「暁建設」破綻で3200万が消えた…更地と借金だけが残ったオーナー《楽待新聞》

4/24 19:00 配信

不動産投資の楽待

3月29日に事業停止を発表し、破産申請の手続きに入った「暁建設」。投資用RCマンション建設を多く手がけていた同社の破綻は、不動産投資家の間で大きな話題となり、その余波はいまも広がっている。

楽待新聞では、工事が途中で止まってしまったオーナー、暁建設の元従業員、事情を知る関係者らに取材を行い、今回の破綻劇の裏側について報じた。背景には、案件ごとの予算を把握せず、「どんぶり勘定」で無理な受注を繰り返したとされる暁建設のずさんな経営があったと考えられる。

前回の記事では、躯体が完成した状態で工事がストップしてしまったオーナーの稼働に向けた取り組みも紹介したが、今回の被害者の中には、より深刻な状況に立たされている人もいる。

多額の着工金を支払ったにも関わらず、ほとんど「更地」の状態で現場がストップ、金融機関から一括返済を迫られるなど、状況はより深刻だ。

■「ウソをつかれていた」

「なぜこのような目に遭わなければならないのか分かりません。自分のお金が、(暁建設の)社長の私腹を肥やすためのものだったとすら感じます」

不動産投資家の宮本さん(仮)は、悔しさをにじませる。

宮本さんは昨年、不動産会社から、東京23区内に建築条件付きで土地を購入。約60平米の土地に、地上4階建て、全8戸のマンションを新築する予定だった。表面利回りは6.3%、土地は5200万円、建築費は8000万円と、総事業費は約1億3000万円だ。

建築条件付き土地のため、すでに建設会社は暁建設に決まっていた。土地の売主である不動産会社と暁建設の間で、あらかじめ建築請負契約が結ばれていた。

土地代は金融機関から借り入れ、9月に土地の決裁を済ませていた宮本さん。建物の工事も間もなくスタートする予定だったが、さまざまなトラブルが続き、結局、着工は2024年1月に決定。宮本さんは契約を進め、2023年12月末に、着工金3200万円を支払った。暁建設が事業を停止する3カ月前のことだ。ところが…。

「契約が終わって1月になっても工事は始まらず、暁建設から工程表も送られてこないんです。何度も何度も連絡して、ようやく連絡が取れて工程表が送られてきたのは2月に入ってからでした」

工程表では、2月の上旬から躯体の工事が始まる予定になっていた。

「実際、工程表が送られてきた後に1日~2日ほど、現場で工事は行われました。ただその後すぐ、土の中からガラ(コンクリートブロックやレンガなどの廃材)が出てきたということで、工事がストップになりました」

その後、いったんは工事再開の目処が立ったものの、やはり現場は動く気配がなく、相変わらず連絡がほとんど取れない状態が続いた。

業を煮やした宮本さんは、着工金の返還を要求する。

「3000万円以上の着工金を支払って、できたものと言えば現場の仮囲いと、確認申請用の書類ぐらいです。土地はほとんど更地の状態でしたから、着工金を返してほしいと伝えました。でも社長は『やります、やります』と応じてくれず、結局工事の再開を待つことになったんです」

しかし3月に入っても工事は進まず、連絡もまともに取ることができない。何度も連絡を試み、ようやく社長の電話がつながったのは3月15日、事業停止2週間前のことだ。

「許せないのは、このとき、社長は『下請け業者が見つかったから、3月25日から工事を再開する』と言ったんです。タイミング的に、この時すでに弁護士に相談して、破産に向けて話を進めていたことは間違いありません。29日に事業停止を知らされたときは、やっぱりウソをつかれていたんだ、という思いでした」

■「事業実現は無理」、金融機関から返済迫られる

宮本さんの目下最大の悩みは、金融機関への返済だ。

「今回は自己資金を1000万円ほど支払い、残りを金融機関から借り入れています。元々は7月から元本の返済が始まる予定だったのですが、銀行からは『この事業はもう実現できない。返済してほしい』と告げられました」

暁建設の破綻後、代わりの建設会社を見繕い、追加融資の依頼もしていたという宮本さん。しかしにべもなく断られ、土地購入時の借り入れを含めた約8000万円の返済を求められている。

「土地はほぼ相場と同額で購入していますので、最悪土地については売却してある程度カバーできるかもしれません。でも、支払ってしまった着工金3200万円はもう取り戻せない。本来は支払う必要のないお金を私が全額かぶらなければならないことが、悔しくてたまりません」

親族から引き継いだ土地に数棟のアパートを保有している宮本さん。その物件からこれまでに得られたキャッシュフローなどをかき集め、どうにかして銀行への返済分を工面する予定だという。

■木造アパートの新築も視野に

前回の記事で話を聞いたオーナーの山川さん(仮名)の場合、躯体が完成していたため、内装や設備などの工事を別の会社に引き継ぎ、竣工にこぎ着けるという算段だった。

一方、宮本さんの場合は基礎の工事すら始まっておらず、ほとんどゼロの状態だ。ここからどのようにリカバーしていく予定なのか。

「元々は地上4階建て、全8戸の壁式RCマンションを予定していましたが、今から同じ規模の物件を建てても収支が合わない可能性が高い。例えば半地下にして戸数を増やすとか、あるいは思い切って建設コストの安い木造の新築アパートに切り替えるとか、そういう方法を検討しているところです」

実際に業者へのヒアリングや相談は進んでおり、これから収支のシミュレーションを重ねて、最終的に最も費用対効果の高い方法を選択する予定だという。

「今回痛感したのは、やはり、建設会社が倒産防止の保険に入っているかどうかを重視すべきだということ。あとは、仮に建築条件付きの物件であっても、売主の不動産会社の言うことをそのまま鵜呑みにしないことも重要だと思います。他社で見積もりを取って相場感を確かめたり、建設業者の財務状況を調べたりしておくことが大切だと思います」(宮本さん)

■現在も破産申請中? 本社は東京に移転

3月29日に事業停止となった暁建設。それから約2週間後の4月16日、埼玉県に廃業届を提出したことが、一斉送信メールで各オーナーに通知された。一方、法人登記を確認すると、4月22日時点では破産に関する情報の記載はない。現在も破産に向けた手続きが進められているとみられる。

なお、4月8日には本店が埼玉県戸田市から、東京都葛飾区に移転していることも確認できた。

元々いた事務所の賃料支払いが難しくなったのか、あるいは別の理由による移転なのかは不明だ。

なお今回の暁建設破綻について、業界内ではさまざまな話が飛び交っている。

以前、暁建設に工事の依頼を行っていたという不動産会社の社長B氏は「(暁建設に)裏切られた」と憤る。

「1年ほど前まで工事の依頼を行っていましたが、ある時期、自社の従業員を複数人、引き抜かれたんです。それからはもう暁建設とは一切付き合うのを辞めました。現在、暁建設の社長がどうしているかは知りませんが、また同じような事業を始めようとしている、という話も聞きます」

前回の記事では、暁建設が坪単価110万円という破格で受注をしていたと説明した。これについても「発注者として、無理を押しつけたことは一切ありません。(暁建設が)その金額でできる、やらせてほしいと言うので依頼していただけですよ」とB氏は説明する。

本店の移転理由や、暁建設の元社長の今後などについて、編集部が代理人弁護士に問い合わせたところ、回答はなかった。

■「ユービーエム」の破綻を乗り越えた投資家は

過去に建設会社の倒産に巻き込まれた投資家は、どのように難局を切り抜けたのだろうか。

昨年には同じく投資用マンションを多く手掛けていた「ユービーエム」が倒産し問題となった。そのユービーエムに工事を依頼し、途中で工事がストップしてしまったもののリカバリーに成功した投資家がいる。投資歴30年以上の「カーター校長」さんだ。

カーター校長さんは2022年に都内の土地を購入し、ユービーエムに依頼してRCマンションを建築することに。しかし、工事の途中で大家仲間からユービーエムが破産するという知らせを受けたという。

「やらかしちゃったかな。すぐ対応しなきゃいけないなと思いましたね」

カーター校長さんは当時の状況を振り返る。建築工事は上棟が終わり、内装もほぼ終わっていた。総事業費1億2000万円のうち、すでに75%の9000万円を支払っていた。

「僕は週に1回ご苦労さんということで現場の職人さんたちにコーヒーを持って行っていたんだけど、その時に進み具合を確認していましたが、全く遅れていなかったと思います」

工事に遅れは出ていなかっただけに、破産は寝耳に水だったようだ。破産がわかった後、カーター校長さんは以下の手順を踏んでリカバリーしていったという。

(1)ユービーエムとの建築工事請負契約を解除する
(2)追加資金の工面
(3)引き継ぎ先建設会社の検討

工事を引き継いでくれる建設会社は、付き合いのあった建設会社やユービーエムの下請け会社、投資家仲間などからの紹介で4社を見つけた。

「1社だけだと足元を見られるので、4つで競合してもらうという形を取りました。契約内容、工事のスピード、金額、会社の財務内容の4つの要素を見て、一番よい会社を選びました」

それでも、最終的に追加の工事費用は1000万円以上に膨らんだ。

カーター校長さん手元資金に余裕があったため現金で支払えたが、ユービーエムの倒産に巻き込まれた他の投資家の中には、十分な現金を持ってない人もいたそうだ。そのような人の中には所有しているほかの物件を売却して資金を工面した人もいたという。

カーターさんの物件は最終的に4か月遅れで完成した。

「本当は3月に完成する予定が7月にずれ込みましたが、1カ月で満室になって現在に至っています」



今回破綻した暁建設に依頼をし、建設途中だったオーナーは少なくとも数十人にのぼると見られる。それぞれ置かれている状況は異なるが、いずれの場合でも無傷ではいられないだろう。

土地からの新築案件において、建設会社の破綻がいかに大きなダメージとなるかは、昨年のユービーエム、そして今回の暁建設の破綻でより明白となった。保険など仕組みの整備と同時に、投資家自身により慎重な判断が求められる。

不動産投資の楽待

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最終更新:4/24(水) 19:00

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