶことを心がけましょう。
所得が少ない場合は節税効果を感じにくい可能性もある
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iDeCoを利用するメリットのひとつは、掛け金が全額所得控除の対象になることです。専業主婦(夫)や収入が低い自営業者・フリーランスなどはそもそも所得税や住民税を払っていないので、所得控除の節税効果を感じられません。
ただし、所得控除ができなくてもiDeCoは運用利益が非課税で、受取り時の控除もあるため、一定の節税メリットは享受できます。
課税所得の少ない人が老後資金をためるなら、あとで紹介するNISAのつみたて投資枠のほうがお得なケースも多いでしょう。NISAのつみたて投資枠は、iDeCoほど手数料がかからないのが特徴です。掛け金の所得控除は受けられないものの、iDeCoと同様に運用益が非課税になる節税メリットもあります。
iDeCoの掛け金の目安はいくらが最適?
iDeCoを始めるとき、どれくらいの掛け金が最適なのか気になる人もいるでしょう。どのように判断したらよいのか、以下で詳しく解説します。
目標金額や積み立てる年数から逆算しよう
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どれくらいの掛け金が最適なのかは人によって異なるため、目標金額や積み立てる年数から逆算してみてください。
まずは公的年金の受給額がどれくらいあるのかを把握し、iDeCoで用意する目標金額を考えましょう。掛け金の支払いは60歳まで続くので、60から現在の年齢を引くと積み立てる年数を算出できます。何年間でどれくらい増やしたいのかを明確にすれば、必要な掛け金が見えてくるでしょう。
また、利回りが数パーセント変わるだけでも必要な積立金額に差が出るため、どれくらいの利回りで運用するのかも重要なポイントです。たとえば35歳でiDeCoに加入し、目標金額を1,000万円に設定すると仮定しましょう。利回りが年5%なら毎月の掛け金は16,792円ですが、年3%なら22,421円の積立が必要です。
目標金額や積み立てる年数、利回りによって適切な掛け金の金額は変わるため、個々の状況に合わせてシミュレーションしてみましょう。計算する際は、各項目を入力するだけで試算できる金融庁の資産運用シミュレーション(外部サイト)を活用するのがおすすめです。
掛け金には上限がある! iDeCoの加入条件を押さえておこう
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掛け金は増やせるだけ増やしたほうがお得だと感じる人もいるかもしれませんが、上限額は加入区分によって異なります。自身がどの区分に該当するかを確認し、上限の範囲内でいくら積み立てるかを考えましょう。
【掛け金の上限額】- 第1号被保険者(自営業者等):月額68,000円
- 第2号被保険者(会社員や公務員等):
- → 企業年金がない場合|月額23,000円
- → 企業型DCのみに加入している場合|月額20,000円
- → 企業型DC+DBに加入している場合|月額12,000円
- → DBのみに加入している、または公務員|月額12,000円
- 第3号被保険者(専業主婦(夫)):月額23,000円
なお、公務員を含む第2号被保険者がiDeCoとほかの確定給付型制度を併用する場合は、2024年12月から拠出限度額が変更されるので注意しましょう。iDeCoの掛け金上限額については以下の記事で詳しく解説しているので、気になる人はチェックしてみてください。
ちなみにiDeCoは、20歳以上65歳未満の人であればほぼ全員が加入できます。ただし、企業型DCのマッチング拠出を選択している人や、障害基礎年金の受給者以外で国民年金保険料の免除などを受けている人は、そもそもiDeCoに加入できないことも覚えておきましょう。
iDeCoの掛け金に関するQ&A
最後に、iDeCoに少額の掛け金で加入しようと考える人の多くが、疑問に思うことを解説します。少額で運用できるiDeCo以外の制度も紹介するので、ぜひ最後まで読んでみてください。
iDeCoで少額を掛けている人は多い?
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iDeCoの実施機関である国民年金基金連合会の調査によると、2024年3月現在でiDeCoの掛け金を1万円未満に設定している人の割合は全体の約17.3%。人数にすると約55.6万人にのぼります。
掛け金を1万円未満に設定している人の約8割が、会社員や公務員などの第2号被保険者です。会社員や公務員は厚生年金に加入しているため、上乗せする意味で少額をiDeCoに預けるケースが珍しくありません。
自営業者・フリーランスでも、国民年金基金や小規模企業共済に加入している人が、iDeCoに少額で加入するケースもあります。掛け金は少額でも長期運用すると大きな利益が期待できるため、まずは運用を始めることが大切です。
※参考:iDeCo公式サイト「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況(2024年3月)」(外部サイト)
掛け金は5,000円から途中で増やすことはできる?
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掛け金は、年に一度だけ1,000円単位で変更可能です。変更する場合は、口座を開設している金融機関に加入者掛金額変更届を提出しましょう。変更届はiDeCoの公式サイト(外部サイト)からダウンロードできます。掛け金は多いほど節税メリットも大きくなるので、資金に余裕がある場合は上限まで増やすのがおすすめです。
掛け金の拠出は停止できることも覚えておきましょう。最低掛金額の月額5,000円でも、失業や転職・病気などが原因で支払えなくなることがあるかもしれません。そのときは金融機関に加入者資格喪失届を提出することで、支払いを一時的に停止できます。
掛け金の支払いを停止しても、積み立てたお金の運用は可能です。ただし、運用が続く限り、毎月の口座手数料は必要なので注意してください。再度、加入申込み手続きを行えば、掛け金の支払いを再開させることもできます。
5,000円未満で資産運用を始めたいときはどうする?
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5,000円未満で資産運用を始めたいなら、NISAのつみたて投資枠をおすすめします。つみたて投資枠なら、多くの金融機関で月々100円からの運用が可能です。
つみたて投資枠では、年間120万円までの投資で得た利益が、無期限で非課税になります。iDeCoは原則60歳まで資金を引き出せませんが、つみたて投資枠は好きなときに資産を引き出せるのも特徴です。iDeCoと比べて手数料が安いことも大きなメリットといえるでしょう。
iDeCoの掛け金は定期的に見直しをしよう!
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iDeCoは、長期運用で効果を発揮する制度であるため、掛け金を見直しながら、無理のない範囲で運用することが大切です。
収入に余裕がない場合などは、まず最低掛金額の5,000円から始め、収入が増えたり、生活が変わって余剰資金ができたりしたときに掛け金を増やしていくとよいでしょう。掛け金が多いほど、節税効果も高まるため、最終的には上限額に設定することをおすすめします。
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